穂乃果達が生徒会室でわいわいやっている時、にこと1年生4人は練習着に着替え屋上にいた。
「良い。特訓の成果を見せてあげるわ」
凛と愛生人、花陽にそう言うと、にこは3人に背を向け、振り返る。
「にっこにっこにー、あなたのハートににこにこにー。笑顔を届ける矢澤にこにこ。あっ!ダメダメダメー!にこにーはみーんなのモ・ノ」
と進化したにこにこにーを見せるにこ。そんな進化にこにーを見て
「気持ち悪い」
と、バッサリと切り捨てる真姫。
「なによ!昨日一生懸命考えたんだから!」
「特訓って昨日1日なんだ…」
にこの言葉に愛生人は呆れた様に言う。
「ていうか5人でこんなことして意味があるの?」
「あんたたち何にもわかってないわね。これからは1年生が頑張らなきゃいけないのよ」
そう言うと、にこはカメラを取り出し、慣れた手つきでセッティングを終わらせる。
「良い?私はあんたたちだけじゃどう頑張ればいいのかわからないだろうと思って手助けにきたの。先輩として」
「いえ、確かに若葉さん達がいないとどう頑張れかいいか分かりませんけど」
「そのビデオは?」
愛生人がにこの言葉に苦笑いしていると、真姫が愛生人の言いたい事を言う。
「何言ってるの。ネットにアップするために決まってるでしょ。今やスクールアイドルもグローバル!全世界へとアピールしていく時代なのよ。ライブ中だけでなく日々レッスンしている様子もアピールに繋がるわ」
そう言うとにこは黒い笑みを浮かべる。
「ぐふふ。こうやって1年生を甲斐甲斐しくみているところをアピールすれば、それを見たファンの間に、にこにーこそセンターに相応しい、との声があがりはじめてやがて」
「全部聞こえてるにゃー」
にこの企みが全て声に出ている事を凛にツッコまれる
と、にこはにこっと笑って誤魔化す。そんなにこを呆れた様に見る1年生4人。
その時、花陽の携帯が鳴る。花陽は形体を取り出し、メールフォルダを開くと、目を見開いて驚きの声を上げる。
「かよちんどうかした?」
「嘘……」
花陽は凛の言葉が聞こえていないのか、返事をせずにあり得ないです、呟くと屋上から走ってる1階にある部室まで階段を駆け下りる。
「夢。夢なら夢って先に言って」
部室に入るや否や、部室のパソコンで何やら調べ物をする花陽。
「全く、なんなのよ。もう!」
「花陽ちゃんってアイドルの事になるといつもこうだよね」
「凛はこっちのかよちんも好きにゃー」
真姫が少し怒った様に叫ぶと、愛生人が慣れた事の様に笑い、凛は元気に叫ぶ。にこが気になり、花陽の肩越しにパソコンの画面を覗き込むと、あー!と叫ぶ。にこの叫びに気になった3人も続いて覗き込むと、信じられないものを見たとばかりに叫ぶ。そして5人は部室を飛び出し、生徒会室へ向かう。
「穂乃果!」
「あ、にこ。どうしたの?」
にこが勢い良く生徒会室の扉を開けるも、そこにいたのは若葉と夏希のみで、目当ての穂乃果はいなかった。
「穂乃果は!?」
「ほのっちなら教室の方が捗るからって」
「そんなに慌ててどうしたの?」
「良いから若葉さん達も来て下さい!」
夏希が穂乃果の向かった先を答えると、若葉と共に愛生人に引っ張られ、生徒会室を出て行く。
「ちょ、鍵!施錠しないと!」
「そんな事どうでも良いです!一大事です!」
若葉が生徒会室の扉に手を伸ばして抗議するも、愛生人にバッサリと切り捨てられ、渋々諦める。
その後、穂乃果を探して教室、屋上、アルパカ小屋へと走り回った一行は中庭へと辿り着く。道中走りっぱなしだった為、花陽とにこ、真姫の3人は呼吸が乱れ、膝に手をついていた。一方、凛、愛生人、夏希、若葉の4人は涼しい顔で穂乃果達3人を見ていた。
「穂乃果。ちょっと話があるから部室に来なさい」
「海未さんとことりさんも」
にこが穂乃果を、愛生人が海未とことりを部室に誘導する。未だに何が起こったのか知らされていない若葉と夏希は唯々首を捻るばかり。
「良い?落ち着いて聞きなさいよ?」
部室に着き、途中会った絵里と希と一緒に部室の椅子に座ると、にこが机に肘をつき、話し始める。
「もう一度、あるわよ」
「もう一度?」
「もう一度」
「もう、一度…?」
にこの発した単語を繰り返す穂乃果と海未、夏希。
「もう一度開催される事が決まったわ。あの、ラブライブが!」
「ラブライブ!?」
にこがババーンと言うと、絵里が驚いた様に繰り返す。
「そう!A-RISEの優勝と大会の成功をもって終わった第一回ラブライブ!それが何と何と。その第二回大会が行われることが早くも決定したのです」
絵里の言葉に花陽が勢い良く言う。若葉は立ち上がると、パソコンの前に座り、掲示板を開く。
「何々?今回は前回を上回る大会規模で、会場の広さも数倍。ネット配信の他ライブビューイングも計画されているし、大会規模の大きい今度のラブライブはランキング形式じゃなくて、各地で予選が行われ各地区の代表になったチームが本選に進む形式になった、ねぇ?」
「つまり、人気投票による今までのランキングは関係ないということですか?」
「どうやらそうみたいだね」
海未の質問に若葉は、サイトの説明欄を読みながら頷いて答える。
「その通り!これはまさにアイドル下克上!ランキング外の者でも予選のパフォーマンス次第で本大会に出場出来るんです!」
若葉の答えに補足する様に花陽が勢い良く話す。
「えーとつまり、俺達っつーか、μ'sも参加資格があるって事で良いんだな?」
「そういう事ですね」
「凄いにゃー」
夏希の言葉に愛生人と凛が答え、絵里もやる気を出す。
「やらない手は無いわね」
「そうこなくっちゃ!」
「ゔぇえ!?」
真姫のやる宣言に、にこが飛びつく。
「よーし、じゃあラブライブ出場目指して」
「待って」
頑張ろー!と続けようとしたことりに絵里が待ったをかける。首を傾げて絵里を見ることり。
「地区予選があるって事は、私達A-RISEとぶつかるんじゃ…」
「まぁぶつかるだろうね。学校同士が近いし」
若葉の一言で床に崩れ落ちる花陽。他のメンバーも諦めが強いのか、頭を抱えたりしている。挙げ句の果てには凛と愛生人が全員で転校しよう!などと言っている。
それから海未と絵里、希、若葉の4人が諦めるのはまだ早い、と諭しモチベーションを上げる。そしてラブライブ予選出場を決めた時、若葉と絵里は違和感を覚え、その正体へ目を向ける。
「はぁ…」
「穂乃果?」
穂乃果は今までの話し合いに一切参加せずに、椅子に座ったままノンビリとお茶を啜っていた。そんな穂乃果に絵里が問いかけると、穂乃果は笑顔で一言
「別に出なくてもいいんじゃないかな」
その一言に部室にいた11人は一斉に叫ぶと、にこが隣の部屋に穂乃果を連れて行き、椅子に座らせる。他の面々もにこの後に続いて移動し、穂乃果を取り囲む様に立つ。
「穂乃果さん。自分の顔が見えますか?」
「見え…ます」
「では鏡の中の自分は何と言ってますか?」
鏡を手に穂乃果に聞く愛生人と海未を見て、穂乃果は首を傾げる。
「だって穂乃果」
「ラブライブ出ないって」
穂乃果の疑問に答える様に絵里と希が言うと、再びにこが詰め寄る。
「ありえないんだけど!ラブライブよラブライブ!スクールアイドルの憧れよ!あんた真っ先に出ようって言いそうなもんじゃない!」
「そ、そう?」
苦笑いで答える穂乃果。若葉は黙って穂乃果に近付くと、自分の額と穂乃果の額を合わせる。
「う〜ん。熱は無いみたい」
「ちょっと若葉!?」
若葉は顔を赤くした絵里に襟を掴まれ、穂乃果から剥がされる。
「あなた一体何してるのよ!」
「いや、昔から熱計る時はこんな感じだよ?」
「そ、そう…なの?」
絵里が確認する様に海未とことりを見ると、2人は慣れた様子で頷く。その若葉の隣では真姫が羨ましそうに穂乃果を見ていた。
「話を戻しますよ。穂乃果、なぜ出なくて良いと思うんです?」
「私は歌って踊って皆が幸せならそれで」
「今までラブライブを目標にやってきたじゃない!違うの!?」
「い、いや~」
にこが穂乃果の肩を掴み聞くと、穂乃果は視線を逸らしながら答えをぼかす。
「ほのっちらしくないな」
「挑戦してみても良いんじゃないかな」
「あ、あははは」
夏希と花陽の言葉に穂乃果は苦笑いで返す。そして何か思い付いた様に立ち上がると皆を見回して言う。
「明日からまたレッスン大変になるし、今日は寄り道して帰らない?」
「そうだね。オフの日くらいは遊ばないとね」
穂乃果の言葉に賛成したのは若葉だった。2人の言葉ににこや絵里が何か言いかけるも、若葉にまぁまぁ、と宥められ、渋々頷く。
それから12人は秋葉原の街に繰り出し、屋台のクレープを食べたり、穂乃果、凛、絵里の3人でプリクラを撮ったり、トンタッキーで休憩がてら飲み物を飲んだりと楽しく過ごした。
「希ちゃん、どうしたの?」
「ううん。なんでも」
穂乃果は希の分の飲み物を持って、外で空を見上げている希の元へ行く。希は飲み物を受け取ると、店の中へ戻って行く。穂乃果も希の後を追おうとして、UTX高校の電光掲示板にA-RISEが映され、穂乃果はそれを見てその場に立ち尽くす。
【音ノ木チャンネル】
若「今話発表になった第2回ラブライブ。穂乃果はやる気無いみたいだね」
夏「つーか、なんだな」
愛「結構前からやってた、とかじゃないんですね」
若「それなのににこと花陽はラブライブ知ってたんだね」
夏「ラブライブって何なんだろうな」
愛「スクールアイドルの祭典、でしたっけ?」
若「でも第2回…」
夏「第2回、か…」
愛「第2回なんですね…」
若「さて、話しは変わるけど、見ての通り今回はネタがないんだよね」
夏「行ってる間にネタが出て来たみたいぞ」
愛「あぁそう言えば。若葉さんが穂乃果さんとおデコをくっ付けたシーンあったじゃないですか」
若「あーあったね。絵里とか顔真っ赤にしてたけど」
夏「まぁ兄妹間では昔からあるやってるイメージあるからな」
愛「その時、真姫ちゃんがボソッと良いなぁ、って言ってたんですよ」
真「ちょっと愛生人!私そんな事言って」
若「やって欲しいの?」
真「………………うん」
若「じゃあ後でね」
夏「あ、真姫がブースから走って逃げた」
愛「夏希さんはツバサさんとしたいしないんですか?」
夏「んーツバサの場合は寧ろやって来る感じだな」
若「積極的だね」
夏「お前らに言われたかねぇよ!」
愛「まぁまぁ落ち着いて」
若「でもあの後、遊んでる時に愛生人と凛もくっ付けて無かった?」
愛「だって凛ちゃんが」
絵「はいはい。もう締めるわよ」
『はーい』
絵「じゃあ」
『バイバーイ』