『いただきまーす』
全員が手を合わせてから炒飯を食べ始める。皆食事をしながら歓談するも、何人かの視線がチラチラととある人物に向かっていた。
「なぁ若葉。なんかスッゲェ居心地悪いんだけど」
「まぁ翔平だけが部外者だしねー」
チラチラと見られている翔平が、隣で炒飯を食べている若葉に耳打ちする。若葉は特に気にする様子を見せずに答える。
「取り敢えず自己紹介でもしたら?まだしてないだろうし」
「そうだな。そういやまだしてなかったわ」
溜め息混じりに提案した若葉に頷き、空になったお椀にスプーンを置き立ち上がる。
「え〜と、自己紹介が遅れました。
最後に頭を下げて自己紹介を終わらせる。それを聞いてた若葉と穂乃果を除いた10人は疑問符を浮かべて見ていた。
「えと……わ、若葉。俺なんか変な事言った?」
「いや多分、どこで会ったっけなぁ〜って感じだと思う」
「そこ!?皆さん覚えてませんか?メイド喫茶で若葉といたんですけど!?つか夏希と愛生人君に至っては一緒に茶を飲んだよね!」
夏希と愛生人以外のメンバーは、その前後のことりの事の方が印象強かったらしく、少し微妙な表情を浮かべていた。一方名指しで指摘された夏希と愛生人は、そうだっけ?といった顔を見合わせていた。
「ほら夏希と愛生人は覚えてるでしょ」
「まぁな」
「若葉さんから弄られると輝くと聞いたので、つい……」
「お前が原因かよ!」
夏希と愛生人の言葉に若葉を勢いよく見る翔平。そんな時、あのーと遠慮気味に海未が手を挙げる。
「どうしたの、海未?」
「質問良いですか?」
「あぁどうぞ」
海未は翔平に質問があるらしく、本人が頷くのを見ると一つ咳払いをして質問をする。
「あの、私とことりは幼い頃から若葉と一緒でしたが、貴方の事をこの間初めて知ったのですが…」
「つまり嫉妬、と?」
「なんでそうなるんですか!違います!」
申し訳なさそうに聞いた途端に茶化された海未は、立ち上がりながら否定する。海未の否定を聞いた翔平はだってよー、と若葉に笑い掛けている。
「まぁ嫉妬云々は冗談として、多分知らなかった理由として、あ〜っと」
そこまで言って若葉を見る翔平。若葉はその視線の意味を察して海未の名前と学年を教える。
「サンクス若葉。海未さんは中学どこだった?」
「海未で良いですよ。中学は
「俺は高蓑原高校附属中だから多分知らないのはそのせい」
翔平の答えに納得がいったのか、頷く海未。今度は絵里が不思議そうに手を挙げる。
「じゃあ若葉とはどこ知り合ったの?」
「えーと…何でだっけ?」
「翔平が
翔平が首を傾げて思い出そうとしていると、若葉が隣から手助けする。
「そう言えば、よく来てたよね」
「穂乃果が目当てだったりして」
「アハハーソンナコトアルワケナイジャネーカー」
真姫の言葉に目を逸らしながら答える翔平。彼を見る皆の目は冷たかった。
「え、ちょ。なんで皆さんそんなに冷たい視線を?」
「所で若葉君とはどんな関係にゃ?」
「心の友と書いて心友さ!」
「普通の友達だよ」
凛の問いに胸を張って答えるも、すぐ様若葉に頭を叩かれ訂正される。
「翔平君は彼女さんとかいるの?」
「恥ずかしながら年齢イコール派だぜ!」
ことりの質問に言葉とは裏腹に恥ずかし気ない様子で答える。若葉も確かに、と頷く。
「中学の時から結構告白されてるのに、その全員を振ってたもんね」
「因みに何人の女の子に告白されたん?」
「あー何人だっけな……若葉知ってるか?」
「10人を超えたところで数えるのを辞めたよ。ていうより、なんで本人が覚えてなくて他校だった俺がその数を知ってるのかな…」.
「何でってそりゃあれだろ。若葉が何人か紹介して来たんだろ」
翔平の言葉に今度は若葉が白い目で見られる。しかしそれを聞いて穂乃果は1人納得のいった顔で頷いていた。
「あーだからお兄ちゃん何回も違う女の子と一緒に帰ってたんだ」
「まぁね。翔平宛ての手紙とかも何通か預かった事もあるし」
「それを態々学校まで届けに来るんだから律儀だよな」
「だから高校になって行った時そんなにアウェー感が無かったんだね」
皆が白い目を止めたので安心しながら残りの炒飯を搔き込む様にして食べる衝撃。他の皆も止まっていた手を動かし、各々皿を空にする。
『ご馳走様でした~』
「お粗末さまでした」
そして食器を家庭科室へ返し、宿題を再開する。
「そう言えば若葉は
「いや、出来ないし。そもそも今関係無いでしょ。ほらそこ間違ってるし」
「いやいや。流石に4ヵ月も経ってんだから誰かいるだろ。気になる奴とか」
「あーはいはいいるいる」
若葉は翔平の言葉を流しながら夏希の進み具合を見る。翔平は流された事に気付き少し不貞腐れながら課題を進める。
「そう言えば若葉と翔平君は高蓑原高校だとどこの専攻なの?」
そんな様子を見ていた絵里が二人に聞く。若葉はそういえば、と絵里だけが知らないのを思い出し、自身の通っていた専攻コースを伝える。
「数学って確か一番難しいって聞いたんだけど」
「いや~試験ギリギリでの入学だったね~」
頭を掻きながら照れる若葉を見て皆は真偽を確かめる為に翔平を見る。見られた翔平はと言うと遠い目をしていた。
「……先生曰く1番教え甲斐のある生徒だったそうだ」
「へ、へぇ。因みに翔平君はどこだったの?」
「俺も数学コースだぜ」
翔平が学生証を取り出して見せ、隣の穂乃果に渡す。穂乃果は若葉ので見慣れているのか、そんなにまじまじと見ずに隣の愛生人に渡す。
「ってそんな事より早く宿題終わらせないと、今日の練習時間なくなりますよ」
愛生人は学生証を花陽に渡しながらこの集まりの意味を思い出す。その言葉に皆はハッとなり、宿題を始める。
☆☆☆
「いや~終わった終わった」
「他の皆はもう屋上で練習してるけどね」
外では既に日が傾いており、部室にはオレンジ色の日が射していた。μ'sの面々と夏希、愛生人は宿題を途中で切り上げ、屋上で練習をしていた。
「にしても大分時間掛かったね」
「山岸の野郎ぜってー嫌がらせだろ。これ」
「でも最後の方はともかく、途中までは俺普通に習ったよ?」
「それはお前だけだー」
翔平が机に突っ伏しながらツッコむも、やはり少し元気がない。少しの間2人しかいない空間に沈黙が流れる。
「んでさ。結局若葉はどういうのが好みな訳?」
「またその話?」
「良いじゃねえか。今は2人しかいないんだし」
体を起こして聞く翔平に、若葉は溜め息を吐きながらう~んと考える。
「じゃあまずは身長。どのくらいが良いんだ?」
「身長……同じくらいが良さそうだよね」
「お前っていくつだっけ?」
「
成る程、と手元のルーズリーフにメモをして、次々と質問をしていく。
「性格は?」
「んー。なんかこう、可愛い感じ?」
「顔は?」
「顔で決めるとか最低だと思うね」
「髪の長さは?」
「肩に掛かるくらいが丁度良さそうだよね」
「…年齢は?」
「プラマイ1年かな」
若葉の答えを一瞥し、翔平は若葉をジト目で見る。
「……お前真剣に答える気あるのか?総合したら穂乃果ちゃんに行き付きそうなんだが」
「結構真面目に答えてるつもりなんだけどね」
「じゃあぶっちゃけてμ'sの中だと誰が好みだよ。穂乃果ちゃん以外で」
翔平の踏み込んだ質問に若葉は顎に手を当て考える。翔平は若葉の答えを黙って待つ。
「う~ん……絵里か真姫、かな?」
「ふ~ん。っともうこんな時間か。俺はもう帰るとしますか」
「送って行く?」
「大丈夫だって。若葉はこのまま練習に合流してきなって」
じゃあなー、と部室の扉を開けて出て行く。
「合流しなって言われても、そろそろ終わってるでしょ」
鞄に荷物を入れて部室を出ると、扉の横の壁に真姫が寄り掛かっていた。
「あ、もう練習終わっちゃった?」
「え?あ、いや」
若葉に声を掛けられた途端に真姫は壁から素早く離れ、慌て始める。
「えと、今出来る所まで通すらしいから来て欲しいって。絵里が」
「あぁうん。分かったよ……で、さ。真姫はさっきの聞いてた?」
「……さっきって、何の話?」
「いや、聞いてないなら大丈夫。さ、早く行こう」
真姫がすれ違い様に見た若葉の顔は夕陽のせいなのか、赤く見えた。
夏「若葉が照れてるね~」
愛「だからあの時顔赤かったんですね」
若「帰って良いかな?」
夏「良いじゃねえか。もう少し弄らs…話してようぜ」
若「今完全に弄らせろって言い掛けたでしょ」
愛「そんな事より、若葉さんの好みについて結構聞かれてましたね」
夏「だな。ほぼほぼほのっちに当て嵌まってたけどな」
若「妹が一番可愛く見えるって言わない?」
愛「若葉さん。そんな事言ってるからシスコン言われるんですよ」
夏「実際シスコンだけどな」
若「いや、実際妹は可愛いよ。作者はいないから分からないらしいけど」
夏「あー妹がいないから
愛「うわー…今読者の何人、いや何十人かが引きましたよ?」
若「作者に止めを刺さないで上げて!」
夏「大丈夫だろ。このあとがきを読んでる読者が一体何人いるのやら」
若「そこは心配しちゃダメだよ!皆読んでくれてるから!」
愛「でも実際の所男3人、偶にμ'sの誰か、が話してるだけの数百字の文、一体誰が読むんですかね」
夏「このやり取りも、どのくらい需要があるのか…」
若「……まぁ作者もこのあとがきが1番色々話させやすいって思ってるしね」
愛「……」
夏「……」
若「……」
夏「今回はもう終わりにするか」
愛「ですね」
若「じゃあまた次回会いましょう」