アニライブ!   作:名前はまだ無い♪

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合宿の最後を飾るもの、それは夏の夜の風物詩です。

それでは合宿下編、どうぞ!


あーじゃあ次はby夏希

花火を堪能した一行は前日と同じ様に風呂に入り、同じ並びで寝転がる。

 

「さて、お風呂も出た事やし。夏の夜、やる事と言ったら」

「言ったら?」

「怪談だよ!」

 

希の言葉に若葉が聞き返すと、対角線上にいる穂乃果が元気に挙手しながら言う。その時絵里が少し引き攣ったのを夏希は見逃さなかった。

 

「そ、それよりも早く寝た方が良いんじゃない?ほら昨日の事があるし」

「昨日?」

「なんかあったっけ?」

 

絵里が若葉と海未をチラリと見ながら言うも、当の本人達は絵里の視線に首を傾げる。その様子に絵里は溜め息を吐く。

 

「で、誰から行く?」

「それは言い始めた希か穂乃果ではありませんか?」

 

寧ろノリノリな若葉と海未の意見に穂乃果がじゃあ、と話し始める。

 

「これはお母さんから聞いたんだけど。実はお母さん、音ノ木坂の卒業生で、学生の頃に広まった噂があったんだ」

 

穂乃果はそう前置きし、話し始める。過去音ノ木坂に広まった噂話を。

 

「放課後、女子が特別教室が並ぶ4階に行った。もう18時になる所だった。各教室の鍵の返却が18時だから、校内には人の姿がほとんど無かったんだって」

 

穂乃果の言う通り、音ノ木坂では今も昔も18時に各教室の鍵を返却しなければいけなく、延長する場合は前もって理事長に申請するか、顧問の先生に報告する事が義務付けられている。

 

「それで、3階から階段を登って行く途中で、ピアノの旋律が流れて来る事に気が付いたの。幸か不幸かその子は音楽鑑賞の趣味があったから、その音色がとても素晴らしく、運指の技術、豊かな表現力、共に圧倒的である事に気付いた。曲そのものも耳に馴染みのあるものでピアノソナタ『月光』。その子は忘れ物を取りに戻った所だったのに、暫く、その旋律に浸って茫然と佇んでいた」

 

穂乃果が一度話を区切るも、誰も何も言わなかった。そして穂乃果は続ける。

 

「女子はそのピアニストに一言賛辞を伝えたくて、音楽室の扉に手を掛けた。確かに音楽はそこから聞こえていたし、音ノ木坂にはピアノはそこしかなかったし、それに、その近くで音楽室以外のどこにピアノがあるのだろうか。

だけど、扉を開けようとした瞬間に、音色はふと途切れてしまう。……どうしたのだろう?そう思いながら、ゆっくりと扉を開ける」

 

そこからが佳境なのか、穂乃果の声が心なしか低くなる。

 

「すると、音楽室の中は異様な雰囲気に満ちていた。

全てのカーテンは閉め切られ、酷く薄暗かった。女子は咄嗟に、ピアノに目をやった。しかしそこには誰もいなかった。ピアノの蓋は上がっているのに、ピアニストはいなかった。どうして、とその女子はたじろいだ。目だけを左右に巡らせて、そして彼女は見た。……長い乱れ髪を頭に垂らし、ブレザーを纏った全身は見るからにぐったりとして力なく、そして目は爛々と血走った女生徒が、音楽室の隅からじっと見つめていたのを!」

 

いきなり声を大きくした穂乃果にヒッ!と少し引き攣った声を出す絵里。そんな絵里に構わず穂乃果は話のオチを続ける。

 

「その女子は総毛立つ恐怖に衝き動かされ、一目散に逃げた。振り返る事も無かった。彼女は後に知る事になる。その日は音楽部が音楽室を占有する日だった事。音楽部の部員はただ1人の3年生がいるだけだという事。そしてその3年生がは不幸な事故で怪我をして、ピアノを弾く事など出来はしないのだという事を……」

 

穂乃果の話が終わると共に、部屋中に何人かの短い悲鳴が響く。その悲鳴を聞いて、怪談を語った当の本人はしてやったりと悪い笑みを浮かべていた。

 

「あーじゃあ次は俺が話すよ」

 

そんな空気の中、夏希が手を挙げる。皆が夏希を見ている事を確認すると、夏希は声を低くして話し始める。

 

「さて、俺がこれから話すのは、穂乃果の話と違ってゾッとする様な話だ」

 

そのいかにもな夏希の雰囲気に絵里や穂乃果が唾を飲み込む。しかし次の瞬間

 

「いきなり話は変わるが、皆は仮設揚重機って知ってるか?」

 

普段通りのトーンで話す夏希にズッコケる。夏希の質問に答えたのは若葉だけだった。

 

「あれでしょ。良く高層ビルとかの建築で使われる鉄骨とかを上に運ぶクレーン」

「そう。その仮設揚重機。アレって実はものすごく怖いんだぜ?」

 

若葉の答えに頷きながら話を続ける夏希。しかし周りの反応はイマイチで首を傾げている者が多数。

 

「鉄骨を運んでる時に、ふとこう思うんだ」

 

この鉄骨を落としたらどうなるんだろう、と

 

夏希の話はそれで終わりだった。聞いていたメンバーはその光景を思い浮かべ、ゾッとしていた。

 

「な?ゾッとする話だったろ?」

「怖いの意味が全然違うにゃ!」

 

夏希の質問に凛がしゃー!としながら反抗する。

 

「なんか夏希の話を聞いてたら俺も一つ思い出したよ」

「それでさっきから何か書いてたの?」

 

若葉が夏希の次に、と手を挙げると夏希の話の最中に若葉が書いていた紙を真姫が覗き込むと

 

「あ、見ちゃダメだよ」

 

内容を見る前に若葉に隠される。そして若葉は皆を見回す。

 

「じゃあこれから俺がする質問に心の中でいいから答えてね」

 

若葉が人差し指を立てながら言う。その言葉に皆が頷く。

 

「では問1。次の8つの中からピンと来たのを選んでね」

 

と言って若葉が皆に見せた紙には以下の事が書かれていた。

①お土産 ②冬 ③コーヒー ④ゴミ箱 ⑤温泉 ⑥コップ ⑦鼻水 ⑧スキー

 

若葉は皆が頷いたのを見ると二枚目の紙を見せる。

 

「続いて問2。問1で選んだ物と関係あると思うものを選んでね」

 

①電卓 ②雪 ③針 ④ティッシュ ⑤米 ⑥饅頭 ⑦牛乳 ⑧電話

 

「ではでは問3。問2で選んだものを強くイメージして、その特徴を選んで」

 

①大きい ②白い ③狭い ④甘い ⑤青い ⑥鋭い ⑦遅い ⑧暗い

 

若葉は先程と同じ様に三枚目の紙を見せる。

 

「これで最後だよ、問4。問3で選んだ特徴に当てはまるものを選んで、それを強く思ってて」

 

①ナイフ ②犬小屋 ③ピラミッド ④宇宙 ⑤砂糖 ⑥血 ⑦亀 ⑧深海

 

それから少しして若葉はうん?と言って再び見回すと、いつもより少し低い声でねぇ、と言う。

 

「なんで、砂糖を選んだの?」

 

若葉の言葉にゾッとした絵里と花陽は思わず腕をさすり、他のメンバーも抱き合ったりとする中、2人程平然としていた。愛生人と海未だった。

 

「あれ?2人共どうしたの?」

「いや、この状況で言いにくいんですけど」

「これって誘導心理テスト、と言うものですよね」

「あ、2人共知ってたんだ」

「ど、どういう事なの?」

 

2人の言葉にあっけらかんとした様子で若葉は2人に返し、絵里達が若葉達に説明を求める。

 

「まぁタネは簡単だよ。自身で選んだと思わせて、その実はその選択は選ばされていたって感じかな」

「てことは……」

「怖い話でもなんでもないって事です」

 

海未が答えると他の怖がっていたメンバーもホッと息を吐く。

 

「じゃあ最後に僕が」

 

次で最後に、となった所で愛生人が手を上げる。若葉の誘導心理テストの後の何とも言えない空気の中、愛生人が手を挙げると正座し、どこからか扇子を取り出す。

 

「暇をもてあました街の者が数名集まり、それぞれ嫌いなもの、怖いものを言いあっていく。「クモ」「ヘビ」「アリ」などと言い合う中に1人、「いい若い者がくだらないものを怖がるとは情けない。世の中に怖いものなどあるものか」とうそぶく男がいる」

 

愛生人がそこで一度話を切る。

 

「他の男が「本当に怖いものはないのか」と聞くと、うそぶいていた男は渋々「本当はある」と白状する。「では、何が嫌いなのか」と念を押され、男は小声で「まんじゅう」と呟く。男はその後、「まんじゅうの話をしているだけで気分が悪くなった」と言い出し、隣の部屋で寝てしまう。

残った男たちは「あいつは気に食わないから、まんじゅう攻めにして脅してやろう」と、金を出し合い、まんじゅうをたくさん買いこんで男の寝ている部屋へどんどん投げ込む」

 

そのタイミングで穂乃果がうわぁ、と声を出す。不思議に思った愛生人がそちらを見る。

 

「穂乃果さんどうかしました?」

「いや~寝ているだけでお饅頭が投げ込まれるなんて、穂乃果からしてみたらちょっと嫌だなーって」

「あー確かにウチは和菓子屋だもんね~」

 

と若葉が納得のいった声を出し、愛生人が話を続ける。

 

「目覚めた男は声を上げ、ひどく狼狽してみせながらも、「こんな怖いものは食べてしまって、なくしてしまおう」「美味過ぎて、怖い」などと言ってまんじゅうを全部食べてしまう。一部始終を覗いて見ていた男たちは、男に騙されていたことに気付く。怒った男たちが男をなじり、「お前が本当に怖いものは何だ!」と聞くと

 

「このへんで、濃いお茶が1杯怖い」

 

と。おあとがよろしいようで」

 

締めの挨拶と共に愛生人がお辞儀する。と同時に何人かからツッコミが入る。

 

「愛生人君、おあとがよろしいようでって次の人の準備が出来ました。って意味だから使い方違うよ?」

「それに怪談で落語やるってどうなんだ?」

「そうだよ。今は怪談を話すんだよ」

「その文句、夏希と若葉は言えませんからね?」

「て言うか、穂乃果ちゃんって落語見るんやね」

「お兄ちゃんがよく見てるから」

「おっさんか!」

 

にこが若葉にツッコんだ所で愛生人の落語に対する感想が終わる。

 

「ほなそろそろ寝よか」

「そうですね」

 

にこのおっさん発言に少ししょんぼりしている若葉を放置して各々布団に入り、寝始める。皆が寝た頃に若葉も立ち直ったのか、自分の布団に入り目を閉じる。

 




若「それにしても今回の怪談話は酷かったね」
夏「まぁ怪談、ゾッとするかは人次第、心理テスト、落語だからな」
愛「そう言われると主題の怪談は穂乃果さんしかしてませんね」
夏「つか、怪談の場で落語やるってどゆこと?」
愛「怪談をしてるのに落語を始めるとか怖くないですか?」
若夏「「確かに!」」
愛「因みに、夏希さんの話以外は元があるので調べると出てきますよ!」
若「いっそここで元を言ってみる?」
夏「長くなりそうだから止めとこうぜ」
愛「ですね。一度書こうとして諦めてるくらいですから」
若「それじゃあ久々の次回予告いく?」
夏「いくか。じゃあアッキー、よろしく」
愛「分かりました!次回、遂に57話にしてやっと夏希さんの彼女が判明します!」
若「やっとだね」
結構以外っちゃー以外な人だよ
夏「お、作者だ」
ヤッホー
若「そう言えば作者に聞きたい事あるんだけど」
何々?
若「俺の心理テストの時、愛生人と海未はなんの答えに行き着いたの?」
それは本人に聞いてみましょう!
愛「えと、僕はスキー→雪→(かまくらの中は)暗い→深海で深海です」
海「私はゴミ箱→針→鋭い→ピラミッドでピラミッドです」
夏「ちょっと待て!うーみんの家にはゴミ箱に針が捨てられてるのか!?」
海「私の家が家ですから。使えなくなった針などを捨てる箱があるのです」
若「成る程ねー。因みに作者は初見でどれになったの?」
砂糖だけど?
愛「まぁ初見ではそうなる人が多数ですもんね」
夏「おっとそろそろ時間だな。因みに次の話は今どのくらい出来てんだ?」
うーんとこれを書いてる時は700字後半かな。
若「て事は話の大体2〜3割くらい?」
愛「ですね。いつもの字数を見る限りだと」
夏「じゃあ最後の一言はうーみんに任せた!」
海「え!?なんですか、最後の一言って?え、えと」
若「海未、また次回とか!だよ」(ボソボソ)
海「わ、若葉、ありがとうございます。ではまた次回とか!」

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