「えーと何の話だっけ?ソフトモヒカンさんと坊主さん」
若葉は振り返りながら青筋を立てている二人を見ると、取り敢えず疑問をぶつけてみる。
「俺らはンな名前じゃねえ!」
「テメェ!調子に乗ってんじゃねーぞ!」
ソフトモヒカンが怒鳴り返し、坊主が拳を振り上げ殴りかかる。
「いきなり戦闘パートとか…RPGのラスボスでさえ会話シーンあるのに」
と坊主の拳を躱しながら愚痴る。因みに若葉の言ってる会話シーンは、若葉自ら気付かずにスルーしていたのは本人の知る由も無いこと。
「チョロチョロと避けやがって!」
「だって殴られたら痛いじゃないですか!」
「ったりめーだろーが!」
坊主の台詞に若葉がボケ気味に言い返すと、ソフトモヒカンまで乱入してきた。
「取り敢えず、監視員さんがこっち見てるので…さっさとプールに入っとけよ?」
若葉はそう言ってソフトモヒカンの腕を掴み、軽く足を払うと近くのプールに投げ込む。その際着地地点に人がいないのは確認済み。
「常村!」
チ坊主が投げ込まれた
『プールに人を投げ込まないで下さ〜い』
その行為を監視員に注意されるも
「ゴメンね〜りっちゃん」
と軽く返す若葉。どうやら知り合いのようだ。本当に若葉の顔の広さには驚かされる。
「全く。で?あの2人は何やったのさ。若葉がそこまで怒るのなんてそう無いし」
「いや〜妹とその友達2人をナンパしてたからさ」
「理不尽だなオイ!」
若葉に近付いてきたりっちゃんは若葉の暴行原因に理不尽さを感じ突っ込む。
「いやいや、さすがの俺でも本人達が嫌がってなかったら介入はしないよ?ただ明らかに迷惑そうな顔してたから介入したんだよ」
「まぁそうゆう事ならいんだけど。若葉がそう簡単に手を出さないの知ってるし。あと、俺の名前は
「はいはい分かったよ。りっちゃん」
「だーかーらー」
と漫才を繰り広げてる2人に
「オイ」
「お前ら俺らの事無視してんじゃねぇぞ?」
先程投げ込まれた2人が肩を叩く。
「あのね?モブキャラはモブだから愛されるの。しつこいと嫌われるし呆れられるよ?」
利幸が溜め息を吐きながら言い返すと、イラつきが頂点に達したのか、坊主が利幸に殴りかかる。
「あ、ちょ!」
若葉が慌てて止めようとするも、その様子を見てソフトモヒカンは笑顔を作り、固まる。なぜなら先程利幸に殴りかかった坊主が一瞬で地面に組み伏せられたのだ。組み伏せられた本人である坊主も何をされたのか、理解できずに驚いている。
「りっちゃんはああ見えて空手と柔道の有段者なんだよ。それに殴りかかるとか、自殺行為甚だしいね」
「取り敢えず暴行未遂と公務執行妨害?」
「今回は公務じゃないから営業妨害かな?でも公務ってどこまでが公務何だろう?」
「ま、どっちでもいいや。で、2人とも事務室来ようか?」
唖然としている2人の首を掴み、事務室に連行していく利幸。
「本当にあの細身のどこに、あんな筋力があるんだろ?」
利幸の体型は武道を嗜むには細い体型だ。なので利幸は力で制すのではなく、技で相手を制している。それなのに自分と同じ体格の男2人を軽々と引き摺っている。
「若葉さーん。トラブったって聞いて来ましたー」
「喧嘩か?」
チャラ男2人を見送っていると、愛生人と夏希がちょうど若葉の下へ着く。大方先に戻した3人が応援として寄越したのだろう。と若葉が考えると
「大丈夫。思わぬ所での助っ人がいたから」
と事務室の方を見ながら言う。夏希と愛生人は何の事か分からずに首を捻る。
「ま、邪魔者は消えたから遊…」
両手を上げて元気に言おうとした時、若葉のお腹が鳴る。
「ぶ前に飯が先だね」
と夏希と愛生人を先導してフードコートに戻ろうとして夏希に止められる。
「若、フードコートはそっちじゃなくてこっちだぞ」
と約90度右を指してそっちに歩き出す。若葉は頭を掻きながら2人に着いて行く。
「たっだいま~」
「帰ったぞ~」
「若葉さんは無事でしたよ~」
3者3様の挨拶をして席に着く。穂乃果とことりと真姫は若葉が戻って来た事を確認すると、それまでの少し暗かった表情から一変明るい笑顔を浮かべ
「お兄ちゃ~ん!」
「若葉く~ん!」
「わばかー!」
一斉に抱きつきにかかる。若葉は1人ずつ引き剥がしつつも
「ちょっと待て真姫!俺の名前は若葉だよ!」
と真姫の言葉にツッコミを入れる。そのツッコミで絵里達も安心した様な表情を浮かべる。
「でも無事で良かったわ」
「昔何か嗜んでたん?」
「昔というか、なんというか。現在進行形、かな?」
『現在進行形?』
「バイトの一環で
お昼を済ませながら簡単に事情を説明すると、全員が納得する。またバイトか、と。
「ねぇねぇ、ほのっち。ほのっちも若がどんなバイトしてるか知ってる?」
「ううん。全部は未だに分からないんだよね」
「一体いつそんな事する時間があるんでしょうかね?」
愛生人の言葉に穂乃果と夏希が首を捻る。確かに若葉は店の手伝いから学業にμ'sの活動と、いつバイトをする時間があるのか。永遠の謎である。
「ねぇ若葉くんて色んなバイトしてるみたいやけど、一体いつバイトしてるん?」
夏希達の会話が聞こえたのか、希が3人の方を笑いながら見ながら若葉に聞く。
「あ~それはですね。俺は時間を超越して、て嘘だからね!?そんなイタイ子を見るような目で見ないで!」
その後も少し騒いで若葉はバイトの件を誤魔化し、その日はプールを堪能した。
夏「若って容赦無いのな」
若「そう?プールに落としたんだから、まだ良心的でしょ」
愛「容赦無くした場合はどうしてたんですか?」
若「え、聞きたい?」
夏「遠慮しとく」
愛「今回は最中利幸さんが初登場でしたね!」
若「りっちゃんは名前だけなら前にも出てたけどね〜」
夏「あぁ若の回想回でな」
愛「そう言えば、何で若葉先輩って着替えの時ずっと黙ってたんですか?」
若「だって刺された傷が見えるじゃん」
夏「ああ刺されたんだっけ?」
愛「真姫ちゃんに聞きましたよ。その後気絶したって」
若「なんでそこで真姫が出てくるの?」
夏(なぁアッキー。こいつまだ)
愛(えぇ気付いて無いみたいですね)
若「ねぇなんで〜?」
夏「それよりも、若って本当にいつバイトしてんだよ」
愛「そうですよ!凄い気になります!」
若「いつって、高蓑原じゃ部活とか入って無かったから、放課後と休日にちょいちょいと。音ノ木に来てからはμ'sが休みの日とか、偶に早く帰ったりしてる時にしてるんだよ」
夏「確かにそう言えれてみれば」
愛「若葉先輩って偶に早く帰りますね」
若「と、言う事で。次は合宿だー!」
夏「各自、親の許可とか大丈夫なのかね?」
愛「え、何でですか?」
若「愛生人、少しは考えよ?」
夏「ではまた次回!」
若「さよ〜なら〜」