オープンキャンパスが無事終わった翌日、校内はオープンキャンパスの話で盛り上がっていた。そんな中、穂乃果は放課後に海未とことり、夏希を捕まえて、アイドル研究部の部室に来ていた。部室に入ると既に花陽、凛、愛生人がおり、談笑していた。
「オープンキャンパスのアンケートの結果、廃校の決定はもう少し様子を見てからになったそうです」
花陽の言葉に海未、ことり、夏希の3人は笑顔を見せる。穂乃果は既に知っていたのか、終始笑顔だった。
「で・も、それだけじゃないんだよ!」
穂乃果は部室に設置されていた扉を勢いよく開ける。
「じゃじゃーん!なんと、部室の広くなりましたー!」
「「おおー……?」」
「や、遅かったね」
扉を開けると壁際に置かれたベンチで、若葉がお茶(ペットボトル)を飲んでいた。
「お兄ちゃんここにいたの!?」
放課後になってすぐに若葉の姿を見失った穂乃果が、若葉に駆け寄りながら声を張る。
「いや、俺もアイドル研究部の部員なんだからここには来るって」
若葉は引き攣り笑いを浮かべ、穂乃果を見やる。
「でもアンケートの結果が良くて良かったね」
「安心してる場合じゃないわよ」
「や、絵里」
「お久し振り、ですかね。絵里先輩」
そうこうしていると生徒会の仕事が終わらせた絵里と希が部室に入って来る。
「生徒がたくさん入って来ない限り、廃校の可能性はまだあるんだから、頑張らないと」
「嬉しいです。まともな事を言ってくれる人がやっと入ってくれました」
目に涙を浮かべながら海未が言うと、今度は絵里が少し引き攣った笑顔を浮かべた。
「うーみんの奴、俺らの事をまとも扱いしてないのな」
「ですね。少し心外です」
気付けば若葉の傍に来ていた夏希と愛生人が話す。そんな2人の会話を聞いて笑ってだねー、と呟いていた。
部室の方でも凛が同じ事を呟いていた。
「あ、ごめんなさい。私ちょっと…今日はこれで」
希が練習を始めようとするとことりが申し訳ない様に謝りながら、部室を出て行く。
「どうしたんだろう?ことりちゃん、最近早く帰るよね」
「ん、メール?」
ことりが出て行ってから少しして、若葉の携帯が鳴った。発信者は『翔平』とディスプレイに表示されていた。
「ふむ。何々?ハァ…悪いけど俺も呼び出し貰ったから先に帰るね~」
若葉はメールを見ると立ち上がり、携帯を振りながらことりと同じく部室を出て行く。
「呼び出しって誰からだろう?」
「理事長から、とか?」
「もしそうなら携帯じゃなくて校内放送で呼ばれるんじゃないかしら」
夏希と穂乃果の疑問に絵里が否定の意見を言う。
「と、とにかく練習始めません?」
「せやね」
花陽の言葉に賛成する希。着替えを終わらせ屋上に上がり、練習を始めた。
練習の休憩時間にスクールアイドルランキングを見てみると、『μ's』のランキングは50位となっていた。
「うわぁ。なにこれ。50位!?すごぉい!」
「夢みたいです」
「20位にだいぶ近付きましたね」
上から穂乃果、花陽、愛生人の感想である。3人の言葉に絵里もへぇ、と呟く。
「それは凄いわね」
「絵里先輩も加わった事で女性ファンも増えたみたいです」
「確かに絵里はスタイル良いし、しかも大人っぽいもんな」
海未の言葉に夏希が続けると絵里は顔を赤らめて逸らす。
「でもおっちょこちょいな所もあるんよ?この前なんて玩具のチョコを、本物と勘違いして食べそうになったり」
「希!」
思いもよらない希による暴露話が始まり、絵里が慌てて止める。
「でもほんとに綺麗!よし、ダイエットだ」
「聞き飽きたにゃー…」
そんな2人を見て穂乃果が言うも、凛は眉を寄せて言う。
「でもここからが大変よ」
真姫が言うと、全員の視線がそちらに向く。
「上に行けば行くほどファンもたくさんいる」
「そうだよね。20位かぁ」
「今から短期間で順位を上げようとするには、何か思い切った手が必要ね」
絵里の言葉に一斉に考え込む。
「その前にしなきゃいけない事があるんじゃない?」
『?』
にこの言葉に全員が首を傾げる。
☆☆☆
一同は場所を移し、秋葉に繰り出していた。
「あの~凄く暑いんですが…」
穂乃果が遠慮気味に言うも、それは皆が思っていた事。なぜなら
「この時期にコートにマフラー、グラサンにマスクって」
「時期外れにも程がありますよね」
夏希と愛生人の言う通り、明らかに夏にする格好ではない。
「我慢しなさい。これがアイドルに生きる者の道よ。有名人なら有名人らしく、街に紛れる格好ってものがあるの」
「でもこれは…」
「逆に目立ってるかと…」
「ばかばかしい!」
にこの演説に絵里と海未が小声で抗議するも、道行く人の声に掻き消される。真姫は我慢できずにマスクとマフラーを取る。
「例えプライベートであっても常に人に見られてる事を意識する。トップアイドルを目指すななら当然でしょ」
穂乃果がにこ相手に戸惑っていると、奥の方から凛と花陽の声がする。
穂乃花達が2人のもとへ行くと制服姿に戻った2人がA-RISEのコーナーにいた。そこにはA-RISEの3人の写真や、マグカップ、ボールペンにキーホルダーと様々な物が置かれていた。
「何ここ?」
穂乃果が2人の間から覗き込みながら聞く。
「あんた知らないの?最近開店したスクールアイドルの専門ショップよ」
穂乃果の質問に未だコートにマフラーを着用しているにこが答える。
「へぇ~こんな店があったのね」
「ま、ラブライブが開催されるくらいやしね」
「とは言えまだアキバに数件あるくらいだけどね」
店の外で話してる絵里と希の会話を聞いたにこが補足する。
「ねぇ見て見て~この缶バッジの子可愛いーまるでかよちんみた~い」
穂乃果とにこのもとに凛が缶バッジを見せる。そのバッジを見て2人は驚く。なぜなら
「それ、みたいじゃなくて」
「花陽ちゃんだよ」
「えぇー!」
2人の言葉にバッジを持っていた本人も驚く。凛にバッジのあった場所に案内して貰うと、そこにはμ'sのグッズが並べられてた。μ'sのコーナーには『人気爆発中』『大量追加、入荷しました』といったテロップが貼られていた。
「うううう海未ちゃんこれ私達だよ!」
「おおお落ち着きなさい」
「みみみみ、μ'sって書いてあるよ。石鹸売ってるのかな?」
「ななななんでアイドルショップでせせせ、石鹸を売っているんですか」
穂乃果と海未は目の前の状況が信じられずに混乱している。にこは自分のグッズを集め並べ、写真を撮っていた。
そんなにこを余所目に穂乃果は棚に貼られた写真を見つけた。その写真にはメイドの格好をしたことりが映っていた。
「こうやって注目されているのが分かると、勇気付けられますね」
「ええ」
「うぅ、嬉しいねぇ」
「かよちん泣いてる~」
穂乃果以外は気付いて無いのか、普通に会話をしている。
「すみません!」
『ん?』
「あの、ここに写真が、私の生写真があるって聞いて。あれはダメなんです。今すぐ無くして下さい」
穂乃果達は聞き覚えのある声が聞こえたので、揃って店の外に顔を出す。
「ことりちゃん?」
穂乃果の呼び掛けにことりは声にならない声を出す。そして暫しの沈黙。
「ことり、何をしているんですか?」
海未の呼び掛けにことりは足元に置いてあったガチャガチャの開封済みのカプセルを両目に当て、振り返る。
「コトリ?ホワッツ?ドーナタディースカ?」
「うわ、外国人!」
凛はことりの片言の誤魔化しに驚くも、穂乃果はことりと見破っており、絵里も少しジト目で見つめていた。
「ことりちゃん、だよね?」
「チガイマース!ソレディーハゴキゲンヨウ」
穂乃果の言葉を否定し、ヨキニハカラエ。ミナノシュウ。と言いながらその場を離れる。そして少し離れた所でいきなり走り出した。
そのいきなりの行動に、穂乃果と海未は声を上げて驚いたのだが、すぐにことりを追いかけたのだった。
夏「さて、今回は46話だった訳だけども。若にアッキー何か感想とかある?」
愛「感想ですか?そうですね。敢えて上げるとしたら、若葉先輩の行動の速さですかね」
若「愛生人、それは褒めてるの?馬鹿にしてるの?」
愛「勿論褒めてるんですよ。部室の隣の部屋だって、穂乃果先輩が開ける前に既に座って寛いでいましたし」
夏「確かに。あれは速かったな」
若「ドッキリってやってみると面白いよ?」
夏「まあそれは置いといて。若は何かあるか?」
若「何かあるかって聞かれても…序盤でいなくなったし?」
夏「だよな~」
若「あ、あったよ」
愛「ほうほう」
若「話にも出てたけど、海未が俺らの事をまとも扱いしなかった事かな」
夏「確かに」
愛「夏希先輩は自分がまともだと思ってたんですか?」
夏「なんだとー!」
若「そうゆう愛生人もゲームとなると人が変わるけどね」
愛「うっ!」
夏「ま、若も方向音痴で過度な妹スキーだけどな」
若「……結論!やっぱり俺らもまともじゃなかった!」
夏「その結論には至りたくなかった!」
愛「では次回予告をして終わりにしましょうか」
若「だね」
夏「え~と今回はことりんが逃げて終わったな」
愛「Run for money?」
若「お金のためじゃないよね」
夏「とにかく次回!『あれ?穂乃果達じゃん』だぜ!」
若「えーなお、タイトルは変更の可能性があります」
愛「それではさようなら~」