第3話、どうぞ!
2月 某日 イタリア 某所
「それでは! 我が国の最新鋭機 『イナクト』の完成披露会を行います!」
滑舌の良い男性司会者の発言と同時に会場は拍手の渦に巻き込まれる。ここはイタリアにある軍の施設。そこであるセレモニーが行われていた。その内容とは、イタリアが開発した最新鋭機『イナクト』の模擬戦闘の実演だ。
「エミリア・コーラサワー イナクト 行くよ‼」
勢い良くアリーナのカタパルトから射出して出てきたライトグリーンのイナクト。そして、それを迎撃しようとする対空マシンガンがイナクトめがけて撃たれる。が、得意の高機動戦術でそれを躱し、リニアライフルでマシンガンの上部に取り付けられた風船をイナクトは次々と破っていく。
「「おおぉぉ!!!」」
これには会場の観客たちも驚く。高機動戦術を行える機体もそうだがそれを扱うパイロットの腕も評価しているようだ。
「へぇ〜、中々だけどね〜」
だが、一人だけあまり驚かずに冷静な目でイナクトを見ている人物がいた。
「なるほど、確かに最新鋭の機体ではあるけど、あんなものか……」
「あら、ずいぶんと辛口な評価ね。ビリー・カタギリさん?」
「ん?」
後方から聞こえてきた声で振り向く。そこにいたのは…
「アリサッ⁉」
「ヤッ♪」
金髪の髪を背中の辺りまでストレートに伸ばし、カジュアルスーツに身を包んだ女性、アリサ・クインヴェールが立っていた。
「ユニオンの “エースファイター” がこんな所にいていいのかい?」
「よくはないわね…でも来ちゃダメって言われてるわけでもないでしょ?」
「まぁ、そうだね」
そう言うとアリサはビリーの隣の席に腰かけ、共に新型を見つめる。
「しかし、まさか我々ユニオンが開発した戦術機『フラッグ』に続いてAEUまでもが戦術機を開発してくるとはね…」
「そうかしら? 世界がISの誕生によって軍事バランスが崩壊したこのご時世だもの…世界各国でまだまだ新型機が出てくるとわたしは思うわよ?」
そう、アリサが言った通り世界はISが出来てしまったが為にすっかり変わってしまった。
ISが誕生してからと言うものの、世界の軍事バランスはみるみる内に崩壊していった。戦車や戦闘機など今まで主力となっていた兵器ではISの持つ絶対防御を破れず、その高性能の機体の前ではありとあらゆる攻撃が無効化されてしまい、それら全てのものはただの鉄屑になってしまったのだ。文字通り世界最強の兵器。しかし、そのISにも欠点がある。
一つ、何故か女性にしか扱えないということ。兵器と言うものは誰でも簡単に使えなければ意味を持たない。だがISは女性限定の兵器なのだ。故に今の全世界では『女=偉い』と言った女尊男卑の世界になってしまった。
そして二つ、ISをISたらしめているコアの数だ。ISのコアは開発者である篠ノ之 束しか作れず、一切の情報開示もしてない為にたった467機しかないコアをうまい具合に世界に割り振られ、各国はそれを独自の技術を持って新型の機体を開発しているのだ。
「だからこそ、人類はオリジナルのコアには劣る『簡易型コア』を作り、軍備増強を計ったんじゃない」
「まぁ、それもそうだね…本来ならISは『宇宙進出』を目的とした機体なだけに技術者としては残念でならないよ…」
「けど、そうも言ってられないのも事実。ユニオンやAEUだけじゃない、人革連も戦術機の開発を進めてるしね……これで世界はいつでも第三次世界大戦が起きてもおかしくないわね…」
「そうならない為にも僕たちは “自分達の身は自分達で守らなきゃいけない” って訳だ」
「そう言う事ッ! ところでビリー、あなたから見てあの新型はどう見る?」
一通り話し終えて、次の話題は目の前に映る新型機の話へ。
「どうもこうも、あんなのフラッグの猿真似だよ…独創的なのはデザインだけだね〜」
彼も一応凄腕の技術者…なので少々評価は手厳しい。するといきなりイナクトが、
「おい、コラァァ!!! 聞こえてんぞ! 誰が猿真似だぁぁ⁈ アァンッ!!!」
「…………アララ、聞こえてたみたいね…どうやら集音性は高いらしいわね♪ ……プフフッ♪……」
「…アハハ、みたいだね」
アリサは小馬鹿にするかの如くわざとらしく笑い、ビリーはビリーで哀れみの意味を込めた笑みを見せる。
イタリア 約5000メール上空
一機の機体が凄まじい速さで今まさにセレモニーを行っている会場へと降りてくる。
「エクシア 目的地到達までおよそ300秒……GN粒子散布と同時に作戦行動に移る」
「了解しました。 相手は新型です。大丈夫だとは思うけど気をつけてね…刹那」
「了解……エクシア 刹那・F・セイエイ 作戦行動に入る!」
ちなみに、エミリアは本作のパトリックで、アリサはグラハム的キャラです!
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