(この世界に『神』なんていない)
縦横無尽に放たれる銃弾の中を一人の少年が駆け抜ける。その手にあるのはサブマシンガンだ。
(この世界に…『神』なんていない!!)
逃げ場を失い、抵抗しようと少年は手にしたサブマシンガンで敵を撃つ。……しかし、敵は傷一つ付いていない。
「クッ、クソ!!」
「フフッ…無駄な足掻きを」
敵の女は不気味な笑みを少年にむける。その女は空を飛び、最強の鎧を纏っていた。
「無駄な抵抗はよしなさい。この『IS』にそんなもの通用しないのはわかってるでしょう?」
女が言ったISとは、天災科学者、篠ノ之 束が開発したパワードスーツだ。本来なら宇宙進出のために開発したのだが、世界はその高スペックのISを兵器として開発を続けているのだ。そして、その結果が世界のあちこちで起こっている……『戦争』だ。
「かわいそうにねぇ〜。あなたが女だったら、そっちの側になる事はなかったのに…」
「……」
「でもごめんなさい…私はあなたを連れて帰らなきゃいけないのよねぇ〜……もしそれがダメなら殺せって命令だし?ここは大人しくして私と一緒に来てくれないかな?」
「クッ…!」
少年の名は、織斑 一夏。ISの世界大会…第2回モンド・グロッソの決勝戦の日、何者かによって誘拐され、何処かの組織で少年兵として洗脳、訓練された兵士だ。
「なぜ、俺にこだわる!?」
「あなたは、あの『ブリュンヒルデ』の弟なんですってね?……上はあなたが思っている以上にあなたの事を評価しているみたいよ?」
「なんでだ!」
「言ったじゃない…あなたは、あの『ブリュンヒルデ』の弟で、しかも組織が育てた兵士隊の中でも随一と言われるほどの戦闘能力があるらしいからね。実験の成功次第ではあなたは生身でもISに匹敵する力があるって言ってたわよ。」
「俺はそんな事に興味はない」
「あなたの意見なんて聞いてないのだけれど…まぁ、いいわ…それで? どうするの?来るのか…来ないのか…」
「行かねぇーよ…テメェらの実験動物になる気はさらさらない!」
どちらにしても俺は死ぬ。今まで実験動物になって帰ってきたやつがいない。一体何人もの仲間が死んだだろうか…
「そう…残念ね。じゃあここでお別れね!」
女はISの武器を粒子変換して呼び出したアサルトライフルを一夏に向ける。俺は死を覚悟して、目を閉じた。
バアァァァァーーーーン!!!!!!
だが、アサルトライフルの銃弾が一夏に届く事はなかった。何故なら女の持っていたアサルトライフルが粉々に砕けていたからだ。
「……エッ?!」
「なっ!……一体なにが!?」
一体なにが起きたのか両者ともに分からず、混乱していると、
「あなたが織斑 一夏ですか?」
「えっ?」
空からかけられた声に、俺は驚いた。そこには一機のISが俺たちを見下ろしていた。長い金髪の髪が夕陽にあたって何とも言えない綺麗な姿を醸し出していた美人がそこにはいた。
「貴様! 何者だ!」
「あなたに名乗るほどの名前はありませんよ…ところで、あなたが織斑一夏ですか?」
その女性は俺を襲って来た女の問い詰めを無視して俺に再度確認する。
「あ、あぁ……そうだ…」
「私の質問に答えろ!」
女が無視された事に激怒したのか、金髪美人に向かってISブレイドで斬りかかる。……が、
「残念ですが、あなた程度の実力で私を倒すのはやめておいた方がいいですよ」
女がふるったブレイドは空を切り、金髪美人の姿が一瞬にして、消える。
「なっ!……どこに消えた?!」
「こっちですよ」
すると、いつの間に移動したのか、金髪美人は女の背後に回り込んでいた。
「いつの間に!」
「これで終わりです」
背中に装備されでいたブレイドで一閃。まさに一撃だった。斬られた女はISと共に墜落して行く。
「す、すげぇ…」
「さて、邪魔者が消えたところで……あなたの身柄を保護しに来た亡国機業のエレン・M・メイザースと申します。以後お見知りおきを…」
金髪美人の女性……エレンが俺の前に降り立つ。
「お、俺の保護って……あなたは?」
「我々は、亡国機業《ファントム・タスク》…世界から戦争を根絶する為に活動している私設武装組織です。」
どうでしょうか。