※Fi167に惚れこんだ末に衝動で書いた小説です。あまり出来には期待しないでください。
異論は認める。
ネーデルラント、ロッテルダム上空。
ロッテルダムはガリア侵攻の前夜に陥落したネーデルラント有数の町である。
ライン川が防衛線となったことで目と鼻の先に見えるようにはなったが、主力はライン川空挺突破作戦での損害からこの地帯にはおらず、ネーデルラントの奪還領土からベルギガ国境までの遅滞戦術でネウロイの侵攻を防ぐつもりらしい。
それが結局上手くいかず一時奪還に成功したロッテルダム周辺の陣地を喪失しデルタ地帯から追われているのだが、主力がガリア中部に移った今ネーデルラントには散発的に高高度を偵察型が通過したりはぐれた戦車型が対岸でうろついているくらいだった。
ふと地上を見ると破壊されたⅣ号戦車の残骸がある。
近くの市街地が消えているところを見るとネウロイの集中砲火でも受けたのだろうか。
だが何か特別な思いを抱くわけでもなかった。
使っているストライカーが短距離離着陸性能に優れたFi167というのもあり、敵地偵察もよく行っていたために戦車の残骸くらいならよく見かけていたのだ。
「リーザ隊長!今晩のメニューとか聞いてます?」
「夕食はいつも出てくるまでのお楽しみだろう」
そうのんきに聞いてくるのは私の二番機を務めるメリーナだ。
美しい容姿に周りを明るくさせる性格なのだが軍規を破ることも多く正直扱いに困っている。
今日はネウロイ構築中陣地襲撃なので本当は4人で出撃するはずだったのだが故障でラインを飛べたのは私とメリーナだけだった。
本当は作戦中止すべきなのだろうが陣地の位置がよほど不味いのか強行されたこの作戦。
横で駄々をこねるメリーナを見て不安に駆られる気持ちを紛らわせてくれているのではないかとすら思ってしまうくらいには不安だ。
ふと地上が開ける。
中央に見えるのはネウロイの大型砲台だった。
地上砲台としてはかなり巨大なもの。
司令部が強行するのもうなずける。
周辺に飛行型ネウロイや対空砲型ネウロイがいないことを確認し、通信を開く。
「メリーナ、まずはあれを潰してからにしよう」
「りょーかい!」
そういうと散開し私は右から、メリーナは左から降下を始める。
緩降下中に横をかすめていくビーム。
だが命中率が悪いうえに威力が低すぎて爆撃の妨害にすらならなかった。
そのまま砲台に接近し、100フィートあたりで50kg爆弾をすべて投下した。
直後エンジンを全開にして爆発半径から離脱する。
後方から聞こえてきたのは爆弾の炸裂音とネウロイ独特の爆散音。
「隊長!共同撃破ですね!」
メリーナの無線で振り向きつつ高度をとりながら撃破を確認した。
《こちらリーザ・エヴァルト。目標ネウロイの破壊に成功。繰り返す、目標ネウロイの破壊に成功》
そう通信を入れると即座に離脱を始めた。
散発的にしかネウロイが現れないとはいえ7.92mmのMG17を一丁づつしか持っていない私達では飛行型との戦闘は危険すぎる。
だがメリーナはそんなことは考えていなかったらしく前方をのんきに飛んでいた。
「メリーナ、一気にライン川を越えるぞ」
追い越しざまにそう声を掛け全速力で駆け抜けた。
普通なら巡航速度で帰るのだが、サン=トロンまでたいした距離はないのでライン川を越えるまでは全速力で行ったほうがいいだろう。
だがその判断はすでに遅かったことを思い知らされる。
「隊長!正面よりネウロイ!」
叫ぶメリーナ。
直後ビームに囲まれる。
シールドの展開には成功したがおかげで速力を失ってしまった。
ただでさえ遅いFi167では飛行型ネウロイを振り切るのは難しい。
「こっちだ!」
そういうと、最大速で降下を始める。
地上型ネウロイさえいなければ低空でMG17を撃ちながらジンキングしつつ離脱するのが一番安全だからだが地上がネウロイの制圧下である状況ではもはやかけである。
《こちらリーザ!飛行型につかまった!応援を!》
一応基地への応援要請もするが、ライン川を越えてまで来てくれるかは断定できないのが辛いところだ。
「隊長、増援は!?」
そう聞いてくるメリーナの声が妙に重く心にのしかかる。
「わからん!そんなことより離脱に集中しろ!」
会話中にも周りを駆け抜けるビームのおかげで口調も自然と力強くなる。
DB601を積んでいるとはいえ短距離離着陸性能と搭載量を重視され、武装も艦上攻撃機としては多いほうにはいるFi167ではあまりいい機動はできない。
まあこれでも複葉機であるためほかのものよりいいらしいのだが12歳に正式に配備されたときからずっとFi167を使い続けている身としてはもう少し機動性が欲しいと思うことも多々あった。
でも今では逆にこの機動性を心地よく感じているが、人間である以上時間が経てば機動のミスも増える。
増援が来たところで遅すぎればすでに私達はヴァルハラ送りになっているだろう。
冷静を保ちながら私達の状況把握をしながら機体を軽く滑らせビームを避けたときに撃ったMG17がネウロイのコアを露出させた。
直後メリーナの射撃により1機撃墜。
これで共同撃墜数4。
基本爆撃しかしていなくてもなんだかんだいって共同撃墜は増えるものだ。
でもまだ4機いるので侮ることはできない。
まだあまり疲れが出ていないからシールド展開も最小限で済んでいるが通った後の地上が黒く焦げ、どういう機動を行ったのかわかるくらいには激しい弾幕なのだ。
ミスを犯した瞬間に死にかねない。
そんななか横を駆け抜けていくメリーナが叫んだ。
「地上にネウロイ!低空離脱はもう!」
不味い。
低空離脱がとれないとなると更なる回避を要求されてしまう。
もう疲労もかなりきついのだ。
でも諦めたらそれで終わりという意識で気力を無理やりもたせた。
一気に減速してオーバーシュートしたあと急加速をして高度をとる。
これで飛行型からの攻撃はある程度大丈夫だろう。
そう油断したのが不味かったのだろう。
逆にオーバーシュートされ、背後から撃ち抜かれたのだ。
ロールで回避はしたものの、ストライカーユニットは焦げ、髪の毛も結んでいたところが焼かれてショートヘアーになってしまった。
だがそのとき通信が入った。
《こちらゲルトルート・バルクホルン大尉だ。離脱を援護する》
《了解。地上型がいるから離脱には気をつけろ》
救援の到着。
私は内心歓喜しつつ正面からの銃撃を回避した。
後方で撃破される2機のネウロイを確認しつつ私はあることに気づいた。
メリーナがいないのだ。
爆発音は聞こえていないので墜落している可能性は低い。
不安になり周囲を確認すると黒煙を上げながら緩降下をするウィッチが見えた。
まだ追いつける距離だ。
エンジンの回転を上げ降下しているウィッチに近づく。
「隊長!もう左がダメです」
そう叫ぶ声がきこえる。
元々低すぎたためこの数十秒でもはや墜落寸前だった。
でも諦める気はない。
そのまま私は速度をあわせつつ接近コースをとる。
「メリーナ、そのまま飛んでろ。運んでいく」
「隊長、一体何を」
一気に速度を上げ機体を下に滑り込ませる。
「そのままおんぶされるかんじで乗っかれ」
直後背中にかかる重圧。
だが100kgまで爆弾を積めるFi167には楽々運べる重さではあるのだが重心がずれるために少々飛びにくくなった。
後方が不安になり蛇行しながら確認すると見えたのはネウロイの破片。
どうやら撃破に成功したよう。
「隊長、死んだかと思いました」
そういうメリーナの声で戦闘終了を実感した。
緊張状態からの解放で力が抜けそうになるがどうにか耐える。
でもふらついてしまった。
どうやら戦闘機動の取りすぎで魔法力がもう少ないようだ。
さらにメリーナが寝たのか少し重くなったのが追い打ちをかけている。
援護に来てくれたバルクホルン大尉もそれに気づいたようでこっちに近づいてきた。
「大丈夫か、エヴァルト中尉」
「こいつを背負ったままではサン=トロンまでは魔法力が持たないだろうな」
そういうと大尉は背中のメリーナを見ながら言った。
「私が背負っていく。貸してくれ」
「わかった」
機体を上手く大尉の機体に速度を合わせて寄せる。
すると体が軽くなり、少し速度が出すぎて大尉を追い越してしまった。
やはり疲労もひどいようだ。
「ありがとう、大尉。こちらはもう大丈夫だ、先に帰ってくれ」
「しかし護衛はどうする?」
「僚機を回してくれればいいさ」
そういうと大尉は了解と一言いって去って行った。
帰還中のメリーナの態度の件でバルクホルン大尉に怒られたのはサン=トロンの笑い話になったのはまた別の話だ。
僚機はエーリカ・ハルトマン中尉です。
一応ネウロイ勢力圏内飛行を行っているのでトップエース級二名でもおかしくないと思います。
あとカレーに近づけたくらいだからネウロイ勢力圏内でも主戦場以外なら割と大丈夫な気がします。