理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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九十五話 麻帆良祭終盤

 サイバー攻撃は終わったが、未だ結界の復旧は完了してはいなかった。さらに言えば、地上ではまだまだ戦いは続いていた。ロボの工場は無くなったものの、大量のロボが未だに攻撃を仕掛けていたからである。天は闇に染まりはじめ、日はかなり傾いていた。そんな中でも戦いの火種で、麻帆良を明るく照らしていたのだった。

 

 

「ちょっと数が多すぎ!」

 

「でもさっきより数は減ってきてる! いけるいける!」

 

 

 防衛拠点である世界樹前広場にて、桜子、美砂、円の三人と裕奈が、大量のロボ軍団と激戦を繰り広げていた。三人は一度裕奈から離れて戦っていたが、敵の物量に負けて後退して来たのである。そこで、少しずつだが数が減っては来ているが、未だ大量に攻撃してくるロボ軍団に苦戦を強いられていたのであった。また、他の3-Aのクラスメイトたちも、各場所で必死に防衛を行っていた。

 

 

「”魔法の射手! 連弾・火の17矢!”」

 

 

 裕奈はロボ軍団へ炎属性の魔法の射手を放つ。すると、それは全て吸い込まれるかのように、ロボ軍団へと命中し破壊した。だが、破壊されたロボの煙の後ろから、なんと強制時間跳躍弾が飛んできたのだ。後ろに待機していたロボが、タイミングを計って攻撃してきたのである。

 

 

「ちょっ! うそ!?」

 

 

 それを裕奈はギリギリで回避。飛び込むような姿勢で地面へと身を投げ、黒い渦に呑み込まれることはなかった。しかし、別の方向からのロボが、脱げビームを放ってきたのだ。非常に焦った裕奈は両腕で地面を蹴り、宙返りするように空へととび、着地と共に魔法の射手を放つ。

 

 

「”連弾・火の10矢!!”」

 

「おー!」

 

 

 裕奈の戦いぶりに、美砂たちはまたもや驚いていた。そして、裕奈が放った魔法の射手は、先ほど攻撃してきたロボへと鋭く突き刺さり撃破したのだ。それを見た裕奈は少しほっとした様子を見せつつも、他のロボを倒そうとした。その時、後ろからさらに複数のロボが、強制時間跳躍弾と脱げビームを放ってきたのだ。それに気がついた裕奈は、すぐさま飛び込み回避するも、勢いのあまり地面を数回転がってしまっていた。

 

 

「……くうっ……」

 

「ゆーな!?」

 

 

 その衝撃により体に痛みを感じたのか、裕奈は小さく苦悶の声をもらした。また、そんな裕奈を見た美砂が、心配するように裕奈の名を叫んでいた。

 

 

「このー! ”敵を撃てー”!!」

 

 

 しかし、裕奈もただでは転ばない。転がった先に落ちていた拳銃型の杖を拾い上げ、それをロボへと向けて攻撃したのだ。その光線がロボへ命中するや否や、ロボは膝から崩れ落ち、機能を停止させたのである。

 

 

「大丈夫!?」

 

「へーきへーき! それよりもロボを倒さないと!」

 

「そ、そーだね!」

 

 

 そこへ美砂たちが他のロボを倒しつつ、裕奈へと近づき気遣いの声をかけていた。そんな気遣いなど無用と言う感じで、裕奈は余裕を訴えるように元気な声で返事をしていた。また、自分の心配よりもロボの数を減らすことの方が重要だと、美砂たちへ話したのだ。美砂も裕奈の答えに、その通りだと言葉にし、再びロボへと攻撃を始めたのだった。

 

 

「まったく、こんな忙しい時にアルスさんや高畑先生はどこに行っちゃったんだろー」

 

 

 再びロボ軍団へと攻撃を仕掛けていく美砂たちを眺めながら、ふと裕奈はアルスと高畑先生のことを考えた。先ほどから姿を見せず戦いに参加していない二人が、今何をしているのかわからなかったからだ。まったくもって、こっちは忙しく戦っているというのに、どこで何をしてるのやらと思ったのだ。だが、実際その二人は、ビフォアに敗北して3時間後へ飛ばされてしまっているのだが、裕奈には知りえないことだった。

 

 

「とは言えアルスさんはともかく、高畑先生が怠けるワケないし……、まさかねー」

 

 

 それでもアルスはやる気がない男なのでサボっている可能性も否定できないが、あの高畑先生が怠けることはないだろうと考えた。ゆえに、あの二人に何かあったのではないかと、一瞬不安がよぎったのである。しかし、あの二人が強いことも裕奈は当然知っていた。なので、二人が何かしらで敗北したなど、到底考えれないと苦笑していた。

 

 

「減ってきてるけど次から次へと押し寄せてくるよ!?」

 

「押し寄せてきてるの倒せばポイント稼げるじゃん!」

 

「そうだけど多すぎない?!」

 

 

 敵は確実に数を減らしてきていた。それは誰が見ても明らかなことだった。美砂たちもそれを実感してきていたが、その物量はいまだに半端がない状況でもあった。大量に押し寄せてくるロボ軍団に、少したじろぐ桜子。それなら敵を大量に倒してポイントを稼げると豪語する美砂。それでも数が多いことを口にもらす円がいた。

 

 

「なーに! 全部倒せばいいだけよ!」

 

「そのとおり!」

 

 

 そんな三人のところへ、再び裕奈が飛び込んできて、ロボへと攻撃を始めたのだ。先ほど手に入れた拳銃型の杖と、無詠唱の魔法の射手にて周囲のロボを一蹴したのだ。その様子を見ながらも裕奈の意見を賛成する美砂は、桜子と円と共に残りのロボへと攻撃したのである。

 

 

「でもちょっと待って! あれってまさか!?」

 

「敵の増援!?」

 

「巨大ロボ軍団!? こんな時に!?」

 

 

 だが、そこへ新たな敵の増援が上空より現れた。なんということか、それは全て巨大ロボだったのだ。数も十数以上おり、発見した桜子も焦るほどだった。この場のロボ軍団もまだ半数以上残っている状況で、さらなる巨大ロボの増援は絶望的なものだった。円も美砂も驚き慌てふためいていたのである。

 

 

「なんということでしょう! さらなる巨大ロボの増援が現れました!! この麻帆良はどうなってしまうんでしょうか!?」

 

 

 その敵の増援を感知した和美も、多数の巨大ロボが現れたことをアナウンスしていた。本人も地味に焦ってはいるが、とりあえず自分が出来ことは実況しかないので、それを必死に行うことにしていた。

 

 

「こっちに来るよー!?」

 

「まずいんじゃないのこれ!?」

 

「だけどここで諦めたら試合終了だよ! ここは正念場ってやつさ!」

 

 

 敵が着実にこちら側へと近づくことに、桜子は慌てていた。そりゃ十数もの巨大ロボが飛んできて居るのだから慌てない方がおかしいだろう。円も同じくこの状況がとてつもなくヤバイことを感じてあわあわと混乱していた。しかし、この様な状況でも諦めず、ここは踏ん張りどころだと周りを激励する裕奈。巨大ロボが来ようとも、ここで負けるわけにはいかないと、強く思っていたのである。

 

 

「で、でもやっぱ数多すぎ!?」

 

「うわー、ヤバイってこれ!」

 

 

 それでも敵の数はかなり多い。巨大なボディと合わさり、非常に重圧感を出していた。ゆえに威圧される美砂たちは、現在明らかに不利な状況だと感じ取っていたのだ。

 

 

「確かに多いけど、ここで負けるワケには行かないよ! みんなで力を合わせて倒すんだー!」

 

「そ、そうだね!」

 

「よーし! こうなればヤケだ! やっちゃうよー!」

 

 

 だが、ここで逃げるわけにはいかない。裕奈は巨大ロボを、協力して迎え撃とうと叫んでいた。ならばやるしかないと、美砂や桜子も威勢よく叫んだ。円もまた、戦うしかないと決死の覚悟を決めたようだ。しかし、そんなところへ一人の少年が現れた。普通に見れば中に浮かんで居るように見える、長い黒髪をなびかせた少年だった。

 

 

「やれ、S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)

 

 

 少年がその言葉を唱えると、突如として上空の巨大ロボ軍団は爆発炎上、ほとんどが破壊されたのだ。その少年こそ、やはりあの覇王だった。覇王はO.S(オーバーソウル)したリョウメンスクナの掌に立ち、S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を操っていた。

 

 空の敵には空が飛べるS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)こそが適材。空に舞い上がったS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)の鋭い爪や巨大な腕を使った攻撃や、炎上させる攻撃などで次々と巨大ロボを粉砕爆砕していったのである。

 

 

「えぇー!? 巨大ロボが突然爆発した!?」

 

「あれ、あの人って確か……!」

 

「このかの彼氏!? ていうか浮いてる!?」

 

 

 だが、普通の人には突如として巨大ロボが勝手に爆発したようにしか見えない。O.S(オーバーソウル)は普通の人には見えないからだ。だから桜子たちは突然爆砕された巨大ロボ軍団を見て、とてつもない驚きようを見せていた。今ここで巨大ロボを迎え撃とうという時に、巨大ロボの方から自滅したように見えれば驚くだろう。

 

 さらに、覇王はリョウメンスクナの掌に乗っているため、一般人には宙に浮いていたって居るようにしか見えないのである。

 

 また、覇王を見つけた円と美砂は、確か木乃香と仲良くしている男子だということを思い出したようだった。というか、覇王と木乃香が付き合っていると言う情報は、3-Aでは常識なのである。

 

 

「……これも違う……、()()はいつ出すつもりなんだ」

 

 

 そんな覇王は周りのことなどどうでもよさげに、闇に染まりかけた空を見上げていた。覇王はいまだに戦力として投入されない鬼神に、若干の焦りを感じていた。

 

 鬼神は魔力を増幅する装置としても使われるはずなので、必ず登場するはずだからだ。あれさえ見つけ次第破壊できれば、こちらがかなり有利となるし、あわよくばビフォアの計画それ自体をも阻止できるからである。

 

 しかし、いまだにその姿を確認できずにいた。覇王はなんとしてでも、その鬼神を倒さなければと、辺りを注意深く観察し、戦っていたのだ。

 

 

…… …… ……

 

 

 一方広場の最前線にて、状助や刃牙もロボ軍団と対峙していた。敵の数に圧倒されつつも、徐々に敵減らしていたのだ。

 

 

「しっかし敵が多すぎるぜ! なんつー数だ!」

 

「まったくだ……。だがまあさっきより数が減ってきているぞ」

 

 

 敵が多すぎる。それは誰もが思うことだ。状助もロボ軍団の数の多さに、疲れを見せ始めていた。しかし、敵は減ってきている。少しずつだが減ってきている。そのことを刃牙が言葉にし、状助を鼓舞させていた。

 

 

「ちょっと、上を見て……!」

 

「何!? お、おいおいアレは……!?」

 

「な、なんや!?」

 

 

 だが、そこでアキラが刃牙に、焦りの表情を見せながら空を見るように呼びかけた。突然のことに何事かと思い空を見た刃牙も、仰天するような光景を目の当たりにしたのだ。それはやはり巨大ロボ軍団の登場であった。空中を飛行しながら、大多数の巨大ロボがこちらへと近づいてきていたのだ。そのおぞましい光景に、亜子も驚き慌てた声を出していた。

 

 

「巨大ロボが大多数だとオォ――――ッ!?」

 

「マジかよグレート……」

 

「ど、どうする……?」

 

 

 刃牙も戦慄の声を上げていた。流石の刃牙も巨大ロボと言う威圧的な存在が大量に飛んでくる様には、焦りを感じざるを得なかったようだ。また、状助も空を見上げ、唖然とした表情をしていた。いやはや、ただのロボ軍団でさえ未だ多く存在するというのだ。それだけではなく巨大ロボまで相手しなければならないとなると、骨が折れるどころではないからだ。もはや絶望的な状況に、アキラは刃牙へどうしたらいいか不安の表情で聞いていた。

 

 

「ど、どうしようもねエェ――――! 戦うしかねぇぜ!」

 

「せ、せやけどあの数は……」

 

 

 そうだ、戦うしかない。どの道それ以外方法などない。刃牙は覚悟を決めたと言うよりは、破れかぶれになったような声で、そう叫んだ。だが、あの数は流石に多すぎる。はっきり言って、こちらの減りに減った戦力では勝てるかわからないほどだ。いや、守りに入っても守りきれるかさえわからないような状況だ。ゆえに亜子は不安な様子を見せながら、敵の数に困惑していた。しかし、そこへすさまじい速度で、こちらへ走行してくる二つの巨大な物体が現れた。

 

 

「オラオラオラオラァ!」

 

「貴様らの相手は私たちだ!」

 

 

 赤いロボットに青いロボット。それはまさしく炎竜に氷竜だった。二体のロボは足のみをビーグル形態へと形を変え、滑走してきたのだ。さらに、そのままクレーン型とラダー型のウルテクライフルからウルテクビームをロボ軍団へと放ちつつ、ものすごい勢いで突っ走っていた。そして、防衛拠点である広場の前へやってきた二体は、その場へ人型となり勇ましく大地に立ったのである。

 

 

「なっ!? こ、これは……!?」

 

「グレート……。まさかこんな隠し弾までいたとぁよォー……」

 

 

 それを見た刃牙と状助は、明らかにこの世界とは場違いな二体に、すさまじいほどに驚いた。何せ勇者王に登場する二体のビーグルマシーンが、目の前に現れたのだ。驚かないわけがない。また、まったくもってこんなヤツがいるのなら、早く来てくれよとも思っていた。

 

 

「ロボ……?!」

 

「噂の赤いロボに青いロボ?!」

 

 

 驚いていたのは刃牙と状助だけではない。亜子やアキラも驚いていた。突如ロボが高速で走行してやってきたのだ。驚かないはずがない。さらに、麻帆良には街を守護する二体のロボの噂があった。赤いロボ、青いロボ。その二体が麻帆良の平和と安全を守っているというものだ。その噂を知っていた二人も、本当にそれが存在したことにも驚いていた。

 

 

「デカいヤツらの数が多いぜ!」

 

「わかっている! ならば私たちでヤツらの侵攻をここで食い止めるまで!」

 

「おうッ!!」

 

 

 炎竜は上空から飛来する巨大ロボ軍団を見て、それらを危険視していた。同じく氷竜も敵の数を計算し、その脅威度を分析していた。そこで氷竜はこのままではこの場が危険だと考え、炎竜へとここへとどまり巨大ロボを迎え撃つと提案した。炎竜はそれを肯定し、強く頼もしく返事をしたのだ。そして、その肯定にはさらに別の意味があったのである。

 

 

「シンメトリカル・ドッキングッ!!」 「シンメトリカル・ドッキングッ!!」

 

 

 炎竜と氷竜はシンパレートが高まることにより、合体することが可能となる。つまり、二体の心がひとつになったということだ。二体は重なるように、力強くその合体の意思を示す言葉を叫ぶと、空中へと飛び上がった。

 

 飛び上がった二体の腕が左右に広がるように移動し、伸縮したと同時に回転しながら定位置へと固定される。次に胸部が持ち上がり、頭が胸部へと収納された。すると背中にあったクレーンが分離し、背面の装甲がと両腕が持ち上がった。また、その両腕へとかぶさるように装甲の左右が折りたたまれると、その両端からつま先らしきパーツが飛び出したのだ。

 

 そして、分離していたクレーンが、腰となる部分へとマウントされた。その後、肩となる車両前方が90度の角度で折り曲がると、その二体が対象となるように、ゆっくりと合わさった。そこで両方の肩となる部分から、二つのガンが射出され、それが腕となるように合体し、手の部分が裏返るように出現したのだ。

 

 さらに背中となる部分へブースターパーツと頭部が合体、上下逆だった体を反転させ、足で大地を踏みしめた。最後に突き進むように前へと走ると、胸部となる銀の盾(ミラーシールド)が合体し、巨大なロボットが完成したのだ。そう、これこそがシンメトリカルドッキングすることで、二体がひとつとなった姿。

 

 

「超ォ竜ゥ神ッ!!」

 

 

 その名は超竜神。銀色の頭部と胸、左右対称なフォルム、力強い鋼のボディ。左が炎竜の赤、右が氷竜の青の色をした、巨大なロボット。超竜神は強くうなるような声で、その名を叫んだ。頼もしく心強い勇者の参上だった。

 

 

「合体した!?」

 

「圧巻としか言えねェぜ……」

 

「あ、あぁ……」

 

 

 赤と青の二体のロボが合体したことに、アキラは先ほど以上に驚いた。いや、まさか合体までするとは思っていなかったのだ。亜子もその後ろでアワアワと驚きながら、その様子を眺めていた。だが、合体することをあらかじめ知っていた状助と刃牙は、その合体を目の前で体感したことに、驚愕と感動の二つを感じていたようだ。

 

 

「ダブルガン!」

 

 

 周りの動揺をあえてスルーし、超竜神は両腕に搭載されているガンでウルテクビームを照射、飛来する巨大ロボを攻撃した。巨大ロボの半分は、それにより大破、撃墜されたのだが、それでも半分は残ってしまった。残ったといっても大群でやってきた巨大ロボは、いまだ威圧的な数だった。そんな巨大ロボ軍団は、ついに広場の近くへと降り立ったのだ。

 

 

「ダブルライフル!!!」

 

 

 しかし、超竜神は当然それを見逃さなかった。その着地の瞬間を狙い、クレーンとラダーの先端に装備されたライフルで即座に攻撃。巨大ロボをさらに減らしたのだ。それでも巨大ロボはいまだ多く残っていた。数は減ったが、まだまだ健在だ。

 

 

「ウオオオオッ!!!」

 

 

 ならばと超竜神は地面を蹴り、すさまじい速度で敵のロボ軍団へと、勇ましい叫びとともに突貫していった。巨大ロボは遠距離武器に、脱げビームや強制時間跳躍弾が装備されている。一週間後の世界ならば、それが全て光学兵器やミサイルへと置き換わっていたが、今はそれしか装備されていないのである。と言うのも、ロボの数だけをとにかく増やす作戦だった。それゆえ武装は、最小限にとどまってしまっていたのである。

 

 何とか超竜神の動きを止めたい巨大ロボ群は、右腕から機関銃をはやし、強制時間跳躍弾を放ったのである。しかし、超竜神のダブルガンやダブルライフルにより、それらを打ち砕かれたのだ。

 

 ダブルガンやダブルライフルはウルテクビームを発射するだけではなく、元の装備であるメルティングガンおよびフリージングガンも選択して発射することが可能だ。それを使って強制時間跳躍弾を跳ね除け、あるいは溶かしてしまったのである。もはや巨大ロボ軍団では、超竜神の特攻を止めることはできなかったのだった。

 

 

「ダブルトンファー!!!」

 

 

 超竜神は敵の攻撃をかいくぐり、ついに巨大ロボ軍団へと近づくことに成功した。そして、その叫びとともに腰に装備されていたクレーンとラダーを腕に持ちかえ、巨大ロボを殴り飛ばしたのだ。さらにクレーンとラダーを、まるでトンファーのように使い、巨大ロボへとたたきつける。それだけではない。巨大な足から強烈な蹴りを放ち、巨大ロボ軍団を格闘にて撃破していったのだ。

 

 なにせ超竜神は元々レスキュー用のロボである。武装はダブルガンおよびダブルライフル、そしてダブルトンファーしかないのだ。武装がそれしかないのにもかかわらず、これほどのポテンシャルが出せるのは、やはりウルテクエンジンなどの技術や、Gストーンの力によるものだろう。

 

 

「すごい……。敵のロボの数が一気に減ったよ!」

 

「う、うん……」

 

「それならよォー、俺らはちいせぇロボをぶっ壊すしかねぇなァッ!」

 

「ああ、それが一番ってワケだな!」

 

 

 なんと危惧していた巨大ロボ軍団は、赤と青のロボによりほとんど破壊されてしまった。それを驚きつつもほっとしながら喜ぶアキラに、もはや言葉も出ないほどに衝撃を受けていた亜子がいた。また、状助は巨大ロボを超竜神に任せて、自分たちは先ほどと同じように、普通サイズのロボ軍団をぶっ倒すことにしようと考えた。状助の意見にもっともだと考えた刃牙も、超竜神の戦いぶりに感化され、さらに敵数を減らすことにしたようであった。

 

 

…… …… ……

 

 

 もうすぐ太陽が完全に沈み、空が全て闇に支配されるころ。ネギと超はロボを倒しつつ、ビフォアが現れるのをひたすら待っていた。そして、その時間が間近となったので、超がそのことをネギへと切り出していた。

 

 

「……そろそろ時間ヨ、ビフォアが現れるはずネ」

 

「そうですね……。しかし、本当に兄さんが言うように上空に現れるんでしょうか……」

 

 

 ビフォアは強制認識魔法を使うために、必ず屋外で儀式を行なう。それは未来から持ち帰ったデータでわかっていたことだ。また、カギが原作知識を当てはめ、必ずビフォアは上空の飛行船の上に現れると予見していたのだ。ただ、ネギはそのことに多少疑念を持っていたようで、若干不安の色を隠せずにいた。ビフォアを倒すのに、ビフォアが見つからなければ意味がないからである。

 

 

「そこはまかせるネ。偵察が上空を監視しているからネ」

 

「なら大丈夫ですね」

 

 

 だが、それには及ばないと、超は自身ありげに語った。なぜなら念には念を入れて、麻帆良全体を監視しているからだ。それはカギが話した上空の飛行船とて例外ではない。だから大丈夫だとネギへ話したのだ。ネギも超の言葉に納得し、安心した様子を見せたようだ。

 

 

「ム、上空の偵察からビフォアの位置を確認したネ。これから空へ向かうヨ! ネギ坊主は大丈夫カナ?」

 

「はい! 大丈夫です!」

 

 

 そして超は、自動で飛行する小型カメラの偵察から、ビフォアの位置を確認した。そこはやはりはるか上空に浮かぶ、飛行船の真上だったのである。これからその場へ向かいビフォアを倒す、その準備はいいか。超はそれをネギへと伝えると、ネギも問題ないと、強気で返事をしたのだ。

 

 

「それより、超さんはどうやって空へ……?」

 

「フフ、飛行用の装備は持てきてあるヨ。それを使えば簡単ネ!」

 

「そうだったんですか」

 

 

 しかし、ネギはそこで疑問に思ったことがあった。自分は魔法で飛行することが可能だが、超はどうやって空を飛ぶのか、と言うことだ。そのことを超へと質問すると、超はフフンと鼻を鳴らしながら、飛行用の武装をネギへと見せたのだ。それは半重力装置のようなもので、重力をコントロールすることで飛行するユニットだった。ネギは超の言葉で疑問が晴れたようで、一人納得していた。

 

 

「サア行くヨ! ネギ坊主!」

 

「はい! 行きましょう! 超さん!」

 

 

 二人はビフォア打倒のため、上空を飛行する飛行船目掛け飛び上がった。ネギは杖で飛行し加速の呪文を唱え速度を上昇させ、超は飛行ユニットにより、安定した速度でネギと並んで飛行していた。

 

 

「見えたネ! あの飛行船の上にビフォアが居るはずヨ!」

 

「あそこに……!」

 

 

 ロケットのごとく高速で上昇する二人は、ついにビフォアの飛行船を目視でとらえた。ついに、ついにあのビフォアとの戦いとなる。このために待っていた。二人の緊張は飛行船が近づくにつれて、少しずつ高まっていくのを感じていた。しかし、飛行船に近づく二人を妨害せんと、何かの影が星が見え始めた空を覆いつくし始めていた。

 

 

 

「! 頭上に敵影ネ!」

 

「まだこれほどの戦力を……!?」

 

 

 それははやりロボ軍団。なんということだろうか、ロボ軍団は別の場所からこの場へと急速に集まってきていたものだった。そのための飛行パーツを装備したロボ軍団が、その行く手を遮ったのである。しかも、数が非常に多く、二人で相手をするには厳しい状況だった。二人は敵の数に圧倒されつつも、そのままの速度で突っ切っていった。

 

 

「くっ! 簡単には通してくれそうになさそうですね……」

 

「これは多いネ……!」

 

 

 だが、敵もただ二人が通過するのを見ているだけではないだろう。二人を目標として捉えたロボ軍団は、次々に迫ってきたのだ。まるで獲物に群がる蟻のごとく、すさまじい数のロボが、二人へと押し寄せてきていた。やはり簡単には通れない。ネギはロボ軍団の数に戦慄しつつも、ロボを迎え撃つことにしたようだ。超も同じく数の多さに驚きながらも、ここで立ち止まるわけには行かないと考えていた。

 

 

「こんなところで止まってる場合じゃ……!」

 

「邪魔ヨ!」

 

 

 二人は目標の飛行船へ近づくべく加速しながらも、ロボの追撃を防いでいた。空が真っ黒に覆われるほどの数のロボを、撃破していったのである。それでもこうしている内に、ビフォアが儀式を行なっているだろう。二人は焦りを感じ始めていた。

 

 カギは二人に、敵が待ち伏せしていることを話していなかった。またしてもうっかり忘れていたのだ。原作でも同じようにロボの大群が空中で待ち構えてた。だから原作と同じように、大量のロボ軍団が待ち構えている可能性があることを、カギは知っていた。知っていたのだが、ネギたちに話すのを忘れてしまっていた。むしろ、話したつもりでいたのである。ここにきて、カギの詰めの甘さが浮き彫りになった結果だった。

 

 ただ、超もこの状況を予想していた。儀式中はビフォアが動けないだろうと考えていたからだ。そこで邪魔をされないように、兵隊を集めるのは当然だ。ゆえにロボをこの場所で護衛させるのは必然だと、超も思っていたのである。しかし、予想していたよりもロボの数がかなり多かった。工場が破壊され生産が止まったというのに、未だにこれほどの戦力を持っているというのは、超の計算外だったのである。

 

 

「うわっ!?」

 

「ネギ坊主!?」

 

 

 ロボ軍団は数の暴力で二人を攻める。二人はその数にたじたじだが、それでも飛行船に近づこうと必死にあがいていた。だが、大量のロボ軍団を空中と言う三次元で相手するのには限界があった。ネギは目の前のロボに気を取られ、死角に居たロボの攻撃に気づかなかったのだ。

 

 それが命中する前に、なんとか気がついたネギだったが、それを無理して回避した結果、杖から落ちかける状況になってしまったのである。なんとネギは右腕で杖をつかんだ状態で、杖から落ちかけてしまっていたのだ。ネギは杖がなければ飛ぶことができない。杖から落ちれば地表へまっさかさまだ。超もネギの危機に声を上げて助けようとするが、ロボの妨害によりそれも困難となっていたのだった。

 

 


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