理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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八十六話 ビフォアの部下

 麻帆良学園結界が落とされた――――――

麻帆良の魔法使いや超一派に衝撃が走った。結界が落とされたとなれば、再び復旧させねればならない。だが、ビフォアがそれを簡単に許すはずも無く、サイバー攻撃は未だに続いていたのだ。さらに悪いし知らせが入った。麻帆良湖の中心から巨大な物体が姿を現したということだ。それは麻帆良の地下に封印されていた、鬼神ではないかと言う話だったのだが……。

 

 

「で、でかっ!!!」

 

「ガン○ム!? ねぇ、あれってガ○ダム!?」

 

 

 巨大ロボを見た美砂たちは、驚きのあまり立ち尽くしていた。また、桜子は巨大ロボをガン○ムではないかと、しきりに叫んでいたのであった。

 

 

「い、イデ……?!」

 

「じ、○ムだろ……!?」

 

「何かちげぇぞ!?」

 

 

 しかし転生者らしきものの反応はまた少し違っていた。その巨大ロボの外見から、ガン○ムではなく別のものだと騒いでいたのだ。さらに、こんな外見の巨大ロボなど登場しないはずだと、頭を悩ませるものも居たのである。

 

 

「やべぇぞ!?」

 

「攻撃が来るぞー!!」

 

 

 そして巨大ロボは参加者が集まる場所へと、攻撃を開始しようとしていた。その前兆として指の先に搭載された砲門にエネルギーが充填され始めていたのだ。それを見た参加者たちは、攻撃が来ることを予見して慌てながら叫んでいたのである。

 

 

「とっ、特太脱げビーム!?」

 

 

 そこで巨大ロボから放たれたビーム砲撃が、参加者たちを襲った。すさまじいエネルギー。なんとう大きさか。だがそれでも人を傷つけることがないのは、一つの救いだろう。そんな強力な脱げビームを目の当たりにした美砂は、思わず声を出して叫んでいた。光の柱が一直線に地上へ降り注ぐ光景が、あまりにも壮絶だったからである。しかし、その光の柱は突如発生したまばゆい光と衝突し、途切れたのだ。

 

 

「”黄金衝撃(ゴールデンスパーク)”!!」

 

 

 雷と思われるほどの轟音と光は、その脱げビームをはじき返し相殺したのだ。あの巨大な砲撃を防ぎきり、相殺するほどの雷。なんという衝撃だろうか。その時発生した強い光に、誰もが目を覆い直視することが出来なかった。また、そのおかげで誰もが脱がされずにすんだのである。

 

 

「防いだ!? 誰が!?」

 

 

 そこでようやく光が治まると、誰もが何が起こったかを確認するため、周りを見渡していた。一体誰があの巨大な脱げビームを防いだのか、知りたかったからだ。するとそこへ、一人の男が現れた。それはあの男だった。金髪のオカッパ頭、黒く尖ったサングラス。そう、あのバーサーカーだったのだ。参加者に背を見せるように堂々と巨大ロボの目の前に、自慢の鉞を肩に担ぎ仁王立ちしていたのだ。

 

 

「面白れぇことになってんじゃねぇか」

 

 

 ドンと構え、愉しそうに表情を緩ませるバーサーカー。本当に子供のように無邪気に、しかし男らしく笑っていたのだ。サングラス越しでわからないが、きっと目も笑っていることだろう。自慢の肉体をうならせて、肩を鉞で何度も叩きつつ、この状況を楽しんでいたのだ。

 

 

「あ、あいつは!?」

 

「まさか……」

 

「知っているのか……?」

 

 

 そのバーサーカーを見た転生者たちは、かなり驚いた様子を見せていた。何せあのバーサーカー、なんだかんだで人気だからだ。誰もが没となったことを惜しむほどの男、それがバーサーカーなのである。また、それを知らぬ転生者が、知る転生者へと誰なのかを聞いていた。

 

 

「しっかし、中々ゴールデンな相手じゃんか! シビれるぜぇ、やっぱこういうのはいいぜぇ! まっ、俺のクマ公の方がゴールデンだけどな!」

 

 

 バーサーカーは目の前のロボに、かなり興奮した様子を見せていた。ロボはやっぱ男の子の憧れ、こうでなくては面白くない、そう思いながらニヤリと笑っていた。まるで新幹線に憧れる小学生のように、その敵を眺めていたのだ。

 

 だが、それでも自分が操っていたクマの方が上だと豪語した。変形するクマ、最高の相棒の方がゴールデンだと自負していたのである。いや、それは本当にクマなのか、怪しいところでもあるが。

 

 

「んじゃ、一発デケェの行くぜ!! オラァ!!」

 

 

 そこでバーサーカーは姿勢を低くしたのち、地面を蹴り上げ高く飛び上がった。その強靭な肉体が飛び上がったことによる衝撃により、地面にはくぼみができていた。さらに、飛び上がった瞬間、すでに目の前の巨大ロボの頭上へと移動していたのだった。

 

 

「”黄金喰い(ゴールデンイーター)”!!!」

 

 

 バーサーカーは自慢の宝具である黄金喰い(ゴールデン・イーター)を振り下ろし、落下とともに巨大ロボへとたたきつけた。爆発的な雷の力とバーサーカーの強靭な肉体により、巨大ロボはいとも容易く真っ二つに両断され、爆発四散したのだ。そのあっけなさに、バーサーカーも少し拍子抜けした表情をしながらも、再び大地に着地したていたのだった。そして、さらなる敵を倒すべく、バーサーカーは敵陣へと突っ込んで行ったのである。

 

 

「なんということでしょうか! 巨大な未来のロボの攻撃を防ぎ、平然と突貫する一人のヤンキー! そのヤンキーの一撃で巨大ロボは大破!! 一体彼は何者なのでしょうか!!?」

 

 

 バーサーカーの戦闘力を見たものたちは、誰もが驚きを隠せずに居た。何せ巨大なロボをたった一撃で破壊したのだ。驚くのも無理はない。また、和美もその光景を驚きつつも実況し、バーサーカーを超強いヤンキーだと思っていたのだった。

 

 

「バーサーカーさんも動き出したみたいですね……」

 

「いつ見てもとんでもない攻撃よね」

 

 

 刹那もそのアナウンスを聞いて、バーサーカーが暴れ始めたことを知ったようだ。その隣のアスナはバーサーカーの戦闘力には慣れているのか、驚きはしなかったようだ。だが、それでもでたらめな強さだと、常々思っていたのである。

 

 

「しかし巨大ロボは1体だけではありません!! 反対側の岸からも3体の巨大ロボが上陸した模様!!」

 

 

 それでも敵の数の方が上だ。巨大ロボは1体だけではないのである。さらに3体もの巨大ロボが別の場所から上陸してきたのだ。そのことを和美が実況すると、その場へとやってくるものがいたのだ。

 

 

「へっ! だったらぶっ潰すまでだぁ!!」

 

 

 それはやはりカズヤだった。人型のロボや戦車タイプの中型のロボを相手にするのは飽きたのか、巨大ロボを相手取ろうとやってきたのである。拳を下げ、姿勢を低くして攻撃態勢を取るカズヤは、巨大ロボの直線状で構えていた。

 

 

「”抹殺のぉ、ラストブリットオオオォォォオオォォァァァラァッ”!!!」

 

 

 カズヤの叫びに呼応するかのように、最後に残っていた背中の紅き羽根が砕け散る。その砕けた羽根から膨大な粒子が噴出し、カズヤが勢いよく飛び上がり弧を描きながら巨大ロボへと突貫していった。

 

 巨大ロボもそれを受け止めるように、カズヤの拳を巨大な拳で受け止めたのだ。だが、その直後巨大ロボのその腕が、内側から風船のごとく膨れ上がり、爆散したのである。さらにその衝撃により、ロボ自体が完全に破壊され、砕け散ったのだ。

 

 

「ああそうだ! 切り刻むまでだ!!」

 

 

 また、そこに法もやって来ていた。法は自らのアルターである絶影を操り、巨大ロボと対峙していたのだ。法もカズヤの攻撃を見て、こちらも攻撃しようと魂の叫びをあげていた。

 

 

「”絶影ィィッ”!!」

 

 

 法は絶影の柔らかなる拳、列迅を垂直に伸ばし、それを巨大ロボへと横へと振り下ろす。すると巨大ロボの両足が切断され、巨大ロボは地面に倒れ付したのだ。さらに法は追撃を加えるべく、その列迅を天へと掲げ、真っ直ぐに振り下ろした。それがトドメといわんばかりに、巨大ロボはその一撃で3等分に分割され、大爆発を起こして吹き飛んでいった。

 

 

「カズヤのやつ、おっぱじめやがったな! だったらこっちも必死こかねぇとなー!」

 

 

 そこでカズヤらしき人物が巨大ロボを破壊したのを眺めながら、そう言葉にする一人の男がいた。それこそカズヤのルームメイトの男だった。彼はカズヤとは長い付き合いであり、ある程度能力(とくてん)のことも知っていた。だから暴れるカズヤを見て、こっちもロボを倒しまくって点数を稼ぐしかないと張り切っていたのだ。

 

 

「僕も出るとしよう、O.S(オーバーソウル)リョウメンスクナ」

 

 

 覇王も建物の屋根の上で、その戦いを眺めていた。そして頃合だと考え、攻撃へと移ったのだ。そこで覇王はリョウメンスクナをO.S(オーバーソウル)し、巨大ロボにあてがわせたのだ。今回はリョウメンスクナを剣である神殺しとしてではなく、本来の姿のままO.S(オーバーソウル)させていた。特に大きな意味はないが、巨大なロボを相手にするならば、剣にする必要が無かったのである。

 

 また、リョウメンスクナのみを使いS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を使わないのは、保険として手元においておきたかったからだ。この先何が起こるかわからないので、S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)は自分の近くに配置したかったのである。何せ強敵である坂越上人が居るのだ。覇王とて警戒しないワケにはいかなかったのだ。

 

 

「状助たちが言うに鬼神を使うらしいが……。アレはただの機械人形だ」

 

 

 覇王は相手にする巨大ロボを見て、何か引っかかりを覚えていた。状助が言うに、リョウメンスクナほどではないが鬼神を用いて攻撃してくるらしいのだ。だが、今相手にして居るのは単なる巨大なロボであり、霊格が存在する鬼神ではなかったのである。その鬼神とやらをどのタイミングで戦闘に投入してくるか、覇王はそこを気にしていた。

 

 

「しかし、何であろうと滅ぼすだけだ。存分に破壊しろ、リョウメンスクナ」

 

 

 しかし、そんなことは今は捨て置き、目の前の敵だけを倒すことに覇王は専念した。リョウメンスクナを操り、その四つある腕を使い巨大ロボを殴り飛ばし破壊したのだ。さらに眼下に広がる無数の小型ロボを、リョウメンスクナに踏み潰させて破壊して回っていた。その光景を見たものたちは、一体何が起こって居るかわからず、混乱していたのだった。

 

 

「……状助、任せたぞ……」

 

 

 そこで覇王は状助が次の作戦に関与していることを思い出し、その身を案じていた。また、状助の作戦はかなり重要であり、その成功を祈っていたのだ。そう考えながらも、覇王は淡々とロボ軍団を蹴散らして行ったのである。

 

 

…… …… ……

 

 

 同じころ、魔法先生たちも動き出していた。巨大ロボは数を増し、どんどん増えてきていたのだ。それを対処するべく、攻撃魔法を打ち込む魔法先生の姿があった。そこにアルスの姿があり、魔法先生に混じって錬も対処していたのだった。

 

 

「こいつらは鬼神ではないな……。しかしそれなら対処しやすい! ”雷の斧”!!」

 

 

 アルスは無詠唱で魔法を操り、巨大ロボへと雷の斧を放つ。ロボはそれを受け雷の力で破壊され、爆発して倒されていた。さらにそこへ錬が飛び出し、別の巨大ロボへと攻撃を仕掛けた。

 

 

「ただの木偶相手はつまらんが……。まあいい! ”雷法”!!」

 

 

 錬もまた雷の技を使い、通常のロボや巨大ロボを相手取っていた。ロボは所詮機械人形。強力な電気を浴びせればたちまち破壊されてしまう。それをわかっているのかは定かではないが、錬はロボ軍団へ雷の技をお見舞いしていたのである。

 

 また、他の魔法先生たちもロボの処理に追われていたが、そこで突如異変が起きたのだ。それに気づいたアルスは、その場所へ魔法を放ったのである。

 

 

「!? 魔法の射手”雷の1矢”!」

 

 

 その場所へ魔法の射手が命中すると、円形の黒い渦が発生したのだ。それはまさしく強制時間転移であり、その範囲内に入ってしまうと3時間先に飛ばされてしまうものだった。そう、これは強制時間跳躍弾が着弾した時に発生する現象なのである。

 

 

「ついに撃ってきたか! 狙撃が来るぞ! みんな気をつけろ!!」

 

 

 アルスは他の魔法先生へ、今の攻撃を気をつけるように叫んでいた。さらにタカミチも同じく、その弾丸を無音拳で防いでいた。だが、魔法先生は基本的に障壁に頼っており、その障壁ごと時間転移されてしまうのだ。また、高速で飛び交う小さい弾丸を目視してよけることなど、早々できるはずもない。この攻撃により、魔法使いたちが次々に強制的に時間跳躍されてしまったのだった。

 

 

「ちぃ! やってくれる……!」

 

 

 アルスもこの状況に悪態をつくしかなかった。アルスやタカミチレベルの魔法使いならば、ある程度離れた場所でその弾丸を打ち落とすことが出来る。しかし、普通の魔法使いにそんなことが出来るはずもない。それでもアルスは被害を最小限に食い止めようと、危険予測による魔法での防御を試みていた。だが、アルスの努力もむなしく魔法使いたちは次々に弾丸の餌食となり、消え去っていくのだった。

 

 

「まずい! とりあえず全員退避し、物陰へ隠れるんだ……!」

 

 

 さらに言えば、その弾丸はただまっすぐ飛んでいるだけではなかった。それを発見したのは肉まんを好物とする小太りな魔法先生、弐集院だった。弐集院は壁を背に弾丸を防ごうと考えた。斜線上に壁があるのなら、弾丸を防げると考えたからだ。

 

 

「ウワッ!?」

 

 

 にも拘らず、同じく壁に隠れた同僚が、その弾丸を受けたのだ。狙撃の斜線から建物に隠れているというのに、どうしてそんなことが出来たのだろうか。弐集院は頭を悩ませていた。その時、さらにスナイパーからの攻撃が彼らを襲った。

 

 

「っ!」

 

「へぶっ!?」

 

 

 また、そこにたまたま居合わせた美空も狙われ、魔法使いの主であるココネに庇われ助かったのだった。ココネは黒い渦に乗り込まれながらも、美空が無事だったことに安堵していた。美空はそんなココネが消えていくのを見て居ることしか出来なかった。

 

 

「ココネー!?」

 

「何……!? この現象は一体……!?」

 

 

 タカミチやアルスは上空で弾丸の処理に追われていた。なぜかは知らないが、タカミチとアルスを直接狙った弾丸が飛んでこなかった。アルスとタカミチはそのことを不審に感じながらも、ならば積極的に弾丸を叩き落そうと考え、飛び交う弾を魔法で弾き飛ばしていたのだ。

 

 そして、弐集院はこれは一体どういうことかと見てみれば、恐ろしいことに弾丸が空中で、突如として射線を変更しているのを発見したのである。

 

 

「空中で弾の軌道が変化しているというのか……!!?」

 

 

 それは跳弾と呼ばれる現象だが、何もない場所で弾丸が跳ね返るはずがない。なんということか、それでもそれは現実に起こっており、訳もわからないまま弐集院も、その弾丸を受けて消えてしまったのだった。

 

 

「この攻撃は明らかに転生者だ……。だがどんな能力でこのようなことを……!」

 

 

 また、アルスもその現象に気がついたようだった。この狙撃の攻撃は、明らかに転生者の攻撃だと、アルスは予想をつけていた。転生者の攻撃とわかったのはいいが、どういう理屈で空中で弾丸の向きを変えているのかわからなかったのだ。

 

 タカミチも同じく、その現象に気がついていた。しかし、気がついただけではこの現象を止めることは出来ない。だからこそ、もはや防御に回るしかなく、完全に後手となってしまっていたのだ。

 

 

…… …… ……

 

 

 だが、敵はスナイパーだけにはとどまらない。この危険な状況の中、さらなる敵が現れた。それは錬の目の前に堂々と姿をさらし、攻撃してきたのである。

 

 

「もらったぜ!」

 

「何……!?」

 

 

 その敵は握るマイクを振り下ろし、錬のO.S(オーバーソウル)にぶつけていた。だが、ぶつかっているのはマイクではなかった。それはまるでビームサーベルのようなO.S(オーバーソウル)だった。すべての巫力をその部分に、一転集中しているかのような、鋭いビームの剣だった。それは錬がよく知るO.S(オーバーソウル)。そして、その使い手も錬がよく知る人物だった。

 

 

「キサマはあの大会の時の……!!」

 

「おうよ。そのとおりだ……!」

 

 

 その人物とは、まほら武道会で司会をしていたあの男だった。黒い髪を逆立て、つりあがったサングラスをした顔の細い男だった。ああ、そうだ。確かこの姿をした男は、確かにそういう能力だった。

 

 

「……やはりキサマも転生者だったか……。そして、その能力(オーバーソウル)を見るにキサマの特典は……」

 

「お前の考えるとおりだろうぜ? おっと、自己紹介がまだだったな。オレの名はムラジだ」

 

 

 このムラジと名乗った男。彼の特典は明らかにシャーマンキングのラジムの能力だった。ならばこのO.S(オーバーソウル)は、プラチナムソードということになるだろう。甲縛式O.S(オーバーソウル)すらも打ち砕く、あの絶刀だ。錬はこのムラジが司会をしていた時から、見た目から判断してそうではないかと考えていたのだ。そして、その男が今、錬と対峙していたのである。

 

 

「オレは素直にうれしいと感じている。何せお前のようなシャーマンと、こうして戦えるのだからな!」

 

「それは俺の台詞だぞ! キサマがどれほどのものかは知らんが、シャーマンと戦えるならばこれほどの楽しみは存在しない!!」

 

 

 このムラジもまた、シャーマンとの戦いに飢えていた。シャーマンとしての能力を鍛え、シャーマンとして戦える相手がほしいとムラジもまた、考えていたのだ。麻帆良へいけば転生者が多くいるだろう。そして、シャーマンの能力を持つ転生者もいるはずだと、ムラジは考えた。そこでシャーマンを求め麻帆良へやってきたところへ、ビフォアに誘われたのである。

 

 ムラジはビフォアがよからぬことを企んでいることを知りつつも、仲間となったのはシャーマンとして戦いたかったからだ。そして、その考えは間違えではなかった。まほら武道会で司会をしている時、目の前でシャーマンファイトが繰り広げられたではないか。司会でなければその場で戦いたかったと、犬が餌を目の前にお預けを受けたような、そんな心境だった。だからこそ、今この場で、この錬と戦ってみたかったのだ。

 

 ところでビフォアの仲間にもう一人、シャーマンであるマルクがいるのだが、彼ははっきり言って膨大な巫力任せの戦闘しか出来ない男だった。そんな相手と戦っても何の面白みもないと、ムラジは思っていたのである。

 

 

「受けてみろ! 俺のO.S(オーバーソウル)! 武神魚翅を!!」

 

「その程度でこのプラチナムソードを受け止められると思うなよ!?」

 

 

 両者のO.S(オーバーソウル)が衝突し、火花を散らす。強力な強度を持つ甲縛式O.S(オーバーソウル)である武神魚翅と、巫力を一転に集結したプラチナムソード。どちらもほぼ互角かに見えたが、プラチナムソードの方が若干強力だったのか、錬のO.S(オーバーソウル)が砕かれたのである。

 

 

「……クッ! 流石といったところか……! だが、その程度で終わる俺ではないぞ!!」

 

「話になんねェな。力任せじゃ俺には勝てねェ」

 

 

 錬は再びO.S(オーバーソウル)を構築すると、即座にムラジへ反撃を行った。だが、やはりムラジのO.S(オーバーソウル)は頑強であり、甲縛式であるはずの錬のO.S(オーバーソウル)すらもいともたやすく受け止めたのだ。さらにムラジのすさまじい体術により、たった一本の剣でしかないプラチナムソードで、錬を圧倒していたのだ。それでも錬は負けじとO.S(オーバーソウル)を打ち込み、隙間隙間に雷の技を使ってムラジと拮抗していた。

 

 

…… …… ……

 

 

 その戦場から遠く離れた場所。約3キロ先にある、建物の屋根の上。そこに一人の男が寝そべっていた。だが、ただ寝そべっているわけではない。ライフルを構え、狙撃の体制を行っていたのだ。

 

 

「……”筋肉”は信用出来ない。皮膚が”風”にさらされる時、筋肉はストレスを感じ、微妙な伸縮を繰り返す」

 

 

 その男は金髪のロングヘアーをした、スナイパーだった。男は静かに言葉を述べ、ライフルの引き金を引いていく。

 

 

「それは肉体ではコントロール出来ない動きだ」

 

 

 一定の間隔でライフルから発射される弾丸は、空中で向きを変えながらも、確実に狙った獲物をしとめていった。それは神がかった技術であり、このスナイパーの能力とも言えよう。

 

 

「ライフルは”骨”で支える……。骨は地面の確かさを感じ、銃は地面と一体化する。……それは信用できる”固定”だ」

 

 

 このスナイパーがいるからこそ、カギたちが不用意に動くことが出来ないでいた。そう、この転生者たるスナイパーの男こそが、最大の難敵とも呼べる存在だったのだ。

 

 そしてこの男の目的は、ロボを数多く倒せる存在を、除去することだった。ロボは工場で常に生産され続け、減ることはないとビフォアから言われている。

 

 だが、それでも転生者や魔法使いがフルに力を発揮すれば、枯渇もありえるというものだ。ならばロボを大量に破壊できる存在を、ある程度もぎ取ってしまう必要があるだろう。その役目を与えられたのが、このスナイパーの男だったのだ。

 

 

「あの無詠唱の転生者、それに確か高畑といったか。あの二人はなかなかやる……」

 

 

 スナイパーの男は狙い打ったはずのアルスとタカミチに、その攻撃を防御されたことに驚いていた。しかし、それ以上に自分の狙撃を回避されたことに喜びを感じていたのだ。そうだ、そうでなければ面白くない。スナイパーの男は、今の高ぶる気持ちを表情に表し、唇を吊り上げながらスコープごしにそれを見ていたのだ。

 

 

「あの二人ともう少し遊んでいたかったが、生憎そうも言っていられないようだ……」

 

 

 だが、スナイパーの男は優先順位の高い獲物を相手しなければならない。はっきり言えばアルスもタカミチも強大だが、別に倒す必要はないのである。それはビフォアの能力が関係しているのだが、このスナイパーの男も詳しいことはわからないようだ。そして、ならば次の相手は誰だろうか。スナイパーの男はそちらへ向いて狙いを定め始めたのである。

 

 

「銀河来史渡。まずはこいつを消せと言っていたな……。そして現れた今こそチャンスというわけだ」

 

 

 スナイパーの男が狙ったのは、あのメトゥーナトだった。ビフォアが言った要注意人物にて最大優先目標。それこそがメトゥーナトとギガントだ。その二人さえ確実に消せれば、それでよいとスナイパーの男はビフォアに言われているのである。だからまずはその片方のメトゥーナトを未来へ消し去るべく、ライフルを構えたのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

 魔法先生たちが次々にスナイパーの餌食になる中、アスナと刹那はロボの処理に追われていた。ロボの数が多すぎるゆえに、なかなか別の場所へ移動することが出来ないでいたのだ。また、3-Aのクラスメイトたちも順調にロボを倒していたようだった。

 

 

「”敵を撃て”……!」

 

「ブッつぶれろ!」

 

 

 三郎や刃牙も、ロボ軍団へと攻撃していた。三郎は拳銃を握り、なかなかの立ち回りでロボを相手にしていたのだ。刃牙もバズーカを片手に、ロボが密集した場所へ攻撃を撃ち込んでいた。

 

 

「す、()()()()()……さん……!?」

 

「ムッ? そう言うのなら()()()()……?」

 

 

 三郎が滑り込むように刃牙の横へ来ると、その刃牙の姿を見て大層驚いた。何せジョジョ五部で登場したボスの親衛隊、スクアーロにそっくりだったからだ。そこで三郎がその名をもらすと、刃牙も反応してそれを知るなら三郎が転生者なのではないかと思ったようだ。

 

 

「こんな状況じゃあまり話せねーが、俺は鮫島刃牙っていうもんだ」

 

「どうも、川丘三郎です」

 

 

 今、この場は戦場。だから刃牙は簡素に自己紹介を述べていた。また、三郎も同じく名乗る程度ですませたのだ。何せロボ軍団はいまだに増え続けており、数が減る気配が無いからだ。しかし、刃牙は三郎の名に、多少引っかかりを感じたようだ。

 

 

「んん? お前の名前、どっかで……」

 

「え? 俺はアナタのことは知らないんですけど……」

 

 

 刃牙は三郎の名をどこかで聞いた気がしたようで、それを思い出そうとしていた。ただ、思い出している間にも、ロボを殲滅せんと攻撃の手を緩めることはしない。三郎も刃牙とは初めて会うはずだと考えながらも、ロボ軍団へ銃口を向けて魔力の光を確実に命中させていったのだ。

 

 

「……まあいいか、後で思い出せばいい! 今はこいつらを片付けるのが先決だ!!」

 

「ええ、そうですね。倒しても倒してもきりがありませんからね……!」

 

 

 しかし、多くの敵が目の前に居る状況で、考え事などしている暇などない。刃牙はとりあえず考えることを中断し、敵を倒すことに専念することにしたのだ。同じく三郎も刃牙の言葉を聞いて、そうするのが一番だと思い、さらに攻撃を激しくさせたのだった。

 

 

「とりゃっ! 魔法の射手”連弾・炎の15矢”!!」

 

「ゆーなすごい……」

 

「でもゆーなばかり倒してると、こっちの点数が減っちゃうね……」

 

 

 裕奈も確実に魔法の射手でロボ軍団を倒していた。この裕奈、とても優秀な魔法使いである。魔法の射手を当然のように無詠唱で放つ。加えてもともと持っていた高い運動神経やセンスも相まって、高い戦闘技術を持って居るのだ。さらに魔力強化により、その力は数倍に膨れ上がっているのである。

 

 近くで戦っていた亜子も、裕奈の攻撃や動きを驚きの眼で眺めていた。そんな裕奈の周りで戦っているアキラは、裕奈がガンガン敵を倒してしまうので、自分たちの分の敵まで倒されてるのではないかと考えたようだ。実際周りの敵を、裕奈が一人でかなり倒してしまっていたのだった。

 

 

「今のランキングの上位の人って誰だろう……。あれ? この名前って……」

 

「どうしたん?」

 

 

 アキラはふと、現在ランキングの上位の人は誰なのか、少しだけ気になった。もしかしたら刃牙が上位に入って居るかもしれないと、アキラは考えた。だからランキングを表示して見ることにしたのだ。このランキング表示も魔法のような感じで、空中に何も使わずに表示される仕組みのようだ。そこで上から順番に見ていくと、気になる名前がそこにあった。そのことを聞いた亜子が、どうしたのか覗いたのである。

 

 

「ちょっとゆーな! ゆーなのお母さんの名前がランキングに載ってるよ!?」

 

「え!? どー言ーこと!?」

 

 

 そこにはなんと裕奈の母、明石夕子の名があったのである。かなり高いランクにおり、すでに20位ほどにまで上り詰めていたのだった。それを聞いた裕奈も、そのランキングを見て驚き、自分の母は何をやっているんだと少し怒った表情を見せていた。

 

 

「あそこで戦っとるの、ゆーなのお母さんやない?」

 

「本当だ! ちょっと行ってくる!!」

 

「ゆーなのお母さん元気だね……」

 

 

 亜子がふと振り返って見ると、その先で裕奈の母が戦っていたのだった。それを亜子が指さして裕奈に教えると、裕奈はその場からそちらへと移動して行ったのだった。またアキラは、裕奈の母がこのイベントに参加するぐらい元気なんだとしみじみ思いながら、飛んで行く裕奈を眺めていた。

 

 

「ちょっとおかーさん! 何してんの!?」

 

「おっ、ゆーなじゃないか! 何って見ればわかるでしょう?」

 

 

 裕奈の母である夕子は両手に拳銃を構え、ロボ軍団を打ち抜いていた。その戦いぶりは誰もが賞賛するほどで、力強くもしなやかな動きで、ロボ軍団を翻弄していたのだ。そんな風に戦う母の下へ、裕奈が飛んできて文句を叫んだ。この戦いは一般人にはイベントの大会となっているが、魔法使いとしては麻帆良の防衛であり重要な任務なのである。そのため裕奈は夕子へ、どうしてイベントに参加して遊んでいるのかと怒っていたのだ。

 

 

「そーじゃないでしょ! こっちは必死に戦ってるし、おとーさんも頑張ってるってのに、おかーさんだけズルい!!」

 

「フフン! 私は今やイッパンジンだからねー」

 

 

 裕奈も父親も必死に麻帆良の防衛に勤め、働いている。そこで大会で遊んでいる夕子を、とてもずるいと裕奈は思ったのだ。まあ、実際は裕奈もこのイベントに普通に参加し、上位を狙って賞金がほしかった。そういう訳でこのイベントで遊んでいる母が、とてもうらやましかっただけなのだ。またこの夕子、実は10年前の任務を機に魔法使いを引退しており、今ではただの専業主婦。つまり一応一般人なのである。だからこうして遊んでいても、別に何の問題も無いということだった。

 

 

「ムムー! ……ならちゃんと賞金ゲットしてよね!」

 

「任せておきな! そっちも頑張りなよ!」

 

「りょーかい!」

 

 

 ならばせめて賞金ぐらい貰ってきてほしいと、裕奈は念を押していた。夕子はそれを裕奈に伝え、ならば賞金をしっかり貰っておくと宣言していたのだった。さらに裕奈へ、自分の任務を頑張るよう励ましの言葉を送っていた。それを聞いた裕奈は笑顔とともに、元気よく返事をして再び持ち場へと戻っていった。

 

 

「ウチもがんばらなアカンな! 前鬼! 後鬼!」

 

「完全に出遅れたアル……!」

 

「みんなすごいねー! よーし私もー!」

 

 

 また、木乃香もこの戦いにヒーローユニットとして参加していた。さらに激しくなってきた戦いを見て、もっと頑張らないといけないと一層力を入れ、白烏をO.S(オーバーソウル)しながらも前鬼と後鬼を操っていた。ただ、前鬼や後鬼は一般人には見えないので、そういった人たちには突然ロボがぶっ壊れたようにしか見えないホラーな現象となっていたが。

 

 古菲も乗り遅れてしまったようだが、同じようにロボ軍団を拳法で撃退していた。しかし乗り遅れてしまったことを、少し嘆いていたのである。そうやってヒーローユニットとして戦う二人の横で、ならば自分もと杖を振るうまき絵の姿があったのだ。

 

 

「ふむ、こやつらゴーレムとあまり差が無いようだ」

 

 

 同じくマタムネも、この戦いに身を投じていた。そして世界樹の魔力で動くロボを見て、まるでゴーレムではないかと考えていたのである。しかし、ただ考えているだけではなく、その手に持ったキセルを使い、ロボへと攻撃していたのだ。

 

 

「なかなか硬い……。ならば脆い部分を叩くとしよう」

 

 

 ロボにはマタムネの存在を感知することが出来ない。加えてロボのビームや物理攻撃もマタムネには通用しない。ゆえにマタムネはロボの行動のすべてを気にすることなく、ロボへと攻撃を仕掛けることが出来る。ただ、マタムネの攻撃力ではロボを一撃で粉砕することは出来ない。ならば足の関節などを狙い行動不能にすればよいと、マタムネはそこを狙って攻撃したのだ。

 

 また、そうやって攻撃して倒れ伏せるロボに、一般人たちは驚きを隠せなかった。何せマタムネは霊でありO.S(オーバーソウル)。前鬼や後鬼同様、ロボは無論のことシャーマンやスタンド使い、はたまた魔法使いでなければ見ることが出来ない存在なのだ。そんな見えないマタムネがロボを攻撃して破壊すれば、ロボが勝手にぶっ壊れたようにしか見えないのである。まあ、そんなぶっ壊れて倒れたロボに魔力の光を命中させて点数を稼ぐ一般人もいるのだが、それもマタムネの計算のうちである。

 

 

「どういう訳かこんな魔法が使えるが……。今はありがたい! ”ライデイン”!!」

 

「あいつやるなー」

 

 

 さらにそこでドラクエの魔法を使う転生者も存在した。ライデインを使うドラクエ3の勇者のような姿の青年だ。この青年、実は過去にてエヴァンジェリンの偽者を演じ、エヴァンジェリン本人によって前世の記憶を消されたものだ。前世の記憶をなくしてから、なぜか不思議な魔法が使えることに、多少疑問を感じていた。だが、こういう時にそんな魔法が使えるのは、むしろ好都合として自ら選んだはずの能力を振るっていたのだった。

 

 

「俺も使えるぞ! ”マヒャド”!」

 

「ならば俺もだ! ”ブリザガ”!!」

 

 

 また、ドラクエの魔法が使える転生者は先ほどの彼だけではなかった。ドラクエの魔法はやはりとても有名で、選ぶ転生者が多かったのである。シングルアクションのみで操れる魔法は、ネギまの世界では有利だからだ。その横でファイナルファンタジーの魔法を選んだ転生者も、氷系の呪文を撃ち放っていた。

 

 

 そんな転生者たちが大暴れしてロボ軍団を抑えている中、麻帆良の魔法使いたちも動き出していた。だが、そんなところにスナイパーの狙撃が始まったのである。

 

 

「むっ……!? 魔法先生たちが例の弾で狙われているみたいです!」

 

「あの弾は本当にやっかいね……」

 

 

 それを感知した刹那は、アスナへとそのことを叫んでいた。アスナもあの攻撃は非常に厄介だと、腕を組んで難しい表情をしていたのだった。

 

 

「どうします?」

 

「うーん。あっ、あれは高畑先生……!」

 

 

 ならば次の行動をどうするか、刹那はアスナへと聞いてみたのだ。刹那からそうふられたので、アスナも頭を悩ませていたのだった。そんな時、ふと遠くを見るとタカミチがスナイパーの攻撃を防いでいたのだった。

 

 

「とりあえず高畑先生と合流した方がいいかもしれないわね」

 

「そうですね……」

 

 

 ならばタカミチと合流したほうがよいかもしれないと、アスナは考えたのだ。タカミチはこの学園の中でもトップクラスの実力者だ。一時的でも良いので、行動を共にした方がよいと思ったのである。刹那も刹那の言葉に賛同し、二人でタカミチの下へと移動して言ったのだった。

 

 

「うおっ!? なんだこれは!!?」

 

「な、何かヤバイぞ!!」

 

 

 さらにロボ軍団もスナイパーが使う弾である強制時間跳躍弾を用いた武装を使い始めた。それを見た参加者は一体何が起こっているのかわからず、慌てふためいていたのだった。

 

 

「あれは強制時間跳躍弾とか言うやつじゃねーか!?」

 

「そろそろ来ると思ってたぜー!」

 

 

 だが、原作知識のある転生者たちは、あらかじめこの攻撃を知っていたので、むしろようやく使ってきたと思っていたのだ。そして、あたらなければどうということは無いと、適当な建造物などを盾にしつつ、ロボ軍団を迎え撃っていた。

 

 

「あれってまさかよおー!?」

 

「知っているんです……?」

 

 

 また、その光景を目の当たりにした刃牙も、敵が使用する弾のことを思い出していた。その思い出して居る時にもれた声に、近くに居た三郎が反応を見せたのだ。

 

 

「ああ、確か強制時間跳躍弾とか言う特殊な弾だ。あれにあたっちまうと3時間先に飛ばされちまうのさ」

 

「死ぬ訳ではないと……?」

 

「外傷もねぇし今この場から消えちまうだけさ……」

 

「そうですか……」

 

 

 三郎は原作知識が無いので、あの弾が着弾した時に起こる現象がわからなかった。だからそれを知っていそうな刃牙へ、質問をしてみたのだ。刃牙は当然知っていたので、そのことを三郎へと特に危険な攻撃ではないと、安心させるように教えていた。それを聞いた三郎は、それなら大丈夫かと思い、ほっとした様子を見せたのだった。

 

 

「あっ! 亜子さん……! まずい!!」

 

「お、おい!」

 

 

 しかし、そこで三郎はロボが攻撃しそうな状態を目撃したのだ。さらになんと、その先には亜子やその友人たちがおり、これはいけないととっさに身を投げたのだ。そんな三郎を見ていた刃牙は、思わず声を上げて止めようとしたのだが、すでに遅かったのである。

 

 

「クッ!」

 

「さ、三郎さん!?」

 

 

 そしてロボが手に持ったガトリングを使い攻撃を始め、多くの参加者たちが黒い渦に巻き込まれていった。亜子もその弾の餌食になりかけたのだが、そこへ三郎が走ってきて、弾を受けて亜子を守ったのだ。だが、そのせいで三郎も黒い渦に飲み込まれ、そのまま消えてしまったのである。

 

 

「き、消えてしもーた……!?」

 

「一体どうなってるの!?」

 

「あの野郎……、俺の話聞いといてそうするか!? いや、俺もやったかもしれねぇから言えねぇか……」

 

 

 三郎がとっさに壁となったことで、亜子は助かった。しかし、三郎は目の前で消えてしまったのだ。そのことで亜子は動揺と焦りを見せていた。また、その横にいたアキラも、一体どうして消えたのか理解出来ずにいたのである。そこへ刃牙が駆けつけ、消えた三郎を馬鹿なことをしやがって、と思っていた。

 

 それはあの弾が特に人体的に害がないものだと教えたのにもかかわらず、自らを犠牲にするような行動を三郎が見せたからだ。ただ、刃牙もそうしたい気持ちがわかったので、自分もアキラが同じ状況ならば、そうしただろうと思い、三郎と同類だと思ったのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

 一方その頃、激しさを増す戦いを遠くから眺めるものがいた。それは銀の仮面を顔に装備し、黒いマントを身に着けたメトゥーナトだった。メトゥーナトは麻帆良の建物の屋根の上で、戦場を眺めていたのだ。

 

 

「ふむ……」

 

 

 また、メトゥーナトは周りの戦いぶりから、戦局を見極めていた。

 

 

「戦いは現在互角。だがロボの軍団が減ってはいないか……」

 

 

 また、メトゥーナトはこの戦いにて、ロボ軍団の数がさほど減っていないことに疑問を感じていた。あれだけのイベント参加者やヒーローユニットが動きロボを撃退しているのに、その数が一定に保たれていたからだ。だが、それ以上にメトゥーナトには気になることがひとつあった。

 

 

「それにアスナが言うに、わたしはここで敵の罠にはまるらしいが……」

 

 

 それは自分が敵の罠にはまり、無力化されるということだった。そのことをアスナから伝えられたメトゥーナトは、まさかとは思ったが真剣に話すアスナを見て、確かに可能性が無くは無いだろうと思ったのだ。そして、アスナから言われたとおりに動くよう指示されていたメトゥーナトは、とりあえず指示通りに動くことに下のである。

 

 

「むっ、来たか……!」

 

 

 そのことを考えている最中、ついに敵の攻撃が始まった。それは敵のスナイパーからの狙撃だった。いくらメトゥーナトとはいえ、強制時間跳躍弾を受ければ一環の終わりである。ただ、単純な狙撃程度ならば、メトゥーナトは回避が可能であり、余裕に対処できるはずなのだ。ならばなぜ、メトゥーナトが未来において、この攻撃で無効化されたかというと、そこには驚くべき理由があった。

 

 

「……! これは……!」

 

 

 それはやはり空中にて、突然軌道が変更する弾丸だった。メトゥーナトにも理解が出来ないほどの、不思議な現象。それにより回避行動を行っても、まるで生き物のように弾丸が追ってくるのだ。

 

 

「弾丸の軌道の変更……!? いや、何かに反射しているのか……!?」

 

 

 しかし、メトゥーナトはその弾丸の軌道変更を、反射だと考えた。見えない何かに弾丸が当たり、そこから軌道を変更しているのではないかということだった。だが、驚くべきことはこれだけではなかった。さらに恐ろしい攻撃が、メトゥーナトへと襲い掛かったのだ。

 

 

「ちぃ! 時間差を利用しての同時攻撃とは……! 確かにこのまま続けられれば、こちらが不利だな……!」

 

 

 なんということだろうか。弾丸はひとつではなかった。複数の弾丸がメトゥーナトの周囲を飛び交い、動きを抑えつつ襲ってきていたのだ。弾丸が空中で軌道を変更するならば、同時に複数の弾丸が襲ってくることも可能というものだった。そして、それに気を取られている隙に、視覚外からの攻撃をされればたちまち強制的に3時間後へ飛ばされてしまうだろう。

 

 それをなんとかメトゥーナトは、体をそらしたりしてギリギリのところで回避、あるいは剣圧を飛ばし防御していた。ただメトゥーナトも、この攻撃を長時間避けていれば、確実に追い詰められるだろうと、回避行動に専念しつつもそう考えていたのだった。

 

 

「……しかし、罠にかかったのはアチラの方だったな……!」

 

 

 しかし、そこに焦りはなかった。なぜならここでメトゥーナトが、弾丸を回避することこそ作戦通りだったからだ。何せメトゥーナトはビフォアを倒すための切り札。その切り札を失わないようにするために、メトゥーナトはあえて囮となってスナイパーを引き付ける役となったていたのだ。その作戦は、別の場所でもしっかりと動いていたのである。

 

 

…… …… ……

 

 

 メトゥーナトが回避行動を行っている場所から少し離れた路地にて、状助がバイクに座って待機していた。作戦の時間が迫ってきており、右腕の時計を眺めていたのだ。

 

 

「まったくよぉー。まさかあんなスタンドを特典で選ぶやつが居るとはなぁ……」

 

 

 なぜ状助がこの作戦に参加しているかというと、攻撃を行うスナイパーがスタンド使いだったからだ。そのスタンドは状助が言うように、普通に考えれば誰も選ばないようなスタンドだったのだ。

 

 

「しかも魔改造まで施されてるとはなぁ……。いや、うまい使い方を思いついたもんだぜ……」

 

 

 さらにそのスナイパーは、自らのスタンドを神の力で魔改造していた。ジョジョのスタンドを特典に選んだ状助は、その魔改造が脅威であることを察していたのだ。加えてそんなことを思いつくスナイパーを、敵ながらよく考えたと賞賛の言葉を述べていた。

 

 

「しかしよぉ~。俺、()()()()()バイクの免許ねぇのによぉ~……」

 

 

 また、この状助はまだ15歳、バイクの免許を取ることなどできはしないのだ。しかし、バイクで走らねばならないこの作戦に、ため息をついていた。まったく健全な学生たる自分が、作戦とはいえ法律違反をしなければならないとはと、考えていたのだった。

 

 そして”こっちでは”というのは、転生前はバイクの免許を持っていたということだ。20代で前世を終えて転生したが、状助はバイクをある程度乗り回していた。つまり、状助はバイクに乗った”経験”がある程度あるということなのだ。ただし、転生してから15年も乗ってなどいない。うまく出来るかは状助にもわからなかったのである。

 

 ……ちなみにバイクはスピードワゴン財団が用意したらしい。

 

 

「でもまぁ……、やらねぇ訳にはいかねぇよな……!」

 

 

 それでもこの作戦、失敗は許されない。必ずこの作戦を成功させなければ、ビフォアには勝てないのだ。だからこそ、多少の無茶でもやらなければならないと、状助は強い意志で自らの士気を高めていった。

 

 

「そろそろ時間か……。いくぜ!!」

 

 

 そして、腕時計から時間を知らせるアラームが鳴り響いた。それを聞いた状助は、すでにエンジンがかかったバイクをふかせ、加速を始めたのだ。グングンと速度を上げ、バイクはその路地を一直線に駆けていった。

 

 

「このままこの速度でまっすぐ行けば、見えてくるはずだ……」

 

 

 この作戦、時間内に一定のポイントにつかねばならないというものだった。だから速度も60キロを維持し、規定のポイントにつかなければならなかったのだ。誰も人など居ない路地で、状助は速度を保ちつつ矢のごとくバイクを走らせていた。

 

 

「な、何ィィッ!!?」

 

 

 だが、そこで予期せぬ出来事が起こった。それは突如目の前の建物の影から、子供が出てきたのだ。子供は加速するバイクの前に停止し、バイクに怯えるように立ったまま固まってしまっていたのだ。

 

 

…… …… ……

 

 

転生者名:ムラジ

種族:人間

性別:男性

原作知識:あり

前世:30代司会者

能力:シャーマンとしてO.S(オーバーソウル)プラチナムソードによる斬撃

巫力:10000

特典:シャーマンキングのラジムの能力、おまけで持霊プラチナムソード

   剣術の才能

 

 


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