理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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テンプレ104:熱血系ライバルは冷血系


六十六話 最悪の発見 氷と炎

 *最悪の発見*

 

 

 直一とアルスは下水道地下深くまで進み、その最も地下の底へと降り立った。全てが闇につつまれた底の底は、流れる水の音以外は何も聞こえない静寂の世界だった。しかし、下水道の底と言う割りには、かなり広く、暗くて遠くは見えないが、すぐすこに壁があると言う訳でもなさそうであった。そしてアルスは、さらにこの先におぞましいものがあると直一へ話していたのだ。

 

 

「このずっと先に、俺が見つけたヤバそーな場所がある」

 

「おいおい、この先って何も見えねぇじゃねぇか」

 

 

 だが、その先すらも闇に染まり、何も見えない。また、ここにある明かりは、アルスの”火よ灯れ”のみなのだ。当然、周囲は闇で覆い尽くされ、何も見えないのである。そんな場所で、その先と言われても、直一にはわからなかったのだ。

 

 

「お前の特典(アルター)なら一瞬さ」

 

「なんだよ、運転しろってことか? だが、ここには生憎車がない」

 

 

 直一のアルター、ラディカル・グッドスピードの能力は自分を加速させるだけではない。乗り物をも変化させ、モンスターマシーンにすることができる。特に車を愛用し、殺人的な加速力で突っ走ることが可能なのだ。しかし、それには媒介として車を一台用意する必要があった。

 

 

「無くても出来るはずだろ?」

 

「出来なくはないが、ハッキリ言えば男と二人でドライブなど気が知れん!」

 

「俺だってごめんだぜ……」

 

 

 だが直一は、一応ではあるが媒介である車を必要せずに、そのアルターを構築することが出来るようだ。それを使えばすぐさま目的につけると、アルスは直一に話したのだ。そのアルスの説得に直一は、出来なくはないが男同士でのドライブは気が乗らないと言い出していた。そこでアルスも、同じ気分だと心境を言葉にしていたのである。

 

 

「だけど早くいかねぇとヤベェかもしれねぇぜ? さらに面倒だ」

 

「しょうがねぇな、”ラディカル・グッドスピード”!!」

 

 

 アルスは気分が悪いのを承知で、急ぐ必要があると言ったのだ。しかし実際の理由は面倒だからというものだった。何せこのアルスは面倒が嫌いであり、ここから魔力による身体強化で走るのがしんどいと考えていた。

 

 また、直一もそれでは仕方がないと考え、アルターを構築した。周囲の壁や地面が抉れて虹色の粒子となり、直一の近くへと集まっていった。そしてその場所に、一台の車が出現したのだ。その車は禍々しいデザインで、紫色の車体に攻撃的な鋭いパーツで構成されていた。さらには車体のフロントは三又に分かれ、その中央部分には鮫のように口が開き、そこから鋭い牙を覗かせていたのである。

 

 

「これに乗るのもあまり好きじゃねーが、面倒はゴメンだし言ってられんか……」

 

「アルス、お前が要求したんだ。たっぷり俺のスピードを堪能させてやるからな?」

 

 

 そこでアルスと直一は、その車へと乗り込んだ。すると直一はアクセルを思い切り踏みつけたのだ。しかし、突然のアクセル全開のせいでタイヤはスリップし、タイヤだけがものすごい速度で回転していた。さらにそのタイヤのスリップで、摩擦による煙と土ぼこりが宙を舞い、辺りを白く染め上げていた。そしてようやくタイヤが地面に吸い付くと、爆発物で吹き飛ばされたかのような、急加速をしたのである。それでアルスは背面の座席に背中を押し付けられ、少しながら苦しんでいた。

 

 

「さあ行くぜ!」

 

「お、おい……。ここからずっと直線だ、気をつけてくれよ……」

 

「直線だと? なら気をつける必要なんてねぇな! 最速で突っ切るのみよ!!」

 

 

 その直線という言葉に、直一はさらにテンションを上げていた。そしてさらに車を加速させ、自足200キロに達していたのだ。もはやその速度にアルスは驚き、顔を伏せるほどであった。だが、そんな状況ですら、直一はテンションをさらに上げていたのだ。いや、この直一はスピードが増すにつれて、テンションが上がっていくのである。

 

 

「速さと言うのは誰もが憧れる存在だと俺は思っている! なぜなら誰もが速さを競い、自分のスコアを伸ばそうとしているからだ! さらに競走や競泳には多種多様の種別、種目、種類が存在し、そのほとんどが早さを競い合うものばかりだ! そして最速のタイムをたたき出したものこそが、勝利を得ることが出来るのだ!!」

 

 

 すると直一はテンションがあがりすぎて、早口を言い出したのだ。またアルスは、そのスピードで酔ったらしく、口を手で押さえていた。そのスピードとすさまじい揺れに、アルスも気持ちが悪くなったようである。それゆえ直一をかまうなど出来ず、必死で気持ち悪さを耐えていたのである。

 

 

「それはゲームでも同じことが言えるだろう! 早いタイムをたたき出せばたたき出すほど、誰からも尊敬されるようになる! そうだ! 早ければ早いほど、他人から褒め称えられ名誉とされるのだ!」

 

 

 いやはやまったく意味がわからない早口だった。しかしこの早口は、テンションが上がった直一の癖であり、止めることが出来ないのだ。いや、この直一は止まることが嫌いなのである。それを叫ぶ直一の隣で、加速の重力で身動きが取れず、気持ち悪そうにするアルスがうめき声を上げていた。

 

 

「つまり、最速で動ける俺こそが、誰よりも早く、誰よりも偉いと言うことにならないか?! そう思うだろアルス!? おい、アルス! 聞いてんのか!? おーい!!?」

 

 

 そんな早口で乱暴に運転する直一をよそに、もはや限界寸前で顔を青くするアルスが居た。こんな状態で目的地について大丈夫なのだろうか。また、その目的地には一体何があるのだろうか。そう考えた直一は、さらに加速させて車を走らせていたのである。

 

 そしてようやく目的の場所へと到着したようで、直一は車を急停止させ、車体を真横に滑らせたのである。その衝撃で大きく車体は揺れた後、ようやく完全に停止したようだった。

 

 アルスは直一の荒い運転に青くなり、気持ち悪そうに口を手で抑えていた。しかし直一は元気そうに悠々と、その自らのアルターで改造した車から降り立ったのだった。その先にはなんと、二人の前に巨大な扉が登場したのである。

 

 

「アルス、こいつの先って訳か?」

 

「うぇ……。そ、そうだ……」

 

「なら突破するだけだ!!」

 

 

 アルスの肯定の言葉を聞いた直一は、すぐさま脚部にアルターを構築した。そこで直一はあえて扉の逆の方に走り出し、加速を始めたのだ。そしてアルスから直一がギリギリ見える位置に差し掛かったところで、直一は旋回したのである。するとものの数秒もしないうちに、直一は扉の目の前まで一直線に走ってきており、その速度をもって扉を蹴り飛ばし破壊したのである。

 

 直一の蹴りの衝撃で扉は完全に破壊され、破片もすさまじい勢いで吹き飛ばされていた。また、直一はそのまま扉の中へと進入し、着地と同時に3回転ほどした後、その場に停止したのだ。だが、そこで直一が見た光景は、想像していたものよりも、ずっと恐ろしいものであった。

 

 

「お、おい……こいつぁ……」

 

「……こりゃまた……ぅぷっ……」

 

 

 直一はその光景を見て絶句していた。なんというものが存在するんだと、戦慄していたのだ。そんな直一の横で、気持ち悪そうにしているアルスも、それを見て驚いていた。まあ、アルスは驚き以上に、気持ち悪さの方が上だったようで、完全にグロッキーになっていたのだが。

 

 そして、直一とアルスが見たものは、なんと大掛かりなロボット工場だった。恐ろしいことに、あのビフォアは麻帆良の地下に、ロボット工場を建造していたのだ。さらにベルトコンベアで運ばれてくるロボの数は、ざっと百を軽く越えていたのである。そのおぞましい光景を見た直一は、さっさとぶっ壊してしまおうと思ったのだ。

 

 

「おい、これぶっ壊した方がいいな……!」

 

「ぐえ……ぶ、ぶっ壊すのはいいが……俺らじゃ時間かかるぞ……う……」

 

 

 だがそこでアルスは、この工場を破壊するには時間がかかると言っていた。その理由は直一が広範囲で破壊する技を持たないからだ。さらにアルスは現在魔力が足りないのである。確かにアルスの魔力はある程度回復したのだが、全快ではない。それにこの工場を破壊するのなら、上級の広範囲魔法を何度も使う必要があるのだ。だから出来なくは無いが、時間がかかるとアルスは言ったのである。それを聞いた直一は、指を顎に当てて何かを考えていた。

 

 

「だがこれを破壊しなければ敵は増える一方だぜ?どうするつもりだ?」

 

「……今はどうすることも出来ないな……。それに……」

 

 

 どの道この工場があれば、いくらロボを破壊しても増える一方だと、直一は考えたようだ。そしてそれをアルスへ言うと、今は何も出来ないと答えたのだ。また、アルスは何かを察知したようで、そちらに視線を向けたのだ。

 

 

「はい、あなたがたには何も出来ません、何も行えません……」

 

「……敵だな……?」

 

 

 なんとそこに現れたのは、あの坂越上人だったのだ。それを見たアルスは完全に敵と断定し、上人の方を振り向かずに戦闘態勢を取っていた。直一もその上人を見てそちらを向き、脚部にアルターを装着させた。この上人は強敵だと、超から教えてもらっていたからである。

 

 

「テメェが坂越上人か!」

 

「はい、そうです。私が坂越上人です」

 

 

 そこで直一がその名を叫ぶと、上人は余裕の態度で自ら名乗りあげたのだ。加えて上人はまったく構えることもせず、ただその場に自然体で立ち尽くしているだけであった。その余裕に苛立ちを感じた直一は、攻撃を仕掛けようとアルターを動かそうとしたのだ。

 

 

「余裕だな、だが俺の速さを見て、その態度でいられるかな!?」

 

「待て、直一」

 

 

 しかしそこでアルスは、直一を攻撃させまいと声をかけたのだ。それを聞いた直一は、意味がわからなそうにアルスの方を向いていた。だがアルスは上人の方を向き、直一を見てはいなかった。

 

 

「俺はコイツの能力を知らん。だがヤバイと感じている……」

 

「俺は一応聞いている。こいつの能力は”超能力を操る”とな……!」

 

「はい、正解です。私の特典(のうりょく)は”超能力”です」

 

 

 アルスはこの上人に、異常なまでの威圧を感じていた。また、長年の勘で戦うのは危険だと察していたのだ。さらにアルスはこの上人の能力を知らなかった。そう言った理由から、直一を止めた。しかし直一は、すでに超から上人の能力を教えられていた。そしてそれをアルスへと伝えたのである。それを聞いた上人は、なんと自ら能力を二人に語って聞かせたのである。それはとてつもない自信から来る余裕の表れであった。

 

 

「て、テメェ……!? 能力がバレても痛くも痒くもないって訳か!!」

 

「おっしゃるとおりです。私の能力を知られたところで、おふたかたになすすべはありませんので」

 

 

 突然能力を自分からバラした上人を見て、直一はさらに機嫌を悪くして叫んでいた。何せそれは能力が知られても問題ないと言うことだからだ。つまり、直一とアルスが二人でかかっても、負けることなど無いという意味だからだ。その直一の叫びに上人はほくそ笑みながら、二人にそのことを話したのである。

 

 

「……テメェ……!!」

 

「直一、待てと言ったろう。挑発に乗るな」

 

 

 そんな憤怒する直一を、抑えようと声をかけるアルスが居た。アルスは上人が、あえてこちらを逆上させようと挑発していると考えていた。だから挑発に乗らず、冷静に周囲を見渡し、次の行動を判断していたのだ。

 

 

「直一、逃げるぞ」

 

「何……?」

 

 「はっきり言って、ここでヤツと戦うメリットがほとんど無い。さらにここで暴れても、この工場を完全に破壊出来るかわからん……」

 

 

 アルスはここで逃げに徹することにした。それはここを完全に破壊出来ないことと、あの上人と戦う必要を感じたからだ。ならばこの情報を届け、次につなげることこそが重要だとアルスは考えたのだ。こういった判断が出来るからこそ、アルスは危険な任務も生き残ってこれた。伊達にエージェントとして仕事をして来ていないのである。

 

 

「おや、お逃げになると? そうは行きません。行かせません。この私が生かしません」

 

「ハッ! やってみろよ……!」

 

 

 だがこの上人も、そう簡単には逃がしてくれそうに無い。まったくもって自然体だと言うのに、そこからあふれ出る殺気と威圧は呼吸を苦しめるほどだからだ。しかし、それを受け流してアルスは上人を挑発し返していた。出来るものならやってみろと、強気の姿勢を見せていたのだ。

 

 

「では、おふたかたには、消えていただきましょう!」

 

 

 アルスが放った挑発にあえて乗る態度を見せ、上人は右腕を持ち上げ始めた。そして上人の全身から、青紫色のオーラが放出され始めたのだ。そこで、その光景を見たアルスは、直一へ叫んで命令しだした。

 

 

「直一! 最速で俺に蹴りを入れろ! 直線的なヤツを!」

 

「何だと!?」

 

 

 驚くことに、その命令はアルス自身を蹴れと言うものだった。それを聞いた直一は、驚きの表情で聞き間違えで無いかどうか、アルスへと叫んだのだ。だが、そこから返ってきた言葉は、肯定の言葉だった。

 

 

「いいからやれ! とことんやれ!お前の速さを俺に見せろ!」

 

「あぁー、わかったよ! だが痛みは我慢しろ!!」

 

 

 アルスのやれと言う言葉に、直一はもはややけとなり、アルスを蹴ることにした。そしてその直後、アルターのかかと部分からすさまじい圧力が生み出だし、直一は瞬間的に加速したのだ。その二人のやり取りを見て、余裕を保っていた上人は初めて表情を変えたのだ。

 

 

「ハアァッ!!」

 

「グッ!いってぇ!!」

 

「何?」

 

 

 音速を超えた直一蹴りが、アルスの腹部へと突き刺さる。アルスは障壁でその蹴りを防御したが、爆発的な衝撃を受けたことで耐え切れずに痛みを感じていた。また、その行動に上人は驚きの表情をしていたのだ。その上人の表情を見たアルスは、してやったりと唇を片方に吊り上げていたのだ。

 

 

「そのまま直進して壁にぶつけろ!」

 

「アホかお前は! 本当にくたばっちまうぞ!」

 

 

 そこでさらにアルスは、直一へと叫んで指令を送る。その指令はその勢いで壁にぶつけろと言うものだった。そんな自殺行為に直一は、本気で死ぬ気なのかと一瞬焦り、アルスへ罵倒を浴びせていた。

 

 

「言われたとおりにしろ! 上へ帰るぞ!」

 

「ハッ、そうか! そう言うことか!」

 

 

 だがアルスは、それをやれと再び叫ぶ。そして地上へ戻ると言葉にしたのだ。そのアルスの自信の詰まった台詞を聞いて、直一も何かを察したようだ。まったくコイツは面白い博打をすると考え、直一はさらに加速したのである。

 

 

「なら最速で突っ切るぞ!!」

 

 

 そこへさらに、さらに加速すべく、直一はもう一度地面を蹴って爆発的な加速を得たのだ。加えて直一は、もう一度アルスの腹部に自分の足を突き刺し、壁へと一直線に飛んだのである。また、再び直一の加速した蹴りを受けたアルスは、口から血を流していた。対物理障壁をもってしても、直一の加速した蹴りは耐えられなかったのだ。

 

 

「……お前の蹴り、ヤバすぎんだろ……」

 

「何言ってるんだ? 俺の速さが見たかったんだろう? なら我慢しろよ」

 

 

 だがそんな時でも二人は軽口を言い合い、余裕を保っていたのである。そんな二人の様子を見ていた上人は、ただの仲間割れだと考えたようだった。そこで上人は瞬間移動で二人を追いながら攻撃へと移ったのだ。

 

 

「私に恐怖して仲間割れですか? だがそれでも、私はおふたかたを逃がす訳にはまいりません?」

 

「ハッ、もう遅い」

 

「何……!?」

 

 

 しかし、その行動を見たアルスは、そこで上人に手遅れだと投げかけたのだ。それを聞いた上人は、何を言っているのか理解できなかったようだった。そして直一は加速したまま、アルスを壁へと打ち付けたのである。

 

 なんということだろうか。加速した蹴りを入れられたまま、アルスは壁へと激突してしまったのだ。当然普通ならつぶれたトマトのように、周囲を赤く染めることになるだろう。ところがそうはならなかった。アルスは壁にめり込みながら、上人の足を掴んで沈んでいったんだ。それは影の転移魔法(ゲート)と呼ばれるものだった。それを使い、即座に地上へと戻ろうとアルスは考えていたのである。

 

 

「影の転移魔法(ゲート)……。ハハハ、面白い……」

 

 

 その光景を目の当たりにした上人は一瞬驚いたが、すぐに普段の表情へと戻っていた。そして笑いを口からもらし、してやられたかと考えていたのだ。

 

 だが、なぜアルスは直一に蹴りをいれさせ、壁へとぶつけるように言ったのか。それは上人の能力を考えてのことだった。上人の能力は超能力である。そしてその能力は、念動力や瞬間移動などが存在する。その能力を使われれば、二人でかかったとしても上人を倒すことは出来ないと考えた。

 

 また、逃げようと行動すれば念力により阻止されると思ったのだ。さらに影の転移魔法(ゲート)で他人を連れ去るには、触れてなければならない。それらを踏まえて、自分が動いて直一に触れるより、直一が最速で動き自分に触れた方が早いと、アルスは考えたのだ。

 

 加えて蹴りを入れさせたのは、触れることはもちろんだが、相手に一瞬隙を作らせるためでもある。それ以外にも爆発的な加速で動く物体ならば、念力も届きにくいと考察したのである。

 

 さらにさらに、上人が弾丸以上の速度で移動する自分たちの進む道へ回りこみ、正面に立つことはしないとアルスは考察していた。いくら超能力を操る上人と言えど、潜在的にそこまでするとは考えられないと思ったのだ。まあ、それを行い超能力で停止させられた場合、アルスは次に暴風の魔法を使って、自分たちを地面に叩きつけようと考えていたのだが。そうやって相手を騙し、壁に出来た影を使って、転移することに成功したのである。

 

 

「やはりここへ来た甲斐がありました。この麻帆良に……」

 

 

 そしてその工場には上人のみが取り残されていた。だが、その表情はやはり余裕で、ここに来て良かったと言葉をこぼしていたのだ。こうしてアルスと直一は地上へと戻り、何とか地下から脱出できたのである。

 

 

――― ――― ――― ――― ―――

 

 

 *氷と炎*

 

 

 麻帆良の一角にて、二人の青年が向かい合っていた。いや、すでに戦いが始まり、二人の青年の拳と足が衝突し、そこで止まっていたのだ。一人は熱海数多、熱血を操る青年だ。そしてもう一人の青年は、謎に満ちた存在だった。

 

 その謎の青年は、青っぽい黒髪で前髪を左右に分けて伸ばしていた。また、背中まで伸びる髪を、首元で小さく束ねた髪型だった。そして、顔のほうは多少細めの顎をした凛々しい青年であった。

 

 また、その謎の青年の足からは、鋭い氷の刃が発生していた。まるでアイススケートのような刃が、足の裏から生えていたのである。それを見た数多は、今自分が拳に纏わせた炎と、現象が同じだと察したようだった。

 

 

「て、テメェの能力は……!?」

 

「フフ、君が”炎”ならば、俺は”氷”になるだろうな」

 

 

 さらに、その青年の能力は、数多の能力に酷似していた。数多の能力は感情を燃焼させることによる、”発火”の能力だ。常に自らを奮い立たせ、熱い魂の心をもって、その炎を操るのが、数多の持つ”真の熱血(パシャニット・フレイム)”なのである。

 

 だが、この謎の青年も同じような力を持っていたのだ。それは”氷”の能力だった。そして、その能力は自らの感情を冷たく静め、冷徹となることによる”凍結”の能力だったのだ。

 

 数多はその能力を見たとき、すぐにそれがわかった。なぜなら魔法とは完全に別の力で、周囲の水分を凍結させたからである。また、その現象が自分の能力に、かなり似ていたことから、その能力の発生源を割り出せたということだった。

 

 

「ほう、わかったのか。俺の能力が……」

 

「……まさか、俺と似た力を持つやつが、俺と親父以外にいるとはなあ……!」

 

 

 数多の”真の熱血”はその父親である熱海龍一郎が、熱血の中の熱血にたどり着いた境地である。だからこそ、その息子たる数多も、それを教えてもらい会得したということだった。だが、まさか似た力、つまり心を使った気温操作能力を持つものが、自分たち以外に居るとは数多も思っていなかったのだ。

 

 

「そうさ、この力は君らだけのものではない。そしてこの能力の名は”誠の冷血(クール・ブリーザード)”と呼んでいる」

 

「誠の冷血……!!」

 

 

 そして謎の青年は、数多の拳を強く蹴りあげ、その場で体を数回転させながら、数メートル距離を取った。そこで数多は自分のその拳を見ると、なんと凍結していたのだ。それを見た数多は、凍った拳を驚きの眼で眺め、戦慄していた。

 

 

「紹介が遅れたな。俺の名は”コールド・アイスマン”……」

 

「ハッ、丁寧にどうもってんだ! 俺は熱海数多だぜ」

 

 

 謎の青年は名を”コールド・アイスマン”と名乗っていた。また、それを聞いた数多も、同じく名乗り上げていた。しかし、コールドは数多のことを知っているようだった。だからコールドは、不敵に笑っていたのである。

 

 

「フフフ、知っているさ。そして、君が俺には勝てないこともね……!」

 

「何? 俺がテメェに負けるだと!?」

 

「ああ、そうだ。すでに、すでに勝敗は決している!」

 

 

 そこでコールドは数多では自分に勝てないと、挑発的な発言をしていた。さらに、そのコールドの態度は余裕と自信に溢れていた。そして、いつの間にか両足にアイススケートのような刃を装備していたのだ。

 

 だが、そのコールドの言葉に、数多は怒りの叫びを上げていた。すでに自分が負けているなど、許されるものではないからだ。まだ一撃しか攻撃していないというのに、勝敗が決まってなるものかと、数多は怒りを感じたのだ。

 

 

「ならば、もう一度俺の炎を食らいな!!」

 

「おいおい、すでに終わったと言ったはずだが?」

 

「な……に……!?」

 

 

 そして数多は炎を右腕に纏わせ、コールドへと殴りかかろうとしたのだ。しかし、すでに周囲の地面は凍結し、氷で覆われていたのである。また、数多はコールドの言葉で、足が凍って動かなくなっていることを、ようやく感知したのである。なんという能力だろうか。すでに数多の足は氷付けにされてしまっていたのだ。

 

 

「フッ、やっと気がついたのか?」

 

「こ、こいつは……!?」

 

「俺がこの周囲一帯を凍結したのさ……」

 

 

 その勢いよく凍る地面を見て、数多はさらに戦慄していた。まさかこれほどの力を使えるとは、想像すらしていなかったのだ。そんな氷付けになって驚く数多へと、コールドは冷めた視線を送っていた。なんとつまらない相手だろうか。弱すぎてあくびが出る。そう思っていたのである。だが数多はそこで、真の熱血を最大で放出したのだ。

 

 

「だったら、溶かすだけだぜ!! うおおおおおおお!!」

 

「ほう、俺の凍らせた脚の氷を、自らの炎で溶かしたか……」

 

 

 そして数多は凍っていた足を解凍し、動く状態へと戻したのだ。それをコールドは、面白いものを見るように、ただただ動かずに眺めていた。まるで相手の実力を測るように、攻撃を促進させるように、その場に立ったまま、静かに笑みを浮かべるだけだった。そこで数多はコールドへと、再び突撃して右拳を放ったのである。

 

 

「オラァ!!」

 

「フッ……」

 

 

 しかし、その拳がコールドに届くことはなかった。なぜならその拳が、氷の柱により阻まれたからだ。さらに、数多の右腕が、氷の柱によって閉じ込められたのである。しかも、それは一瞬の出来事だった。もはや数多が氷の柱に右腕が埋まっていることを、すぐに感知できないほどであった。

 

 

「なっ……!?」

 

「君じゃ俺には勝てない……」

 

 

 するとコールドは凍結した地面をアイスリンクをすべる様に移動し、数多の背後へと移動した。そこでコールドは、加速のために数回転した後、数多の右わき腹をその左足で蹴り飛ばしたのだ。その衝撃で数多は口から血を吐き、蹴られた方向へと吹き飛ばされたのだ。また、右腕が封じられた氷の柱も、その蹴りの力によりへし折れたのである。

 

 

「ガフッ……」

 

「まだまだ終わらんよ……」

 

 

 さらにコールドは、先ほどと同じような要領で高速で地面をすべり、吹き飛んだ数多を追い越したのだ。そして、そこに再び蹴りを放ったのだ。だが、その蹴り出した足には、氷の突起が生えており、命中すれば串刺しになるようになっていたのである。その攻撃を数多は背中へ受け、凍結と串刺しとなった痛みを同時に味わい、苦悶の表情を浮かべていた。

 

 

「ガァ……!!?」

 

「フッ……。弱いな……」

 

 

 しかしコールドは、この程度では止まらなかった。そこで数多の腹部へと、同じ蹴りをぶち込み追撃を加えたのだ。それを受けた数多は、体をくの字に曲げ、苦痛の声を漏らしていた。その衝撃に数多も流石に苦しかったようで、即座に動くことが出来なかったようだ。

 

 

「グア……!」

 

「弱い、本当に弱いぞ……」

 

 

 また、コールドはその体勢の数多に、かかと落しを食らわせたのだ。その一撃で、数多は頭部を切り裂かれ、大量の血を額から流す結果となってしまったのである。なんという猛攻、なんという一方的な戦い。あの数多が、ただただやられているだけとなってしまっていたのだ。

 

 

「俺の氷を溶かしたのは褒めてやる。だが、所詮はその程度だったのだよ……」

 

「う、うる……せぇー!!」

 

 

 だが数多もまだ諦めては居なかった。額からおびただしい血を流しながらも、その横で語りかけていたコールドへと、拳を振るったのだ。さらに、その拳を加速させるため、肘の部分で炎を爆発させたのだ。それを見たコールドは、流石に驚き回避行動を取っていた。しかし、それでも一瞬遅かったのである。

 

 

「”真の熱血”!!」

 

「グウッ!?」

 

 

 その拳はコールドの澄ました顔へと突き刺さったのだ。コールドはその数多の行動と自分のダメージに驚き、殴られた表情は驚愕したものとなっていた。そしてコールドはその殴られた勢いで、頭と足が逆転したのである。そこに数多は左の拳も打ちつけ、それがコールドの腹部へと命中したのだ。

 

 

「オラオラァ!!」

 

「ガッ!?」

 

 

 その一撃を受け、コールドは数メートル吹き飛ばされていた。だが、今の攻撃は数多にとって、渾身の一撃だった。もはや額の出血がひどく、数多は意識が朦朧とし始めていたのだ。また、コールドは体勢を立て直し、その吹き飛ばされた勢いを使って、逆に加速したのである。さらに、その加速を利用し、数多へと突撃してきたのだ。

 

 

「甘く見ていたと言う訳か……。だが、これで最後だ……」

 

「ううおおおおおおッ!!」

 

 

 しかし、数多はそれでも諦めず、炎の右腕を突撃してくるコールドへと突き出した。ああ、それでもその攻撃は、コールドにあたることはなかった。コールドはその突撃の勢いを右足に集中し、姿勢を低くして数多へと接近したのだ。

 

 そして数多の拳はコールドの頭上を空振りし、逆にコールドの右足が、数多の腹部へと突き刺さる結果となってしまったのである。そのコールドの最大の蹴りを受けた数多は、腹部からも大量に出血し、吹き飛ばされて地面に転がったのだった。

 

 

「う、うっ……」

 

「よくやったと言おう。この俺に、数撃食らわせるとは……」

 

 

 そこでコールドは、トドメをさそうか考えた。だが、この戦いはただの遊び、本気ではないのだ。さらに、ここでトドメをさせば色々面倒なことになると考えたコールドは、あえてトドメをささないことにしたようだ。また、今ので喧嘩だと思っていた野次馬が集まりだし、騒ぎ始めていたのだ。それを見たコールドは、この場は退散するしかないと考えたようだ。

 

 

「フッ……熱海数多、この程度では()()を止めることは出来ない……」

 

「クッ……、待……て……」

 

 

 そしてコールドは、その膂力で高く飛びはね、人ごみへと消えていった。それにより、凍結していた地面も解凍され、元へと戻っていったのだ。だが、数多は出血がひどく、今の言葉を発した後、気を失ってしまったのである。その様子を見ていた周りの人が係りの人を呼んだらしく、そのまま数多は保健室へと連れて行ったのである。

 

 

…… …… ……

 

 

 数多はコールドに敗北し、かれこれ1時間ほど、その保健室のベッドの上で寝ていた。また、上半身の服は脱がされており、近くの棚の上にたたまれて置かれていた。加えてしっかりと手当ては施され、いたるところに包帯が巻かれていた。特に頭や腹部を重点的に巻かれており、真っ赤な鉢巻は真っ白な包帯に変わっていたのである。そして数多は目を覚ますと上半身を起こし、とりあえず現状を確認していた。

 

 

「こ……ここは……」

 

 

 そこで数多は周りを見渡し、自分の現在地が保健室だと言うことを理解したようだった。さらに、あのコールドなる人物に敗北したことも、同時に理解したのだ。それを悔しく思う反面、あの男は何しにここへ来たのか、疑問に感じていたのである。

 

 

「負けたのは悔しいが、あの野郎は一体……」

 

 

 あのコールドと言う男は、一体何なのだろうか。何かしでかすためにここへ来たのだろうか。それなら負けたのはヤバイと数多は考えた。だが、あの男は言っていた、戦いが目的ではないと。だからこそ、自分との戦いを遊びだと言ったのだろうと。

 

 

「まあ、わかんねーからいいか……」

 

 

 しかし数多は思考を投げ捨てた。いくら考えてもわからなかったからだ。いや、わかったことが一つあった。それはあの男が、自分よりも強いと言うことだ。

 

 

「しかし、あの野郎は強かった。……野郎の言うとおり、遊びにしかなってなかった……」

 

 

 能力の使い方といい、その高い能力といい、全て自分を上回っていた。さらにコールドという男は、遊びと称して自分と戦っていた。つまり、あれが本気ではない可能性があるのだ。そのことを数多は思い出し、拳を強く握り締めたのだ。そこで、もう一つだけわかったことがあった。

 

 

「だがあの野郎は親父より弱ぇ……。なら親父を倒すより楽なはずだ」

 

 

 そうだ、あの男がいくら強くても、親父よりは弱い。親父こそが自らが目指す頂点であり、それを越えることこそが自分の目標だ。そんな親父よりも弱いなら、数段難易度が下がる。数多はそう考え、唇を吊り上げて目を奥に炎を宿らせていた。

 

 

「ああそうだ、ならばあの野郎は必ず倒す。俺の炎と拳にかけて……必ず……!」

 

 

 そこで数多は誓う。あのコールドを、次にあった時には必ず倒すと言うことを。自分の拳と能力にかけて必ず倒すと、そう誓っていた。その意地、その執念、全てを炎に変えて、必ずしとめる。そう数多は心に決め、ベッドから降りて力強く地面を踏みしめたのだ。

 

 

「お、目が覚めたか」

 

 

 そこへ一人の少女が現れた。それは数多の義妹の焔だった。焔は数多が保健室へ運ばれたことを聞いたらしく、その場へと駆けつけていたのである。また、ベッドで寝ている数多を心配し、看病していたようだった。そして少し席を外している間に、数多が目を覚ました形となったようであった。

 

 

「んん、焔か。何でここに?」

 

「何って、兄さんが倒れたと聞いて、ここに来たに決まってるじゃないか」

 

 

 何でと言うのは愚問だろう。明らかに数多が倒れたから焔がここに居るのだ。それを当然だと、焔は数多へ話したのだ。それを聞いた数多は、少し罪悪感を感じたようだった。

 

 

「おおう、そりゃスマン……」

 

「まったく……。……私と別れてから何をしたんだ?」

 

 

 そしてとりあえず数多は焔へと頭を下げて謝った。ここで来たのもそうだが、何か心配させたと思ったからだ。また、焔はなぜ数多が保健室で寝かされていたのかわからなかった。自分と別れてから何かあったのはわかるのだが、一体どうしたのかと考えていたのだ。だから焔は、それを数多へとたずねたのである。

 

 

「ああ、ちょっとした()()ってやつだ……」

 

「遊びでそんな怪我するか! 何があったと聞いているんだ!」

 

 

 だが数多はそれを遊びだと称していた。しかし遊びでこんなに怪我をするはずが無い。この麻帆良祭の謎のアクシデントでさえ、死者重傷者が出たことがないのだ。明らかに何かあったとしか考えられないのである。それゆえ焔は再び何があったかを、数多へと叫びながら聞き出そうとしたのだ。

 

 

「コイツばかりは話せねーな。カッコ悪くて話せねぇ……」

 

「カッコの問題じゃないで済むか!? 兄さんがそんなにボロボロになるなんて……」

 

 

 それを聞いた数多だったが、話せないと断った。喧嘩でボコボコにぶちのめされ、敗北したなどと恰好が悪すぎて話したくないのである。そんなことを言いながら、話せないとした数多に、再び焔は叫んでいた。

 

 何せ数多はいたるところに包帯を巻いて、痛々しい姿をしているのだ。当然心配だからそれを聞いているのである。さらに言えば焔は、ある程度鍛えて強いはずの数多が、これほどまでに手傷を負うなどただ事ではないと考えたのだ。だから何があったのかを、聞き出したかったのである。

 

 

「悪ーな。だが話せねー。男として兄として、ダサすぎて話したくねえ」

 

「……そこまで言うなら、もういい……」

 

「スマネーな……」

 

 

 しかし数多には意地があった。敵にボコられて負けましたなど、言えるはずが無いのだ。それも自分の義妹にだ。そんなことダサすぎて、カッコ悪すぎて言いたくなかったのである。そうやって意地になっている数多を見た焔は、ため息をついてそれを聞き出すのを諦めたようだった。そこで数多は、そんなため息をつく焔に、再び謝っていたのである。

 

 

「……つーか、その恰好は何だ!?」

 

「これか?これはクラスの催しものの衣装だぞ?」

 

 

 とりあえず今の話がそれで終わったところで、数多は焔の姿を見て驚いていた。今の焔が着ていたのは、クラスのお化け屋敷の衣装だった。それは化け狐か何かなのか、頭に狐耳をつけて丈の短い白色の着物を着ていたのだ。また、狐っぽい形の尻尾が腰の下辺りから生えていたのである。

 

 

「ほおー。よく出来てるな」

 

「当然だ」

 

 

 それを見た数多は、なかなかうまく出来ているものだと関心していた。その褒め言葉を聞いた焔も、さも当然と言う態度を見せていたのだ。まあ、クラスのみんなで必死になって作ったものだ。ある程度自信があるのだろう。と、そこで数多は、その焔が催しものの当番で帰ったことを思い出したのだ。

 

 

「あ、あれ? そういや焔、その当番は?」

 

「兄さんが倒れたのを聞いて、仕方なく抜けてきた」

 

「マジで!? わ、悪いなそりゃ……」

 

 

 すると焔は兄が倒れたとクラスメイトに話し、申し訳ないと思いつつも抜けてきたのだ。また、数多はそのことで悪いことをしたと思い、後頭部に手を当てて謝っていた。

 

 

「本当にそのとおりだぞ!?」

 

「す、スマン……」

 

 

 そう謝る数多に、焔はまったくと考え怒った表情をしていた。その怒った様子を見せる焔に、数多は頭を何度も下げていた。そんなペコペコ頭を下げる数多を見て、焔はもう許してやろうと思い、言葉を投げかけたのだ。

 

 

「まあいい。兄さんが起きたならクラスへ戻ればいいだけだ」

 

「悪いなホント」

 

 

 焔はもう数多が目覚め、なんか元気そうになったし、そろそろ仕事へ戻ろうと考えた。それを焔が言うと、数多は最後の謝罪を口にしていた。また、焔が戻ると言ったところで、数多は焔のクラスの催しものがお化け屋敷だったことを思い出したようだった。

 

 

「あれ、お前んクラス、お化け屋敷だったっけ?」

 

「そうだが、言ってなかったか?」

 

 

 そのことを数多は焔へたずねると、その通りだと返ってきた。しかし、焔はそのことを数多へ言ったと思っていたらしく、おかしいなと首をかしげていた。

 

 

「聞いてねーぞ!? なら、行くか」

 

「というか、かなり並んでるがいいのか?」

 

 

 それを聞いた数多は、聞いてなかったらしく、その文句を叫んでいた。そしてそのお化け屋敷へ足を運ぼうと考えたようである。だが焔はそこで、自分のクラスで行われているお化け屋敷は行列が出来ていて、かなり待たされると言ったのだ。それを聞いた数多は仰天し、少し今の言葉を疑ったようだった。

 

 

「え? そんなに繁盛してんの?」

 

「もうかれこれ1時間待ちは当たり前だぞ?」

 

「……そ、そうか。まあ並べばいいか」

 

 

 数多はそこで、その話ぐらい繁盛しているのか、焔に聞いてみたのだ。すると焔は1時間ぐらい、その行列で待たされるのが普通だと、数多へ話したのだ。その言葉に数多は少し嫌な顔をしたが、とりあえず並ぶ気ではいるらしい。そこで焔はとりあえず、数多が目覚めたのでクラスへ戻り、仕事に復帰しようと考えたようだ。

 

 

「まあ、私も兄さんが起きたから戻るか」

 

「おう、頑張れや。俺も後で行くからよー!」

 

「ならまた後で会おうか」

 

 

 そして焔はクラスへ戻ると数多へ話し、立ち去ろうと動き出した。そこへ数多は立ち去る焔へ、応援の言葉を託していた。焔もその数多の応援を聞いて後ろを振り返り、今度は自分の教室で会おうと手を振って保健室から出て行った。また、焔が立ち去った後、数多は服を着なおし、同じ方向へとゆっくりと歩いていくのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

オリ主名:コールド・アイスマン

種族:人間

性別:男性

能力:誠の冷血(クール・ブリーザード)

元ネタ:熱血のライバル的な冷血キャラ

 




テンプレ105:熱血系は最初に冷血系に敗北する

転生者だけが敵ではない
転生者の行動によりオリ主が発生するのなら、当然敵にも登場する

あと皇帝がちょっと空気過ぎる……

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