理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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テンプレ21:転生者、原作キャラと絡む

テンプレ22:あやかの弟の命を救う


五話 強敵と書いて友と呼ぶ

 アスナはある朝突然、あやかに”ガキって何者?”と聞いてみた。あやかも、最初は何がなんだかわからなかった。だが、単純に自分を知りたいというのを察したので、自分のことを話し、アスナも自分の現状を話したのだ。

 

 そして、喧嘩も殴り合いでは埒が明かなくなったので、別の方法を取ろうということになった。それは単純、ボードゲーム、カードゲームなどの無電源ゲームである。ただ、痛みが無いのでは面白くなかったので、勝負には必ず”何かを賭ける”というルールができた。

 

 ライバル(喧嘩仲間)が、本当のライバル(強敵と書いて友)となったのだが、他人には完全に友人同士にしか見えなかった。そして今日も、”何かを賭けて”ゲームをしていた。

 

 

 ちなみに、それをアスナが育て親のメトゥーナトに話した時、メトゥーナトは内心滅茶苦茶感激した。感激しすぎて体が震えると思った程に。が、それを決して表情や態度に出さず、坦々と「怪我をしなくなったのは良いことだ」と一言言うだけだった。

 

 まあ、アスナはそれしか言われなくとも、表情の仮面の下をある程度見抜いているため、満足した様子だったが。二人は随分と長く共に生活しているので、そのぐらいは察することができるのである。

 

 

 また、メトゥーナトが内心感激したと言うのには理由があった。

それはメトゥーナトも同じ皇帝直属の部下である、熱海龍一郎よく戦闘での喧嘩をしていたからだ。

 

 まあ、それは単純に喧嘩と言う枠組みだけではなく、技術の研鑽やストレス解消などの意味も含めた戦いではあるのだが。決してどちらもバトルマニアで、関係ねぇ戦いてぇ、と思っているだけではない……はず。

 

 そういう訳で、自分たちは確かにガチのバトルでやっていたりするのだが、少女たちがそれで怪我をし続けるのもどうかと思っていたメトゥーナトは、彼女が平和的な喧嘩を行っていると聞いて、大変喜ばしいことだと思ったのである。

 

 

「もーすぐ、弟が生まれますのよ!」

 

「いいんちょに弟? ふーん……」

 

「な!? その冷たい反応はなんですのー!?」

 

「……スッゴクウラヤマシイ」

 

「きぃー! その言い方、むかつきますわ!!」

 

 

 とは言え、喧嘩が無くなった訳でもなく。

売り言葉に買い言葉などで、喧嘩が勃発することも珍しくない。この程度の煽り合いで、簡単に火がついてしまうのである。と言うか、なんでこんな挑発に乗るのだ、と思うが彼女たちはまだまだ小学生、当然といえば当然と言うべきか。

 

 そしてアスナが何故、あやかをガキではなく委員長(いいんちょ)と呼ぶか。それは彼女があやかをライバル(強敵と書いて友)として認めたからだ。認めたからには、ある程度敬意を示したくなったのだ。

 

 

「……ならば今日も勝負する?」

 

「えぇ、今度は何にするんですこと?」

 

「……私は”ポーカー”で勝負をしたい」

 

 

 であれば、()りあうしかないだろう。

今回のルールは何がいいか。あやかはそれをアスナへと問う。あらゆるカードゲーム、ボードゲームの中から、どれを選ぶのか。それもまた彼女たちの喧嘩の醍醐味であった。

 

 そこで、ドン! という効果音が、アスナの後ろに見えるほどの宣言が、アスナ本人から発せられた。今回の勝負はポーカー。カードでの刺しあいをすると。

 

 すると、クラスメイトがざわ……ざわ……と騒ぎ出したではないか。このクラスの名物たる二人の喧嘩が始まろうとしている。クラスメイトたちはそれに便乗し、トトカルチョをするのがこのクラスのエンターテイメントとなっていたのだ。

 

 そんな中、転生者たるこのリーゼント、東状助は「え?なんかおかしくね?」と思っていた。そりゃそうだ。小学生が賭け事をやりだすのだから、ちょっと待てよと言いたくなる気持ちはあるだろう。とは言え、これが麻帆良のノリってやつだ。諦めるしかないのである。

 

 そして、アスナはもはや慣れた手つきでカードを混ぜて、それが終わると状助に声をかける。

 

 

「そこの、リーゼント、このカードを配ってほしい」

 

「え? うそだろ承太郎!?」

 

「誰それ?」

 

 

 状助はあせった、何せ彼はチキンで、彼女たち(原作ヒロイン)に近づきたくないからだ。しかし、呼ばれてしまったのではしかたがないが、あえてキョロキョロ周りを見て、誰のことだろうか?という行動をとってとぼけてみた。

 

 

「リー……ゼン……ト? 何だねそれはいったい……」

 

「リーゼントは、あなたしかいませんわ!」

 

「……俺ぇ?」

 

 

 なんてこった、状助がカードを配ってくれないからか、あやかがそこへ参戦し、早く配れと催促してきたのだ。

 

 

「グレート……わ、わかったぜ」

 

「ん、助かる、これ、配って」

 

「おねがいしますわ」

 

 

 そう言われてしまったからにはもう後戻りはできない。彼はしぶしぶカードを受け取ると、彼女たちに配りだす。その間に、彼女たちは何を賭けるか相談していた。

 

 

「そういえば、何を賭けるか、聞いてませんでしたわね。私は”大切にしている消しゴム(たましい)”を賭けますわ!」

 

グッド(Good)、なら私は”今日のお昼のおかず(たましい)”を賭けよう」

 

 

 なんだこの状況は、作品が違うのではないか?状助は自分の特典が悪かったのでは、と冷や汗をかき始めていた。そして、あやかは自分のカードを見て、すでに勝利を確信していた。

 

 

(ふふふ、まさかこのようなカードが揃ってくるなんて、なーんて運がよいのでしょう、この勝負、いただきましたわ!)

 

 しかし、アスナは自分のカードを拾おうとしない。

どういうことなのか、不思議そうな顔をしながらあやかは尋ねる。

 

「アスナさん、なぜ、カードを拾わないのでしょうか?」

 

「私は、()()()()()()()

 

 

 ドン!とやはりアスナの後ろに、そんな効果音が見えるかのように発言していた。しかし、そんな阿呆なことをしているな、とあやかはアスナのカードを見ないように手渡す。

 

 

「馬鹿にしてますのー!? さっさとお拾いなさい!」

 

「チッ」

 

「今舌打ちしましたわね!?」

 

「さぁ……」

 

 

 状助はもう、さっさとどっか行きたかった。その後ろで、やはりどちらかが勝つかを賭けるクラスメイトの姿があった。痛い頭を抑えつつ、彼女たちを見守る状助であった。

 

 

「ヘビィすぎるぜ、この状況……」

 

 

 もう状助のライフポイントは0だった。彼は、この生活を小学生が終わるまでやらなければならいのかと思い、そのうち彼は考えるのをやめた……。

 

 

…… …… ……

 

 

 そんなある休日の朝のこと、雪広あやかは自分の弟が生まれてくるのを楽しみにしていた。しかし、ヒョンなことから、その弟が生まれないかもしれないということを知ってしまった。

 

 それは、姉が病院から電話を受けて話しているのを聞いてしまったからだ。あやかは、姉に説明を受け、逃げるように豪邸といえる、自分の家の正面門の外まで行き、そこで泣いていた。

 

 

「うっ……ひっく……」

 

「……いいんちょ?」

 

 

 と、そこへアスナがやってきた、彼女はあやかの弟が生まれるかもしれないと聞いて、とりあえず彼女なりに前祝いしに来たのだ。だが、そこには幼くも美人の顔を、涙でぬらすあやかがいた。

 

 

「……弟が、弟が」

 

「うん、うん」

 

 

 あやかはアスナにそれを説明した、あれだけ自慢された弟が生まれないなんてなんて悲しいことだろう、アスナは昔、ガトウが死に掛けたことを思い出していた。そこで、助けることはできないが、とりあえず励ますことはできる。彼女はそれを実行した。

 

 

「……祈ろう」

 

「……アスナさん?」

 

「弟が、無事に生まれるように、祈ろう」

 

 

 アスナは、あやかの弟が生まれるよう、祈ろうと言ったのだ。だからあやかも、同じように祈りをささげた。と、そこへ一人の男性が歩いてきた。

 

 マントを羽織った強面の男だった。少し太めの眉毛、黒い髪、そして大きな体に筋肉質という風体の男だった。そんな男の足にあやかが衝突してしまい、あやかがしりもちをついたのだ。

 

 なんということだろうか、あやかは涙で濡れた目を手でぬぐっていたために、周りが見えていなかったのだ。そんな男に衝突し、しりもちをついたあやかはその男に恐れを抱いた。こんな筋肉質の男だ。どんな叱咤を受けるかわからなかったからだ。

 

 

「ひっ! ごっ、ごめんなさい……!」

 

「むっ、こちらこそすまない。怪我はなかったかな?

 

「は、はい……。特には……」

 

 

 あやかは男の風体に怯え、即座に頭を下げて謝った。しかし、男はむしろあやかの体を気遣い、逆に自分が悪かったと言葉にして謝ってきたではないか。

 

 その男はしゃがみこんで背の高い体を低く下げ、あやかの目線にあわせて、あやかの体に異常がないかを確かめ始めたのだ。男に怪我はないかと聞かれたあやかは、少し拍子抜けした気分で、特に問題ないことを言葉にしていた。

 

 

「……怪我はなさそうだが、目が赤いな……。泣いていたのか?」

 

「えっ、いえ……」

 

 

 だが、男はそこであやかの目が赤いことに気がついた。ただ、これが病気で赤い訳ではなく、涙を流していたがゆえに赤くなったことだとすぐに気がついて見せたのだ。

 

 それを男があやかへ聞くと、あやかはなんでもないと話したのだ。何せ弟が生まれないかもしれないという身内話のことで泣いていたなど、見知らぬ人に話したくはないからだ。

 

 

「いいんちょ……、この子の弟さんが産まれないかもって、泣いてたんだ……」

 

「あっ、アスナさん!? 余計なことは言わなくていいの!」

 

 

 そんなあやかの横から、アスナがどうして泣いていたのか男へ説明しだしたのだ。あやかはそんな余計なことを話す必要はないと、アスナへと叫んで怒っていた。ただ、アスナもあやかが泣いているのを見て、とても悲しい気分だった。だから自然と、そう言葉がもれてしまったのである。

 

 

「何……!? その君の母親が入院している病院はどこだ!?」

 

「えっ!?」

 

「俺はこう見えても医者だ。君の弟さんとお母さんを助けることが出来るかもしれん……!」

 

 

 その男がアスナの説明を聞くと、様子が一変した。突如焦るような様子を見せ、あやかへ母親の入院している病院を聞き出し始めたのだ。あやかはそれに驚き、どういうことなんだろかと思っていた。そこで男は自分の身分を明かしたのだ。なんと、このマントの男は自分を医者だと名乗ったではないか。

 

 

「そ、それは本当なんでしょうか……?」

 

「本当だ。それに君が泣いていたということは一刻を争う事態なのだろう? 今すぐ行かなければ間に合わない可能性がある!」

 

「で、でも……」

 

 

 しかし、あやかはこの男が医者だということを信用できなかった。何せマントを羽織った筋肉質の怪しい男だ。嘘かもしれないし、お金を騙し取ろうとする詐欺師かもしれないと思ったからだ。

 

 そんな疑いのまなざしを向けるあやかへ、男は本当だと言葉にした。そして、あやかが泣いていたことを考え、母親とそのお腹の中の弟が危ないと考え、それをあやかへ伝えたのだ。

 

 だが、やはり信じきれないあやかは、どうしようかと考えていた。この男が本当に医者だったなら、助かるかもしれない。けど、嘘だったら怖いと疑心暗鬼になっていたのである。

 

 

「教えよう、いいんちょ」

 

「アスナさん……?」

 

「この人に頼んでみよう……」

 

 

 迷っているあやかへアスナは静かに、この男へ病院を教えようと語りかけた。そのことに少し驚き、あやかはアスナの方を向いていた。またアスナは、この男に頼んでみようと、助けてもらおうと言い出したのだ。

 

 

「し、しかしっ、もしもそれが嘘だとしたら……」

 

「その時は私がこの男を倒してあげる。だから、今はこの人を信じよう……!」

 

「アスナさん……」

 

 

 それでもあやかは嘘だったらどうしようかと、不安だったのだ。ならば、その時はこの男を倒してやる。何とかしてやるとアスナは言い切った。だから今は、この男を信じてみようとあやかへ話したのだ。

 

 あやかはアスナがこの男を倒せる訳がないと思った。何せ自分と同じ小学生。そんな幼い少女が筋肉モリモリの男を倒すなど、不可能だと考えるのが普通だからだ。それでもあやかはアスナの言葉を聞き、少し勇気が湧いた。虚勢をはってでもこの男を信じようと話すアスナに、勇気を貰ったのである。

 

 ただ、アスナは本当に嘘だったら男を倒す気でいた。アスナはこんなナリだがかなり強いし、アスナ自身もそれを多少自負していた。が、それをあやかは知らないので、そう思ってしまったのである。

 

 

「わかりましたわ……! あの、今場所を聞いて執事に車を出させますので、少しお待ちください」

 

「……わかった。待っているよ」

 

 

 ならば、アスナがそこまで言うのであれば信じてみよう。あやかはそう思い、すぐさま屋敷に居る専属の執事に病院の正確な場所を聞き出そうと考えた。そして、その執事に車を出してもらい、急いで病院へ行こうと考えたのだ。

 

 それをあやかは説明すると、男は立ち上がって腕を組み、待っていると静かに口を開いた。その後、あやかはすぐさま走って屋敷へ戻り、その病院の場所を聞き車を出させるべく足を急いだ。

 

 

「ねえ、本当に医者なの……?」

 

「誤解されてしまっているようだが、本当のことだよ」

 

「……嘘じゃない?」

 

「ああ、本当だ」

 

 

 あやかが走り去った後、アスナも男へ本当に医者なのかを尋ねていた。見た目が明らかに医者には見えぬ男ゆえに、アスナも聞いておきたかったようだ。男はその質問に、肯定の一言だけを述べた。弁解があってもいいはずなのだが、この男はそう言ったことを一切語らなかった。アスナは次に嘘ではないかと男へ質問した。男はその問いにも一言だけ返事をし、それ以外何も言わなかった。

 

 

「違う……。あの子の弟さんを助けられるって言うこと……」

 

「……絶対に助けてみせると約束しよう……!」

 

 

 だが、アスナがこの問いで聞きたかったのは、医者かどうかではなかった。男が医者と言ったのなら、そうなのかもしれない。だから、助けられるかもしれないと言う言葉は嘘ではないのか、と言う意味の問いだった。

 

 そのことをアスナは再び男へ聞いた。とてもその顔は真剣な表情だった。男はアスナの表情を見て、気を引き締めてハッキリと言葉にした。絶対に助ける、約束すると。それを聞いたアスナは、ほんの少しだが微笑んで見せた。ならば大丈夫かもしれない、この男に任せようと思ったのだ。

 

 そこへ門の入り口から一台の車が出てきた。黒く車体が少し長い、所謂リムジンと言うやつだ。あやかが場所を聞き終え、車を用意させたということだった。

 

 

「お待たせしましたわ! アスナさん、それと……」

 

「……K()

 

 

 その真ん中のあたりの窓からあやかが顔を覗かせ、待たせたことへの謝罪を述べた。そして、アスナの名を呼び、男を呼ぼうとしたのだが、名を聞いてなかったことをいまさらながら気がつき、どう呼べばよいか戸惑っていた。そんなあやかを見て、男は名を静かに語った。K、その一文字のみを語ったのだ。

 

 

「俺の名はK()……!」

 

「K……」

 

 

 男の名はKと言うらしい。本当なのだろうか疑わしいが、確かに納得できる名だった。あやかはKと聞き、その名を呼んでいた。K、この男の名はK、と。そしてアスナとKと呼んだ男は車へ乗り、その病院へと急行した。

 

 

「……」

 

 

 車内は誰もが何も話さず、静かな状態だった。と言うのもKが腕を組んで黙っており、アスナとあやかには、それがとても威圧的に感じてしまっていたからだ。だが実際Kは、このあやかと言われた少女の母子に何が起こっているのだろうかと、思考をめぐらせていたのだ。

 

 

「……あのっ、本当に私の弟を助けてくれるのでしょうか……?」

 

「任せてくれ。俺が必ず助けてみせる!」

 

 

 そこであやかは勇気を出して、Kへと質問をした。本当に弟を助けてくれるのだろうかと、少し心細そうに聞いたのだ。あやかの問いにも、Kは先ほどアスナへ返したように、頼もしく返事をしていた。必ず助けてみせると。

 

 

「だから、心配する必要はないよ」

 

「は、はい……」

 

 

 さらにKは、ゆっくりとあやかの肩に片手を乗せ、助けるから心配は不要とあやかを安心させるように、優しく語りかけたのだ。あやかはその言葉に、とてつもない安心感を覚えていた。アスナはそれを見て、あることを思い出した。それは、最強の英雄である、ナギ・スプリングフィールドだ。彼女は、彼にそれに近い体制で、励してきたのを思い出しこういう人が、強い人なんだと感じていた。

 

 そして病院に着き、Kは急いで入っていった。彼女たちは椅子に座って、ただひたすら待った。

 

 

「大丈夫、ですわよね」

 

「きっと、大丈夫」

 

 

 あやかは大丈夫なのだろうか、きっと大丈夫だと自分に言い聞かせながら、不安をぬぐおうと必死になっていた。そんなあやかにアスナも、大丈夫だと元気付けるように語り掛けてた。そして、何時間がたっただろうか、あやかもアスナも静かに待っていた。

 

 

「あっ、K……先生……!」

 

「母はっ、弟はどうなったのでしょう!?」

 

 

 すると先ほどの男、Kが二人の前へ現れた。アスナはKがここに現れたというのならば、治療が終わったのだと思い、その名を呼んでいた。あやかも同じ事を思ったので、母親は、そして肝心の弟は無事なのかを問い詰めたのだ。

 

 

「……治療は成功した。後は産まれてくるのを待つだけだよ」

 

「そ、それじゃあ……!」

 

「君のお母さんも弟も無事だ」

 

 

 Kは問題なく治療は終わった。成功だと強く語りかけていた。そう聞いたあやかは、自然と涙がこぼれてきて、とても感激した様子を見せていた。そして、弟も産まれてくるのを待つだけだと、あやかへ優しく話したのだ。

 

 

「よっ、よかったぁ……」

 

「よかったね……、いいんちょ」

 

「……はい!」

 

 

 あやかは泣いて喜んだ、それを横で見ているアスナも感動してちょっと涙目だった。だからアスナは、今だけは素直にそれを祝福したのだ。そんな二人をKは眺めながら、ふっと笑っていたのだった。

 

 

「……でも、ナマイキにならないか心配」

 

「な! なんでそーいうことを言いますの!?」

 

 

 しかし、感動の場面は長続きはしなかったようでこんなとこでも、いつのまにか平常運転の二人だった。だが、二人はとても楽しそうだった。

Kは二人が元気になったのを見て、もう用はないだろうと考え、この病院を立ち去ろうとしていた。

 

 

「あっ、K……先生……」

 

「何かな?」

 

 

 あやかはそのKを呼びかけ、まだ何か用がある様子を見せた。Kはなんだろうかと思い、しゃがみこんであやかの目線にあわせ、その用件を聞こうとしていた。

 

 

「母を、弟を助けていただいてありがとうございます……!」

 

「ありがとう、K先生……」

 

「フッ、弟を大事にするんだぞ」

 

 

 あやかはKへ、少し涙目のまま、母と弟を救ってくれたことに、頭を下げて感謝を述べた。その隣のアスナも、同じように礼をしていたのだ。Kはそんなあやかへ、今度産まれてくる弟を大事にするよう、微笑みながら言葉にした。そして、Kは再び歩き出し、病院から姿を消したのだった。

 

 その後、あやかはやっぱりアスナに自分の弟のすばらしさを語りつつも、毎日のように何かを賭けて勝負する日々をすごしたのだ。

 

 

…… …… ……

 

 

転生者名:”K”

種族:人間

性別:男性

原作知識:なし

前世:医者だったが限界を感じていたので、才能がほしかった

能力:神の手と称されるほどの医療技術

特典:”医者”としての最高の才能

   ”医者”としての最高の運(助けられない命を、助けだせるという運)

 

 

 




腕のいい医者がいれば助かったのではないかと思いました

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