理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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テンプレ18:ご都合主義(かみのて)によるサーヴァント召喚

テンプレ19:ご都合主義(かみのて)によるサーヴァントの維持

テンプレ20:原作開始前に二人の仲裁

ここから基本、三人称になります


四話 黄金のサーヴァントと少女

 近衛詠春と赤蔵陽明の会談は、近衛木乃香が陰陽術を習いつつも、今は平穏に暮らすことで決着がついた。

 

 近衛木乃香は赤蔵覇王とその祖父陽明の弟子として、陰陽術を習うことになったのだ。

 

 覇王は木乃香が子鬼をO.S.(オーバーソウル)できるかを試し、シャーマンとしての適正があれば、シャーマンとしても伸ばし、最終的に前鬼、後鬼を預けてもよいかと判断した。

 

 しかし、ここに何故かあの刹那が、木乃香に抱きつかれてアワアワしている。なぜだろうか、刹那は川でおぼれかけた木乃香を助けられず、彼女から離れていたはずだ。

 

 これには深い訳があり、桜咲刹那がまだ、それを名乗る前の時まで遡る。

 

 

…… …… ……

 

 

 桜咲刹那は忌み子である。

 

 髪は白く、目は赤く、そして人には無い白い翼が背中にあった。彼女は烏族と人間のハーフという特殊な存在であり、烏族は白い翼を持つ彼女を忌み子として追放したのだ。

 

 

 この桜咲刹那となる前の幼い少女は里から追放され、路頭に迷っていた。お腹をすかせ、疲れきっていた彼女は、フラフラと、行くあてもなく、ただ、闇雲に森の中を彷徨うのみであった。

 

 そこに、青白い光が見えたので、そこに行ってみると膨大な魔力が渦巻く魔方陣が浮かんでいた。彼女は、力尽きその近くにうなだれ、このまま死んでしまうのかと思い”死にたくない”と強く念じ、叫んだのだ。

 

 

「誰か、助けてぇ……!」

 

 

 するとその青白い魔方陣から、なんと筋肉質の大男が現れたではないか。ゴールデンな金髪のオカッパの頭、サングラス。白シャツに黒い|ズボン。そしてなんと言ってもやっぱり筋肉。明らかに不良。ヤンキーがそこに立ってた。

 

 

「よ、おお? あんたがオレの大将(マスター)か?」

 

 

 突然現れた男は、少女を見てギョッっとしながら、そう質問した。なぜ、ギョッっとしたかというと、背中に白い翼が生えていたからではく、単純に、幼い少女がマスターらしき人物だったからだ。

 

 そして、刹那はまったくわからなかった、何が起こっているのかわからなかった。だから、適当に返事をしてしまったのだ。

 

 

「え? あ、はい」

 

「んむ、そうみてぇだな。ところで、どうしてこんなところに?」

 

 

 この大男は刹那にこう質問すると、忌み子として追放されたことはあえて言わなかったが、お腹がすいて、しかも疲れて動けないと説明した。すると大男はとてつもなく驚き慌てだした。

 

 

「何? 本当か!? なら、食い物を買ってくればいいんだな!?」

 

 

 大男は完全にテンパっていたので、何か忘れていた。

もっとも、買い物という取引に必要なものだ。

 

 

「あの、お金、あるんですかえ?」

 

 

 そう、お金が無ければ食い物など買える筈は無い。今さっき召喚されたばかりの大男に、そのようなものはなかった。

 

 

「うおおお!? (ゴールド)がねぇ?それじゃ駄目じゃねーか!(ゴールド)おおお!!こんな幼い大将一人助けられないっつーのか!?」

 

 

 大男は(ゴールド)(ゴールデン)といってのた打ち回っていた。刹那は、その様子を見ると、すこし元気が出てきた。と、そこへ骨ばってすこしやせた顔をした、メガネの男性が現れた。彼の名は近衛詠春。青白い魔力を察知してやってきたのだった。

 

 

「えーと、この状況はどういうことでしょうか?」

 

 

 詠春はのた打ち回る大男が白い翼の少女に漫才をしてるようにしか見えなかった。と、刹那と大男が、詠春に気がついた。

 

 

「うおおお、頼む!! オレの大将を助けてやってくれ!!」

 

 

 次はなんと、大男が突然土下座して、大将を助けてくれと言って来た。大将とはきっと、その近くであわてている少女のことなのだろうと察した。

 

 

「事情はわかりませんが、……いいでしょう。では、私の屋敷へ案内しましょう」

 

 

 そうすると詠春は快くそれを承諾し、屋敷へと案内してくれるという。人がよすぎだろう、こんな怪しい大男を連れた、羽付きの少女をそのまま預かるなどと。

 

 だが、それが詠春の美徳でもあった。大男は少女を担いで、彼についていくことにした。

 

 

…… …… ……

 

 

 そこから遡ること数十分前、ここには一人の赤茶けた髪をした少年がいた。彼は、鶏の血で魔方陣を描き、なにやら詠唱を始めたのだ。

 

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)、繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

 

 正直怪しいことをしてるようにしか見えない少年は、なにやら儀式を行っているようだった。しかし、そこへ邪魔が入る。

 

 

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤n」

 

「君、ここで何してんの?」

 

 

 なんということだ、呼び出したのはおまわりさんだった。近くに居た住民が、一人で山に入っていく怪しい少年がいると、交番に通報したのだ。

 

 怪しい、と言うのは単純に、鶏と鉈を握り締めて山へ向かって行ったからだ。そんなものを持ってる幼い少年なんぞ、不気味としか言いようが無い。

 

 また、少年の年齢は低く5歳ぐらい故に、一人山に入るのは危険だと判断され、こうしておまわりさんが探しに来てしまったのだ。

 

 そしておまわりさんは、この青白い光をただのいたずらと判断してしまったらしい。その彼はポカンとしつつ、質問に答えたが、その答えが悪かった。

 

 

「え? サーヴァントの召喚ですけど?」

 

「……意味がわからないことを言って、大人をからかうんじゃない。事情を聞きたいから、交番まで来ようね」

 

「ちょ、ちょっとまって!? もうちょいで召喚できるからさ!?」

 

 

 彼は焦った、あと少し呪文を唱えるだけで召喚できるはずが、おまわりさんに捕まって、あろう事か連れ去られてしまったのだ。

 

 

「なんでさ!?」

 

 

 そして、先ほどに戻って、刹那がやってきてしまったというわけだったのだ。

 

 

…… …… ……

 

 

 あれから少女が、髪を黒くし赤い目を隠し”()()()()”となり、近衛木乃香と出会い、友達になった頃のこと。

 

 

「よう! 大将! 元気してるか?」

 

「はい。ところで、昨日はどうでした?」

 

「ああ、久々の京だったが悪くなかったぜ!」

 

「そうですか」

 

 

 突然大きな声で幼き刹那へ挨拶するは、筋肉質な大男。そんな男へと、刹那は疑問を投げかけた。それは昨日、その男が急に出かけると言いだし、それの許可を頼んできた。

 

 刹那は別に彼がどうしようと縛る必要も理由も無いので、快く許可した。その時一緒に来ないかと誘われたが、刹那はあまり人前に出たくなかったので、それは断ったのだ。その時の男は、背丈に似合わずとてもガッカリした様子であった。

 

 男はその問いにテンション高そうに答えた。久しぶりの京都なので、ふらりと見て回っていたと。随分とまあ変わってしまったが、変わらぬ場所もあるもんだと。

 

 とはいえ、この男は刹那のサーヴァント。マスターを放置して、遠くまで行く気はない。刹那がこの生活に慣れて来たし、詠春に刹那のことを頼んでおいた。なので、少しの間ならマスターから離れても大丈夫だと考えて、京都を見て回ったのだ。

 

 

「そうやった。ずっと聞きそびれてしもーとりましたが、あなたは何者なんです?」

 

「お、オレとしたことが、スッカリ忘れてたぜ!」

 

 

 ふと、刹那は思った。この目の前の男は何者だろうか。中々タイミングが合わず、ずっと聞きそびれていたことだ。男も説明しようと思ってはいたようだが、ついうっかり忘れていたらしい。

 

 

「オレは大将に召喚された()()()()()()、クラスは”狂戦士(バーサーカー)”ってんだ」

 

「え、あ、はぁ……」

 

 

 それを尋ねれば、バーサーカーと自ら名乗った。

刹那に召喚されたサーヴァントだと言った。輝かしい白い歯を見せて笑いながら、それを豪語した。

 

 やはり刹那には、何がなんだかわからなかった。サーヴァントとはなにぞや? バーサーカーとはなんぞや? あの召喚は事故のようなもので、刹那が意図した訳ではないので、まったく理解できなかった。

 

 さらに、突然バーサーカーと名乗るこの金ぴかなヤンキーの大男は、バーサーカーの癖にやけに理性的だったからだ。

 

 ……まあ、最初の出会いでのた打ち回っていた、あれがそれなのかもしれないが。

 

 

「んまあ、気軽に”ゴールデン”って呼んでくれてもかまわねぇ。むしろそっちの方がいい」

 

「はぁ……」

 

 

 だが、バーサーカーと名乗ったのにもかかわらず、さらにゴールデンと呼んでくれと言い出した大男。どこまで(ゴールデン)が好きなのだろうか。刹那も多少なりに呆れていた。が、刹那は一つ気になった。

 

 

「えっと、その、”サーヴァント”や”クラス”とか言うんはどないなものなんですか?」

 

「おう、そいつはなぁ……」

 

 

 刹那は先ほどのバーサーカーなる男の話の、”サーヴァント”と”クラス”という言葉が気になった。当然の疑問だ。

 

 バーサーカーなる大男はとりあえず最初から最後まで刹那に説明したのだが、やはり彼女はまったくわからなかった。当たり前である。幼い少女なのだから。

 

 それに、バーサーカーは自分を馬鹿だと思っている。説明があまりうまくなかったのだ。

 

 

「まぁつまりだ、大将を守るのもオレの仕事ってわけだ」

 

 

 それならわかりやすい、単純に言えば護衛というやつか。しかし、それなら自分より、友人となった木乃香を守ってほしかった。

 

 

「それなら、ウチの友達、このちゃんも守ってください」

 

 

 それは願いだった、刹那は友人である木乃香を守りたかったのだ。

 

 

「おう、いいぜ? サーヴァントはマスターの命令には従うもんだ! それにオレは子供の味方だからな! オレが近くに居る間は、絶対に守ってやるぜ!」

 

 

 声を張り上げ、絶対宣言をするバーサーカー。刹那はこのバーサーカーに微妙に不安になりながらも、木乃香を守ってくれるという、誓いを立ててくれたことにうれしくなった。

 

 ……ただ、ひとつだけ不満があった。

 

 

「あの、その大将って呼び方、恥ずかしいんやけども……」

 

「何ィ? 嫌だったのか!? そんじゃ、大将はなんて呼べばれたいんだ?」

 

 

 大将なんて、街中で呼ばれたらそりゃ恥ずかしいものだ。だから、そうだ名前で呼んでもらおう。

 

 

「なら、名前で、”刹那”でお願いします」

 

「おう! これからよろしく頼むぜ! 刹那!」

 

 

 ここでようやく主と従者の契約が完了したと言ってもよかった。しかし、その守ってほしいと頼んだ木乃香が、彼にとって、とんでもないものだった。

 

 

「あれがこのちゃんって子か」

 

「はい、ウチの友達のこのちゃんですえ」

 

「中々いい子みてぇじゃんか。んなら、しっかり守ってやらねぇとな!」

 

 

 バーサーカーは幼き木乃香を見て、とても可愛らしいお人形のような子だと思った。それに優しそうで、とてもいい子に見えた。確かに刹那の友人になってくれる、そんな感じを受けた。

 

 それ以外にも、なにやらゆるそうな、ちょっと天然と言うかふわふわした感じにも見えたのだが。

 

 ならば、やることは一つ。彼女をきっちり守ってみせる。バーサーカーはしっかりと、決意を高らかに語った。意気込みを叫んだ。

 

 

…… …… ……

 

 

 それからしばらく経った、ある日のこと。

 

 突然刹那が剣の修行に没頭し、友人の木乃香を避けるようになったのだ。これにはバーサーカーも驚いた、なにせあんなに仲良くしていたのだから。いったい何があったのか、刹那に聞いても教えてはくれなかった。

 

 バーサーカーはヒーローであろうと心がける男だ。このまま彼女たちが、仲違いしたままというのは、後味が悪すぎる。だから、刹那に何があったかを知るために、木乃香のほうに話しかけてみた。

 

 

「よう! 刹那から聞いていると思うんだけどよ、オレはバーサーカーってんだ、よろしくな」

 

「ほえ? バーサーカーはん? ウチはこのえこのかって言-ます。こちらこそ、おおきにー」

 

 

 バーサーカーは元気よく木乃香へと挨拶した。

挨拶はとても大切なものだ、第一印象も重要だ。バーサーカーはニカッと笑い、木乃香を怯えさせぬよう話しかけたのだ。

 

 木乃香もバーサーカーのことは刹那から聞いていた。筋肉質な大男、ヤンキーみたいな風体だが、とてもやさしく頼りになると聞いていた。

 

 確かに見た目はヤンキーだ。やることなすこと全部豪快な感じだ。ただ、それを感じさせない、やわらかい印象を木乃香はバーサーカーから受けていた。刹那から聞いたとおり、見た目に反して温かみのある人物だと木乃香は思った。

 

 

 

「まっ、ゴールデンって呼んでくれ!」

 

「ゴールデンはんかー、それもええなー」

 

 

 そして、お決まりの台詞。ゴールデンと呼んでくれ。バーサーカーは木乃香へもそう話した。

 

 木乃香もゴールデンという言葉に反応し、ニコニコと笑って見せた。こうして少しずつだが、バーサーカーは木乃香へと絆を深めていったのだ。

 

 

「ところでよぉ……。なんか最近、刹那の様子がおかしいんだが、どうしてか知ってっか?」

 

「……それがウチもよーわからへんのや……。ウチが川でおぼれそうになってから、せっちゃんは顔を合わせてくれへん……」

 

 

 バーサーカーは木乃香とある程度親密になったことを悟り、本題を切り出した。

それはマスターである刹那のことだ。最近の刹那はどこかおかしい。その理由を知っているかどうか、木乃香へ質問したのだ。

 

 だが、木乃香にもその理由がわからなかった。自分が川で刹那と遊んでいた時に、そこでおぼれそうになった時から、刹那の様子がおかしいことは知っていた。それでも刹那の内心を知ることができなかった木乃香は、理由がわからないのだ。

 

 

「そいつは困ったなあ、でもなんか少しわかった気がするぜ。で、でもよぉ、泣かれると困るぜ……」

 

「う、うん……。すまへんなー……」

 

「別に気にするこたぁねえよ。でもこのかちゃんもわからない理由か……」

 

 

 バーサーカーは泣き出しそうになる木乃香に慌てつつも、要点を聞き出したし、納得していた。ああ、そういうことか、と。

 

 木乃香も人前でぐずついたことをちょっと恥ずかしく思い、涙を拭ってバーサーカーへと謝った。バーサーカーが困った顔で慌てていたからだ。

 

 バーサーカーは特に気にしないと言う態度で、再びニカッと笑って見せた。ただ、木乃香も知りえない刹那の変化、さてどうしたものかと思った。もしかしたら、バーサーカーはふとそれが頭に浮かんだ。ならば次にどうするかを考えた。

 

 

「なぁ、このかちゃん……。ここはオレに任せてくんねぇか?」

 

「うん……」

 

 

 木乃香はバーサーカーの作戦に相乗りした。さあ、次は刹那にあってもう一度話そう。

 

 

…… …… ……

 

 

 ……そこは関西呪術協会、総本山の一室。バーサーカーが刹那を、この場所に呼び出したのだ。

 

 

「あの、バーサーカーはん。お話って、なんでしょうか?」

 

「あぁ、なに。このかちゃんに事の詳細を聞いてな。どうして、会ってやらねぇのかと思ってよ。いったい、どうしたってんだ?」

 

 

 バーサーカーは直球で、とりあえず質問した。しかし、つっぱねられて答えが聞けない。しかし、刹那はバーサーカーをゴールデンと呼ぶ気はないらしい。というか、ゴールデンって何だろうか、と考えてちょっと恥ずかしいと思ったからだ。

 

 

「……バーサーカーはんには、関係ありまへん。それでは失礼します」

 

 

 もう、話すことはないという感じで、部屋から出て行こうとする刹那を、とりあえずでかい体で阻止しつつ、バーサーカーはもう一度話をした。

 

 

「……なして、そんなにかまうんです?」

 

「だって、今の刹那は明らかに無理してるじゃんか。一目でわかるぜ、本当は一緒に遊びてぇんだろ?」

 

 

 バーサーカーは精神年齢が子供に近い。だから子供の気持ちがよくわかるのだ。刹那が自分の気持ちを殺して、剣の修行に没頭しているのがわかっていたのだ。だから、どうしても自分に正直になってほしかった。

 

 

「……そうや、ウチやって、そうしたい」

 

「だったらよ、そうすりゃいいじゃん! どうして、そうしねぇんだ?」

 

「でも、あの時守れへんかった! せやからもっとつよおなって、このちゃんを、しっかり守れるようなりたいんや!」

 

 

 バーサーカーは納得した。刹那は木乃香を守れなかったことを後悔し、次こそは失敗しないよう、力を付けたくなったということを。だが、バーサーカーは納得できない部分があった。だから、すこしだけムキになってきてしまった。

 

 

「そりゃいいことだが、そのこのかちゃんが悲しむのはよくねぇ……。それに、強くなっても一緒にいれなきゃ、守れねぇぞ!」

 

 

 このバーサーカー、子供の涙に弱かった。だから、木乃香にも刹那にも、仲良くしてもらって元気になってもらいたいのだ。バーサーカーが言った事は正しいのだが、刹那にはもうひとつ懸念があったのだ。

 

 

「……ウチには、この白い羽があるんや! みんなに嫌われて、その上このちゃんにも嫌われたら……」

 

 

 そう言うと、刹那は背中から、白い翼を生やす。刹那は木乃香が川でおぼれかけた時、この翼を使えば助けられたのに自分可愛さにできなかったことを、とてつもなく後悔していたのだ。

 

 

 また、バーサーカーは刹那のことを、詠春から聞かされていた。彼女が烏族と人間のハーフということを。だが、それでどういう扱いを受けていたかまでは聞いてなかった。

 

 

「その綺麗な羽がなんだってんだ? 刹那はハーフだってことを気にしてんのか?」

 

「当たり前やないですか!これのせいで、みんなに嫌われて、いじめられて……そして……」

 

 

 刹那は感極まって泣き出してしまった。バーサーカーは反省した、やっべ、言い過ぎた、と。泣き出した刹那に焦りつつ、謝罪をしながら自分のことを話した。

 

 

「……熱くなりすぎてわるかったよ、刹那。たしかに、それじゃつれねぇよな。でも、オレだって同じようなもんだぜ?」

 

「……え?」

 

 

 そういえば、バーサーカーは、バーサーカーとは名乗ったが真名は一回も名乗っていなかったのだ。だからこの場で教えることにした。

 

 

「オレの真名は”()()()()”……。あの、まさかり担いだ金太郎、その本人だ!」

 

「……は?」

 

 

 得意顔で真名を語るこのヤンキーな大男。坂田金時。まさかり担いだ金太郎の成人した名前。源頼光の部下だった男、四天王だった男。

 

 しかし、今まで何故、バーサーカーは真名を話そうとしなかったのだろうか。そこにはちょっとだけ理由があった。

 

 このバーサーカー、ゴールデンなる男は、自分の名前がダサいと思っているのだ。故に、呼んでくれるならゴールデンだと語っていたのである。まあ、ゴールデンと呼ばれるのもかっこいいかは別であるが。

 

 

 刹那には意味がわからなかった、あれは過去の人物だ。こんなところで、ヤンキーやってるわけがない、馬鹿にしているのかとすら思ったのだ。

 

 ……そりゃ、金太郎がヤンキーになったなんて、誰も信じはしないだろう。しかし、そういえば、バーサーカーが説明してくれたことを思い出す。

 

 ――――サーヴァント、それは過去や未来から英霊という存在を召喚したものだ。その英霊は、英雄と呼ばれた人物たちが、死んだことで召し上げられた存在だ。まさか、そう刹那は考えた。

 

 

「そう、オレは本物だ。そんでもって、オレの母親は山姥さ」

 

 

 坂田金時と名乗ったバーサーカーは、自分の片親が妖怪の類だと暴露した。つまりそれは、刹那と同じハーフだと言いたかったのだ。そして、さらにバーサーカーは続ける。

 

 

「ま、もう片方が雷神の赤龍で、人間ですらねぇんだけどな」

 

「え? はい?」

 

 

 刹那は、なんだかもうよくわからなくなってきた。山姥と雷神がどうやったら、坂田金時を生み出すのか、もうわけがわからなかった。そこで、バーサーカーは自分がどうしてきたかを少しだけ話した。

 

 

「オレも刹那のように、頼光の大将に拾われてよ。んでもって四天王になって、バッタバッタと妖怪どもを蹴散らしてきたってわけよ」

 

 

 このバーサーカー、ミスターゴールデンは、刹那の境遇に多少自分を重ねていた。確かにオレもそうだった。生まれながらに持ったゴールデンな金髪は、忌み子の象徴だったなと。

 

 刹那はそこで、バーサーカーが何を言いたいかわかったのだ。オレはお前と同じだ、だから気にするな、そう言いたいのだとわかったのだ。なんというゴールデン不器用。しかし、バーサーカーにだけ、受け入れられても意味がないのだ。

 

 

「でも、バーサーカーはんはええかもしれへんけど……。このちゃんは……」

 

 

 と、そこで聞き覚えのある声が聞こえた。かわいらしい、毎日聞いていたあの少女の声だ。

 

 

「……せっちゃん、そのことでずっと悩んどったんやなぁ……。でも、ウチはそんなん全然きにせへんよ。むしろそのハネ、天使みたいで、きれいやわぁ……」

 

 

 なんと、バーサーカーの後ろから、すこし涙目になった木乃香が出てきたのだ。そして、トタトタと刹那に近づき、そのままダイブする。

 

 

「え!? お嬢様!?」

 

「お嬢様じゃなくて、このちゃんや」

 

 

 なぜ木乃香がバーサーカーの後ろから出てきたのかというと単純に、体がでかいバーサーカーの背中に、引っ付いていただけだった。それを隠すように、後ろを刹那に見せることなく、会話していただけなのだ。

 

 バーサーカーは少し無茶な作戦だとは思ったが、木乃香が刹那を白い翼が生えている程度で嫌うとは思っていなかったので、実行したのだ。

 

 

「え、あっ!?」

 

「このハネ、ふかふかやわぁ~」

 

 

 刹那は自分が翼を出していることを忘れていたのだ。そして、その白い翼に、もふもふと包まっていく木乃香がいた。刹那は、急に恥ずかしくなってきた。

 

 

「~~~~~~~ッ」

 

「せっちゃん、かわえぇなぁ~」

 

 

 なんかもう、いつの間にか二人の世界になっていた。バーサーカーは、もう安心だろうと思い、霊体化して部屋を後にした。

 

 ……バーサーカーはクールに去るぜ。

 

 

 その後、バーサーカーはその経緯を詠春に話し、外に出て行こうとする刹那を抑えて説得し、木乃香と刹那は、またいっしょに遊ぶようになったのだ。

 

 

…… …… ……

 

 

転生者名:不明、赤茶色の髪の毛の少年

種族:人間

性別:男性

原作知識:あり

前世:30代手前の会社員

能力:投影魔術

特典:衛宮士郎の能力、オマケで衛宮士郎が使った宝具を投影可能。

   一度だけ好きなサーヴァントを召喚する能力

(”召喚する能力”なので令呪がもらえなかった

 そして、令呪がないため召喚を始めたら最後までやらないと他人に取られる恐れがある)

 

 

真名 坂田金時

クラス バーサーカー

マスター 桜咲刹那

性別 男性

身長/体重 190cm/88kg

属性 秩序・善

ステータス

筋力 A+ 耐久 B 敏捷 B 魔力 C 幸運 B 宝具 C

 

クラススキル 狂化 E

 

保有スキル 怪力 A+ 動物会話 C 天性の肉体 A 神性 D

 

宝具

黄金喰い(ゴールデンイーター)

ランク B 種別 対人宝具 レンジ 1 最大補足 1人

ゴールデンな鉞、15発の雷カートリッジ仕様。

 

黄金衝撃(ゴールデンスパーク)

ランク C 種別 対軍宝具 レンジ 5~20 最大補足 50人

ゴールデン理不尽。




大聖杯のサポートや魔力供給などをは、送りつける側の転生神が勝手にやってる設定
(サーヴァント召喚特典で召喚しても、維持できないと意味がないため)
ゴールデンスパークはマテではC-ですが宝具強化を考慮しCにしております

この作品では、木乃香はすぐに麻帆良へ行かず、覇王や陽明から陰陽術を学びます

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