理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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テンプレ78:夕映とのどか地味に強化

みんな大好き海水浴回


三十六話 島

 海は広いな大きいな。ここは雪広グループのリゾート島である。本来”原作”なら、ネギのみを誘おうとしたあやかだったが、ネギ以外にもある程度クラスメイトを誘ったようだ。そこで誘われたアスナたちは休日にこのリゾート島へと訪れていたのだ。

 

 しかし、ここに覇王や状助の姿もあった。なぜかと言うとアスナと木乃香が誘ったからだ。というか、ホイホイ男子誘っていいのかよ、と状助は思った。

 

 だがまあ、アスナもあやかも状助とは旧友の仲、特に気にすることも無いと思っていた。それは単純に状助はヘタレで人畜無害という意味でもあるだろう。

 

 そんな状助はその誘いを何度か断っていたのだが、覇王が行くと言うので仕方なくついて来たのだ。その覇王は木乃香に押し切られてしまったらしいが。

 

 そして木乃香のクラスメイトたちがいっせいに海へと飛び込んで行く中で、状助は海など目もくれずに釣りをする覇王へと話しかけていたのである。

 

 

「しかしよぉ~、ここに来て覇王は釣りかよ~、どんだけ枯れてるだおめぇはよぉ~!」

 

「いいじゃないか、特にすることなど無いからね」

 

「ほんとジジイみてぇなヤツだなあ、覇王よぉ~!」

 

 

 リゾート島へ来て釣りとか、どういう感性しているのかと状助は考えていた。仮にも中学生だというのに、このおっさんっぷりの覇王。老け込みすぎだろおめぇよー、と状助は思うのであった。

 

 しかしその覇王は特に気にせず釣りをする。釣れているようには見えないが、こうやって動かないのがよいらしい。

 

 

「ジジイだから仕方ないだろう? 何年生きてると思ってるんだ?」

 

「かぁ~、この覇王もうダメだぜ……」

 

 

 状助は覇王の枯れっぷりに完全にあきれていた。話に聞けば露天風呂で女子と遭遇したらしいじゃないか。そこでもなんとも思わない覇王に、状助は完全にジジイ、枯れ木と称していた。どうしようもないこの覇王に、一人の少女がやってきた。白い生地に桜の花柄模様のワンピース水着を着た木乃香である。

 

 

「はお、なんで釣りなんてしとるん?」

 

「木乃香か。別にいいじゃないか、邪魔にはなってないだろ?」

 

「こー言う場所に来たんなら、泳がんともったいないんやない?」

 

「気にしないでほしいな。僕はこうして静かに釣りをしていたほうが、好きなんだ」

 

 

 この覇王は騒ぐより静かなほうを好む。当然騒いで泳ぐより、こうして静かに釣りをしていたほうが好みなのだ。だが木乃香はまったく納得がいかない。とりあえず覇王を連れ出すことにした。そう考え、覇王の顔を覗き込む木乃香であった。

 

 

「はおー、一緒に泳ごー?」

 

「何でだい? 木乃香は刹那たちと遊んでいればいいじゃないか」

 

「えーやん! 少しぐらい付き合ってくれてもえーやん!」

 

 

 すると木乃香は覇王の手を引っ張り、無理やり海に連れて行こうとしたのである。だが覇王は動かない。あの長刀である物干し竿を操るほどの力を持っているからだ。だからさらに木乃香は手札を増やしたのだ。

 

 

「ちょっと木乃香? 無理に連れて行く気か? な、前鬼に後鬼!?」

 

「前鬼、後鬼ー、はおをつれて来てー」

 

 

 そこで木乃香は前鬼、後鬼をO.Sした。こうなることを予想して紙の媒介を持ってきていたのだ。そしてその前鬼、後鬼に担がれそれに驚く覇王であった。

 

 

「こ、木乃香! そこまでやるとは思わなかったぞ! ……まあいいか、しかたないやつだ……」

 

「うわぁ……、覇王が負けてるぜ、グレート……」

 

 

 なんてことだ、あの覇王が前鬼、後鬼に捕まり、そのまま木乃香に拉致されてしまった。もはや諦め、完全に前鬼、後鬼に身をゆだねている覇王。木乃香もそれと共に歩いていった。

 

 そして海に投げ捨てられ、木乃香に抱きつかれて海に浮かぶ覇王は、もはやそこには大陰陽師としての姿はなく、ただの中学生であった。

 

 だが、ここでS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を使って鬼たちを倒さなかったのは、覇王の優しさであった。というのも捕まった時点で、完全に諦めていたのだ。

 

 いや、巫力無効化を使えば逃れられるだろうに。それをするほどでもないと多分覇王は感じたのだろう。その覇王を見た状助は、とんでもないものを見たと思っていた。

 

 

「覇王のやつ、木乃香に好かれてんなぁ~。つーか、いつの間にか名前で呼ばれてやがるじゃあねぇーかー!」

 

「そうね、随分イケイケなのね、このか」

 

 

 この木乃香の豹変振りに、状助は驚いていた。そこに一人の少女がやってきて状助の話に加わった。その状助は誰と話しているかを気にせず、さらに言葉を進めていく。

 

 

「まったく、どうしてこうなってんだ!? ありのまま起こったことを話すぜ! 状態だぜぇ」

 

「それはこのかが覇王さんに告白したからよ」

 

「ぎゃにぃぃぃ~~~!? うそだろ承太郎!!? つーか銀河がいつのまに!?」

 

「さっきから会話してたじゃない……」

 

 

 先ほどから状助の会話に加わっていたのは、新タイプのスクール水着のアスナであった。かれこれ小学生のころから付き合いのあるアスナは、状助とはある程度親しいのである。

 

 その状助はいつの間にか会話に加わっていたアスナに驚き戸惑っていた。そんな慌てる状助を、アスナはあきれながら目を細めて見ていた。

 

 

「このかが覇王に告白だとおおお!? どういうことだぁぁ!?」

 

「どうもこうもないわよ、このか本人がそう言ってたんだから」

 

「グレート、覇王の野郎フラグ立ててやがったのかよ……」

 

 

 アスナから事情を聞いた状助は、一歩後ろへ下がるほど驚いていた。まさかあの覇王がフラグを立ててしまっていたなどとは思っていなかったからだ。その驚きまくる状助を、やはり珍獣を見る目でアスナは見ているのである。

 

 

「状助はそのフラグとか言うやつ立ってないの?」

 

「立てる訳ねぇーだろ!!」

 

 

 状助が覇王のやつフラグを立てたと言ったので、アスナは状助もフラグを立てないか聞いてみた。すると状助はそんなもん絶対に立てぬぅと叫んでいた。やはり状助は昔と同じく、そういうことはしたくないようだ。

 

 またアスナは中学の最初まで、状助を苗字で呼んでいた。だが、最近は名前で呼ぶようになったのである。状助はまだ気恥ずかしいので、アスナを苗字で呼んでいるのだが。アスナは状助を腐れ縁の友人として接しているのである。

 

 

「フラグなんて絶対立てたくねぇぜ!」

 

「ふーん、状助は面白くないわねぇー」

 

「おめぇーも覇王と同じことを言うのかよぉ~!!」

 

「あ、やっぱ覇王さんも同じ意見なんだ」

 

 

 状助は覇王によく、面白くないやつと言われている。一切のフラグを立てず、原作知識を忘れたくても忘れられない、平凡な転生者。フラグの一本や二本ぐらい立ててくれれば、面白いものが見れそうだと、覇王は考えているのである。

 

 しかし実際フラグを立てたのは、状助ではなく覇王だった。そして木乃香に抱きつかれ、海の上で静かに浮かぶ覇王を、激写するものが居た。

 

 

「いやあ、あれアツアツだねー。きっと面白い記事になるよー!」

 

「木乃香さんは、意外と行動的」

 

 

 白いビキニを着た和美である。和美は覇王に抱きつく木乃香の行動力に笑いながらカメラを構えていた。そしてその横でマタムネは、その木乃香の大胆な行動に少し驚いていた。

 

 

「しっかし、見せ付けてくれるね、あの二人」

 

「むしろ覇王様が遊ばれているのではないでしょうか」

 

「いやー、近衛のやつもあんなに押しが強いとは思わなかったよ」

 

「木乃香さん、なかなか強気のようですね」

 

 

 あのおっとり系大和撫子の木乃香が、あれほどまでに押せ押せな姿を誰が想像しただろうか。そんな覇王は完全に海に身を任せていた。それは単純に、どうにでもなれーの表れである。

 

 木乃香はそんな覇王に引っ付き、顔を少し赤くしながらも笑っているのだ。なんとほほえましい光景だろうか。

 

 それを遠くで見守るものもいた。少し古いタイプのスクール水着を着た刹那である。刹那は覇王と戯れて笑顔で遊んでいる木乃香の姿を、嬉しそうに眺めていたのだ。

 

 

「このちゃんは本当に覇王さんが好きなんですね……」

 

「あーあ、ほんとどうしてこうなってんの?」

 

「あれ、バーサーカーさん、いたんですか!?」

 

 

 突然現れたバーサーカーに驚く刹那。と言うのもこんなところまでついて来るとは思っていなかったのだ。バーサーカーは特に悪びれた様子も無く、覇王と木乃香を眺めていた。

 

 

「おう、霊体化してこっそりついてきたぜ」

 

「いいんでしょうか、それで……」

 

 

 さりげなくこのバーサーカー、霊体化して乗り込んできたのである。このキャッホー、女子だらけの海水浴、によくやってきたものだ。しかしバーサーカーの任務は一応木乃香の護衛、逃げるわけにもいかんのだ。だが半分は海で暴れたいと思っていたりもする。

 

 

「一応護衛だからよ。しっかし、いらなかったかもなあ、あれを見ちまうとよお」

 

「そうですね。このちゃんは覇王さんにべったりで、普通に手が出せませんよ」

 

「ハッハッハ、違ぇねぇ!」

 

 

 木乃香は覇王にべったりである。というか随分過激なスキンシップだった。これが覇王でなければ雄たけびをあげて襲ってしまいかねないだろう。だが覇王は状助から枯れ木と称されるほどの感性の持ち主。もはや慣れた様子で木乃香をかまっているのである。

 

 

「覇王さんも、なんと言うか……」

 

「しょうがねーぜ、覇王のやつ、一応1000年前から存在してんだからよ」

 

「は!? な、何ですその話!?」

 

 

 覇王は1000年前に一度生まれ、転生したことを刹那や木乃香に話していない。というのも別に話す必要はないと考えていたからである。そんな驚きの事実をバーサーカーから語られた刹那は、当然驚いていた。

 

 

「知らなかったのかよ!? 覇王は何度か転生して、今に蘇った大陰陽師だぜ!?」

 

「し、知らないですよ!? そんなこと、一度だって話してくれなかったんですから!」

 

 

 覇王はこの世界で二度転生したものである。そしてかれこれ1000年は魂としては存在している。まあ枯れててもしかたがない部分もあったりする。

 

 だが、精神は一応肉体に引っ張られるはずなので、本来の感性は中学生のはずなのだ。だが覇王は結構悟っているので、やはり反応がド鈍いのだ。

 

 

「話してなかったのか、あいつ。まあ、教えても教えなくても、意味ねぇことだしな」

 

「ま、まあ、知ったところで、今の覇王さんが変わる訳ではありませんからね……」

 

「でもよー、あの態度はねぇだろ……。あんなに抱きつかれてるのに、スルーしてるんだぜ!?」

 

「で、ですよね……。なんというか、慌てることを知らないというか……」

 

 

 覇王は友人たちがドン引きするほど、反応が淡白すぎるのだ。木乃香がそこまで出るところが出てないにせよ、柔らか女性の肢体をゼロ距離で感じても、なんとも思ってない様子なのである。それではあまりに木乃香がかわいそうだ。

 

 

「あ、でもオレだったらテンパって逃げちまうな」

 

「バーサーカーさん、意外にウブなんですね」

 

 

 だがバーサーカーはそんなことされたら、たちまち逃げると豪語していた。それを聞いた刹那はウブと感じた。まあしかし、バーサーカーは少女に弱い。恋に弱い。そりゃ当然逃げるだろう。そこで言い訳ではないが、バーサーカーはどうしてそうなったかを、刹那に今度話してもいいかなーと思ったようだ。

 

 

「いや、まあ、今度色々話してやるよ」

 

「そういえばバーサーカーさんの過去って、あまり聞いたことがありませんね」

 

「ああ、だからそこらも踏まえて、話してやっからさ」

 

「それは楽しみですね」

 

「おう、楽しみにしておいてくれ、刹那!」

 

 

 バーサーカーもそろそろ自分の過去ぐらい刹那(マスター)に教えてもよいと考えた。実際、ある程度夢で刹那はバーサーカーの過去を垣間見てはいるのであるが。しかし、本人から聞けるとあれば、刹那も楽しみなのである。

 

 そして、ちらっと刹那は木乃香を見ると、覇王の腕に抱きつき海に浮く覇王を引っ張り、笑っているのである。いやはや青春であった。

 

 して、そこにもう一人覇王と木乃香の様子を見ている少女がいた。白いワンピース水着を着たあの焔である。焔は魔法世界人であり、魔法世界で超有名な覇王のファンである。微妙に複雑な心境であった。

 

 

「覇王さん、良き人を見つけたのですね……」

 

「みたいねぇ」

 

 

 そこに来たのはアスナであった。状助と会話を終え、覇王をじっと見ている焔に話しかけたのである。というのも状助はあの会話の後、逃げるように海に飛び込んで行ったのだ。そこまでしてフラグを立てたくないのである。

 

 

「アスナか、いやはやあの覇王さんを見ると、切ないというかなんというか」

 

「焔ちゃんは覇王のファンだもんね」

 

「だが、別に嫉妬などはしていない。覇王さんが幸せとなるのなら、祝福するのがファンの礼儀なので」

 

「ほんと覇王のことが好きなのね」

 

 

 焔は覇王のファンだ。というか覇王は魔法世界でファンクラブがあるほど人気である。だが焔はファンクラブには入っていない、所謂はぐれファンと言うものである。また焔は覇王が好きだが、それは敬愛から来るものであり、ただの尊敬できる人という意味でしかないのである。

 

 

「そうだな、好きではあるがそれは尊敬できる人という意味で、好きなんだ」

 

「ファンだもんねえ。まああの二人が本気で付き合い出したらチャチャ入れつつ祝ってやりましょ?」

 

「うん。あの二人は、結構お似合いな気もする」

 

 

 アスナはあの二人が付き合ったら、祝ってやろうと言っていた。焔も同じ気持ちであった。尊敬すべき人とその弟子なのだから、お似合いだと思っていたのだ。あわよくば二人の恋愛がうまくいくよう、祈っているアスナと焔であった。

 

 

 だが、そこに覇王と木乃香の姿を見て、気に食わないやつもいた。カギである。カギも呼ばれたというか、ネギが行くというからついて来たのである。そういう当たりは、なかなか抜け目が無いやつだ。

 

 

「ぐぎー! あの野郎! フラグ立ててるじゃねーかー!!」

 

「いやあ、ありゃデキてるとしか思えねぇぜー」

 

「ファーック!! どうして俺じゃねぇんだよ!!」

 

「あ、兄貴には兄貴のいいところがあるから大丈夫ですぜー!」

 

「そういう慰めが一番惨めなんだよー!!」

 

 

 このカギ、魔法学校ではモテモテだった。しかし麻帆良に来てから、まったくモテないのだ。まあ、魔法学校の時は、英雄の息子としてちやほやされていたのだろう。

 

 しかし麻帆良では、その理由は通用しないのだ。そして、ネギのほうを見ると、夕映とのどかに囲まれていた。そこにも羨ましいクソーとカギは思うのである。

 

 

「なんでアイツもモテるんだよー! 意味がわからねぇー!!」

 

「兄貴ぃぃ! どこへ!?」

 

 

 カギはその光景に悔しくなって走り出していた。もはやこんな光景見たくもないと思っているのである。そこで突然走り出したカギを追って、どこへ行くのかカモミールはたずねていた。

 

 

「こんなモテモテな連中と居られるか! 俺は部屋に戻る!!」

 

「あ、兄貴それは死亡フラグだー!!?」

 

 

 カギは涙を流し逃げ出した。どうしてこうなっちまったんだー!と思っていた。そこで惚れ薬チョコのことを思い出し、どこかに忘れてしまったことも思い出した。それでまた、涙を流すカギであった。また、あのチョコレートは覇王によってこっそりと焼却処分されていた。

 

 

…… …… ……

 

 

 黒いワンピースの水着を着たのどかと夕映が、ネギと魔法の話をしていた。そこでネギは夕映とのどかが魔法使い候補となったことに驚いていた。そもそも一般人である二人が、ある程度魔法が使えるようになっていることに、驚いているのだ。

 

 まあ、そういう話は魔法を知らない人の前では話せないので、こっそり会話していたのである。また、しっかりと認識阻害をかけているので、話しを聞かれてもゲームの話し程度にしか感じないようになっていた。

 

 

「ネギ先生、師匠はすごい方ですね」

 

「お師匠さまから魔法を教えてもらってるんでしたっけ?」

 

「はい、ネギ先生のように、なりたいと思いまして……」

 

「のどかはとても優秀です! 私も負けれら居られません!」

 

 

 二人はギガントの弟子となり、ある程度の魔法を教えてもらっている。攻撃魔法は覚えていないが、それ以外のサポート系の魔法を教えてもらっているようだ。夕映もよく頑張っており、のどかも夕映が優秀と言うほど、なかなかの上達具合のようであった。

 

 

「お師匠さまから、どんなことを教えてもらったんですか?」

 

「火を灯れから、対衝撃用障壁や簡単な治療魔法です」

 

「私もゆえと同じです、だけど私は障壁より、治療魔法を優先してます」

 

 

 障壁にて防御を覚え、治療魔法も覚えているようである。夕映は防御に重点を置き、のどかは回復に重点を置いているようであった。それ以外にも武装解除なども教えられているらしい。

 

 いやはや何ヶ月もかけて火を灯れを練習せねばならんというのに、それがもう出来るようになっているというのは、なかなかの才能である。

 

 

「そうだったんですか。僕も攻撃魔法を覚えたのは、結構後だったんですよ」

 

「ネギ先生も、そうでしたか」

 

「お師匠さまはあまり他人を傷つけることを、好まない性格なんです」

 

「うん、師匠さんは傷つけるより、癒すほうがよいと言ってました」

 

 

 ギガントは医療団を結成するほどのものである。職業柄、治療を得意としており、基本的に戦闘を好まない。ただ、戦わなければならない場面では、躊躇わない性格でもある。そういう性格だからこそ、まずは攻撃より回復や防御を教えてしまうのである。そこにもう一人魔法を知るものが来た。やはりパパラッチ和美であった。

 

 

「おやおや、面白いことになってますなー」

 

「な!? 朝倉さん!?」

 

「まさか聞かれちゃった!?」

 

 

 和美はこっそりとネギたちの話を盗み聞きしていたようだ。そしてここぞと言うタイミングでひょっこり現れ、その三人を驚かしてやろうと考えていた。

 

 案の定三人は和美の姿を見て驚き、予想通りの表情をしていたことに和美の顔に笑いが漏れていた。しかし、認識阻害をかけているので、そこまで驚く必要はないはずなのである。

 

 

「大丈夫大丈夫! 魔法のことなら知ってたから!」

 

「たしかカモ君が勝手に教えたんだっけ……」

 

 

 しかし、和美は魔法を知っていたので、認識阻害がうまく働かなかったようだ。この認識阻害は、魔法の会話をゲームっぽい会話として聞かせるものであり、魔法を知らない人には効果が高いのだが、魔法を知っている人にはさほど効果が出なかったようだ。

 

 だが、魔法のことを知ってたら、むしろ大丈夫ではないのだが。また、そこでネギは修学旅行の時に、カモミールが和美に魔法を教えたことを思い出した。

 

 

「そうそう、だからそのまま話してても平気だよ?」

 

「でも、魔法のことはあまり知らないほうがいいんじゃないでしょうか?」

 

 

 ネギは魔法使いでもない一般人が魔法のことを知っているのは、あまりよくないと考えていた。そもそも多少大げさな言い方だが、魔法を使えないのに魔法を知っているということは、身を守るすべがないのに危険なことに片足を突っ込んでいるようなものだからだ。

 

 

「そのとおりですよ。魔法に深く関わると、いつか危険な目に遭うやもしれません」

 

「ね、ネコー!?」

 

 

 そこに一匹のネコが来た。マタムネである。マタムネは魔法と関わると、魔法使いの事件に巻き込まれるかもしれないと考え、言葉にしていた。だがしかし、その言葉以上に、ネギも夕映ものどかも、そのマタムネに釘付けとなっていた。

 

 

「ネギ先生! ネコがしゃべってます!!」

 

「かわいいー! 名前はなんて言うのですか?」

 

「おっと、小生としたことが。申し遅れたが名をマタムネと申す。お見知りおきを」

 

「マタっちは私の友達だからね!」

 

 

 マタムネは名前を聞かれ、自己紹介するのを忘れいてたと思い、即座に名乗った。夕映ものどかも、ある程度魔法に触れ使えるようになったせいか、O.S(オーバーソウル)たるマタムネを見ることができるようだ。

 

 ネギも夕映ものどかも、とりあえずそこで自己紹介をしたのである。そこでマタムネはネギの自己紹介の中で、彼女たちの教師をしていると言う言葉に反応していた。

 

 

「お前さんが教師なのですか。世の中も変わったものですね」

 

「魔法使いとしての修行が、先生をすることだったんですよ」

 

「魔法使いの修行なのに、先生なの!?」

 

「魔法使いとは、一体何なのですか!?」

 

「魔法関係なくない?」

 

 

 いやはや、魔法使いの修行が先生とはこれいかに。誰もがそれをツッコんでいた。ネギもそう言われて見ると、なんでだろうと考えてしまうほどだった。だって、先生するのに魔法はいらないのだから当然である。

 

 

「まあいいじゃないですか。それもまた人生、よき出会いがあったと言う事ですよ」

 

「よ、よき出会い!?」

 

「出会いはまさに運命ということですね!」

 

「確かに、そうかもしれません」

 

 

 よき出会いと聞いて、のどかは顔がりんごのように赤くなっていた。そりゃネギに告白したのだ、よき出会いとは好きな人と出会うことだと勘違いしたのである。

 

 それを見た夕映も同じような考えであったらしく、そっちも勘違いしたようだ。しかしネギはクラス全員こそよき出会いと思い、人生深いなあ、と考えていた。そこで和美はそのマタムネの言葉を聞いて、海岸辺りに指を指していた。

 

 

「ほらほら、あっちはよき出会いでラブラブだよ!」

 

「あれは覇王さんとこのかさん!?」

 

「な、このかさん、なんて大胆な……」

 

「あのぐらい大胆になれれば私も……」

 

 

 そこで和美が視線を向け、教えたのは覇王とこのかの戯れであった。ラブラブなのかは別として、とても仲むつましい光景だったのである。大胆にアタックする木乃香に夕映は戦慄し、のどかはあのぐらい大胆になれればと考えていた。

 

 

「のどかも負けれいられませんね!」

 

「でもー、あんなこと私できないよ」

 

 

 木乃香のようになれれば、ネギにもっと近づけると考えるのどか。だがそこまで勇気がでないとも思っていた。そんなのどかに頑張ってほしいと願う夕映が、その横で応援していた。

 

 

「覇王さんもこのかさんも、とても仲がいいんですね」

 

「ふむ、ネギさんとやらはまだまだ人生経験が浅いようだ」

 

「いやー、あの年で人生経験豊富だったら結構驚くよ?」

 

 

 だがネギはあまりそういうことがわかっておらず、単純に仲がよいんだな、程度しか思えないのである。まあ、そこまで察せる10歳児は、少しアレかなと思う和美でもあったが。

 

 

「そうだ、ネギ先生も一緒に魔法を教えてください!」

 

「うん、そうしてもらえると嬉しいかな……」

 

 

 夕映はのどかのために、ネギにも魔法を教えてほしいと頼んでいるのである。それを察したのどかも、同じくそうしてもらいたいと言っていた。それを聞いたネギはその理由がわからずに、どうしてだろうかと考えていた。

 

 

「お師匠さまだけじゃなく、僕にも?」

 

「はい、是非お願いします!」

 

「お、お願いします!」

 

「うーん、お師匠さまだけで十分だと思うんだけどなあ」

 

 

 夕映ものどかもネギに魔法を教えてもらうようにお願いし、頭を下げていた。夕映は当然のどかがネギに魔法を教えてもらえれば、二人の距離が縮まると考えていた。その横でのどかもネギに魔法を教えてもらえるだけで十分嬉しいと思っていたのだ。

 

 しかしネギは自分が教えるより、ギガントが教えたほうがよいと考えていた。まあそれ自体は間違えでは無いのだが。そこに助け舟を出したのは、やはりマタムネであった。

 

 

「まあよいではないですか、ネギさん。二人とも、一生懸命に頼んでおられるのです。少しだけ面倒を見てやってはいかがでしょうか?」

 

「そ、そうですね……。わかりました、お師匠さまのようには行きませんが、魔法も教えさせていただきます」

 

 

 そのマタムネの言葉と二人の熱意により、ネギは魔法を教えることにした。夕映とのどかはその言葉を聞いて飛び上がって喜んでいた。それを見ている和美もマタムネも、これも青春かと考えていた。

 

 

「ありがとうネギ先生! よかったですね、のどか!」

 

「ありがとうございます、先生ー!」

 

「青春してるねー」

 

 

 そして夕映はのどかの方を向き、よかったと声をかけていた。のどかも同じく夕映のほうを向いて、ありがとうと言っていた。まさに本当の親友らしい姿である。そんな感じで、とりあえずリゾートを満喫する少女達であった。

 




刹那の好意の順番は
木乃香>バーサーカー>覇王
となっております
刹那にとっての覇王は頼れる友人レベルです

最初の友人や最初の恩人とでは差があるのも仕方の無いことです


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