理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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テンプレ70:ネギとのどかが仮契約


二十九話 ネコとカメラ少女

 修学旅行二日目。さて、もうすでにリョウメンスクナは倒されて、ぶっちゃけ京都はもう安全である。

安全な修学旅行となった中、のどかがネギにアタックを仕掛けていた。ちなみにのどかの班、つまり原作だとアスナと同じだった班は、木乃香以外の図書館探検部、それとザジと春日美空を入れて5人である。その5人とネギは行動を共にしていたのだ。

 

 なお、あの茶々丸もこの修学旅行へやってきており、マスターであるエヴァンジェリンから京都の菓子を買って来いと命令されている。そしてエヴァンジェリンは『京都ならもう見飽きた』と言っていた。しかし、実はちょっぴり行きたかったらしい。

 

 

 という訳で木乃香やアスナの班は、安全となったのでネギと共に行動する必要はない。だから別行動をしているのだ。この修学旅行二日目は奈良である。バーサーカーが突然鹿としゃべったり、またがったりしていたが、刹那は見てみぬ振りをした。当たり前である。普通に考えて恥ずかしい。あれが自分のサーヴァントとか、思われたくないだろう。いつのまにやら鹿の軍団長となったバーサーカーを置いて、刹那たちはさっさと寺を見て回っていた。そして肝心の覇王たちは、その後ろで爆笑していた。バーサーカーバカだなーと思っていた。

 

 

「いやあ、バカだなあ彼は。本当にバカだね」

 

「動物会話ぱねぇ……」

 

「鹿しかいないのにバカとはこれいかに……」

 

 

 地味にバーサーカーにひどい三人であった。バーサーカーとて、そこまでバカではない、と思いたい。そんな感じで、とりあえず奈良の見物は終わっていった。

 

 

…… …… ……

 

 

 ここは修学旅行の宿泊施設。ネギは”原作どおり”のどかから告白され、知恵熱で倒れた。カギはそれをとても複雑に思いながらも、いどのえにっきが必要だと考え、しかたなくそうさせていた。ネギはとても悩んだ。自分は年的には10歳だが、一応身分は教師である。生徒と教師の禁断の愛など、あっていいものかと。しかし、悩めど悩めど答えはでない。だからアスナに相談したのだ。

 

 

「別にいきなり恋人になる必要なんてないじゃない。友達からはじめてみたら?」

 

「そ、そうでしたね……。ありがとうございます!」

 

 

 なんと簡単に答えを教えてくれたのだ。というか告白されたからと言って、無理して付き合う必要はない。ダメならダメで断る勇気も必要だ。だが、ネギはとても優しくそれができない。だから断る訳でも無く、付き合うわけでもない、現状維持の方法を、アスナが教えたのだ。とりあえず、その場は丸く収まった。だが、それをスクープとして狙うものがいた。

 

 朝倉和美。桃色っぽい髪、短いポニーテールの少女である。自称麻帆良のパパラッチであり、カメラを片手に常にスクープを追い求めている。そんな少女に目をつけられたネギは、和美に後をつけられていることも知らず、ふらりと施設の外へと出た。だが、特に何もすること無く、ぼーっとしていたのだ。のどかの告白の件が丸く収まったので、安堵していたのである。

 

 と、そこにネコが道路に飛び出し、車に轢かれそうになったのだ。ネギはそれに気がついたが、遅かった。そこへカギものこのことやってきたが、特に何もしなかった。実はこのカギ、ネギが和美に魔法をバラすかどうか、確認しに来ただけでなのである。しかし、そこでネコを助けたのは、第三者だった。明らかに知らない人、いや人ですらなかったのだ。

 

 

「お前さん、こんなところを歩いていると危ないよ。さ、行きなさい」

 

 

 それはまたもやネコだった。ただのネコではなかった。尻尾を二つ生やし、二本足で立ち、着物を着たネコだった。魚ではなく、キセルを咥えたネコであった。

 

 ネギもカギも驚いた。ネコがしゃべって二歩足で立っているからだ。だがネギは、そういうこともあるかと思った。昨日の出来事と告白のショックで、感覚が麻痺っていたのだ。まあ、オコジョ以外にもネコの妖精も居るので、それだろうと考えてしまったようだ。

 

 それでネギはネコが助かったことに安心し、また旅館へ戻ってしまったのである。そして当然、それを見た和美も驚いた。こんなネコがいるなど、普通じゃありえないからだ。だから声をかけたのだ。

 

 

「あ、アンタ一体何者!?」

 

「おや? 小生が見えるのですか? ふむ、面白い人だ」

 

「み、見える……!?」

 

 

 このネコ、ねこまたである。普通の人間には見えない霊的な存在である。それが見えるということは、その時点で特殊な力を持つということだ。だが、逆を言えば危険と隣りあわせということになる。自縛霊などに、それを察知されて攻撃される可能性があるからだ。してこのネコ、自分が見えるというところに珍しさを感じ、少し話してみようと思ったのだ。

 

 

「申し遅れたが小生、名をマタムネと申す。以後お見知りおきを」

 

「あ、これはどーも。私は朝倉和美って言うもんさ」

 

「朝倉……? 小生の主と似た姓をお持ちとは、これも何かの縁。そちらの都合が悪くなければ、少しお前さんに付いて参ろうと思うのですが、よろしいかな?」

 

「え?! 一緒に来るの?そりゃ大歓迎だよ!」

 

「それはよかった。して、どこで何をなされているので?」

 

 

 このねこまた、マタムネと名乗った。―――――マタムネ。シャーマンキングにて、主人公麻倉葉の初めての持霊である。そして、大陰陽師麻倉葉王が作り出したO.S(オーバーソウル)でもあるのだ。つまり、この世界のマタムネもまた、葉王の特典を持つ赤蔵覇王から作り出されたO.S(オーバーソウル)なのである。ゆえに、赤蔵と朝倉の姓が似ている部分もあり、さらに霊が見えてしまっている和美に少し興味を持ったのであった。

 

 原作にて、この和美は幽霊のさよと友達となり、共に旅をする仲となる。ある時期から常に隣の席に座るさよを、見えるようになるのだ。つまり、そういう才能があったということである。というか、隣の席で現在精霊となったさよとは、仲良くやっていたりする。だからこそ、このO.S(オーバーソウル)たるマタムネを見ることが出来たのだ。

 

 

「つまりこの京の都には、修学旅行でやってきているということですかな?」

 

「うん、そのとおり! いやー面白い出会いが出来てよかったわ!」

 

「お、おいテメー一体何モンだ!? なんでそんな姿してやがる!? 転生者か!!?」

 

「兄貴、ありゃ多分動物霊だぜ?!」

 

 

 そのマタムネの姿を見て驚き、騒ぎ出したカギとカモミール。カギはマタムネの姿に、転生者だと勘ぐっていた。そしてカモミールは、ネコの霊だと思ったようだ。突然カギがやってきて、マタムネにいちゃもんをつけていることに、和美は困惑していた。

 

 

「か、カギ先生!? それとそこのオコジョがしゃべってるのは!?」

 

「いやはや、この小生も、一応ネコとして話しているはずですが?」

 

「あ!? そ、そういえば!?」

 

 

 さらに突然オコジョがしゃべりだし、和美は混乱した。しかし、マタムネも一応ねこまた、ネコとしてしゃべっているようなものだと説明した。まあ、実際は霊であり、動物ではないだが。

 

 

「小生、お前さんが思うような存在ではない。故に答えよう、我が主は赤蔵覇王様である」

 

「何!? あ、あの野郎かよ!!」

 

「あの謎の兄貴ですかい!?」

 

「え!? 何々!? 面白いことそれ?!」

 

「おや、覇王様をご存知で?」

 

 

 この話を聞いてカギは驚いた。だが納得もした。赤蔵覇王がハオの特典ならば、確かにマタムネが居ても不思議ではないからだ。またカモミールも同じく、その主の名を聞いて驚いた。まさかこのような動物霊をも使役しているとは思っていなかったのだ。しかし、それに興味津々の和美が騒いでいた。

 

 

「だったら俺様は関係ねぇや! じゃあな!」

 

「ああ!? ま、待ってくれ兄貴ぃぃー!!」

 

 

 カギはマタムネの質問に答えることなく、さっさと旅館へ戻っていった。敵でなければどうでもよかったからである。なんという失礼なやつだろうか。その立ち去るカギを見ていた和美が、今度はマタムネを見て質問した。

 

 

「ねーねー、あのオコジョもだけど、何でアンタ、いやマタっちもしゃべれる訳!?」

 

「ふむ、あのオコジョのことはどうでもよいとして、小生が言葉をかわせるのは、ねこまたですので」

 

「ねこまた!?」

 

 

 このマタムネ、1000年前に覇王から巫力と媒介を得て、O.S(オーバーソウル)として存在し続ける存在。その正体は御霊神である。過去の京都の門を守護する役目として、鬼の御霊神を使えた覇王。それと同じ力を使い、マタムネを御霊神として召し上げたのだ。1000年もの間、赤蔵家に仕える持霊なのだ。

 

 

「小生、かれこれ1000年もの間、こうやって霊をやっているのですよ」

 

「え?! れ、霊!!? つ、つまりもう死んでるって事!?」

 

「そういうことになりますかな。だからこそ小生が見える和美さんに、少し興味が沸いたのです」

 

「うーん、にわかに信じがたい……」

 

「では、お知り合いに会って見るとしよう。きっと小生が見えぬでしょうから」

 

 

 霊と言われて信じられないと言う和美。というか隣の席に友人の霊がいるではないか。とりあえずマタムネが他人には見えないと言ったので、それの真偽を確かめるべく、適当なクラスメイトを探す和美。

 

 するとそこにあやかがやってきた。先ほどネギが生徒に告白されたことを調べてほしいと言って来た本人である。まあ、それはおいといて、とりあえずこのマタムネを紹介してみたのだ。

 

 

「あ、委員長、いいところに!」

 

「あら、朝倉さん。さっきの件はどうなりました?」

 

「そんなことよりも、このネコを見てよ!」

 

「ネコ? そんなもの、どこにもいませんわ! はぐらかそうったって、そうはいきませんわよ!!」

 

「え!? ウソ!? 本当に見えてない!?」

 

「そう申したではありませんか。小生の姿は、基本見えぬものですよ」

 

 

 まさか本気で霊だったとは。しかも普通は見えないものだったとは。これには和美も驚いた。いやはや当然だろうと、マタムネは思うだけではあるが。とりあえずあやかから逃げ、自室へと戻った和美。誰も居ないようだったので、あのオコジョについても質問したのだ。

 

 

「マタっちのことはわかったからさ、あのオコジョが何なのかも教えてよ!」

 

「あのオコジョのことですか?ふむ……」

 

「何か問題でも?」

 

「さて、どうしたものかと思いましてね」

 

 

 魔法の隠蔽は基本的に人間が決めたこと。このマタムネ、ネコである。だから人間の法律には当てはまらない。しかしあのオコジョのことを話せば魔法が知れる。彼女の性格を少し垣間見たマタムネは、それを話していいやらと悩んでいたのだ。そして、あえて話さないことにしたのだ。

 

 

「……申し訳ないが、小生、あのオコジョをよく知らぬ、故に教えることはできません」

 

「うーん、そっかー。ま、本人に尋ねればいいかなー!」

 

「そうしてもらえると、ありがたいものです」

 

 

 マタムネは教えなかった。あのオコジョ妖精のことを。魔法のことを。また和美も残念には思うが、話せるオコジョなら聞けばよいと思ったのだ。そこでマタムネはオコジョ妖精や魔法ではなく、そのお詫びに自分の旅の話を和美にしたのだ。

 

 それはとても面白いもので、和美は喜んで聞いていた。そして、そのオコジョ妖精カモミールから、魔法のことを知った和美は、あるイベントを開催しようと企てるのであった。

 

 

…… …… ……

 

 

 夜、就寝時間が過ぎたころ、三年A組はまだまだ元気であった。そこで和美がゲームを企てた。その名もくちびる争奪!ラブラブキッス大作戦!である。

 

 だがこれは、カモミールが一枚かんでいた。いや、カモミールこそが首謀者だと言っても過言ではない。このゲームはネギやカギの唇を奪い、キスをするというものである。実際はカギがこれが仮契約のチャンスだとカモミールに話したことも理由の一つにあるのだ。

 

 しかしその実態は、従者を大量に作り出し、仮契約カードを量産することにあった。オコジョ妖精は、仮契約カード一枚につき、5万オコジョ$が支払われるのだ。

 

 つまり、悪い言い方をすれば自らの私腹を肥やすために、生徒たちを餌にするというものだった。と、カモミールと和美が談義しているところに、マタムネがやってきた。

 

 

「なにやらその低俗オコジョが、つまらぬことを企んでいるみたいですね」

 

「な! さっきの動物霊!!」

 

「マタっち、そんなつまらないことじゃないよ!」

 

 

 和美はマタムネにこのゲームの内容を教えたのだ。カモミールはマタムネに教えることを、あまりよく思っていなかったようではあるが。また、マタムネはこの旅館の周囲に魔方陣があることを、すでに察知していたので、何をしようとしているのかがわかったのだ。だから、その話を聞いた後、マタムネは多少窘めるように話したのだ。

 

 

「和美さん、その低俗オコジョの口車に乗ってはなりませんよ」

 

「え!? ど、どういうこと!?」

 

「おい! 突然何を言い出しやがんだ!!」

 

「今行おうとしている遊戯は、お前さんの友人を売ることとなるであろう。それで本当によいのですか?」

 

「ゆ、友人を……売る……!?」

 

「そのとおり。この遊戯、そこの低俗オコジョの私腹を肥やすためのもの。お前さんには関係の無いこと。できれば後悔のない選択をしてもらいたいと、小生は思います」

 

「後悔の無い……選択……」

 

「姉さん! こいつの言葉を気にする必要はありませんぜ!! 俺らは一応兄貴や旦那のためにもやらなきゃならねぇんっスから!!」

 

「……言いたいことは言いました。では、小生は主に会いに行くので。どうか、後悔の無い判断を……」

 

「う、うん……」

 

 

 そう言うと、マタムネはまた来た道を戻っていったのだ。今のマタムネの友人を売るという言葉に、とても大きなつっかかりを覚えた和美。そして後悔の無い選択とは一体どういうことなのか、考えていたのだ。

 

 だが、このカモミール、とても必死で説得していた。5万オコジョ$はなかなかの金額なのだ。あわよくば最低でもそのぐらい入るかもしれないのだ。このゲームを成し遂げるように、和美を説得していたのだ。

 

 また和美も、ここまでやってしまったのなら、やるしかないと踏んだようだった。そして、そのゲームが開催されたのだ。

 

 

…… …… ……

 

 

 旅館の屋上にて、星を眺める一人の少年がいた。赤蔵覇王。かつて1000年前、大陰陽師として名を馳せた一人の少年である。その横に、一匹のネコがやってきた。そのネコ、マタムネであった。

 

 

「おお、マタムネよ。数年ぶりか」

 

「覇王様もお変わりないご様子で……」

 

「そうか? ずいぶん変わったと思うのだがな」

 

「見た目ではございませぬ。変わっていないのは中身のほうでございますよ」

 

「そう言ってくれるか。嬉しいことを言う」

 

 

 覇王は星を眺めながら、マタムネと会話していた。またマタムネも、星を眺めながらであった。両者とも、とてもいい笑顔で話をしていた。

 

 

「世界の股旅から帰って来たのかい?」

 

「今日、久しくこの京へと戻ってまいりました」

 

「ほう、してマタムネや。なにやら面白いことになっているみたいだが?」

 

「低俗妖精の契約の陣ですか。困ったものですね……。覇王様は止めにならないのしょうか?」

 

「止めたところで何かあるわけでもなし。それに、あまり興味がない」

 

「そこも相変わらずですな。確かに、どうということはありませぬか」

 

 

 カモミールの魔方陣を覇王は知って知らぬ振りをしているのだ。この結果がどうであれ、覇王には関係が無いからだ。そして、まったく興味もないからである。マタムネも、その辺りは昔から変わらないと思っていたので、やはりとしか考えなかった。

 

 

「マタムネよ。久しく会ったのだ、巫力を分けてやろう。来やれ」

 

「ハッ、嬉しゅうございます覇王様」

 

 

 覇王はマタムネを膝の上へと招き、再び巫力を増幅させたのだ。このマタムネ、かれこれ1000年もO.S(オーバーソウル)をしている。覇王が今世にて転生した後、巫力をマタムネに与えていなかったことをお思い出した。だから覇王はマタムネに、巫力を分け与えたのだ。

 

 

「これからも、赤蔵家、ひいてはこの覇王を守っておくれ」

 

「ハッ、それは承知のこと……。して覇王様、折り入ってご相談がございます」

 

「ん? マタムネともあろうものが、どうしたのやら。申してみよ」

 

「このマタムネ、少し興味を持った少女がございます。その少女に、少し付き合ってみてもよろしいかと」

 

「マタムネや。僕はそのようなこと、気にはしない。今までどおり、好きなだけ股旅をしてみよ」

 

「ありがとうございます、覇王様。今までどおりこのマタムネ、自由に股旅をさせていただきます」

 

「久しく会わないうちに、面白い人を見つけたというわけだ……。いいではないか、出会いもまた人生である」

 

 

 覇王はマタムネの申し出を許可した。特に気にしていないからだ。今までどおり、ふらりと旅をして、ふらりと戻ってくればよいとしたのだ。マタムネも、そうおっしゃってくれると思っていた。だがやはり、そうおっしゃられると嬉しく思うのである。そして、なにやら騒ぎが大きくなり、大きな怒鳴り声とともに、その鶴の一声にて騒ぎが終わりを告げるのであった。

 

 

…… …… ……

 

 

 朝、ネギが起きるとそこにはカードが落ちていた。そのカードは夜に遊んだトランプなのではなかった。仮契約カードのマスターカードだったのだ。ネギは混乱した。いつのまにやら仮契約をしてしまったからだ。

 

 そしてとても落ち込んだ。明らかに生徒と仮契約を結んでしまっていたからだ。今のネギにとって、これほどショックなことは無いのだ。その落ち込みぶりはすさまじいもので、仮契約を結んだのどかもその姿に罪の意識を感じざるを得なかった。

 

 夜、ネギは寝ていたのだ。というのも、安全な修学旅行となったので、特にやることの無くなったネギは、就寝時間後、寝てしまったのだ。鬼の新田と呼ばれるほどの教師が、一度怒鳴ったので流石の3-Aも事を起こさないと考えてしまったのだ。そこにのどかがやってきて、ゲームを優勝し見事仮契約カードを手に入れてしまったのだ。

 

 だからこそ、のどかもその落ち込んだネギの姿を見て、悲しい気持ちになっていた。やはり寝ている相手にキスをしたのは、卑怯だと思ったからだ。さらに、そのせいでネギが落ち込んでいるのだと、思ってしまったからだ。

 

 

 さて、このラブラブキッス大作戦!にて仮契約が行われてしまった。だがこのゲーム、アスナたちは必死に止めようとしたのである。それは魔法の隠蔽もあるし、当然ネギがちょっとかわいそうだったからだ。

 

 だからアスナはこのゲームが発覚した時、仮契約の魔方陣を真っ先に破壊しに行ったのだ。そして木乃香と刹那も、他のクラスメイトを止めようと動いた。しかし、止まらなかった。というかこの3-A、強いやつがそこそこいるのだ。

 

 それが中国拳法を操る古菲、そして忍者の長瀬楓である。彼女達を手加減しつつ相手をするのは、流石に刹那も苦労した。二人に抑えられ、動けなくなった刹那をサポートするため、その他のクラスメイトを木乃香が抑えに出たのだ。

 

 しかし、木乃香も失敗してしまう。同じ図書館探検部の夕映によって、のどかをネギの部屋に送り込まされたのだ。そして仮契約の魔方陣が破壊する一歩手前で、仮契約が成立してしまったのだ。と、いうわけで地味にアスナたちも落ち込んでいたので、ネギを励ますほどの力が残っていなかったのである。

 

 

 また、このネギとのどかの姿に、和美もショックを隠しきれなかった。正直楽しませることをよしとするが、悲しませようと思ってしたことではなかったはずなのだ。

 

 だが現実に、二人は本気で落ち込んでしまっていた。普段ならば、”ヤバいかなー、やり過ぎたかなー”ぐらいで済ます和美も、この光景にはショックだった。流石に二人がこんなに落ち込むなど、思っていなかったのだ。

 

 これには普段明るさ全開の和美も、流石に落ち込みざるを得なかったのだ。と、その落ち込んだ和美の前に、マタムネがやってきた。

 

 

「和美さん、どうでしょう? これがお前さんが選んだ選択ですよ」

 

「うん、そうだね……」

 

「後悔しないよう、あの時そう言っておいたはず。して、後悔してしまわれましたか?」

 

「うん……、ちょっと失敗したと思ってる。こんなことになるなんて、思っても見なかった」

 

「そうでしょう。だからこそ、慎重に選ぶべきでしたね」

 

「そうだよね……。マタっちの言うとおりだった……。マタっちは今ので、私なんか嫌いになっちゃったよね……」

 

 

 マタムネが忠告してくれたとおりだった。あの言葉をもっと真剣に聞いていれば。いや、理解して行動していれば、このようなことにはならなかった。

 

 だがすでに遅し、こうなってしまったからには、そのような考えも意味など無いのだ。和美はそんな自分を、マタムネが嫌いになってしまったと思い、涙を見せていた。短い間だったが、変で面白いこのマタムネを、和美は結構気に入っていた。だからであろう、この少女が涙を流すほどに、マタムネに嫌われるということは、とてもショックが大きいのだ。

 

 しかし、その返答に、マタムネは違うと答える。このマタムネ、その程度で人を幻滅したりはしないのだ。

 

 

「ふむ、そんなことはありませんよ」

 

「え……?」

 

「和美さんは今後悔したと申した。それすなわち、自分の行いを恥じた証拠ではありませんか」

 

「う、うん……」

 

「人間、誰しも生きていれば失敗するもの。ですが、それをしっかりと失敗と認められる人を、小生は嫌いになどなりませんよ」

 

「ま、マタっち……」

 

「やってしまったことに取り返しはつきませぬ。しかし、まだ取り返しが付くことがあるのではないでしょうか」

 

「……つまり……?」

 

「落ち込んだあの二人を、元気にするぐらいなら、まだ挽回できるというものです。それは後悔し、反省したお前さんのする償いでしょう」

 

 

 なんという言葉か。やってしまったことはもう変わらない。なら、その次に何をすればよいかということを、マタムネは優しく説明したのだ。

 

 和美は嬉しかった。失敗した自分を嫌うことなく、励ましてくれるマタムネに、すごく感激していた。

 

 そしてまた、カモミールもやりすぎたと感じて嘆いていた。あそこまで落ち込まれると、あのカモミールでさえ、良心が痛むのだ。

 

 

「す、すまねぇ! 動物霊の旦那!! 俺としたことが……」

 

「ほ、本当にごめんなさい!」

 

「お前さんも、わかるオコジョでしたか。しかしお前さんがた、謝る相手は小生ではないはずですよ?」

 

「そうだね、私、ネギ君と宮崎に謝ってくるよ!」

 

「俺っちも同じ思いですぁー!」

 

「それでいいのですよ。さ、行ってきなさい」

 

 

 マタムネは思う。あの妖精も、腹の奥まで悪党ではないことを。そして和美という少女も、やはり悪い娘ではなく、優しい少女だということを。だからこそ、付いていこうと思ったのだ。また、あの少女の近くにいれば、覇王の近くにも居れるだろうと、考えたのであった。

 

 その後、ネギとのどかに、和美はしっかりと謝った。カモミールは魔法隠蔽のため、ネギだけに土下座していた。オコジョの綺麗な土下座にネギは困惑していたが。

 

 そしてネギものどかもそのことに驚いたが、事情を知ったネギものどかも、安堵したようであった。そしてとりあえず、のどかにカードの使い方を教えるのを保留にし、どうするかを考えようということになったのだった。

 

 ……ちなみにカギは、このイベントでも従者を得ることは無かった。なぜかと言うとこのカギ、仮契約の魔方陣を破壊しようとするアスナを止めに入っていたからであった。そのせいで、従者が増えなかったことに、少し涙したカギであった。

 




失敗というのは……いいかよく聞けッ! 真の失敗とはッ!
開拓の心を忘れ! 困難に挑戦する事に
無縁のところにいる者たちのことをいうのだッ!

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