理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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テンプレ63:停電中に敵がやってくる

覇王無双


二十五話 漆黒の夜

 桜通りの吸血鬼事件が吸血鬼本人によって早々と解決されてしまった。事件を起こした転生者は”原作知識”を失っただけで、特典は持っている。だからこそメトゥーナトが監視を付けていたのだが、原作知識が抜け落ちてしまったため、問題を起こす素振りを見せなくなったようだ。

 

 そしてその後”原作”で発生するイベントが、基本的に発生しなかった。ネギが茶々丸を攻撃し、そこから逃げ出して山に墜落することもなかった。というか、この結果は当然といえば当然である。また、ネギはエヴァンジェリンから話を聞いて、やはり犯人ではなかったことに安堵していた。カギは違うのかと考えているだけだった。

 

 それでもやはり停電イベントだけは行われる。これも当然であった。そして停電と言えば、やはり西からの攻撃を防ぐために戦うのも二次創作での定番だろう。

 

 しかし、そのようなことは起こらなかった。いや、確かに西からの攻撃は存在した。だが、今はもうそれはなくなっていたのだ。何故なら2年前、すでに西の刺客が全滅していたからだった。どうしてこうなってしまったのか、過去を振り返ってみよう。

 

 

…… …… ……

 

 

 覇王が麻帆良学園の中等部へと入学させられてすぐのこと。麻帆良学園都市のメンテナンスのため、都市全体が停電となった。停電となれば、学園結界も弱くなり、防御が手薄となるのだ。そこへ漬け込んで攻撃してきたのが、関西呪術協会の強硬派だった。

 

 しかし、この時の覇王は本気で機嫌が悪かった。その馬鹿どものせいで、来る必要のない麻帆良に来ているからだ。だから、本気でその時暴れたのだ。あれを見た友人のSさんはこう語った。『あの時の覇王さんは、化け物じみていました。正直近づきたくないほどに』と。

 

 

「ハハハハッ、ちっちぇえな」

 

「うわあああーーー!!」

 

「ひいいいええええ!?」

 

 

 S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を高速でO.S(オーバーソウル)しながら、召喚された魑魅魍魎どもを焼き払い、笑っているこの覇王。本気で破れかぶれなのだ。お前ら全員、滅ぼしてやるよ! とキレていたのだ。

 

 

「なあ、どうした? その程度で、まさかこの東を倒しに来たのか? 馬鹿なやつらだ」

 

「貴様は赤蔵のものやろうが!? なぜやつらの味方をする!?」

 

「別にあいつらの味方という訳ではない。現頭首からの命令だから、お前らをこうして相手してやってるんだよ」

 

「な、赤蔵陽明の命令やと!?」

 

「そうだよ。お前らが馬鹿なことをするから、止めろと言われたのさ。まったく、本当に迷惑だよ、お前ら」

 

「ひ、ひいいいい!?」

 

 

 術者の目の前に立ち、苛立ちを隠さずに返答する覇王。お前らのせいだぞ馬鹿ども、と本気で頭にきていたのだ。彼として見れば当然であった。そもそも1000年前、必死に京都を守ってきたこの覇王。こんな馬鹿なことをする余裕があるなら、しっかり京都を守れと思っているのだ。

 

 

「本当に馬鹿だよ、お前らは。S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)、燃やせ」

 

「ひぎゃああああああ!?」

 

「た、助けてくれぇえぇー!?」

 

「ちっちぇえな」

 

 

 極悪だった、本気で極悪だった。どちらが敵なのかわからないぐらいの蹂躙だった。召喚された鬼ですら、この光景にドン引きだった。そしてさっさと逃げたかった。そのぐらい壮絶な光景だった。また鬼たちも、1000年前のことを聞いていた。前鬼、後鬼を慕え、御霊神を操る陰陽師の名を。覇王の名を。

 

 

「ハハハハハハハ、僕に燃やされたくなければ、二度とこのような馬鹿な真似はやめるんだね」

 

「ハ、ハハー! 覇王様ー!!」

 

「二度と、二度とこのような過ちは犯しませぬ!!」

 

「どうかお許しを!! 覇王様ー!!」

 

「ハハハハハ、ハハハハハハ!」

 

 

 これが覇王の本気。覇王のカリスマ。西の術者を恐怖で纏め上げ、高笑いをする覇王がいた。実際覇王が笑っているのは、もうどうにでもなれ、という気分の表れなのであるが。

 

 その覇王の姿に、防衛に回っていた学園の、魔法先生や魔法生徒もドン引きだった。かれこれ覇王一人で、ほとんど壊滅させてしまったのだから。

 

 停電の闇を、灼熱の炎で明るく染める覇王の力。それを目の当たりにしたものたちは、戦慄していた。だが、魔法世界で超有名人の覇王を、裏切ったり攻撃することがないと信じていたので別に揉める事はなかった。その光景を遠くの建物の屋根の上から見ていた友人も、やはりドン引きだった。

 

 

「刹那、お前の友人は本気ででたらめだな……」

 

「あ、ああ……。まさか出番すらないとは思っていなかった」

 

「私としては金を貰えて弾も減らず、楽もできるから、むしろありがたいがな」

 

「そ、そうか……」

 

 

 しかしそこにもう一人、本気でつまらなそうにしている少年がいた。いや、実際はつまらないことになって、頭にきていた。喧嘩上等、売られた喧嘩は絶対買うこの少年、一元カズヤという少年だった。カズヤは喧嘩するために、夜の警備をしているのだ。それ以外に理由はない。

 

 

「おい、あの野郎やりすぎだろぉが! 俺の分がなくなっちまうじゃねぇか!!」

 

「あ、一元さん」

 

「おい、あー? あんた名前なんだったっけ? まあいいや、あんたさぁ、あいつの友人だろう? 何とか止めてくれよ! このままじゃ全部倒されちまうだろう!!!」

 

「名前覚えてくれてないんですね……。私は桜咲刹那です。しかし、今の覇王さんを止めるなんて、怖くてできませんよ……」

 

「むしろ私は暇なほうがいいから、止めなくてもかまわないさ」

 

「ざけんな! 俺のほうは死活問題なんだよ! くそー! 久々に派手に喧嘩できると思ったのよぉー!」

 

「喧嘩ではない気がするんですが……」

 

「喧嘩は喧嘩だ! あいつらが売った、俺が買った! だからボコりてぇのにあのザマじゃねーか! ……はぁ、もういいや、アレ見たらもう萎えちまった。俺はもう寝るから起こすなよ?」

 

「は、はぁ」

 

「ごゆっくり」

 

 

 これはひどい、戦う前から勝負が決まっているじゃないか。いや、戦いですらなかった。刹那とその相棒であるスナイパーの龍宮真名はそれを見ているだけだった。

 

 カズヤは敵が全滅しそうなのを見て、本気で怒っていたが、なんかもういいやという気分となって、そのまま横になり屋根の上で不貞寝してしまった。

 

 

 だがまだ別の場所に、もう一人、覇王の戦いを見るものがいた。同じシャーマンである、錬と呼ばれた少年だ。彼もまた、シャーマンとしての実力を伸ばすために、夜の警備に参加しているのだ。彼女たちとは別の建物の屋根の上で、覇王のS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)の炎を眺めていたのだ。

 

 

「馬孫、奴が俺のもっとも恐れていた男だ……」

 

「ぼっちゃまが恐れるなど、あるのでございましょうか!?」

 

「俺にだって、恐ろしいと感じることはある。特に、あの男の力はな……」

 

「……確かにぼっちゃまのおっしゃるとおり、すさまじい力ではありますが……」

 

 

 錬と呼ばれた少年はシャーマンキングの原作を知っている。つまりあの覇王が、麻倉ハオの能力をもらった転生者だということがわかるのだ。

 

 そして、あの覇王がただ特典として能力をもらっただけではなく、さらにそれを完全に使いこなしていることもわかっているのだ。故に恐ろしい。ハオと同等かそれ以上の覇王の力が、錬と呼ばれた少年には恐ろしく感じたのだ。

 

 

「だからこそ、奴が敵でなくてよかったと思っている。敵であったならば、どう対処すればよいのか、まったく見当も付かんのだからな」

 

「……むしろ、ぼっちゃまとあろうものが、それほどまでに恐れるあの男は一体……!?」

 

「調べてもらったことだが、あの男は赤蔵覇王と言うものだ。京都にて代々陰陽師の家系として存在する、その長男。そしてその次期頭首だ……」

 

「かの赤蔵家のものでございますか!?」

 

「そうだ、過去に戦ったあの軟弱なシャーマンの男がいただろう?その兄があの男だ……。本当に血がつながっているのかさえ、疑わしくなるほどの強さではないか」

 

「あのものの兄ですと!? それは本当なのでございますか!?」

 

「言ったとおりだ。そして見たとおりあの男は強い。だが味方ならば、これほど頼もしいことはないがな」

 

 

 ハオの能力を持つあの覇王が味方ならば、これほど心強いものはいないだろう。錬と呼ばれた少年は、あの覇王が味方でよかったと思った。敵であれば、この麻帆良を炎の海に変えるなど、造作も無いことだからだ。

 

 

「さらに言えば、あの男は本気ではない……」

 

「あ、あれで本気ではないと!?」

 

「馬孫もわかっているだろう。俺のO.S(オーバーソウル)の最終形態を……。あの男もそれが使える。だが使っていないのだ……」

 

「つまり、あのぼっちゃまのO.S(オーバーソウル)と同等の技術をも持っていると!?」

 

「そうだ。あの男のそれは、俺なんかのO.S(オーバーソウル)など比べ物にならない。とてつもないものだ……」

 

「ぼ、ぼっちゃまがそこまでおっしゃるとは……」

 

 

 O.S(オーバーソウル)の最終形態。つまり甲縛式O.S(オーバーソウル)のことだ。覇王が本気を出すならば、O.S(オーバーソウル)黒雛を使うことも、この錬と呼ばれた少年は知っている。

 

 そして黒雛こそ、最強にして無敵のO.S(オーバーソウル)だということも知っているのだ。だからこそ、覇王がまったく本気でないことがわかるというものである。だが、ここで止まって見ているだけの錬と呼ばれた少年ではなかった。

 

 

「だがな馬孫。俺はいずれあの男を超え、最強のシャーマンとなる! そしてこの世界のどこかに存在するG.S(グレート・スピリッツ)を探し出し、シャーマンキングとなって見せよう!!」

 

「ぼ、ぼっちゃま! そうです! それこそがぼっちゃまでございます!!」

 

「待っていろG.S(グレート・スピリッツ)! 俺が絶対に見つけ出し、必ずやシャーマンキングとなってくれよう!」

 

 

 錬と呼ばれた少年は、絵空事でG.S(グレート・スピリッツ)があると言っている訳ではない。あのS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)が特典として転生神が与えたものではなく、この世界に存在するS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を特典として操っていると睨んだのだ。

 

 S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)とは、G.S(グレート・スピリッツ)から切り離された炎の精霊である。つまり、S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)がこの世界に存在するのなら、G.S(グレート・スピリッツ)も存在するだろうということなのである。そして覇王もそれに気づき、G.S(グレート・スピリッツ)の存在を感じているのだ。

 

 

「行くぞ馬孫。ここにはもう用はない。あの男以外にも、強い力を持つものがいるようだ。残念だが。俺たちには出番はないらしいな」

 

「ハッ!」

 

 

 錬と呼ばれる少年は、覇王の強さを確認したのち、もう戦う必要はないと感じて寮へと戻って行った。だが、覇王以外にも強い力を持つものとは何者だろうか。いや、忘れてはいけない。覇王と同じぐらい、でたらめなヤツがいたことを。忘れてはいけない、あいつがこの麻帆良に来ていたことを。

 

 

「久々のバトルだぜ! おい鬼ども、相手してやるからかかってきな!!」

 

「なんやあんちゃん。一人でわいらを相手にするんか?」

 

「馬鹿なやつやな、やったれー!」

 

「おうおう、その意気だぜ! だったら一発目行くから耐えてみな!! カートリッジリロード!!」

 

 

 大量の鬼に囲まれながらも、余裕を崩さない大男。さらにその状況で挑発し、かかって来いとまで言っているではないか。大量の鬼たちは、この馬鹿な大男が一人で相手にすると思い、余裕を感じていた。普通なら当たり前である。この数の鬼を、どう一人で相手にするというのだろうか。

 

 しかし、そこでその大男が、謎の言葉を発すると同時に、右手で握っていた武器である黄金喰い(ゴールデンイーター)の、刃とは逆の部分に存在する拳銃のようなグリップを、左手で握りしめた。

 

 そして、そこにある引き金を引くと、装填されているカートリッジが三つ弾け、すさまじい雷の力が爆発していたのだ。さらに、もう一言、大声で宣言すると、その持つ武器の力を解放したのだ。

 

 ……ちなみにカートリッジリロードの掛け声は、この大男が見ていたアニメの影響である。

 

 

「”黄金衝撃(ゴールデンスパーク)”!!!」

 

「な、ぎゃーーーー!?」

 

「おま!?」

 

「ひいいいーーー!?」

 

 

 大男はその宣言後、持っていた斧を横なぎに振り回した。そうしたらなんとその直後、すさまじい雷のエネルギーが大量の鬼を飲み込み消滅させたのだった。術者も驚いた。一瞬にして大量の鬼が消滅し、ほとんど残っていなかったからだ。その惨状を見た大男は、ため息をついてグチっていた。

 

 

「おいおい、そんなもんかよ。1000年前のやつらの方が、はるかにへヴィーで骨があったぜ」

 

「お、おい、こやつまさか……」

 

「あ、あかん、そのまさかや……。なんちゅーもん呼び出しとるんや……」

 

 

 その力任せで豪胆な戦いぶりを、鬼の中で知るものがいた。1000年前、源の四天王として、多くの妖怪をなぎ払った大男のことだ。そう、彼こそが坂田金時(バーサーカー)である。

 

 そしてバーサーカーの宝具の一つ、黄金衝撃(ゴールデンスパーク)は対軍宝具だ。手持ちの宝具、黄金喰い(ゴールデンイーター)に装填された、最大十五発ある雷のカートリッジを三つ使うことにより発動できる、お手ごろ宝具なのだ。

 

 どの程度の射程で、どれほどの補足数かは明確に設定されてはいなかったが、対軍宝具とは言われていた。つまり、多くの敵を相手取った場合、その真価が発揮される。それが今だったというわけだ。

 

 しかもだ、この宝具、本当の名前ではない。だが、この名前で発動するのだ。それは普通では絶対にありえないのだが、それをやってのけるのが、このバーサーカーなのである。これなら聖杯戦争で呼ばれた場合、宝具の真名開放による本人の真名バレが防げるだろう。それほどまでに本当にゴールデン理不尽なやつなのだ。

 

 

「あかん、この金ピカなにーちゃん、あの噂の金時やないけー! 勝てるわけあらへんがな!?」

 

「あー、はよ倒されて戻ろーか」

 

「せやな」

 

「せやろか」

 

「そんじゃあ、もう一発! ”黄金衝撃(ゴールデンスパーク)”!!」

 

「もうやや、二度と呼ばんといてくれ……」

 

 

 バーサーカーの真名を悟った鬼たちは、もう完全に諦め、ただひたすら倒されて消えるのを待っていた。それほどまでに、このバーサーカーは有名なのだ。当たり前である。1000年前、本気で暴れまわって妖怪退治した化け物中の化け物。

 

 こんなやつ相手にできるやつがいるか! と、鬼たちが思うのも仕方がないことだ。術者もその光景に恐怖しながらもドン引きし、加減しろ莫迦!と思っていた。だがそれはどだい無理な話である。その二発目で、全ての召喚された鬼が消滅してしまった。本当にゴールデン理不尽な強さであった。

 

 その理不尽さを目の当たりにした、そのバーサーカーのマスターもやはりドン引きしていた。確かに鍛錬として模擬戦ぐらいはした。共に京都で戦ったりもした。しかしここまでとは思っていなかった。その横の相棒も、同じような気分だった。こりゃひでーや。

 

 

「バーサーカーさん、まさかこれほどとは……」

 

「長い付き合いじゃなかったのか?」

 

「そうだが、本気のバーサーカーさんは見たことなどなかった……」

 

「まあ、あれほどの力だ。見せるほどのことなど、そうそうないだろうな」

 

「あったら困る気もするんだが……」

 

 

 そしてもう一人、それを空の上から見ているものがいた。金髪少女の吸血鬼、エヴァンジェリンだ。彼女もまた、夜の警備に参加しているものの一人である。当然、その覇王とバーサーカーの戦いぶりを見学していた。

 

 

「本当にあれらは化け物だな、私と同じか、それ以上じゃないか。まったく笑わせてくれるよ」

 

「ケケケ、アノ二人トヤリ合ッタラ、御主人トアッチ、ドチラガ上ダ?」

 

「さあな。別に相手にする気はないさ。むしろ相手にしたくない」

 

「御主人ガビビルナンテ、余程ノコトジャネーカー?」

 

「別に恐れている訳ではない。だが、あれらと戦えば、どちらかが死ぬことになると思っただけだ」

 

「ツマンネーナー、アレモ切リ刻ンデ見タカッタゼー」

 

「まあ、あれが私の魔法の基本となったO.S(オーバーソウル)だ。はじめて見るが流石と言ったところじゃないか。しかも、あれで本気でないとは本当に笑えてくる」

 

 

 エヴァンジェリンはあの赤蔵覇王が残した、超・占事略決を参考に魔法を開発した。だからこそ、その本人が操るO.S(オーバーソウル)に興味があるのだ。そして、そこに記された甲縛式O.S(オーバーソウル)のことも知っていた。だからあれが覇王の本気でないことは、すぐわかったのだ。

 

 しかし現物を間近で見て、恐怖はないと言ったエヴァンジェリンも内心戦慄していた。物体としての媒介ではなく、空気を媒介に五大精霊S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を瞬間的にO.S(オーバーソウル)していたからだ。さらに言えば、それらを繰り返すことで、S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を瞬間移動させていたからである。

 

 だが、考えて見ればS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)は炎の精霊。空気を媒介にするのは、とても相性がいいということも、エヴァンジェリンは悟っていた。もはやすでに戦いが終わったと感じたエヴァンジェリンは覇王の戦いぶりを目に焼き付け、さっさと茶々丸が待つログハウスへと戻るのだった。

 

 ……ちなみにエヴァンジェリンはこの時覇王に挨拶したかったが、あの状況の覇王に挨拶するのは、少し気が引けたので後日にしようと考えていた。だが、なんだかんだとタイミングがなかなか合わず、結局エヴァンジェリンは、2年ほど覇王に挨拶できなかったのである。むしろ覇王はエヴァンジェリンに会う直前まで、エヴァンジェリンのことを忘れていた。

 

 

 そして早くもこの戦いは終了ですね。もはや誰もがそう思った。圧倒的な戦力の前に、西の術者もお手上げだった。覇王に許しを請って、命だけは助けてもらうものが続出するほどだった。そして、バーサーカーを相手にしていた西の術者の一人は、この大男が一体何なのか恐怖に引きつった顔で叫んでいた。

 

 

「こ、この男は何なんですか!?」

 

「坂田金時だよ、バーサーカーの金時さ」

 

「おいおい、覇王よぉ。そんな名前じゃなくてゴールデンって呼んでくれよ!」

 

「そんなに自分の名前が嫌なのかい?」

 

「だってダセェじゃねぇか。ゴールデンの方がキマってるしよ!」

 

「はぁ、はぁぁ!? 何を言っているのかわからねぇ!? お助けをー!!」

 

 

 西の術者たちは完全にパニクっていた。もう二度とこんなことはしないよ。そう誓う西の術者たち。その数週間後、元気に西を守備する術者の姿があったという。

 

 そして京都中にその噂は瞬く間に広まり、東への攻撃は、覇王への攻撃と連想されるようになった。そのせいで、もはや誰も東へ攻撃に行くものはいなくなった。

 

 さらに覇王を称える術者が増え、もうどうでもよくなってしまったからだ。その覇王を称える術者たちは、その祖父陽明の下で説明を受け、心を入れ替えたのであった。

 

 

…… …… ……

 

 

 このような出来事がすでに2年前あったため、今年の停電も安心して過ごせているのだ。だが、一応それ以外の外敵がいる可能性があるので、とりあえず警護する覇王たちがいたのだ。

 

 

 

「いやあ、今年も暇だね、まあこれで僕の役目は終わったということなんだけど」

 

「何言ってんだテメェ! まだ、このかちゃんの護衛という任務があんだろうが!!」

 

「えー? 木乃香を護衛する必要があると思うのかい? あれはあれで十分強いんだけど」

 

「一応やるのが任務だろうが! まあ、強いのは認めるぜ。なんたって大陰陽師のお前が育てた優秀な娘だもんな」

 

「当然だよ。教えるならとことん教えないと意味がないからね。おや、誰かやってきたみたいだぞ」

 

「何? 誰だそいつは!?」

 

「何やら僕と同じようなヤツみたいだ。とりあえず倒してしまおうか」

 

「そうだなあ、じゃあ行くか」

 

 

 停電の闇の中を、S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)の炎が赤く染め上げた。誰かは知らないが、S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)の餌食になったものがいるようだ。こうして数人の侵入者を焼き払い、転生者だった場合、特典を引き抜く覇王がいた。また、バーサーカーも適当に敵を相手にして、つまらねぇと思いながらも、任務をしっかりこなして行くのだった。




Fate goだと黄金衝撃(ゴールデンスパーク)は対人宝具になってますがね
ただ、ここでは初期の案の対軍宝具として使っています

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