理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

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テンプレ56:アスナの頭がよい

テンプレ57:ネギの兄弟が地下行き

テンプレ58:すでに変態に会ってる


図書館島編
二十二話 図書館島


 ネギとカギが麻帆良に来てそこそこたったある日、突然近学園長から最終課題を出された。両者とも同じで二年A組の期末試験にて、最下位を脱出させることだった。カギはほっといても大丈夫だろうと考えた。ネギはどうしようか考えていた。

 

 ここで、一つだけ違うのは、アスナがそこそこ勉強ができることだ。なぜできるか、その理由は単純で個人的な理由なのだ。

 

 それはあやかとテストの合計点数を争っているからである。この戦いにおいて賭ける商品はそれ相応であり、負けることは許されないことになっている。

 

 だからどちらも勝つために、戦力を増強させているのだ。ゆえにアスナは勉強ができる。と、いうわけで一人抜けてバカレンジャーではなく、バカ四天王となっていた。どの道褒め言葉ではないのだが。

 

 

「最終課題、どうする兄さん」

 

「大丈夫だろ? なんとかなるんじゃね?」

 

「とりあえずホームルームで勉強会でも開こうか」

 

「意味あるかなぁ~」

 

 

 カギはこの試験、どうせ通過点レベルでしか考えてなかった。だがネギは真剣だった。自分の先生としての技量が試される課題だったからだ。とりあえずネギはホームルームにて、勉強会を開くことにした。

 

 

「このホームルームは勉強会にします。期末試験前なので、張り切っていきましょう」

 

「どうでもいいと思うんだけどなあ……」

 

 

 カギは本気でやる気が無かった。どうせ図書館島イベントで解決するからだ。しかしネギはそんなものは知らない。とりあえず勉強をさせてみようと思うしかなかったのだ。

 

 そして、またしても原作と違うことは、ネギがいらないことを言わないというものだ。つまり、最下位となるととんでもないことになる、と言わなかったのだ。だからカギが代理で言うことにした。

 

 

「まあ、聞け、この試験が最下位だと大変なことになる。心せよー」

 

「ちょっと、兄さん!?」

 

 

 カギの突然の言葉に驚くネギだった。このネギはそういう風に焦らせることは、言わなくてよいと思っていた。だから兄のカギに少しだけ抗議していた。

 

 だが、カギは単純に、原作どおり進めたいだけなのだ。だから言うのだ。そこで突然椎名桜子が英単語野球拳というものを提案してきた。

 

 

「英単語はわかるんですが、野球拳とは一体なんですか?」

 

「ネギ、別にいいじゃねぇか、やらせてやろうぜ?」

 

 

 カギの行動原理は基本スケベ根性だ。ここで脱がさずしてどこで脱がすか。そう考えていた。するとカギが許可したと思ったのか、生徒たちが脱ぎだしていた。

 

 ネギはそれを見て頭を抱えていた。しかし、逆にカギは喜んでいた。もっとやれ、そうだいけ! このカギ本当に変態であった。

 

 

「み、みなさーん、落ち着いてくださーい!!」

 

「いいぞ! もっとやれ! 全部脱がせー!!」

 

「兄さん!?」

 

 

 ネギは何とかしようと叫ぶがカギがさらに煽るので、さらにヒートアップしていくのだった。

 

 カギは最高に楽しんでいた。これこそ”ネギま”、これこそ桃源郷。最高にハイだった。

 

 逆にネギは不安になった。これでよいのだろうかと。いやまったくよくないのだ。そんな感じで授業が進み、終わっていった。

 

 

…… …… ……

 

 

 図書館島……。明治の中ごろに学園創立と共に建設された、大図書館である。地下はダンジョンのような入り組んだ仕組みとなっており、罠まで仕掛けてあるという。

 

 そこに綾瀬夕映率いるバカ四天王である、古菲、長瀬楓、佐々木まき絵、それに木乃香を除く図書館探検部の部員たちと、ネギとアスナが集まっていた。

 

 ネギとアスナがいるのには理由があった。アスナは女子寮の大浴場で、バカ四天王が魔法の本を探そうということを聞いていたのだ。それを阻止するべく、申し訳なかったが全てネギに説明し、ここへとつれてきたのだ。ネギはとりあえず、どういうことなのかを、リーダーっぽい綾瀬夕映に聞いてみた。

 

 

「これから一体何をするんですか?」

 

「ネギ先生は突然で教えてませんでしたね。これから図書館島の地下に眠るという、魔法の本を探しに行くのです」

 

「ま、魔法の本!?」

 

「はい、それを読めば頭がよくなるそうです」

 

 

 魔法の本と聞いて驚くネギ。しかし、さらにそれを読めば頭がよくなるらしい。なんというか、とてもいかがわしい。かなり胡散臭い。

 

 ネギはそう思い、さてどうしたものかと考えた。このままそのようなことを、させてよいものかと。とりあえず、ネギは本当のことかどうか、聞いてみることにした。

 

 

「それ、本当なんですか?」

 

「噂ですが、本当にある可能性があるのです。だから探しにいきましょう」

 

 

 そのやる気を勉強に持っていってほしいネギであった。ネギは魔法の本に頼るのは、あまりよくないと思っているからだ。それに、みんなは真面目に勉強しているのだ。ずるいと思ったのだ。

 

 せめて誰かに教わるというのなら、話はわかる。だがズルはよくない。カンニング駄目絶対! ネギはそれを阻止するために、どうするかを考え始めていた。

 

 

「魔法の本で頭がよくなって、試験を受けるんですか?」

 

「そうです! このまま大変なことになるそうですね、それは私たちが小学生に戻るみたいなんです」

 

「えー? そ、それは違いますよ!!」

 

 

 なぜか小学生に戻ると言い出した夕映。ネギは大変なことになると、カギが言っていたのを思い出した。そして兄の大変なことになる発言が、ここまで飛躍しているとは思っていなかった。

 

 と言うか、普通に考えても小学生に戻る訳がないだろう。エスカレーター式だろこの学園は! 普通に考えればそうなるのだ。しかし、とても個性的な2年A組、そう考えても不思議ではないのだ。ネギは慌てて訂正した。んな訳ないと。

 

 

「どう違うんでしょう?」

 

「違いますよー! 最下位になったら、僕たちが正式な教員になれないだけです!」

 

「な、そんなことが!?」

 

「だから帰って勉強しましょう!」

 

 

 小学生にならないから大丈夫だよー、さあ帰ろうという話だった。だが彼女たちは小学生になるより、ネギが先生ではなくなるほうが重要だったようだ。さらに騒ぎ出し、慌てていた。ネギはそれにさらに驚いた。

 

 

「それではさらに、魔法の本が必要です!」

 

「え、ええー!?」

 

 

 ネギはさらに彼女たちをやる気にさせてしまったようだ。流石にまずいと思ったネギは、最終手段に出た。少しだけかわいそうだが、仕方が無い。これしか手は無いのだ。ネギは真剣な表情となり、彼女たちを止めるべく、それを話した。

 

 

「僕はそのようなことをしてまで正式な先生になっても、うれしくありません!」

 

「え!?」

 

「別に最下位でもいいんです! みんなで頑張って、最下位を脱出してほしいです!」

 

 

 なんて言葉だろうか。数え年10歳とは思えぬ発言。夕映やその他メンバーも驚愕していた。そこにアスナがネギの横へとやってきた。こんなアホなことをしているなら、勉強しろというのがアスナの意見なのだ。

 

 というか、この図書館島の地下深部はそこそこ危険らしいので、あまり行かせたくないというのも理由の一つであった。だから、説得にちょっとだけ意地悪な言い方になってしまった。

 

 

「先生とは言え10歳の子供に、そこまで言われてもまだ行く気なの? 帰って必死に勉強した方がいいんじゃない?」

 

「うっ……。で……、ですが……!」

 

「思いとどまるなら今の内よ。じゃ、私たちは帰るから」

 

「な!? ちょっとアスナさん!?」

 

 

 アスナはそう言い終えると、さっさとネギを連れ去ってしまった。タカミチの部屋で寝ていたネギを、元の場所に戻すためであった。

 

 これはまずいと踏んだ夕映はネギの言葉を胸に刺しながらも、自分たちだけで行くしかないと決意した。だがそこに現れたのはカギであった。実は最初からカギすでにスタンバっていた。当然ガッチガチの完全装備でである。

 

 

「なんか大変なことになってるじゃねぇか……。力を貸すぜ?」

 

「はっ!? カギせんせー!?」

 

「ネギのやつ頭かてーからよ、許してやってくれや」

 

 

 ネギは頭が固いといい笑っているこのカギ。そして、とりあえず馬鹿四天王は、図書館島の地下へと進むことにしたようだ。そして、ある程度原作通り進んだ後、やっぱりポチャンと地下深くへ墜落していった。だが、この状況こそがカギの思惑通りなのだ。

 

 

…… …… ……

 

 

「で、地下へ行ってしもーたんかー」

 

「みたいねえ……。止めたんだけどダメだったみたい」

 

 

 ここはアスナと木乃香の部屋。朝、少し早めに起きた二人は、朝食をとりつつも、とりあえず図書館島地下へ行ったと思われる友人を心配していた。

 

 しかし、木乃香は行かなかったようだ。一応図書館探検部員ではあるのだが、どうしてだろうか。アスナも気になって質問してみた。

 

 

「ところでこのかは、どうして図書館島へ行かなかったの?」

 

「んー、言うのを忘れとったけど、ウチだけずいぶん攻略してしもーたからなー」

 

「は?」

 

 

 ここに驚愕の真実が浮かび上がった。木乃香はずいぶん図書館島を攻略していたらしい。流石のその情報に、少しマヌケな顔をするアスナがいた。そのアスナの顔に、少しだけ面白く感じた木乃香は、その時の説明を始めた。

 

 

「せっちゃんとゴールデンはんと、さよとウチとで遊びに行ったんよー」

 

「そ、その面子で……!?」

 

「はいー、楽しかったですよー」

 

「わ!? さよちゃん、突然出てくるとビックリするじゃない!」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 

 さよもこの部屋にいるので、ドロンと出てきたのだ。突然さよが会話に加わったことにアスナは驚いて文句を言うと、さよはすぐさま謝った。

 

 

「まーまーアスナ、そろそろ慣れへんとなー」

 

「私はシャーマンじゃないんだけど……。でも、言い過ぎたわ、ごめんね」

 

「いえ、私が驚かせてしまったのが悪いんですから。だから、もう少し静かに出てこれるように頑張ります!」

 

「それ以上静かに出て来られたら、さらに驚くわよー!!」

 

 

 このさよ、天然である。突然静かに出てきたら、それはそれで驚くだろう。アスナはそこにツッコミを入れつつ、木乃香の話の続きを聞こうと思った。

 

 

「で、このか。その図書館島探索の続きは?」

 

「おー、そやった。それで奥まで進んだらな、ドラゴンまで出てきはったんやー」

 

「ドラゴン!?」

 

「ゴールデンはんとせっちゃんが、それを見ていじめてしもーてなー。ウチがかわいそうやから治療してあげたんや」

 

「私も初めて見ました! 生ドラゴン!!」

 

「うん? 何か頭が……」

 

 

 ドラゴンが出てきた、というだけで何かおかしいのに、それをいじめたと表現する木乃香。さらに、それを治療したと言い出したのだ。

 

 さよは生ドラゴンと、なんとものんきな感想であった。それがさよらしいと言えばそうのだが。

 

 それを聞いたアスナは、とうとう頭を抱え始めていた。もう、何がなんだかわからなくなっていた。変な顔だったアスナは、さらに変な顔になってしまった。

 

 しかし、木乃香は普段どおりふわふわした笑顔だった。同じくふわふわ浮きながら、笑うさよもいた。

 

 

「ほら、ウチ巫力で治療できるやろ? あれを使ったんやー。そしたら懐かれてもーてなー」

 

「そ、そういう問題じゃない気が……」

 

「そしたらその先に、お父様のお友達がおったんよ。だから、そこでいろいろお話したんや」

 

「面白い人でしたよー! 私のことも見えるみたいでした」

 

「なに……それ……」

 

 

 さらにさらに、図書館島地下深くに、詠春の友人がいる言うではないか。詠春の友人ということは、紅き翼のメンバーだろう。そしてこんな場所にいるのは、大体一人しかいないのだ。アスナは本気でその友人とやらの特徴を聞いた。

 

 

「ところで、その人の特徴を教えてほしいな」

 

「んー、紺色の髪に白いローブの人で、静かな感じやったけど」

 

「でも、かなり年季が入ったような人でしたねー。O.S(オーバーソウル)とか付喪神っぽい感じでした!」

 

「あー、多分ヘンタイよそれ。お願いだから今度連れてってほしいんだけど」

 

「へんたいさんなん? まー、連れて行くなら、せっちゃんとゴールデンはんも呼ばなあかんなー」

 

「あの人変態だったんですかー!?」

 

 

 アスナは、もうそれだけでわかった。紅き翼一番のヘンタイ、その名もアルビレオだ。何を話したかは知らないが、一発殴っておこうと思ったのだ。

 

 変態には手加減するな、容赦もするな。メトゥーナトから教えられたことだ。だから容赦はしないのだ。感動の再会を、顔面で受けることになるかもしれないアルビレオが、少し不憫でならない。

 

 その誓いを胸に秘め、さて地下に行ってしまった連中は大丈夫かと、思い出したかのように心配するアスナだった。

 

 

…… …… ……

 

 

 バカ四天王とカギが地底図書館へ落ちた次の日。ネギは学校へ来ていないメンバーを心配しながらも、他の生徒に心配させないように気を配っていた。

 

 アスナも同じ気持ちであり、騒がないように周りに指示していた。それに同調し、木乃香もあやかも同じくクラスを纏め上げようと頑張っていた。

 

 

 そして、とりあえず勉強会でも開くことにしたアスナと木乃香は、友人を自室へ集めて勉強することにした。

 

 そこでアスナはあやかを誘ったが『この戦いにおいてあなたとはライバル同士、そのような情けはいりませんわ!』と断られてしまった。気にしないのにと思いながらも、それでこそ私の認めたライバルだ!と勉強にさらに力を入れようと考えるアスナだった。

 

 ということで集まったのは刹那と焔だった。焔はアスナの過去をある程度教えてもらっていたので、まず友人となるなら同じ出身地のアスナにしたのだ。魔法世界出身ということで、とりあえず友人となったアスナと焔。

 

 また、アスナの伝で木乃香が友人となり、同じように幼き時に一人になったことがある刹那と友人になっていた。そこでこの部屋の居候でもある幽霊のさよも含めて五人で、アスナと木乃香の部屋にてテーブルを囲って勉強をしていたのだ。

 

 

「さよはずっと幽霊のままでも勉強しとったん? したら憑依合体で試験を受ければえーかなー」

 

「ずっと教室にいましたから、それなりにできますよ! でも私の得意技はペン回しですから」

 

「それは技なのでしょうか?」

 

「さよ流奥義真空ペン回しかー。ならシャープペンにO.S(オーバーソウル)してもえーやろか?」

 

「きっと相性がいいから問題ありませんよ!!」

 

 

 勉強しているのかと思えば、ただのシャーマンの会話だった。シャーマンキングにて麻倉葉がやっていた憑依合体での試験突破を、試みようと木乃香は考えていた。シャーマンとしての特権である。半分は冗談ではあるが。

 

 しかしここで、さよの得意技が発覚したのだ。刹那は技なのかと疑問に思いながら、木乃香とさよの話を聞いていた。そんな会話をスルーしつつ、黙々と勉強するアスナと焔だった。

 

 

「よーし、なら今からやってみよーかー!」

 

「はい!」

 

「い、今からですか!?」

 

「行くえー! 憑依合体! 相坂さよ! イン、シャープペン!」

 

 

 膳は急げとさよをシャープペンへとO.S(オーバーソウル)させる木乃香。それに驚く刹那。やはりその行動をスルーしているアスナと焔だった。シャープペンとO.S(オーバーソウル)されたさよは、まだ形が不定形で、初期の麻倉葉のようなO.S(オーバーソウル)となっていた。ただし、無駄な巫力は使われず、見た目以外は完成されたO.S(オーバーソウル)であった。

 

 

「式神として、最初から見た目がわかっとる前鬼や後鬼と違ーて、本来のO.S(オーバーソウル)は、はっきりとしたイメージが必要みたいやな」

 

「みたいですねー。でも戦わないんですから、今はこのぐらいでいいんじゃないでしょーか?」

 

「このちゃん、勉強しましょう……」

 

「そうよこのか、O.S(オーバーソウル)の練習じゃなくて、勉強のために集まったんでしょ?」

 

「そーやった。さよ、解除!」

 

 

 O.S(オーバーソウル)はイメージの具現でもある。イメージをしっかり持つことで、形を形成できるのだ。それがまだしっかりできていない木乃香は、形をうまく作れないのだ。勉強のために集まったのに、いつの間にかO.S(オーバーソウル)の練習をしている木乃香。その木乃香を刹那とアスナが窘めていた。そして勉強に戻るため、木乃香はO.S(オーバーソウル)を解除した。

 

 

「不思議なものだな、O.S(オーバーソウル)。あの覇王さんも、同じことができるんだったか」

 

「おや? ししょーを知っとるん?」

 

「な?覇王さんを師匠と呼ぶだと? ま、まさか、あの覇王さんのお弟子さんでしたか!?」

 

「そうやよー、はおはウチのししょーや」

 

「そ、それは失礼なことをしました!」

 

 

 焔は魔法世界で超有名な覇王を尊敬している。なにせ五大精霊であるS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)を持霊にしているのだから当然だった。その弟子が目の前にいて、しかもため口を利いてしまったことを謝罪していた。あの覇王の弟子だ、すさまじい力を持っているに違いない、と焔は思ったのだ。刹那はその姿を見て、なんか親近感が沸いていた。

 

 

「焔さんはなんだか私に似てる気がします」

 

「あんたらねぇ……」

 

 

 この一連の動作に、流石に引いているのがアスナだった。お前ら勉強しろよ、と思いながらため息をついていた。まるで勉強ができてない。

 

 だが、まあいいかと思うのもアスナだった。まあ、訳あり五人、仲良くできていれば些細なことだと思っているのだ。

 

 

「ほむら、気にすることあらへんよー。ウチはウチで、ししょーはししょーや」

 

「で、ですがあの偉大な”星を統べるもの”の弟子である、このか嬢にそんなため口など!?」

 

「だから気にせんでえーんやよ? むしろ、ししょーはそんな面白い名前持っとったの知らんかったわー。今度話してみよ」

 

「あ!? 覇王さんから、この名は言うなと言われていたのを忘れていた! い、今のは聞かなかったことにしていただきたい!!」

 

「もう遅いわー。面白い名前やって、ししょーに言ってみよー」

 

「そ、そんな!!」

 

「まー、畏まらへんなら、ナイショにしてもえーんよ?」

 

「うっ……、わ、わかった……」

 

「あんたら漫才してるの?」

 

 

 焔はまたしても覇王を”星を統べるもの”と呼んでしまった。その名を面白いと感じ、覇王に言ってみようと考える木乃香だった。魔法世界では”星を統べるもの”は当然の通称であり、基本的にその名で呼んでいたから仕方が無いことなのだ。アスナは漫才を見ているとしか思えなかった。当然である。

 

 

「このちゃん、きっと覇王さんはその名前を気にしているんですよ」

 

「そうなんかなー、カッコえー名前やと思うんけどなー」

 

「……覇王さんは”G.S(グレート・スピリッツ)”を所持してないという理由から、その名はイヤだと申していた」

 

「ししょーの言っとった精霊王のことやな。それを持霊にしたものは、地球を支配できるらしいんよ」

 

「何でもありなのね、シャーマン」

 

「成仏すると、その精霊王さんのところへ導かれるんでしたっけ」

 

 

 精霊王、G.S(グレート・スピリッツ)。この世界のどこかに存在しているだろう、全ての魂の源。五大精霊が存在するなら、G.S(グレート・スピリッツ)があるだろうと覇王は思っているが、実際どこにあるかまではわからないのだ。

 

 この世界は基本はネギまで、シャーマンファイトは行われていない。だから、存在がつかめないのだ。そして精霊王を持霊にすれば、文字通り世界を支配し、死者の蘇生や逆に、生きたものを即座に殺めることさえ可能となるのだ。

 

 そのデタラメさに、アスナはなんでもありと言っていた。実際星の王となれば、何でもありだから仕方が無いのだが。さよは成仏すればG.S(グレート・スピリッツ)と一体化することを、幽霊ながらに思い出していた。

 

 

「覇王さんは魔法世界ではかなり有名で、その名称で呼ばれている」

 

「覇王さんも大変ねー。そんな名前で呼ばれるなんて」

 

「アスナも、そう違いはない気がするのだが……」

 

「むっ、長く言われてたあの名前は、黒歴史だから言わないでよね」

 

「あ、はい」

 

 

 アスナも長く黄昏の姫御子と呼ばれていた。それもある程度教えられている焔は、二つ名があることには変わりは無いと言ったのだ。

 

 だがこの名前はアスナにとって、いろいろな意味で黒歴史なのだ。だからあまり知られたくないのである。そういう訳があり、少し青筋を浮かべ、焔を睨みつけるアスナであった。

 

 

「はいはい、とりあえず勉強よ勉強!」

 

「アスナもなんかあるんかー、おしえてー」

 

「ちょっ! 絶対に教えない!」

 

「えーやん、少しぐらい教えてくれへん?」

 

「ダメ、絶対!」

 

「このちゃん、アスナさんも嫌がってますから、その辺にしてあげては!?」

 

「というか、勉強はどうしたのだ、勉強は」

 

「私は60年も幽霊やってたのに、そういう名前はなかったのかなー?」

 

 

 もはや二つ名合戦となっていた。どんな二つ名が付いていたか、どんな二つ名が似合うかを話し合っていた。勉強などそっちのけで、そんな会話に花を咲かせる五人。勉強するために集まったのに、さほど意味が無かったようだ。だが、それでいいと思うアスナであった。そしてゆっくりと、夜が更けていくのであった。

 

 

…… …… ……

 

 

 地底図書館。地下に存在する図書館であり、ここへ入ったら生きて帰ってこれないという噂の場所。そんな地底図書館へと落ちたメンバーは、普通に元気だった。

 

 特にカギは元気だった。最高の気分であった。どうしようもないヤツであった。というか、落ちるときに助けてやれよと考えるのが普通だが、このカギはそれをしないのだ。なぜならこの地底図書館に、目的があるからだ。

 

 

「ヒャッハーッ!! 脱出は俺が何とかする!! とにかく勉強しようぜー!!」

 

「えー!? ここまで来て勉強ー!?」

 

 

 このカギは原作どおり、ネギが勉強を教えたように、自分がそれをしようと思っているのだ。しかし、”原作”のネギと違い、カギは魔法使い放題。脱出する場所も知っているので余裕なのだ。

 

 そしてこのイベントで、最も楽しみにしていた事が、カギにはあった。それは女子生徒の水浴びである。それが見たいがために、わざわざやってきたと言っても過言ではなかった。

 

 そして落下から二日後、それは訪れた。こそこそと覗きをするこのカギ、本当に変態だった。

 

 

「むふむふむふ、自然な姿はえぇなぁ~」

 

 

 ただのエロ親父だった。数え年10歳とは思えない完全な変態親父だった。精神年齢的に言えば、親父で間違ってはいないのだが。

 

 しかし、そうこうしている所へ石像の兵士、ゴーレムがやってきたのだ。いつの間にか佐々木まき絵が、そのゴーレムの右腕に納まっており、カギに助けを求めていた。

 

 そこでカギは中身が学園長なのを知っているので、悠々とゴーレムへと魔法で攻撃していた。魔法の隠蔽? なんだねそれは一体? というレベルだった。むしろ、カギはこのメンバーに魔法を知っておいてほしいのだ。

 

 

「ハンサム・イケメン・イロオトコ! 魔法の射手! ”連弾!火の17矢”!!」

 

「フォ!?」

 

「な、何が起こっているです!?」

 

「今のはメラゾーマではない、メラだ」

 

 

 カギが使ったのはメラでもメラゾーマでもなく、火属性の魔法の射手である。それが全てゴーレムに命中し、左腕を破壊したようだ。無茶しやがる。ダメだこのカギ、早く何とかしないと。

 

 そこでよくゴーレムを見ると、首の後ろあたりに魔法の本が引っかかっていた。それを盗んで逃げよう、カギは生徒たちに指示し、そうするべく行動に移ったのだ。

 

 そこで続いて古菲と長瀬楓が動き出した。古菲は中国武術での格闘で、ゴーレムを殴る。その隙に楓がまき絵を助け出した。さらにまき絵は得意のリボンで本を回収していた。なんて抜け目の無いやつ。ただでは転ばないらしい。

 

 そして滝の裏側にある非常口から脱出するべく、カギが生徒たちを誘導していた。生徒たちは着替えながら、カギの後ろを追っていた。

 

 しかし、その後ろをゴーレムも追ってきていた。扉へと到着した一行だが、だが何故かそこの扉に、学校で出るような問題が書いてあったのだ。それを見て生徒たちは焦っていた。

 

 

「とりあえず答えろ! 答えが合えば開く!! ハンサム・イケメン・イロオトコ! 魔法の射手! ”連弾! 火の23矢”!!」

 

 

 カギはこの原理を知っていたので答えればよいと教え、さらに魔法をゴーレムへと撃ち放っていた。このカギ、本気で魔法隠蔽など捨てており、魔法を連射していた。大丈夫なのかこいつ。

 

 が、生徒たちは焦っており、あまり気にする様子はない。しかし、それを不思議そうに見ている夕映がいた。

 

 そこで古菲がその扉の問題を答えると、ピンポーンという音とともに、扉が開いた。全員がそこへ入り、奥へ進むと今度は螺旋階段が待っていた。

 

 階段を上っていると、そこへ壁を破壊して進入してくるゴーレムがいた。本を返せと追ってきているのだ。階段にはまたしても問題が書いてある扉があり、それを生徒たちは答えながら上へ上へと昇っていくのだった。

 

 その先にはなんと、エレベーターがあったのだ。いや、エレベーターがあるなら、それにつながるような階段なんて作る必要があったのだろうか。完全に嫌がらせ目的である。

 

 エレベーターに入る生徒たちだが、なぜか重量オーバーとなっていた。そこへゴーレムがやってきて、絶体絶命のピンチとなってしまったのだ。とりあえず生徒たちは服を脱ぎ捨て、重量を軽くしようとした。

 

 だがそれでも重量オーバーであった。カギはそれをスケベな顔で眺めながら、本を捨てればいいのにと思っていた。そしてとりあえず、カギはエレベーターから出て、ゴーレムを迎え撃とうとしていた。すると本をとった夕映が、それを投げ捨てたのだった。

 

 

「私たちはここでしっかり勉強をして、さっきの問題も解けたです! それにネギ先生に言われっぱなしでは、あまりに情けないのです! こんなもの! えいっ!!」

 

「あ!? 魔法の本!!?」

 

「フォ、フォオォォ~~~~~!?」

 

 

 夕映はネギからの言葉が、ずっと喉に刺さった小骨のように、胸に引っかかっていたのだ。

 

 10歳で自分よりも年下のネギに、あそこまで言われてまで魔法の本をほしいと思わなくなっていた。ここまで来るのに、さきの問題を仲間と共に全部解いて来たという自信もあった。

 

 だから魔法の本を投げ捨てたのだ。そして魔法の本はゴーレムに直撃し、墜落して行った。さらに、魔法の本が無くなったことにより、エレベーターが動いたのだ。そのままバカ四天王とカギは、地上へと帰っていったのだ。




O.S(オーバーソウル)はイメージが重要
剣が伸びるというイメージが付きにくい麻倉葉は、背中から回り込む動作でカバーしたという

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