覇王は麻帆良学園の男子中等部に在学中である。
在学中は基本的に寮住まいとなる。寮ではルームメイトがいる場合があるのだ。そしてその覇王のルームメイトは状助だったらしく、とりあえず適当に助け合いながら生活していた。
基本的に料理全般は状助が担当している。パールジャムのスタンドが使え、ある程度料理を練習しているからだ。それ以外を覇王が片付けているのだ。洗濯物を乾かすのに、
さて、ここに実はもう一人、ルームメイトが存在する。
しかしそれは、正規のルームメイトではなく、ただの居候なのだ。
「いやあ、金時。この時代でもいつもどおりの金ピカで、安心させられるよ」
「そりゃオレはオレだからな! むしろオレは覇王が転生して、こんなにちーさくなってるなんて知らなかったぜ」
「それはなんていうか成り行きでね。しかし、サーヴァントとやらになっても、君のトラウマはまったく直ってないみたいじゃないか?」
「……トラウマっつーか、悔いみてぇなもんさ……。あんまその話は触れねぇでくれや」
バーサーカーは桜咲刹那をマスターとするサーヴァントである。しかし、流石に女子寮に入り浸るのは、バーサーカーも快く思っていなかった。だから、かれこれ1000年前からの友人である、覇王の部屋に居候させてもらっていたのだ。
そしてバーサーカーは過去の後悔を掘り起こされ、多少ブルーな気分になっていた。それをおかしく笑いながら、からかう覇王であった。両者は本当に友人であり、盟友であり、戦友でもあるのだ。だが、ここにとてもアウェーな空気にさらされている少年がいた。
状助のことである。
状助はまさかの超有名な鉞担いだ金太郎たる坂田金時が、自分の横で雑談してることに
というか、さらに1000年前に覇王がそのバーサーカーと友人となって、共に妖怪退治をしていたというのにも相当驚いたのだ。まあ、しかしそれも数日過ぎれば、人間なれてくるものだ。状助もいつの間にか仲間となって打ち解けていたのだ。
「美少女の酒呑童子を、騙し討ちで倒しちゃったってやつでしたっけ? そりゃ確かにトラウマになるぜぇ……」
「それ以上言うなって……。まあ、へこんでんのはオレぐらいだろうがよ……」
「ハッハッハッハッ、君のような筋肉でも繊細な部分があることに、友人として、とても嬉しく感じるよ」
もうそれ以上はやめてくれと、バーサーカーはかなりブルーに言葉にしていた。とは言え、こんなことでブルーになるのは自分だけで、騙し討ちされた方は気にしてないんだろうな、と昔を思い返すように、小さくこぼした。
状助は流石にブルーなバーサーカーを見てヤバイと感じ、話題を変えようと考えていた。しかし、覇王はその部分まで愉快に感じて笑っていたのだ。
もはやこの覇王、とんでもないドSっぷりを発揮していた。もうハオでいいんじゃないか、ぐらいのドSっぷりだった。そんなドS全開の覇王に、微妙に引きながらも、状助は会話を続ける。
「思ったんだがよぉ~、覇王の1000年前の奥さんって美人だったのかなぉ~?」
「さぁね、僕よりも10歳も年下だったから、最初は美人というよりも、美少女だったよ」
「え? 覇王ってロリコンだったのかよ!? マジかよグレート!!」
覇王の嫁さんは覇王よりも10歳も年下だったことに、状助は驚きロリコンの称号を与えた。しかし、それは覇王が意図したわけではない。それに時代が時代であり、15歳以下の結婚も普通に存在したのだ。
「はぁ~、状助、君ねぇ……。近年で考えればそうなるかもしれないが、あの時の寿命はせいぜい50年そこらだよ? 20歳だと行き遅れといわれるぐらいの時代だったんだ、わかるかい?」
「まったくだなぁ……。むしろ今だと
「お、おう……」
覇王はあきれた感じで反論し、バーサーカーもそれに便乗して意見を述べる。状助は自分が悪いのかと思うほどに、凹まされてしまったのだ。
「そういう話を振ったのなら、君も話してもらわないと。状助は確か、明日菜とあやかの幼馴染と呼べる存在だろ? どう思っているのかな? 結構気になっていたんだ」
「覇王よぉ~、俺はあいつらを別にどうとも思ってねぇっスよぉ~。トランプ配り役程度のパッシー君だったからなぁ~」
「パッシーってパシリのことか? 確かにそんな役柄はちょっとなぁー」
パシリと聞いてそいつはひどいなあ、とバーサーカーはぼやいていた。状助としては、あの二人に何かを思うほどのことはないのだ。単純にトランプ配りのパシリという扱い程度の認識だからだ。まあ、一度アスナを変態から助けてから、少しばかし友人となったが、状助としては所詮その程度なのだ。
「面白くないね、君は。まあ、ジョジョの中でもたいしたフラグ体質でもなかったし、しょうがないか」
「その納得の仕方はねぇぜ~……。つーかよぉ、おめぇもこのかや刹那と仲良くやってんじゃねぇーのかよぉ~!」
「そう見えるかい?」
「オレの目からもそう見えたぜ? まっ、遠目からだからよくわかんねぇけどな!」
バーサーカーは刹那のサーヴァントだ。だからいつも基本的には刹那の近くに居たのだ。覇王は木乃香を弟子として鍛えたり、刹那と剣を打ち合ったりしていた。バーサーカーにはそれが遠目で、仲良くやってるように見えたようだ。
「木乃香は僕の陰陽師とシャーマンとしての弟子だ。それに僕の特典”佐々木小次郎の技術”を腐らせないためもあるけど、刹那を鍛える点においても、剣の稽古は有意義なものだよ」
「ほんとおめぇ京都に生まれるべくして生まれた存在じゃあねぇーか! どうしようもなく染まってるぜぇー!!」
「1000年前から染まってたぜ、この坊ちゃんはよ!」
普通に考えて覇王の特典はチートオブチート、もはやバグの領域であった。しかし、回復としてみれば状助も十分バグっているだ。というか、この部屋バグしかいなかった。
「状助だって、回復だけを見れば十分チートさ。君ほどすさまじい回復要因は存在しないね」
「おめぇーがそれを言うかぁ? 呪禁存思で死んだ人間蘇らせるおめぇーがよぉ~!」
「つーかよ! 回復できねぇの、オレだけじゃんか!!」
バーサーカーは自分だけ回復能力が無いことに
「ゴールデンさんなら回復なんて必要ないっスよぉ~! だって、ゴールデンに強いんっスもんね~! いやー、その筋肉憧れるなぁ~」
「そ、そうかぁ? ゴールデンか、いい響きだぜゴールデン!」
「君、ほめている部分でなくゴールデンで機嫌が直るんだ……」
バーサーカーはゴールデンの単語で簡単に元気になったのだ。それに引くレベルで覇王はあきれていた。当たり前である。なんとかバーサーカーを立ち直らせた状助は、今度からバーサーカーが凹んだ時は、ゴールデン機嫌直しをしようと考えるのだった。そんなことを忘れるかのように、覇王は自分の弟子の木乃香の話を始めた。
「しかし、僕の弟子がとうとう自分で持霊を持ったみたいで、嬉しい限りだ」
「弟子ってこのかのことかよぉ~? 持霊っつーことはシャーマンなんだよなぁ!?」
「そうさ、彼女は僕が鍛えたシャーマンさ」
状助はそういえばさっきそんなことを言っていたと思った。そしてシャーマンとして鍛えられた木乃香を少し想像し絶句したのだ。
「おめぇ、あの魔力でシャーマンってどういうことよぉー!? つーかよぉ、このかの持霊って何になったんだ?」
「ああ、今僕が貸してる前鬼、後鬼と、えーと、たしか教室に居た幽霊少女を持霊にしたらしい」
「お、おい、待てよ。それってまさかよぉ~……」
まさかシャーマンキングにて恐山アンナが使役していた前鬼、後鬼を木乃香が持霊として操っているなどとは状助も思っていなかった。さらに、教室に居た幽霊とはまさしく”相坂さよ”のことだろうと、状助は簡単にわかり、完全に原作崩壊してるじゃあねぇーかー!と思うのだった。
「マジかよグレート……。でも彼女は自縛霊で、動けねぇんじゃねーのか?」
「ああ、状助は”原作知識”がかなり残ってるんだね。その部分なら大丈夫さ、超・占事略決で精霊化させたみたいだから」
「え? うそだろ承太郎?!」
「承太郎って誰のことだよ!!」
バーサーカーは状助の承太郎発言に、誰だよとすかさずツッコミを入れる。
まさか幽霊を精霊化するなんて、グレートなことがあるのかよ、と状助は考えていた。
とはいうのも、シャーマンキングにて、麻倉葉の持霊だった阿弥陀丸は、その力で精霊化しているのだから当然である。覇王は弟子の成長を心から喜び、とてもいい笑顔になっていた。それとは逆に状助は、先行きがさらに不安になって頭を抱えていた。
「どういうことだよそれはよぉー!? これじゃ原作どおりにいかねーぜぇー!!」
「別に原作どおりとか言わなくても。まあ、僕らでなんとかすればいいし、特に困ることもないだろ?」
「原作とかよくわかんねぇけどよ、未来なんて最初っからわかんねぇもんじゃねぇのか?」
まさに覇王とバーサーカーが正論を説いていた。状助は確かにそうかもしれねぇ、と思い腕を組んでうんうんと唸った。
「つまりよぉ~、俺らが彼女たちの面倒を見るっつーことかぁ?」
「そうは言ってない、それをしているのは僕らだけではないよ。というよりも、状助は明日菜が強くなっているのを知っているはずだろ?」
「確かになぁ……。アレだけ強けりゃ、原作に出てくる相手なら大抵倒せるだろうぜ……」
状助はアスナと変態の戦いを見ており、アスナの強さを知っていた。うっかり失念していただけであった。つまり、アスナや木乃香が強ければ、特に気にする必要が無くなっていくのだ。
「刹那も僕や金時に鍛えられている。”原作”とやらは知らないが、かなり強いと思うよ」
「はっ、オレと覇王が鍛えたんだぜ? 今の大将は、生半端な強さじゃねぇぜ?」
「ぐ、グレート……。なんかもうどうでもよくなってきたぜ……」
佐々木小次郎の技術とバーサーカーの怪力で鍛えられた刹那とか、想像しただけでも悶絶しそうになる状助だった。ああ、もう心配するだけ無駄だな、そう感じた状助は、開き直って”原作”なんて捨ててしまおうと考えたのだった。覇王は特に悪びれた感じすら見せず、まあ当然だよね、程度の認識であった。
そして、そんな会話を続け、日が落ちてあたりは暗くなっていくのだった。
バーサーカーに女子寮に居ろなんて、流石に拷問すぎる