理想郷の皇帝とその仲間たち   作:海豹のごま

10 / 179
テンプレ31:行く気がないのに麻帆良入り

テンプレ32:転生者同士友人になる

テンプレ33:転生者先生

テンプレ34:いると便利なスピードワゴン財団


十話 覇王、麻帆良へ行く

 2001年、主要キャラたちが初等部から中等部へとあがった年。

シャーマンファイトがあったなら、その一昨年の年にシャーマンファイトIN麻帆良があってもおかしくなかっただろう。そして、昨年の頭にシャーマンキングが誕生していたのだろう。

 

 

 さて、その麻帆良学園本校男子中等部の一年に、黒い髪を長く伸ばし、星型のアクセサリーをつけ、完全につまらなそうな表情をした、青空を眺めている一人の少年の姿があった。

 

 赤蔵覇王である。しかし、本来ならば赤蔵家の次期頭首として、この麻帆良に来る必要性などどこにもなかったはずの彼が、なぜ麻帆良学園に入学してしまっているのか。それは、彼が麻帆良学園に入学する数週間前に遡る。

 

 

…… …… ……

 

 

 京都に存在する陰陽師の名門、赤蔵家。

その屋敷の一室で、現頭首、赤蔵陽明と次期頭首、赤蔵覇王による談義が行われていた。二人は対面する形で座り、覇王はどのような話で呼ばれたかを考えていた。

 

 

「話しというのは、どういったことでしょうか」

 

「ふむ……。覇王よ、お前に麻帆良へ行ってもらうことにした」

 

「……はい?」

 

 

 覇王はそれを聞いて驚いた。なぜか麻帆良に行くことになっていたからだ。そして、麻帆良へ行くということが、どう意味するのかもわかっていたからだ。

 

 

「お前も西と東の今の現状を知っていよう……。お前を東へ送ることは、普通ならあまりよいことではない」

 

「わかっております。東へ行けば、裏切り者と思われる可能性が大きいでしょうからね。で、そのようなことをしてまで、なぜ僕が麻帆良に?」

 

 

 どうして麻帆良に行かなければならないかを陽明に質問した。このまま家を継ぎ、陰陽師になればよいのなら、麻帆良に行く必要がないからだ。それに関西呪術協会の一部は、麻帆良をあまり快く思っておらず、強硬派のようなものは、わざわざちょっかいまで出しに行くほどであった。そして、京都から麻帆良へ行くということは、裏切りと思われても仕方が無い行為なのだ。

 

 

「わしはな、そのようなことをしている暇はないと考えておる」

 

「どういうことでしょう?」

 

 

 陽明は、目を瞑りながら、自分の考えを覇王に語った。そして覇王は真剣にその話を聞き入れる。

 

 

「1000年前からシャーマンとして生きてきたお前にはわかろう。このまま科学が進めば、我々のような存在が不要となるだろう。だからこそ、東だ西だともめている暇があるのなら、そうならないために、何か手を講じる必要があるだろうと思うのだ」

 

「たしかに、そのとおりかもしれません。科学も行き過ぎれば、魔法とかわらないといわれていますし」

 

 

 しかし、陽明はそれだけを危惧してはいない。もっと大きな力に対抗する必要があると考えていたのだ。

 

 

「しかし、もっと恐れていることはな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……転生者……!」

 

 

 転生者は、今は魔法世界で暴れている。たまに旧世界で暴れているものもいるが、基本的には魔法世界どまりである。陽明は、目を開き、覇王が知っている原作知識というものに触れた。

 

 

「お前は多少なりに知っていよう、予言に近い、未来の情報を……。お前だけではなく、陽も知っておるようじゃがな」

 

「はい、存じております」

 

「わしがお前や陽に教えてもらった限りの情報でしかないが、近い未来、その転生者たる存在が、この旧世界を脅かすと考えておる」

 

「まさか……魔法世界の消滅……」

 

 

 そう、”原作”では阻止された魔法世界の消滅。未来人(超 鈴音)が味わった恐怖の未来。それは火星と地球の戦争だった。しかし、この世界はさらに転生者が多数存在し、暴れまわっている。

 

 その転生者たちが旧世界に逃げ込み、またその場所で暴れだした時、どうすればよいというのか。考えただけでも恐ろしいことになるだろう。覇王の原作知識はほとんど無いが、大事となるだろう魔法世界の消滅だけは、はっきりと覚えていた。

 

 

「さよう……。そのようなことにならんために、行動するものもおるだろうが、最悪の事態を想定して動かねば意味などあるまい……。東にもある程度力を持つ転生者がおるはずだ。だから、今のうちに手を組んでおかねば、いずれどちらも滅ぼされてしまうだろう」

 

「た、たしかに……。考えたくは無い未来ですが、起こっても不思議ではない……」

 

「そのために、ある程度、こちらの強硬派を捕らえ、あちらとの連携を穏便に進めたいと考えておる。それが理由の一つでもある」

 

「理由の一つ? もう一つ理由があるのですか?」

 

 

 陽明はこれを理由の一つと言った。つまり、さらに別の理由があるのだ。陽明は、静かにそれを説明する。

 

 

「近衛木乃香の護衛じゃ」

 

「彼女の護衛なら、桜咲刹那とバーサーカー(ゴールデン)が、行うことになっているはずでは? 特に、あのバーサーカー(ゴールデン)に、勝てるものなどほとんどいないでしょう」

 

 

 近衛木乃香は関西呪術協会の長、近衛詠春の娘である。膨大な魔力も宿しており、その利用価値はとても高い。だからこそ、すでに護衛としてその二人が上げられているのだが覇王もそこに加われと告げられたのだ。

 

 

「うむ、二人はとても優秀で、信頼できる存在だ。お前の言うとおり、あのバーサーカーという男もなかなかできる。……しかし、多くのものが彼女を手に入れようとするのならば、その二人だけで守りきれると思うのか?」

 

「確かに……。しかしそれなら、弟の陽でもよかったのでは?」

 

 

 覇王の弟、赤蔵陽、麻倉葉の能力をもらった転生者でスペックだけならば、他の転生者に引けを取ることはないのだ。

 

 

「あれは駄目だ。まるで成長していない……。いまだにO.S(オーバーソウル)も初期レベルで、無駄に巫力を使っているのが現状だ。そのようなやつに、彼女の護衛など勤まるわけが無かろう。それに、やつはうちの家業を手伝ってもらわねばならん」

 

「う……そうですね……」

 

 

 陽はいまだにO.S.(オーバーソウル)もろくに使えない、駄目なシャーマンどまりだった。その程度の能力では、護衛は勤まるはずが無い。

 

 

「そういうことだ。すでに長にも話はつけてある、頑張って来い」

 

「は、はい……わかりました……」

 

 

 このようなことがあり、今現在、どうしてこうなったと嘆く覇王の姿があるのだ。本当にどうしてこうなった、転生神の悪戯か、しかし彼が欲する答えなどはでなかった。

 

 

…… …… ……

 

 

 この麻帆良学園本校男子中等部、1-Aには三人の転生者が存在した。一人はこの赤蔵覇王、最強クラスの転生者だ。二人目は東状助、最もやさしいスタンド使いの転生者だ。そしてもう一人は……。

 

 

「お、おめぇハオかよ!? グレートマジかよ……なんでハオが同じクラスにいんだよコラァ!?」

 

「そういう君は東方仗助!」

 

「そういうネタ振るなら悪いやつじゃあねぇみてぇだなぁ~」

 

 

 学園の入学式が終わり、放課後となった時のこと。ハオと同じ姿の赤蔵覇王、東方仗助と同じ姿の東状助。どちらも知った姿だったので、すぐに転生者だとわかり、どちらも悪いやつではないと考え、話し合っていた。と、そこへもう一人、それを知るものがいた。

 

 

「ひえー、たまげたなぁ……。ハオと仗助、どんなジャンプ大戦だ!?」

 

「あぁ? 俺の姿を見てそう思うんなら、あんたも転生者ってやつぅ?」

 

「みたいだ、見ればわかる」

 

 

 状助は自分の姿を知るならば転生者だと考え、覇王は”特典(転生者の霊視)”で彼が転生者だということがわかったようだ。やはり黒髪をそこそこ短めにし、イケメンと思えるほどの顔立ちをしたこの少年。

 

 

「俺の名前は川丘三郎(かわおか さぶろう)、君たちと同じ存在だよ。俺は戦闘とか得意じゃないんで、敵対とかしないよ。というわけで、よろしく!」

 

「おう、俺は東状助ってんだ!よろしく!」

 

「僕は赤蔵覇王、まあ、よろしく頼むよ」

 

 

 川丘三郎と名乗った転生者は、漫画やアニメのキャラの姿ではなく、どこにでもいそうな”モブ”と呼ばれる姿をしていた。まあ、それでもイケメンなのだが。彼らは信頼のために、自らの特典を話し合った。

 

 

「俺の特典は”運動神経抜群”と”料理の才能”だよ。めっちゃ地味だろう?」

 

「何!? 料理の才能だとぉ!? おめぇー料理できんのか? できれば教えてほしいんだがよぉ~」

 

「おや? どうして?」

 

 

 突然状助が料理を教えてほしいと言って来た。彼の姿を考えれば、スタンドはクレイジー・ダイヤモンドだから別に趣味にしていなければ、料理など必要ないと三郎は感じたのだ。

 

 

「俺の特典は”クレイジー・ダイヤモンド”と”パール・ジャム”だぜ!だから料理を教えてほしいってわけよ」

 

「なるほど、確かにそれなら納得だ」

 

 

 パール・ジャムは食材と料理の腕で効果が高まるスタンドだ。食材は仕方が無い部分もあるのだが、腕なら磨くことができる。だから状助は、料理がうまい人に教えを請いたかったのだ。

 

 

「さて、僕が最後になったようだけど話そうか。僕の特典は”ハオの能力”と”Fateの佐々木小次郎の技能”さ。……最近佐々木小次郎の技能をまったく使ってないけど」

 

「使う場面があるほうが驚きだぜ、コラァ!」

 

「チートすぎる……。もはや別の次元に住んでる人間だったなんて……」

 

 

 そりゃ中ボスとラスボスの能力を持ったやつが、目の前にいるんだから驚くだろう。だが、覇王は彼らに敵対の意思は無い。踏み台と呼ばれる転生者ではなさそうだからだ。

 

 なお、覇王はこの世界での二度の転生で手に入れた、特典のことはあえて話さなかったが転生神からの使命や、実は1000年前に転生していたなんて話しても、話がややこしくなるだけだと考えたからであった。そう考え、つまらなそうだった表情を笑顔に変えている覇王がそこにいた。しかし、その笑顔が状助はとてもトラウマだったらしい。

 

 

「こえぇよその笑顔よぉ~。その表情で”ちっちぇえな”っつって燃やすんだろう? やばすぎるぜ!!」

 

「ひどいなあ、僕は君たちにはそんな真似はしないさ」

 

「他の人にはするってことかい……」

 

 

 そりゃもう、何百人という転生者を焼いてきたのがこの覇王だ。まあ、今世では()()は出していないから、あまり気にはしていないのだが。

 

 ハオの能力ということで、少し驚かれてしまったのは彼としてはショックだった。……シャーマンキングのハオは、人間を蚊とも思わないほどの残虐ファイトをしているので、しかたないのだが。

 

 

「大丈夫さ、僕は君たちに対して攻撃はしない。逆に守ってあげよう、僕のS.O.F(スピリット・オブ・ファイア)でね」

 

「お、おう、頼もしい限りだぜ」

 

「あ、ああ、嬉しいこと言うじゃないか」

 

 

 やっぱりハオの能力ということで、若干ビビっている二人に多少ため息をつきながらも、覇王はほっとけば何とかなるだろうと考えた。そして、三人でどういう経緯で転生したか、転生後はどうだったかを話し合いつつ、寮へと帰宅するのであった。

 

 

…… …… ……

 

 

 この麻帆良学園本校男子中等部、1年A組には三人の転生者が存在した。赤蔵覇王、東状助、川丘三郎である。

 

 基本的にこの三人は仲良くやっており友人として、つねに行動を共にする仲となっていた。しかし、この学園には彼らとは別に転生者が存在した。

 

 

…… …… ……

 

 

 それに気づいたのは、あの東状助だ。いや、気がつかないほうがおかしいのだ。

 

 

「今日からここの担任をすることになった、”ジョゼフ・ジョーテス”じゃ。ハッピーうれピーよろピくねーーー」

 

「なん……だと……」

 

 

 そう、この1年A組の担任、ジョゼフこそが転生者だったのだ。というか、見た目もまんま、ジョジョの奇妙な冒険Part4のジョセフ・ジョースターだったのだ。

 

 これには他の二人も度肝を抜いた。まさか担任の教師が転生者だとは夢にも思うまい。だが入学式の初日、ジョゼフは行動を起こすことなく、完全にスルーされる形となったのだが、その次の日、突然ジョゼフが彼らを呼びつけたのだ。

 

 

「そうじゃった、赤蔵覇王、東状助、それから川丘三郎、その三名は放課後、生徒指導室まで来てくれんかな。では、ホームルームを始めるとするかの」

 

 

 クラスメイトたちがすでに彼らが問題でも起こしたのかと、三人を話題にしていたが、彼らはとんでもないことになったと考えていた。

 

 さらに、どういうわけか、モブ顔の川丘三郎が転生者ということまでバレていたのだ。と、いうのも単純で、入学式終了後の帰宅途中に転生者としての会話をバリバリ話しており、それをチラリとこのジョゼフが聞いてしまっただけなのだ。

 

 どんな話をするかは予想がつくのだが、敵対する可能性を否定できないところがあった。そもそも、このジョゼフの姿なら、確実にスタンド能力を持ち、そのスタンドは相手の思考を読むことすら可能な、念写のスタンド、ハーミットパープルだろう。

 

 どんな考え事も、テレビに映し出せるこの能力ならば赤裸々に、自分の思考を読まれてしまうというものだ。さらに、波紋が使える可能性もあるのがとても大きい。

 

 対人ならば、相手の意識を簡単に失わせることも可能というのが波紋だ。ハーミットパープルの茨を体に巻きつかせ、波紋を流せば相手に近づくことなく、意識を奪えるだろう。そんな不安を募らせ、放課後に生徒指導室に足を運ぶ三人がいた。

 

 

「グレート、マジかよ……。まさかジジイがいるとはよぉ~」

 

「そしてそれが、僕らの担任か」

 

「明らかに状助君のせいだと思うよ」

 

 

 スタンド使いはスタンド使いと惹かれあう。状助はスタンド使いで、多分ジョゼフもスタンド使いだろう。そのルールどおりだとすれば、間違えなく状助に惹かれあった可能性がある。

 

 さらに、ジョセフ・ジョースターの息子が東方仗助であり、その父親を元にした能力を持つのがジョゼフ・ジョーテスならば、その息子を元にした能力を持つのが、この東状助なのだから、あきらかに、この状助が彼を呼びよせたようなものだろう。

 

 やや重い足取りで、生徒指導室へと入っていく三人を待つように、長方形の形で囲むように配置された、長いテーブルの、その真ん中に座っているジョゼフがいた。そして覇王、状助、三郎の順番に椅子に座り、ジョゼフと対面していた。また、生徒指導室にはテレビがあり、状助と三郎はとてもそれに不安を感じた。

 

 

「来たようじゃのう。単刀直入に聞くとするかの、三人は()()()じゃな?」

 

 

 枯れた老人のような姿とは思えないほどに、ジョゼフの後ろから”ゴゴゴゴゴゴゴゴ”という効果音が見えるぐらいのプレッシャーが放たれている。状助と三郎の二人はこの老いた大男にすごまれ、冷や汗をかいていた。

 

 ……実際は別にすごんでないのだが、二人にはそう見えるようだ。ただ一人、覇王だけは涼しい顔で、ジョゼフを見てどう行動してくるかを考えながら、適当にくつろぎつつやはりここで、それを答えたのだった。

 

 

「そのとおり、僕らは転生者だ。だが、別に何をするわけでもない」

 

「……ふむ、そのようじゃなぁ~。お前さんの見た目から察するに、この麻帆良を支配しようと思えば、できなくは無いじゃろう。信用するとしようかね」

 

 

 ジョゼフはそのような判断で、彼らを信用したのだ。たしかに、ハオの最強と称されたO.S(オーバーソウル)を使用すれば、麻帆良を火の海に変え、魔法使いたちをなぎ払い、簡単に制圧できるだろう。

 

 だが、それをせずに学園で生活を始めたからには、特にそれを行う気がないか、理由が無いのだろうと判断した。次に、話題を振ったのは状助だった。少し恐縮した形だったがが、はっきりと質問した。

 

 

「ジョーテス先生、俺らの特典を教えますんで、そちらの特典も教えていただけないスかね」

 

「ふむ、よいじゃろう、先にわしの特典を話そう。わしの特典は”ジョセフ・ジョースターの能力”と、”Fateのスキル、黄金律Aランク”じゃよ。能力はスタンド、ハーミットパープルと波紋の呼吸じゃ。あとスピードワゴン財団が存在することを言っておこうかの」

 

「黄金律!?」

 

「スピードワゴン財団!?」

 

 

 なんということだ、このジョゼフという男は金をもてあますほど持ち、さらにスピードワゴン財団が存在すると断言したのだ。スピードワゴン財団の存在に三人は流石に驚いた。そして、ジョゼフは彼らの特典を聞き終えると、別のことを彼らに教えた。

 

 

「わしが念写で調べたことじゃがな、この学園には多くの転生者が存在しておるよ……。つーか、お前さんたちの同級生に、あと6人ほど転生者が存在しとる」

 

「そん、なに……」

 

 

 三郎はその数にショックを受けている様子で、隣の状助も驚いていた。なるほど、という表情でその情報を受け止めているのは覇王ぐらいだった。それもそのはず”原作イベント前に転生者が大量に出現する”ルールがあるからなのだ。さらに、ジョゼフは他にも転生者がいることを暴露した。

 

 

「まあ、スピードワゴン財団に調べてもらったことじゃがな。……学園で授業を受けている人間の、大体50人は転生者みたいじゃのー……。ま、大して問題はなさそうじゃがね」

 

「多すぎっスよ~、どうしてそんなに……」

 

「でも問題なさそうとはどういうことです?」

 

 

 状助はその数に驚き、問題ないとしたジョゼフに三郎が質問していた。覇王は大体予想がついており、目を瞑りながら完全にリラックスしていた。

 

 そもそも踏み台と呼ばれる転生者を、倒して回っていた覇王にとって、この麻帆良の転生者が何をしようと、自分はただ狩るだけだとしか考えていないのだ。ジョゼフは三郎の質問に、安心させるかのように答えた。

 

 

「学園で授業を受けとる転生者や、わしのように教師をしとる転生者は、基本的に暴れることを良しとしないものが多いようじゃ……。そもそも、強い能力はもらっているようじゃが、暴れまわる気がないものが、麻帆良では多いようじゃのう、嬉しい限りじゃわい」

 

「ほへー、俺みたいなのが多いってことっスかぁ~」

 

 

 転生者たちは何を考えているかはわからないが、現段階では麻帆良で暴れる気はまったく無いとジョゼフは考えている。そもそも原作知識がある転生者の多くは”原作改変”をあまり快く思っていないものが多く、”原作通り”進めたいのだ。

 

 特に麻帆良に在籍する転生者の多くは、そのような考えのようで派手に動くことを嫌い、少しずつ好きなキャラに会ったりしているようだ。また、原作知識の無い転生者も、表立っては特に問題は起こしていないようだ。覇王はそれを聞いて、この麻帆良に来てそうそう、仕事をする必要はなさそうだと考えた。

 

 

「お前さんたちも、特に暴れようなど考えてはおらんようじゃし。まあ、一応確認のために呼んだだけじゃよ。ちーと時間を使わせてしまったのう」

 

「まあ、しかたないことだから気にしません。それに、転生者がこんなに多いことを知れたことは悪くはありませんよ」

 

 

 三郎は彼ら三人に会うまで、転生したのが自分だけだと思っていた。状助も同じように、転生者が自分以外いるとはあまり考えていなかった。だから、こういう情報を得たことは大きいと感じていた。

 

 だが、覇王は大体の情報を持っているので、さほど気にはしていなかったのだ。そして覇王は、この場でこの世界の転生神の使命により、自分が行っていることと最初の転生時にもらった特典以外の特典について話そうと考えた。他の転生者との戦闘になって、悪者にされたくはないからだ。

 

 

「僕のことを少し話そう……。僕は”()()()()()()()()”に”()()”この世界に転生させられた。そして二つの特典を貰った、一つは転生者がわかる、もう一つは転生者の特典がわかる、というものだ」

 

「こ、この世界にも転生神がいるのかよ!? マジかよ!?」

 

「え、えぇ!? 転生者と特典がわかるのか!?」

 

「ふむふむ……」

 

 

 覇王は1000年前に転生し、しっかりと人生を全うしたこととその後、この世界の転生神に、危険な転生者を狩るよう命じられたことを話した。

 

 

「見た目どおりじゃあねーかー!! つーかよぉ! そこまで似なくてもいいだろう!?」

 

「苦労してたんだね……」

 

 

 二人の意見は、まあ普通だった。学生的にもその程度だろう、間違ってはいない。しかし、ジョゼフはすこし違う質問をした。

 

 

「お前さんが今まで殺してきた転生者の数を覚えておるのか?」

 

「なんだって!?」

 

「やはりそうきたか……」

 

 

 当然の質問である。転生者を狩るということは、それすなわち転生者を殺すことだからだ。失念していた二人も、ショックが隠しきれなかった。まだ1日しかたってないが、友人となった転生者がまさか殺人マシーンだったなんて思いもよらなかっただろう。

 

 

()()では()()はしてない」

 

「……んん? そいつはどういう意味じゃ?」

 

 

 前世、500年前は殺すしかなかったが、今は別に殺してない。そのような答えが返ってきたのにジョゼフは不審に感じた。なぜなら転生者を狩るということは、殺さなければならないと考えたからだ。そこで覇王は、自分が行ってきたことを話す。

 

 

「なに、転生者の”特典”だけを奪うことができるようになった。ただ、それだけのことさ」

 

「”()()()()()()()じゃと……!?」

 

 

 覇王以外の三人はさらに驚いた。覇王が平然と”特典を奪う”ことをやってのけていたからだ。しかし、どうしてそのようなことができたか、ジョセフには新たな疑問が浮かんできた。

 

 

「僕は大陰陽師、麻倉ハオの能力をもらった。シャーマンとして最高の能力だ。だから、ある程度他者の魂がよく見えた……。まあ、霊視するほどの力は無いけどね」

 

「ふむ、心までは読めないわけじゃな」

 

 

 覇王は心は読めないよ、と説明しつつ、さらに踏み込んだ話を始める。

 

 

「超・占事略決に記された、呪禁存思を使って生き返らせれる。そうすれば、殺さずにすむんだ」

 

「しかし、それだけでは”特典”が奪えるとは思えんがのう……」

 

 

 ジョゼフの意見も最もだ、というか覇王は遠まわしに説明し、なかなか肝心なことを話そうとはしていないのだ。まあ、あの抜け目なさと花京院のヒントでDIOの能力を特定した、ジョセフ・ジョースターの能力をもらっている、このジョゼフならある程度察してくれるだろうと、覇王は考えているだけなのだ。

 

 ……というか、ジョセフ本人でないというのに、この考えは少しばかし無茶ではあるのだが。だが、ジョゼフが考え出したその答えは、間違ってはいなかったようだ。

 

 

「つまり、”特典”が”魂”に強く結びついとるか、それに近いものというわけかのう……。さらに、それを何とかして引き剥がし、特典を奪っているということかな?」

 

「さすがジョーテス先生だ、そのとおりだ」

 

 

 ジョゼフが正解を言うと、覇王は嬉しそうにどういうことなのかを説明しだした。

 

 

「転生者の特典は、魂につながっている。それを僕の持霊、S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)に食わせたのさ」

 

「そんなことができるってぇのかよ!?」

 

「す、すごいね、なんか訳がわからないけど」

 

「なるほどなあー……。S.O.F(スピリット・オブ・ファイア)は他者の魂を食って霊力を上げれるんじゃったかのう。それを特典のみに作用させたというわけか……」

 

 

 驚きつつ、今の覇王が人殺しをしていないことに喜ぶ二人。まあ、一度殺して蘇らせているので、殺してないわけではないのだが。ジョゼフも納得したようで、この三人は安全だと確信した。

 

 

「すまなかったのう、三人とも。今日はもう帰りなさい、疲れたろう」

 

「おっしゃ! ジョーテス先生も敵じゃなかったし、これで安心して熟睡できるってもんだぜ」

 

「そうだね。しかし、帰ったらまだ部屋の整理が終わってないからやらないとな」

 

「僕はもう、終わってるけどね」

 

 

 いつの間にか他愛も無い会話となり、先ほどの緊張はまったくなくなっていた。部屋の整理が終わってないなら、手伝ってやろうと二人が言い出し、帰宅後に三郎の部屋へ集まることとなったようだ。生徒指導室から出て、離れていく三人を、ジョゼフは優しい目で眺めていた。

 

 

「よい子たちじゃのう……。凶悪な能力を持ちながらも、暴れることなく普通に生きとる……。これほど頼もしいことはないのう、よかったよかった」

 

 

 これから転生者が麻帆良を襲撃する可能性は十分ある。その時、覇王が仕事をしてくれれば、かなり安全に終わらせられるだろう。ジョゼフはそう考えながら、残りの仕事をすべく職員室へと足を運ぶのだった。

 

 

…… …… ……

 

 

転生者名:ジョゼフ・ジョーテス

種族:人間

性別:男性

原作知識:若干あり

前世:60代教師

能力:波紋と念写能力のスタンド、ハーミットパープル

特典:ジョセフ・ジョースターの能力、オマケでハーミット・パープル

   Fateのスキル、黄金律Aランク

 

 

転生者名:川丘三郎(かわおか さぶろう)

種族:人間

性別:男性

原作知識:なし

前世:30代の会社員

能力:ない

特典:運動神経抜群

   料理の才能

 

 




覇王の祖父は転生者や原作知識のことなどを少しだけ陽や覇王から聞いてる設定

あと状助君とジョーテス先生の関係は未設定です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。