異世界より”超高校級”が参戦するようですよ! 作:ヤッサイモッサイ
黄色いひよこは出てきません。イエスロリータ!な方々は白いやつだけで満足してください。
はいどうもストックが切れたので必死になって書きました。
書ききれてよかった…………いやマジで。
大和装ロリ決戦!白い夜叉VS黄色いひよこ
“サウザンドアイズ”に向かう道中、石畳の通りに沿うように脇に咲き誇る桃色の花弁をみて元の世界の桜を思い出す。とはいえこの花とは少し形が違うが…………。
「桜の木……ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているハズがないもの」
「いや、初夏だろ?気合が入った桜が残っててもおかしくないと思うが」
「……?今は秋だったと思うけど」
ん?さっきその話はしたよな?違う世界から来ましたよーみたいな…………。
「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」
わからずに話してた!!?
「へぇ、パラレルワールドってヤツか?」
「近いですね。正しくは立体交差並行世界論と言うものなのですけれど……今からコレの説明を始めますと一日二日では終わらない話ですのでまたの機会ということにしましょう」
そう話を切り上げた黒ウサギが暖簾を取り下げ今まさに店を閉じようとしている女性の姿を捉える。
そこが目的の店だったようで黒ウサギは電光石火と表現すべき速度で駆け出すが…………
「まっ────」
「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」
───呆気なく撃沈した。
残念だな黒ウサギ。大手の店なんてそんなもんだ。
「なんて商売っ気のない店なのかしら」
「ま、全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」
「文句があるなら他所へどうぞ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」
「出禁!?これだけの事で出禁とは御客様舐め過ぎでございますよ!?」
「なるほど。箱庭の貴族であるウサギのお客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますのでコミュニティの名前をお伺いできますか?」
「……う」
先程まで元気に客を主張していた黒ウサギが言葉に詰まったのは名前がないことの弊害か…………というか店員の対応からして既に足元を見られていること間違いなしだ。
ひょっとしたらこれまでにもなにか似たようなことをやらかしていたのかもしれない。
ためらう黒ウサギに代わって堂々とノーネーム宣言をした十六夜にこの場は任せて店に取り付けられた大きな旗を見る。
空を思わせる蒼い生地に向かい合うように刺繍された女神像…………これがコミュニティの旗印。
道中も至る店に旗はあったがやはりコミュニティによって千差万別なんだな。
などとポケーっとしていたのがいけなかったのかバケツをひっくり返したかのように突如降ってきた水に再び体を濡らす。
「………………なんで?」
気の毒そうに俺を見る飛鳥と春日部の視線とは対称に何が面白いのか腹を抱えて笑いながらこちらを指さす十六夜。
何が原因なのかと振り向けば通りを流れていた水路の真ん中に倒れ込む黒ウサギとそれにセクハラをし続けている謎の白い生物が見える。
───あ れ の せ い か ! !
ダイナミック着水と蛇による神造シャワーに続いて本日三度目の水浴びに少し仄暗い感情が沸き起こる。
…………まぁなにもしないけどな。
沸き起こった怒りを沈めているとついにガマンの限界が来たらしい黒ウサギに投げられた白い生物がこちらへと飛んでくる。
俺が体を半歩下げる事によりそれを回避したことで白い生物は奇妙な音とともに十六夜の足へと無事(?)着地した。
「お、おんしら、飛んできた美少女を見て引いたような顔で避けて、挙句足で受け止めるとは何様じゃ!」
地面からすごい勢いで起き上がり文句を言ってきたのは…………どことなくサイズと服装に既視感を覚える白髪和装の少女…………というよりは幼女だ。
「いや避けるだろ普通。」
「十六夜様だぜ、以後宜しくな和装ロリ。そんで日向、普通って言うならトラップからのボレーだろ」
「それは普通じゃない、ここはコートの外だ。」
「つれねぇな。んじゃボレーは俺がするからお前はとりあえず俺によこせ。」
「それならやっただろ、スルーパス。」
「いやいやおんしらワシをボール扱いしているところにまずは疑問をだな。」
「「飛んできた白黒のものは基本サッカーボール。」」
「おんしら色々とおかしいぞ。」
否定をしたのは以外にも春日部だ。
先程まで飛鳥と話していたと思ったのだが…………
「パンダもありえる。」
「そっちか!?というか流石にパンダは…………」
「いや、和装ロリが飛んでくる方がありえないからな?」
十六夜に突っ込まれるのが妙に新鮮だ。
もう色々と混沌としてきた場を収めたのはいち早く正気に戻り、かつ手持ち無沙汰をしていた飛鳥だった。
唸っていた白髪ロリに
「貴女このお店の人?」
と聞いたのだ。
………………え?お店の人?
嘘だろと思いながら視線を白髪ロリへと向ければ当の本人は身長のせいか虚しさを誘うように体を反らしエヘンッと言わんばかりのドヤ顔で答えた。
「おお、そうだとも。」
…………俺にとって衝撃的すぎる答えを。
「この『サウザンドアイズ』幹部様の白夜叉様だよ御令嬢。仕事の依頼ならばおんしのその年齢の割に発育の良い胸をワンタッチ一揉みで引き受けるぞ」
「オーナー、それでは売上が伸びません。ボスが怒ります」
オーナー!?幹部!?
…………どうやら俺と十六夜が無礼を働いた相手は随分と偉かったらしい。
まぁそれが俺たちに対する演技でなければ…………だが。
普通はないと思うがおれたちに無礼を働いたと気負わせる事で精神的に優位に……………
ふと他の四人に目をやってから考える。
…………このメンバーなら気にしないな。というかそれなら黒ウサギが知ってるか。
ようやく水路から上がってきた黒ウサギを労う…………実は因果応報と言う言葉を贈りたいほどに嬉しいのだが…………それは顔へ出さないようにする。それはあんまりにも酷という物だろう
「うぅ……まさかまた私まで濡れるなんて」
「因果応報……かな」
「にゃー」
春日部の言葉に同意するように三毛猫が答え
る。
異世界にまで連れてきただけあってなにか特別な猫なのか?
「ふふん。お前達が黒ウサギの新しい同士か。異世界の人間が私の元に来るという事は………ついに黒ウサギが私のペットに!?」
「なりません!どういう起承転結があってそういう事になるんですか!」
「ちっ、全くつれないのぉ黒ウサギは。まぁよい。話があるなら店内で聞こう」
「ですがオーナー。彼らは旗も持たない”ノーネーム”。規定では」
「”ノーネーム”だと分かっていながら名を尋ねる、性悪店員に対する詫びだ。身元は私が保証するし、ボスに睨まれても責任は私が取る。いいから入れてやれ」
意外と身長に似合わぬ広い心の持ち主だった。
店員の女性もオーナー(?)の言葉には逆らえないのかもう阻むこともなく俺たちを通してくれる。
中は外観からは想像できない広さで…………というか完全に土地面積がちがうだろ。
景観こそ和風に整えられているがその実この中庭ファンタジー要素満載のようだ。
「生憎店は閉めてしまったのでな。悪いが私の私室で勘弁してくれ」
縁側を進みながら白夜叉がそう言ってきた。
もっとも止まったのは建物や着物と同じく和風に整えられただけの明らかに私室というには大き過ぎる部屋。
普段からこの部屋をこの小さな白夜叉が満喫しているとするのなら…………ブルジョワめ。
中に入ってみれば焚かれた香が体の力を抜いてくれるので広さの割には落ち着く空間となっていた。
なおのこと恨めしい
「さて、もう一度自己紹介をしておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えておる“サウザンドアイズ”の幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があっての。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の広い美少女だと思ってくれ」
「はいはい、いつもお世話になっております本当に」
投げやりな黒ウサギの言葉にも白夜叉は気にしたような反応を見せない。
「その外門って何?」
「箱庭の階層を示す外壁にある門の事ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、強大な力を持った方々が住んでいるのです」
つまりあの蛇はかなり弱いほうなのか…………あれ?あれで弱い方って…………強い奴は星でも壊す気か?
黒ウサギが示した七つの壁を見て少し気が遠くなる。
しかしこの形は………………
「……超巨大タマネギ?」
どちらかといえば…………
「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」
「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ」
「バームクーヘンだな、完璧に。」
俺たちの残念な例えにもはや恒例のように肩を落とす黒ウサギ
そして対極に呵々と笑い声を上げる白夜叉。
「ふふ、言い得て妙じゃの。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分に当たる。更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側に辺り、外門のすぐ外は“世界の果て”と向かい合う場所となる。あそこはコミュニティに属していないものの、強力なギフトを持った者達が住んでおるぞ────その水樹の持ち主のようにの」
そこで瞳を鋭くして黒ウサギのもつ水樹の苗とこちらを舐めるように見渡す。
「して…………一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ?知恵比べか?勇気を試したのか?」
「いえいえ、この水樹は十六夜さんと日向さんがここに来る前に、蛇神様を素手と木の枝で叩きのめしてきたのですよ」
「なんと!?クリアではなく直接的に倒してきたとな!?ではその童共は神格持ちか?」
「いえ、黒ウサギはそうは思えません。神格なら一目見れば分かりますから」
「む、それもそうか。しかし神格を倒すには同じ神格を持つか、互いの種族によほど崩れたパワーバランスが無ければありえん。種族の力で言うなら蛇と人とではドングリの背比べだぞ」
白夜叉が唸り出したその隙に飛鳥がこちらをジトリとした目で見ながら口を挟んだ。
「というかその水樹の持ち主がどれほどのものなのかわからないけれど…………私にはとても信じられないわ。日向君が叩きのめしたというあたりが特にね。」
「勘違いのないように言っておくが俺は別に何もやってない。その場にいただけだ。」
「木の枝で湖を二つに切り分ける行為を無かった事にしたら概ね間違ってねぇな」
………………こいつ。
「湖を…………」
「───二つに切り分けた?」
「それはワシも興味があるのぅ。」
白夜叉まで乗ってきた。
全員の好奇の目に晒されながらも答えに困った俺はとりあえず誤魔化すことにした。これもまた…………あんまり好まれるやり方じゃないが
「無我夢中だったんだよ。」
「だとよ。…………まぁ別に秘密の一つや二つ持っててもいいだろ。」
だからなんでお前の俺に対する評価はそんなに高いんだよ十六夜!
「ふむ…………神格持ちを素手で打倒し、木の枝で攻撃を凌ぐ…………か。あの蛇も断じて弱いわけではないのだがの。」
まぁ仮にも神だ。弱いわけが無い。
童だって神がつけば神童。
鬼だって龍だって馬だって変わらない。それなら蛇だって神がつけばそれだけで軽く人間の上位存在だ。
それも遥か上と言っていい。
「白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いなのですか?」
「知り合いも何も、あやつに神格を与えたのはこのワシだ。もっとももう何百年も前の話になるがの。」
どこか遠い目をする白夜叉だが………………
ちょっと待て何百年って何だお前それ何歳だ、というか他者をいきなり神にできるとかお前なんなんだ。
とかとどまるところを知らない疑問が溢れ出してくるが聞いたら長くなること請け合い、話がそれること間違いなしなのでここはグッと我慢して続きを聞く。
「へぇ、じゃぁお前はあの蛇より強いんだな?」
「ふふん、当然。私は東側の“階層支配者”だぞ。この東側にある四桁以下のコミュニティでは並ぶ者がいない、最強の“主催者”なのだから」
あれ?これ話を逸らしていたほうがマシの流れじゃないか?
少し他の3人から圧力が放たれている気がするんだが…………まるで終里のような剥き出しの闘志─────マジで?
「そう……ふふ。ではつまり、貴女のゲームをクリア出来れば、私達のコミュニティは東側で最強のコミュニティということになるのかしら?」
「無論、そうなるの。」
「そりゃ、景気のいい話だ。探す手間が省けた」
「抜け目無い童達だ。依頼しておきながら、私にギフトゲームを挑むとは」
「え、ちょ、御三人様!?」
「やめとけって。神様作れる相手だぞ?」
「よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えている。それにそんなことはこやつらも理解しているであろうよ」
────言葉通りの意味ではない。
俺が言いたいのは神様作れる程の存在相手に戦いになるわけが無いとかそう言う事じゃない。まぁもちろんそれもある。
俺が言いたいのはその影響…………白夜叉は今の所性格こそ魔王と呼ばれるような存在には思えないが…………だとしてもその実力は間違いなく箱庭でも上位に当たるはずだ。
そんな存在に喧嘩を売ったとあらば黙っていないところがあるかもしれない。
特にそれは目の前の白夜叉が幹部を務めるサウザンドアイズなどで…………
というかそもそも理解していて喧嘩をふっかける方がなお危険だ。理解していなければ教えれば事足りる。
だがそうでないのなら…………いつか怪我をする。
「ノリがいいわね。好きよ、そういうの。」
「ふふ、そうかそうか。────しかし、ゲームの前に一つ確認しておく事がある」
「何だ?」
心無し顔を引き締めた白夜叉に緊張を走らせる黒ウサギを含めた5人。
白夜叉が着物の袖へ手を伸ばし取り出したのはサウザンドアイズの旗印たる向き合う女神が刻印された一枚のカード…………。
「おんしらが望むのは”挑戦”か?それとも─────”決闘”か?」
そう呟いた瞬間───何処かで味わったことがあるような景色が一瞬で切り替わる感覚が身を包む。
刹那とも呼ぶべき一瞬の間、地面が離れ耳はまともな音を拾わず、景色は今まで見たことがあるかのような光景を一瞬でいくつも流して一つの景色で定着する。
────そこは白銀の世界。
太陽が水平に回る白夜の銀世界。
遠くに連なる雪や大地は雪をかぶり、少し奥には大きな湖畔が広がる…………幻想的と言う言葉を体現したかのような景色が先程までの和室という空間を飲み込んで現れた。今ではこの高鳴った心臓を落ち着かせる香の香りすら…………してこない。
「───なっ…………!?」
世界の創造…………その存在の強大さにより神と呼ばれるようになった存在とは違う、正真正銘世界創造の奇跡。
そんな事が出来るのは神と呼ばれる存在が多く語り継がれていた元の世界でもそう多くはない。
「今一度名乗り直し、問おうかの?ワシは”白き夜の魔王”────太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への”挑戦”か?それとも対等な”決闘”か?」
そんな風に圧倒的な存在感を出す白夜叉を前にしてまだ俺が冷静でいられたのは同じような存在感を持ったあの絶望を相手に一幕を演じたからか…………はたまたその絶望を経験したからか…………何にせよその改まった自己紹介を聞いて思ったことが「あぁ、やっぱり魔王だったんだ」だったことには────正直自分でも呆れた。
そして何故か遠くなる視界に────俺はあの男の影を見る。
世界のすべてがつまらないと断言しきるあの”絶望”の影を────
疲れた。
変に描写を長くしすぎた感があるけど直す余裕がなかったっす。
そんで持ってなんか出てきたよ最後。