異世界より”超高校級”が参戦するようですよ! 作:ヤッサイモッサイ
今は何月か?え、十月?知らん、私の暦に合わせて喋ってくれ......なんてことも去年やった気がしますが、まぁ、デジャブデジャブというわけで流しておいてください。
ダンガンロンパ3のアニメで、まぁまぁ出るわ出るわカムクラ周りのお話の数々。皆さん楽しんで見てたでしょ?私?作者はもう設定が食い違うんじゃないかとビクビク痙攣しながら見てました。とりあえずニューダンガンロンパV3を楽しみに待つことにします。
さて、しかしアニメも終わったのでそろそろ怯えることもなくなり、更新しようかと思ったのですが......なぜ私は番外なんぞ書いているのでしょうね。ほんとわからない。実は昨日希望編を見たばかりで興奮が抜けきっていないとかそんなことは無い。
ガンダムとかかっこよ過ぎない?てか忌村さんやっぱ天使だな、おい
なんて話したいことが多すぎて!前書きに入らない!だから我慢してもう番外に行ってしまおう!
というわけで番外どぞ!
そいつは、初めから変な奴だった。
「俺の名前は日向創、よろしくな」
そんな風に俺達へ、何の気兼ねもなく手を差しのべる。
みんな分かってる。ここに居るのは、集められたのはただの人間じゃない。尋常ではない奴らが、選んで集められたのだと、わかっている。
だが奴はそんなことに構いはしなかった。慣れていると言わんばかりに手を差し伸べて、自己紹介までやってのけた───漏れなく落下中の空中で
「このクソ粋な招待方法にも物申してやりてぇとこだが、なんだその数倍上をいくオリジナリティ溢れる自己紹介は!?」
このまま行けば僅か数十秒で俺達は地面へと叩きつけられる。というか数十秒を要する程の高高度でありながら、こいつは一体なんだってこんなに余裕をかましていやがるのか?
もちろん、俺だって特に問題ではない。試したことはないが、この程度の衝撃でどうにかなるような体はしていないつもりだ。たとえ着地地点が湖であろうと変わりない。
だが、俺は確かにこの異常事態に心を奪われた。揺り動かされた───つまりは動揺した。
故にその男を見た時、その男微動だにしない心の落ち着き方に、確かな敗北感を覚えた。
それが本当に敗北感なのかは実のところわからない。むしろ物寂しさすら感じられるその心の佇まいから、俺は思わず目を背けたのだから。
「ハハッ、確かにな。こんなところじゃ落ち着けない。ちょっと手を借りるぞ、そっちの2人と猫もな」
「はぁ?お手々つないで仲良くスカイダイビングの記念撮影でもしましょうってか?」
「あぁ、あのよくあるやつな。残念ながらカメラがない、それはまた今度にしよう」
そう受け答えながら、手際よく空中で散らばる俺達を拾って見せると、男は事なさげに大気を蹴り掴んだ。
バツンッ!と空気が引きちぎれる音と共に、俺達は進路を変え湖の畔へと落ちていく。
男に拾い集められたほかの2人は、女子らしく悲鳴なんぞ上げていて気がついていないが、然し俺にだけは見えた明らかな絶技を二度三度と男は容易く繰り返す。
衝撃とは何だったのかと言わんばかりにやんわりと着地した頃には、他の2人も鳩が豆鉄砲でも食らったかのような顔をして男を見上げていた
「......オタク忍者か何かか?」
「いや、そんなんじゃないさ。ただの───いや、もう高校生じゃないから......あれ?俺ってもしかして無職か?なんというか世も末だな、元超高校級の希望がまさかの無職とは」
さて、何をひとりで納得しているのやらわからないが......なかなかどうして食えないやつがまだまだこの世にはいたらしい。世界は広いとは言ったものだ。
「とりあえず、自己紹介には応える主義だ。俺の名前は逆廻十六夜。こんな状況でもなければ小粋で洒落た冗句も交えるんだが、今回はアンタに譲ってやるよ。びしょ濡れにならずに済んだ礼だ」
言っていてどの口がと言いたくなる不敵具合だが、むしろこのくらいの方がこの男にはちょうど良かったらしい。何が面白いのか口元をそっと釣り上げては、微笑ましそうに、何かを思い出すようにこちらを見ている。これは経験則だが、大概こういう顔をしているやつは、誰かに重ねて誰かを見ている。
癖のようなもので、一挙一動に意味を求めてしまう。無駄になることもそう無いので、俺的には治すつもりもない。
「そうね、とりあえず礼を言うわ。あんな高いところへ招待したのが、そもそもあなたでなければの話だけれども」
「あぁ、その点は安心していい。俺はそんな事はしてない」
「あらそう、ではありがとう。私は久遠飛鳥、呼び方は自由にしてちょうだい」
3番目に口を開いたのはこの中である意味一番目立つ容姿の女子。如何にもな気品が身から溢れているのは、俺の錯覚ではないはずだ。
そうして流れで視線が集まるのは4番目。猫を抱えたまま無言を貫く二人目の女子の元。
「......春日部耀、以下同文」
......まぁ、ドイツもこいつも随分とキャラが立っている。中学高校大学と発生するデビューではないのだから、ここまでわざとらしく立てる必要も無いのに。
まぁ、そんな言葉は自分にも返ってくるわけだが。
「さて、んじゃまぁ確認と行こう。オタクらは変な手紙を受け取り、それに呼ばれるがままに身を委ね、そして空中へほっぽり出された......ここまで訂正はあるか?」
「特に無いわ。手紙を受け取り、光に飲まれて空に投げ出された」
「俺もだ。手紙が届いて、飲み込まれて気がついたらスカイダイビングの始まりって感じだな」
「......右に同じ。気がついたら上から真っ逆さま」
なるほどなるほど、認識に齟齬はないようでよかった。
「んじゃ、このツケをそこの茂みに隠れてる誰かしら───あるいは何かしらに払わせることに意義のあるやつは居ねぇな?」
そうして俺が意味深な視線を畔のさらに隅にある茂みへと向ける。
対した存在感だ、隠す気があるのか無いのかはわからないが、大方こっちを舐めているんだろう
「NOです!断固NO!何でそんな過激な案がそう簡単に出るのですかこのお馬鹿さまァ!」
───おぉ、ウサ耳。現実では初めて見た。実在するのか、こんな
「むしろノーパラスカイダイビングが過激じゃない理由を教えてくれこのウサ耳バニー様」
「十六夜くん、それではウサ耳とバニーで被りがあるわ」
「んじゃ絶対領域バニー様だな」
「承を飛ばして起転結で締めくくるのをやめてくださいませ!えぇ、この黒ウサギ早速理解しました!貴方様方さては問題児ですね!?」
黒髪を振り回し、軽く赤く染めながら暴れるウサギの耳を無造作に掴む。
今コイツは自身を黒ウサギと呼んでいた。確かにウサ耳である。だが体は人間の少女だ。まさか動物が擬人化したファンシーな世界でもあるまい。獣人......とでも呼べばいいのか?よくあるファンタジー小説に出てくる種族の類だろう。
「ぎゃ!?いきなり乙女の耳を掴むとか何事ですか!?一体黒ウサギがどれだけこの毛並みを出すために苦労してるのかわかっての狼藉で───」
「おう、確かにこれはいい毛並みだ」
「じゃあ私は左の方を」
「......尻尾は?ちょっとジッとしてて」
ぎゃー、としか言わなくなってきた黒ウサギを他所に思考を進ませる。あたりには生物の気配がする。これは確かに小動物の気配だ、だから確実に動物がすべて人間と同じ姿をしているなんてファンシー世界ではない。俺の暇つぶしに、そんな愛玩世界は耐えられない。
では一体どんな世界だ?
......答えは近くにあった。俺らが本来落下する予定だった湖、正確にはその上空。
薄らではあるが、何らかの膜が張ってある。明らかに超常現象の類だ。俺らと共に落ちてきた男も、何やら湖の淵にしゃがみながら考え込んでいる。
「───いい加減にしてくださーーーーい!!!!」
もっとも、堪忍袋の切れた不思議生物黒ウサギの咆哮にそれも中断せざるを得なかったようだが
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「し、信じられません!説明に入るまでにどれだけ尺を取るつもりですか!?なんでいつまでも人様の体を弄んでるんですか!?」
「謝罪はする、後悔はしていない」
「誇っていいわ、いい毛並みよ」
「......むしろ達成感に満ち溢れている」
三者三様の答えに、黒ウサギは震えながら再び沈黙した。
どことなく立ちのぼる怒気に煽られ、髪の色が変貌する現象......これもまた超常現象の一つだろう。先程も一瞬感じたが───この存在感はなかなかに凄まじい。元いた所ではなかなか味わえなかった感覚が、この世界に来てすぐに味わえるとは......
欲を言えば、今すぐにでもこの拳を交わしたい。ひょっとすればこの珍生物ならば殴り会えるかも知れない......だが、今は我慢の時だろう。
先程から沈黙を守ったままの男もいる。この男も、俺にしてみれば不思議存在以外の何者でもない。他のふたりとて同じだ。この世界には可能性が満ち溢れている。こんな所で無闇に暴れてしまうのはとても、そうとてもツマラナイ。
「黒ウサギ......でいいんだよな?」
「───へ?あ、はい。そうですね自己紹介が遅れました。私は黒ウサギ、皆様の案内役にして......まぁ皆さんをここに呼んだ召喚者でもあります」
いよいよ怒気も破裂するか、というところで日向創が動いた。黒ウサギからしても、先程まで不干渉を貫いていた男がなぜこのタイミングでという気持ちが強いのだろう。気が抜けたようにすっかり髪からも赤みが抜けてしまっている。そして多分それが狙いだと思うぞ、黒ウサギ。
「なるほどな、案内役とは丁寧だな。この世界にはこの世界のルールがある、それはここにいるみんながよく実感した。そろそろネタばらししてくれないか?これ以上焦らすのは少し意地悪だろう?」
戯ける様な物言いだが、相変わらず男の心に動きはない。
そう、何かがおかしいと思った。この男の年齢は俺達とそう変わらないはずだ。少なくとも、枯れるほどの歳を積み重ねているということはないだろう。
だがこの男の心に、熱はない。感動しきり、動揺しきり、憤慨しきり、愛憎しきった末の枯れきった心。
日向創は、鉄心の様にブレない心を持っていた。
───興味が湧いた。もともと興味はあったが、殊更湧いたのだ。彼とは対照的に、暴力的な熱が俺の心を浮かせていた。
黒ウサギの語るルールも確かにこの昂揚に一役買っているだろう。だが、そんなものよりも俺は今この男にしか目が行かない。聞くまでもない、この男ならば今すぐにでも俺を楽しませることが出来る!
だからこそ、黒ウサギが言葉を締めくくるように用意したゲームに俺は食いついた。
拳を交えるのはきっと楽しい。だが、それだけでは測れない領域もある。俺は何も力だけを求めてはいない───俺を満足させられるとすれば、それは全能でも足りない。未完成を孕んだ、完全なる全能こそが俺の求める境地。
「───それではルールのお
───ルールは簡単。ジョーカーを抜いた52枚組みのトランプのセットの中からエースを選び取る事。
もちろんエースは人数分しかない。最後に取る人間は、1/49を引き当てなければならないわけだ。
だがここに面白いルールがひとつ......イカサマはバレたら失格というものがある。
これは暗にバレないようにイカサマをするゲームであると言っているわけだ。それも当然、黒ウサギの物言いからして、測りたいのは俺達の実力......けして運ではない。そもそも運なんぞどう頑張ったところで伸ばしようも無いからな。
というわけで俺達はそれぞれ「黒ウサギが用意したカードに不正がないか、確認させてもらう」と言う名目で細工を施した。俺の場合はただカードの並びを確認するという至極簡単なものだった訳だが......然し日向創は動かない。いや、厳密には動いて確認しに来ている。だがどう見てもその動きは緩慢で......何かを仕込む様子はない。かと言って俺のように並びを覚えようとしているかと思えば、どうにもそういうふうではない。まさかとは思うが、本気で運に任せようとしている?
「まさか......な」
はじめにあんな大道芸を見せてくれた男だ、よもや実力を隠すなどという考えはあるまい......だがどうしてもなにかしているようには見えないのだが......まぁいいか。見てればわかることだ
「んじゃ、全員確認も終えたことだ。ゲーム開始か?」
「えぇ、お好きな順番でどうぞ?ただし、エース以外を引いた場合その時点でその方は敗北ですが......気負うことはありません。負けたところで、失うのはプライドくらいのものでございますから」
俺らにとってはそれこそが一番大事。わかっていて言っているのだから大概このウサギも
「だとさ、レディーファーストだ。お嬢様方に先は譲るぜ」
「あら、ありがとう。それでは先に失礼」
すっと前に出たお嬢様が台から引いていったのはハートのエース。無言で続いた春日部はダイヤのエース。ちゃっかりエースを引くあたりは、コイツらも喚ばれるだけの何かを持っているということなのだろう。
「んじゃ、残りは俺らだな。どうする?」
「先は譲るよ。残った2枚なら俺はどっちでも大丈夫だからな」
......2枚なら、ね。事実が謙遜か、どっちにしても奇妙な言い方だ。
「なら俺が先だな」
立ち上がって卓の前に立つ。残ったカードはスペードとクローバー......黒ウサギがシャッフルして並べたエースの位置は......コレか。
手前にあったスペードのエースを手に取る。ひっくり返しても結果は変わらない。俺の記憶通りにスペードのエースはココにあった。
ならば残ったクローバーは左から13番目のカードのはずだ。
着々とクリアしていく俺達に黒ウサギは何処か不服そうだが、まぁ計算の範囲内だろう。
「ほら、アンタの番だぜ?」
そうして俺はカードを見せびらかすように日向へと向けた。彼が言葉にしたとおり、本当に問題ないのであれば彼はクローバーのエースを持って帰ってくるだろう。
「そんなに期待して見られても困るんだけどな」
「あら、残った2枚なら問題ないのでしょう?」
「期待に添えるかはまた別の話さ」
そう言って日向は入れ替わるように卓へ向かった。
伸ばされた手の行き先は右側5番目───5番目?左側13番目とは真逆の?
「────嘘でございます」
────だが、その男が持ち上げたカードはクローバーのエースで間違い無かった。
確かに、そのカードにはクローバーの記号が大きく一つだけ刻まれているのだから。
だがそれは、俺の記憶とは違う並びだ。入れ替えられた様子も無く、黒ウサギのシャッフルで入れ替えられた順番も正確に覚えている
「......何故これがエースだと?」
黒ウサギの反応も明らかに違う。おそらくだが俺達がイカサマをした様に、黒ウサギも最後の最後に仕掛けていたのだ。左側にあるはずのカードが右側へ移動するような、なんらかのイカサマを。
「別にわかっていて引いたわけじゃない。わかっていて引いたら、それはイカサマだ。これはただの運だよ」
────運。ただの運。
そんな言葉を、本気で、素面で、そしてここまであっけらかんと言える人間が......果たしてどれだけいるだろうか?
「運......ですか。ま、まぁ1/49でしたらありえなくはないですね」
違う、1/49だろうが1/100000000000だろうがありえる事は変わらない。問題はありえるかありえないかではなくその可能性が拾えるかどうか。
「マジで何なんだあいつ───おもしれぇ!」
ニクイ演出だ。期待に添えるとか添えないとか、そんなの虚言に過ぎない。あれはわかっていて引いていた。
完全に運に任せた上で、自身なら引けるとわかった上でやってのけたのだ。
あれは自信ではない、そういう知識に基づいた考え方だ!
自信ですらない、自信を持つ必要すらないのだ、アイツは
「ほんと、おもしれぇ」
今すぐにでもやりたい。だがまだ我慢だ。
仕掛けるのならそう、そういう舞台がある
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
世界の果て、最果ての滝。
俺達が落とされた湖からの距離でいえば、尋常ではない時間をかけて進んだ先にある陸の終わり。
頭に瘤を作り水に浮かぶ蛇神をバックに、俺達は向かい合っていた。
俺は滝壷の畔の岩の上へ、そして日向はなんと水の上に。
「......お前びっくり人間ショーとかの世界から来たんじゃねぇよな?」
「普通にお前と同じく地球の日本出身だ。どんな世界だ、それ?」
黒ウサギの案内もそこそこに、俺はロマンを求めてという名目で日向を誘い出した。無論、世界の果てを見たい気持ちもあったが、メインはこの男とのケンカだ。
こいつとて、わかっていて乗ったはずなのだ。
「......いやまぁ一応聞いとくけど、ここらでやめとかないか?黒ウサギもこっちに向かってきてる」
「へぇ、そんなこともわかんのか。尚更俺はやりたくなってきた」
だよな、とは日向の弁。
視線を下げた瞬間に合わせるように踏み込み、拳を突き出す。そこに技なんてない。そもそも技等無くとも敵が居なくて困っていた俺が、更に技なんぞ覚えて強くなるはずも無い。
それでも俺の拳は必滅。漏れなく地図を書き換える必要が出てくる威力を、1発1発が持っている。速さとて地球を飛び出す事が容易という速度......ましてそれが不意打ちともなれば防げる道理はない。
俺は一撃を確信して拳を振り切った───だが男は反応する。目線を落としたままに、右拳に合わせて左手が内側へと差し込まれ外へと力を流した。
凄い勢いで視線が流れていく中で、俺は遅まきながら日向創の目が、左右で色が違うことに気がつく。
今まではその恐ろしく静かな心に集中していたが故に見えてなかったその妖眼。そのうちの紅い左眼があやしく輝いていたのだ。
「こいつ......ッ!」
俺は空中を蹴るなどということは出来ない。原理は理解できるが、そんな絶妙すぎる力の調整なぞもはや人間の領分じゃない。亜音速の蹴りで空気の壁を作り、同じ脚の二発目でその壁を蹴り切って移動する......正しく絶技。本来ならば、自重で足がいかれている。
となれば、この高速で吹き飛ぶ体を止めるには力技しかないわけだ。
「───しゃらくせぇぇぇええええ!!!」
俺には技は必要ない。姿勢を直し、足を地につけ踏ん張る。それだけで体は止まる。
遥か遠くで呆れたという顔をした男の姿が見える。俺の力を受けてなお、涼し気な顔でアイツは無風の水面に立っていた。
一瞬で止まったにしては遠すぎる距離。だが詰めるのも一瞬であれば問題にならない。
だが、突撃が効かない事はよく分かった。このまま突っ込んでも、先程の焼き増しになるだけだろう。
であれば物を使う。非常に人間らしくて素晴らしい。
幸いここには俺が投げ飛ばされた際にへし折れた木が大量にある。
俺の拳は必滅、ならば投擲物も当然に必滅。
第三宇宙速度と呼ばれる速度で打ち出される物体は、漏れなく星にダメージを与える規模の一撃となる。
「コレならちったァ効くだろ!!」
宛ら槍のように投擲された大木が、一直線に日向へ向かって直進する。正しく光線の如き様相で一条線となり空間に刻まれた大木の痕跡は、しかしその男に正面から受け止められ静止していた。
あまりの速度に、もはやほとんど質量など残していない。その殆どは空中で燃え尽きている。
しかしそれは威力の証明、力の証。
「......力一つとっても俺並かよ」
高い。人間として、あまりにもたっている領域が高すぎる。
だが、それ故に楽しい。壁を超えることが、試行錯誤することが、あるいは何も考えずぶつかることが、ぶつかれることがこんなにも楽しい。
なればこれ以上に求めるものなどあるものか?いや、あるはずもないのだ。俺には、必要無いのだ。
「この世界は......お前は、おもしれぇよ」
「あぁ、きっとこの世界は面白い。だから、楽しまなきゃダメなんだ。みんなが笑えなきゃダメなんだ」
何を言ってるかはよくわからないが、通じるものはある。
あいつも結局、望むのは現状の打破ってことだ。
愉快で痛快で爽快で───全開だ。
「───行くぜオラァ!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ここは完全無欠の異世界。希望も絶望も全てまとめてここにはある。
汝が求めるのならば来るといい。ここは飽きとは程遠い世界......飢えは有るけどね。
そう、ここは決して幸せの世界なんかじゃないよ。むしろ不幸の世界、幸運なんてクソくらえ!
それでも君たちが刺激的で、サイコで、ポップな毎日を送りたいのであれば、ボクは魔王として、君たちを歓迎しよう。
箱庭へいらっしゃい、カムクラ先輩♡
小説から離れすぎてて書くスピードが遅い......八千文字で二時間近くかかりました。
さりげなく十六夜くん視点なので心内描写が難しいなぁ......ただのバトルマニアになってしまってる気がする笑
ちなみにこの番外編は希望編の後の日向創をイメージして書いております。
後ってどのレベル?というと苗木学園長の登場した後くらいです。
全てを終えて平和になった世界で、日向くんはその才能(霊媒師辺り?)により江ノ島の魔の手が異世界に伸びていることを知り手紙を受けて箱庭に来ました。なので実年齢そろそろ20代半ばかアラサー前何じゃねぇかと想像して、十六夜視点では「枯れてる」とか「男」と表現し続けました。
口調とか性格はずっと冷静で自信に溢れた日向君です。物語をさらに1個終えているので気持ち的にはもう敵なし、リアルチート日向くんくらいの気持ちで書いてました。未だに問題児シリーズを読み切っていない(むしろアンダーウッドから進んでない)奴なんで断言は出来ませんが、少なくとも振り子メンタルする事は無いレベルの日向くんです。
さて、なんだかんだ書きたいものがかけて満足したので、今回はこのへんで。ほんと、ぼちぼち書いていくつもりなので気長に......いえ、何でしたら気短でもいいので待つだけ待っていただけると嬉しいなぁ......なんて!
あ、だめ?はい、すぐ書きます。スイマセン、それではまた!