異世界より”超高校級”が参戦するようですよ!   作:ヤッサイモッサイ

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先に謝っときますすいません。多分今回凄いくどいし意味わかんないし読みづらいと思います。
いつも書きたいこと書いてますが今回は考えなしに書きすぎました。なので変な話ですがというかまぁある意味当たり前ですがあまりにもそういう意見が多ければ後で投稿し直します。無かったら次から頑張っていつもどおりにします
そしてわからなかったら「要約すると?」と聞いてください。訳します。
そして今回書いていて思った言及しておかなきゃならんことをあとがきに入れときます。今回は補足使用にも多すぎるし日向くんのキャラがようわからん事なってんのでそれはもうあとがきには入れないのでやっぱ直接気になるとこ聞いてください
今回は15000文字と長いこともあるため読み切れず疲れたーとかそういうことでもいいです。どっかわけれるとこ探して分けます
投稿時間がいつもより早いのは直しに移るのなら早めにしたいという受験生心理です笑


人に生まれたことを嘆いた事はない

白い壁が迫る。右手を合わせ受け止める。

白き鉄槌が落ちる。壁を掴んで投げる。

白さ溢れる。迫るそれらを跳んでよける。

 

 

 

何故か途中から増えた巨人は今や一つの群れのように俺の周りにウジャウジャと集りまるで俺の行動を阻害しているかのような様相を見せる。しかもそれが春日部たちに近づこうとすればするほど強まるのだからこれはもはや何者かの仕込みだと断言せざるを得ない。

いくら身体能力が高かろうが決め手に欠ける俺としてはこの不安定な地形でよりにもよって重さも大きさも数もある敵と戦うというのは予想以上の苦戦を強いられるもので正直徐々に俺の体力も切れてきている。

これが十六夜ならより出力をあげた上で周りに被害が行かないように調整するのであろうが所詮借り物の俺がこれだけの身体能力を器用に制御できるはずもない。黒ウサギよろしく雷は出ないしディーンと言った素晴らしい相棒もない。春日部のように軽やかに飛ぶことも出来ないから振り切ろうと思えばただ馬鹿みたいに直進するしかない。実際黒ウサギとの追いかけっこでもその通りだった。

 

 

 

 

 

要は毎度恒例の手詰まりと言うわけだ。これが祭りでもなく、また退っ引きならない状況だというのであれば思い切ってここら一帯が廃墟になるのも構わず我武者羅に拳でも振るってやると言うのにただ俺が足止めされているだけというむしろここまでの数の巨人を釘付けにできている分上出来とすら言えそうな現状それが認められる訳もない。

不安があるとすれば巨人の海に埋もれる前にチラリと見えた田中の存在だが……俺にはいつもの壮絶な嫌な感じが感じ取れなかった。

普段ならばセンサーでもついているのかと過剰反応するそれが機能していなかったことと春日部と仲間を信頼してあの話をしたという事実がいまいち行動に踏み切れない理由だ

 

「─────いい加減にしろっての!!」

 

いくら捌いても殴っても飛ばしても体格通りのタフネスで蘇ってくる巨人……正直こうして余裕そうに振舞っていても限界なのは本当なのだ。言った通りあたりは一面の白。こんな巨体がひしめき合っていると言うことは自然俺が動くスペースは減っていく。投げたり吹き飛ばす度に微妙に広がったそこに身を投げてこそここまで耐えているが吹き飛んだ仲間や倒れた奴にすら遠慮なく突っ込んでくるコイツラのアクティブさには頭が上がらない。要するに非常に微妙にだが……潰されそうなのだ

流石に密着状態からこれだけの数の巨人をまるごと吹き飛ばして動く程の力を出すと被害は一帯で済まない故に絶対に選ぶことはできない。

せめて棒状のものでも手に取ることができれば、あるいは炎があれば花村や辺古山のギフトが使えるというのに大概のものは手に取る前に潰れされていく。いつの間にか増えていた罪木のそれもその内容は応急措置の様な戦闘を継続する為だけのギフト……攻撃性は皆無な以上ここまで来るといい加減自分に胸を張れる自分になるという目標が揺らいで力を求めたくなる。

─────そして何よりも霧だ。これのせいで巨人の海の外の様子が掴めない。

 

この霧と積極性溢れる肉食系巨人どもを誰かがどうにかしてくれれば……あるいはと言った感じなのだが。

 

「……だめかなぁ?」

 

再び迫る拳にいい加減涙が溢れそうだ……もちろん冗談だが────

 

「─────ぁ」

 

足が滑って────馬鹿か俺は!?

一瞬で開いた空間が閉じられていく。ポッカリと空いた穴に水がなだれ込むかのように、中心にいた哀れな俺は一瞬で飲み込まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────非常に暑い

 

 

人肌というのがなんとも憎いことにサウナなんて目じゃない厚さだ。しかも蒸しっ気も凄い。

いやそれはまだ花村の力でなんとでもなるのだが……俺と同じようにスクラムを組んで結局動けなくなっている巨人たちの呻き声が気持ち悪すぎるのだ。身体的には問題がないのに精神的にダメージがデカすぎる

 

ひしめき合う巨人の中で動くこともできずしばらくそうしていると今度は大きな風の流れを肌が感じ取る。この密集状態の巨人の中すら通り抜けてくるあたり凄まじい規模の風だ。そしてそれと同時に自身の中の何かが勝手に起動し更にまた先程は感じなかった不安感が体の中を過ぎっては何かを伝えていく。

たった一つのアクションに対して引き起こされることが多過ぎやしないかと思ったがまぁそんなものだと言われればそうなのだろう。元々誰が決めるわけでもないものだ、ならばそういうこともあるのだろう。

 

だが見過ごすわけには行かないことにその起きた変化の中に絶望の香りが合ったとなれば俺はいつまでもここで眠っているわけにも行かないのだ。しかし体を動かす余裕もなければ何をできるわけでもない、ミツバチの巣に襲撃をかけたスズメバチでもあるまいに全くままならないもので幸運という才能だけは再現できていない説がいい加減現実味を帯びてくる

 

「……いや、最終的に都合がいいっていうのは結局幸運ってことなのか?」

 

俺を潰さんばかりの力で押し寄せてきていた巨人達の意識が急に俺から逸れ、身動きの取れなかった状態からいっきに開放される。

なればもう遠慮は必要ない。潰れてでも俺に向かってくるあの意志さえないのであれば何処にこいつらを弾き飛ばそうが被害はない。その先でまた誰かが対処するだろう。

あぁなんと素晴らしきことか自由というのは─────腕を目一杯引きしぼり、体を弓のようにしならせて、槍が一直線に弾けるように、その拳を弾丸の如く打ち出す

火山が噴火したかのような轟音と共に溶岩ではなくその白き巨体達が宙を舞い勢いと吹き荒れる暴風にさらわれて流されていく。

先程までの一心不乱具合はどこへ行ったのか戸惑いという感情を見せた巨人たちにそれでも俺は容赦なく第二撃、三撃、四撃と繰り返し道を切り開くと先程までの鬱陶しい霧の消えた世界を駆け抜けた。

霧が晴れたことでようやく周りの状況が見える。

風の招待は巨大な渦、恐らく春日部やグリーのギフト。気色悪さの元であったが今は既にその嫌悪感も感じない。なればそこは除外だ。

そのさらに先ではよくわからぬ鎧と仮面の男……いや女がサラの前に陣取り迫り来る一段と強靭そうな巨人達を屠っている。

地面に空く穴からは時折雷鳴が響くので恐らく黒ウサギはあそこ、グリーかどうかまではわからないがあちこちでグリフォンたちが主だって様々な生物や騎手を率い降り注ぐ巨人に対応している。どこもかしこも人は足りている────違う違う違うそこじゃない!この不快な音、頭に来るこの琴の音色は────頭上!!

 

「そこかァァァ!!」

 

濃霧は消え視覚は戻った。聴覚だけで言えば確かに不思議な音色ゆえに辿ることは出来ないが……こと嫌な感じに置いて俺の知覚能力は普通のそれとは違うのだ。

地面をひと蹴りすると自身の体を急な浮遊感が襲い、重力を割いて上へ上へと昇り詰めていく。上も上……その先が音の発信源、自分で打ち上げた巨人の体を蹴ることで微調整しながら見えてきた目深ローブへとさながらミサイルの如きスピードで迫り蹴りを一発見舞ってその手に持つ琴を奪って行く。あまりの速度に甲高い音が自由落下の音を書き消すほどの状態の中琴を追って降りてきた目深ローブと軽いドッグファイトを繰り広げて落ちていく。何やら不気味な存在だが今はこの琴を守る事が先決だ。最悪壊すことも視野に入れながら抱え込んで片手でこちらの背後を取ろうと奇妙な軌道での落下を続ける相手への牽制を続けた

その内ようやく地面間近というところで目深ローブは離れてどこかへと消えていく、空中でジャンプなどという器用な真似ができないためそれを目で追うしか無い俺は今回の首謀者、あるいはそれに近いであろう存在を捕まえることは出来なかったがしかしこの琴もただの琴ではあるまい。引いていく巨人の群れと徐々に落ち着きを見せていくアンダーウッドを見て確信する。

今回のこれは明らかにわかっていた襲撃だ。アンダーウッドにはそれを確信するだけの何かがあった……だからこそ俺たち『対魔王』のコミュニティが招待されるに至ったのだ。

……だとすればこれで解決だとは思えないな─────っと、音無を放っておくのも良くないか。あいつを拾ってそのままみんなと合流するとするか

 

流石に耐久戦が堪えたか若干気だるい体に鞭打って俺は本日何度目か分からなぬ跳躍をして暗くなった空へとその身を投げた

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

宿舎……要は黒ウサギが戦っていた地下都市にある今日の寝床の事だ。俺が音無を探したあとみんなと合流したのは規模の割には少なかった被害の中に運悪く入ってしまった倒壊した宿舎跡地であった。

結局一人で逃げたのか記憶がまた飛んでどっかに行ってのか、しかしあたりに巨人のいた形跡もないことから無事だとは思うが音無涼子はついぞ見つかることはなかったのだ。諦めて琴をサラへと押し付けてから戻ってきた俺にはどうも眼前のお通夜の様な空気が理解出来ない

 

「……どうかしたのか?」

「あ……日向さんですか」

 

……酷い言いようだ。ジンにしては配慮に欠けたそれはそれほど余裕がないということなのか?

 

「……ひなた君は確か仲間の才能が使えるのよね?ならその中にモノを直せそうな才能はないかしら!?」

「あ……は、創!」

「え、いやモノを直す?」

 

すごい剣幕で詰め寄ってきた女子二人が差し出してきたのはどこか見覚えのある炎のエンブレムが特徴のヘッドホン……その残骸である。

なるほど、あの十六夜が屋敷を探しても見つからないわけだ。十六夜は女子の荷物を漁るような事はしないだろうからな。たとえ分かっていてもそれが必須であると判断しない限りは動くことはない─────となると

 

「あぁ、三毛猫のがバレたのか」

「─────日向さんは知っていたのでございますか?」

 

しょぼくれた三毛猫を抱き上げた黒ウサギが洒落にならない目をしてその鋭さのままに俺を貫いてきた

 

「知ってたよ。ちょうど黒ウサギに頼まれてタオルを浴場に運んでた時だったからな。三毛猫がことに至ってたのは」

 

最も気づいたのは十六夜が騒ぎ出してからだけどな、と続けて残骸を指でつまみ上げる

 

「確かに俺は仲間の才能が使える……けど原理がわからない。現に使える才能といえば剣と動物との意思疎通位のもんだ」

 

無論俺のあずかり知らぬところで発動していたのであればその限りではない。発動がわかりづらいもの筆頭で言えば幸運などもある。

 

「それにメカニックとはいえ無から有は作れない。こっちの世界でヘッドホンの機構を再現する部品を見たことはないし多分だけどこれ元から大分緻密な作りだ」

 

暗に出来ないと伝えると明らかに肩を落とした春日部とそれでも食って掛かる久遠とで性格の違いが出る

まぁ春日部の場合は時たま久遠よりも熱く激しい時があるのでこれが逆だとしても違和感はないのだが

 

「100パーセント出来ないワケじゃないんでしょう?なら挑戦の価値はあると思うわ」

「俺はないと思う、言ってしまえば元から壊れてたもんだ。形まで壊れたのなら作り直したのではいどーぞしたってしょうがないだろ」

 

壊れたものを使い続ける酔狂、その根源にあるのは愛着だ。気持ちと言い換えてもいい。それは例えば形見であったり繋がりであったり……十六夜にとってそれが該当するかと言われても俺にはわからないが該当しないのであれば髪を纏められる似た形状のカチューシャを使い続けてもらえばいい。もしあるのであれば一度壊れたものを不器用ながら直しましたなんて言って渡されても困るだけだ。それならばいっそ残骸をお守り袋にでも入れて首からぶら下げていてもいいくらいに……仲間との絆としてその品を受け取ってくれるのであれば端から不可能な直す努力よりも可能な別の可能性を求めるべきだ……とはいえそれを聞いてくれるほど擦れては居ないだろう。黒ウサギを含めてノーネームは絆の形にこだわる傾向にある。絆に飢えているとも取れる。過去に縋っているとも取れる。無論無理もない話だが……

 

「今回に限ってはヘッドホンにいつまでも時間を割けないのはわかるだろ?」

「でも日向さんがこのことを言っていたのなら少なくとも壊れるようなことには!」

「確かにそうだな、でもそれは結果論。大体十六夜本人がこういった可能性を想定してないわけが無いしな」

 

……そう、十六夜ならばわかってたはずだ。何を考えてそのまま送り出したのかまではわからないが……

 

「俺なら直せるから直した……別にそれでいいならいい。ただ春日部が用意したいのは誤魔化すための物じゃなく謝意を示すための物なんだろ?だったら不可能を追求して出来ませんでしたよりも可能を求めた方がいいぞって事だ」

 

……まぁ、嫌な考え方だけどな。

 

「代換え品でいいのならば用意できないこともありませんよ」

 

俺の言葉に若干落ち込み気味な空気をまたどこか軽い中身の無いまんま空洞なカボチャの声が吹き飛ばす。完全な逆恨みだがしかしイラつくその声に付随して響く足音は3つ。ジャック本体は宙に浮いているので一人はサーシャだとしても後の二人は誰だろうか……

振り返った先には高めの身長の女性が二人。一人は白い仮面の淑女?先程巨人を相手に無双をしていた人だと思われる。そしてもう一人は先程あったばかりのサラ。今回俺たちが呼ばれた理由の一つとしてアンダーウッドを狙う魔王の眷属、生き残りの巨人の存在を遅れて教えてくれた北のサンドラの姉だ。

 

「どういうことだ?」

「こちらのフェイスレスの力にございます。彼女の事は詳しくは話せませんがもしかすればその残骸から代換え品を用意できるやもしれませんよ?」

「ほんと!?」

「えぇ、カボチャは嘘をつきません。ねぇ、フェイスレス」

 

コクンッ、と静かに彼女は頷いた。

ならばと春日部は頼むことにしたようだ。

本人が決めたのであれば俺が口を挟むことは何もない。あとは向こうで勝手にやるのだろう。

 

「黒ウサギにジン=ラッセル、少しこちらへ」

「へ……あ、はい!」

「yes?なんでございましょう」

 

通りすがりにさり気なく俺を拉致して黒ウサギとジンはサラの元へと向かう。距離があるわけでもないが自然と二つに場が別れた

 

「白夜叉からの預かり物だ。魔王撃退の報酬がまだ残っているとのことでな」

「え、まだ残ってたのか……ですか?」

「敬語でなくとも構わないと言っている。君たちは招待された側なのだから」

「あははー、日向さんもまぁ変なとこ頑固ですので」

 

失礼な話だ。偉い人と話す時に敬語になるというのは俺の世界なら子供でも常識というのに。

まぁ常識が違うと言われればそれまでだがこっちの世界でもそれは普通だとジンを見ていればわかる。おかしいのは白夜叉やサラの方だ。

 

「そ、それで報酬というのは……?」

「うむ、これだ」

 

そう言って渡されたのは小さな白い箱。

本当に小さく前世で見たそのサイズの箱といえばよく男性が肩膝をついて女性に差し出すアレのような……

 

「……指輪?」

「……yes、しかしただの指輪ではありませんよこれは」

 

黒ウサギ曰く精霊と呼ばれる存在を封じ込めた指輪なのだとか。そしてジンが持つギフトこそどんな格を持つ精霊だろうが一体に限り完全完璧に制御して所有する精霊使役者(ジーニアー)。そんな制限付きのジンに使わせるとなればよほどの精霊なのだろうか?

 

「日向さんは魔王隷属の条件をご存知ですか?」

「……いや知らないけど」

 

今話題に登るってことはまさか……

 

「そのまさかでございます。あの指輪に居るのはかつて黒死斑の魔王と呼ばれた黒死病ハ千万の犠牲の代表霊─────ペストにございます」

 

同時にジンが取ったその指輪から黒い風が吹きすさびあたりのガレキを巻き上げながら子供の癇癪の声を辺へと運ぶ

現れたのはメイド。紛う事無きメイド。完全無欠なメイドである。そう、かつてゴシックでロリータな感じのフリフリを着ていたペストと呼ばれる少女は……魔王からメイドへとジョブチェンジしていたのだった

 

「してないわよ!!」

 

……してないらしい。

 

「というかなんであんたがここにいるわけ!?いや近づかないで!離れなさいよこっちに来るな今すぐ死ね変質者!」

「……え、なんで俺こんな嫌われてんの?あんま絡んでないはずだよな?」

 

そう視線を横に向けると黒ウサギはそんな俺の目から逃げるように視線を逸らす

反対に向ければジンが苦笑いのまま困ったように黒ウサギへと何らかのアイコンタクトをとっている

 

「……え?」

「忘れたとは言わせないわよ!?あんなことしておいて!」

「なにかしたのか俺?」

 

ペストと会ったのはあの初日に入った交渉の時だけだった気がするのだが気のせいだったか?

……とここに来てようやく悟ることができた。俺に記憶がないのであれば何かできるのは一人しかいない。カムクラに決まってる。

 

「あー、うん。悪かったな」

「悪いですむかぁぁぁ!!!あんな気色悪い感覚初めてよ!魂を砕かれる方がまだましだわ!!いえ、いっそ体に異物を混入するとかむしろ体が虫になるとかの方が断然いいわね!いくら代表とはいえハ千万もの存在との同化って単純に考えてもそれハ千万が溶け合う感覚×ハ千万分味わうのよ!?しかもそれが後半おかしくない、自然なことなんだと無理やり思考が持っていかれることの気味の悪さ!!それが自分だと無理やり納得させられそうになる理不尽!!個って何よ、何なの!?殺す気か!?いや寧ろ殺しなさいよ!なんで槍止めちゃったのよ馬鹿なのかしら!?考えればわかるでしょう何よ一つに纏めちゃいましょうか……って!髪を束ねるのとは訳が違うのよ!?大体──────」

「ごめん長い」

「────殺すわ、あなただけは絶対に殺すわ!!ついでに白夜叉も殺すわ!!そして私も死ぬ!むしろ死んでやるから今すぐ死ね!!」

 

そんなことを言われても俺は警告をした記憶だけはある。むしろ罪木を呼び込んで、カムクラまで起こして舞台そのものが無事に幕を下ろしただけ奇跡と言える───────はて、無事に幕を下ろしただけ奇跡?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのカムクラが、奇跡程度で?

 

 

 

 

 

 

……何かが違うのか。そもそもじゃあ花村や辺古山、罪木とはなんなんだ?よくよく考えればおかしい事だらけだ。あいつらがそこにいる時点でおかしい。そう、ありえないというよりも手間でしかない。大体江ノ島が俺たちを利用したのだって本体を失って()()()()と言える状態だったからだ。そうじゃなければ彼女は間違いなく自ら動くに決まってる。

一々島で倒れた仲間を使う必要もないし、そもそも異世界に呼ぶ手間をかける必要もない……だとすれば俺は勘違いをしていたことになる。でもそれが本当だとすればなおさらあの花村たちである理由が無くなる

 

「────あなた本当に死にたいのかしら?」

 

耳に飛び込んできた鋭い音に反応して反射的に一歩下がった眼前を黒い風が横切っていく。

……メイドが仮にもコミュニティの仲間に暴力を振るうとは何事か。

無理やり止められた考えは春日部たちにも聞くことにしよう。向こうも向こうで何やら『ネコミミ!なんでネコミミ!?』と騒がしい。その癖先程よりはマシな空気から解決はしたのであろう。

 

「無視ね!?無視なのね!?仮にも魔王を無視とはどういう了見かしら!?」

「メイドじゃなくて?」

「魔王よ!あなたも知ってるでしょうが!」

「ジン、お前のメイドがなんか言ってるぞ」

「また僕に振るんですか!?」

 

何を言うか。全てリーダーであり、主人であるジンの責任だ。押し付けてるんじゃない、正当な責任の在処へと返してるだけだ

しかし黒死斑の魔王(ブラックパーチャー)改めて黒死斑の御子(メイドオブブラッキー)となった少女は未だに喧しい。黒ウサギはどこか微笑ましそうに未だに三毛猫を抱えたままだしジンもジンで魔王を隷属させたという事実にどこか気が抜けている。というか正直俺も良く分からない。

早めた予定から十六夜とレティシアがいつ来てもおかしくは無いのだがそれまでにこの混沌とした状況をなんかしないと余計悪い方向に進んでいくことだろう。

 

「……はぁ、俺もだいぶこっちに染まってきてるなぁ」

 

嫌なことを実感してため息ばかりがこぼれていく。しかし嫌に手馴れた手腕は見事にその場を沈めさせていくのだから何とも反応に困ることだ

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「さて、話を落ち着かせてみようじゃないか」

「日向さんが取り仕切るというのはなかなかどうして違和感がありますね。性格的にというか今までの行動的な意味で」

 

早速黒ウサギの茶化しがあったがそんな輩にはアイアンクローで決めながら無視して話を進めてしまえばいい。

となりで急に高い声で喧しくBGMを流し始めたそれに全員が若干引き気味ながらもしかしちゃんと話は進めることができた

 

「まずいきなり私事で済まないんだが……ヘッドホンはそれでいいのか?」

「うん、せっかくフェイスレスに手を貸してもらった物だし……それにたぶん創言う通り物の内容はあくまでも謝意を示す事しか出来ないもん。これがきっかけでもっとみんなと話せたなら……私はたぶんそれが一番だと思うんだ」

 

……感動的な話ではある。抱えてる物がものでなければ素直に感動もしたのだが果たして俺が聞きたかったことはそう言う事ではなく『本当に十六夜に渡すヘッドホンがネコミミバージョンでもいいのか?』と言う意味の質問だったのだが……まぁ納得しているのならいいんだろう

 

「そもそも反対するくらいならあなたが直してくれたら良かったじゃない」

「無茶を言うな無茶を」

 

いくらヘッドホンに親しみがない世界とはいえ修復の難しさは見ればわかるだろうに。左右田であれば確かに直すことはできるだろうが才能があるというだけで挑むには難易度が高すぎる

 

「……それでそのフェイスレスというのが“クイーン・ハロウィン”の寵愛者でジャック達のコミュニティの客分さん……なんか色々大掛かりな術を使ったみたいだしノーネームもいい加減ウィルオウィスプには頭が上がらなくなってきたなぁ」

「そう思うなら是非とも頭を垂れな」

「こらサーシャ!」

 

ここまで全く絡みがなかった俺としてはフェイスレスさんとやらとも話したかったわけだが賑やかな二人とは対照的に口元でフッ、と笑うだけで本人が口を開くことはない

とはいえあまり時間を取っては忙しい中まだここにとどまらせているサラにも申し訳ない

 

「……さて、それじゃここからが本番だな。当然内容はさっきまでご来場いただいていた巨人族、そしてそれを率いていたらしきローブの人影」

「巨人族に関しては私から説明しよう。この場でやれる私の数少ない仕事だ」

 

耳に飛び込んでくるのはやはり想像にあった通りの言葉……相手が昔争った魔王の残党であり狙いがバロールの死眼と呼ばれるペスト同様『死』を恩恵としてそのまま与える最悪のギフトであるということ。協力の暁には今は封印されたそれを扱う資格を持つであろうウィルオウィスプかまた同様に扱えるであろうものをもつノーネームに与えるとのことだった。合間に挟まれていまここの区画に階層支配者が居ないと言うなかなかに驚きな発言も混ざっていたりしたが大まかにはこんなところだろう

 

「……それで、ジャックさんは何がいいたくて俺を見てるんだ?」

「いえいえ、先ほどはバロールの死眼を扱う適性を持つものとしてペストがジン様に隷属されていましたが……果たしてノーネームでその適性を持つものが本当に彼女だけなのかなと」

「フン。そこの日向少年とやらもバロールを扱うに足ると……ジャックオーランタンはそういうのか?」

「然り、とはいえあくまでもそれは私の私見。ただバロールの背景にある死というものと信仰による人間の神格化……私は北ではその末端しか感じ取れなかったもので断言には至らぬというだけで本人に心当たりはあると思いますよ?」

 

……なるほど、バロールの死眼。死を与えるギフトにして持ち主にそれなりの資格を求めるギフト。伝承元たるケルト神話では失われたそれは一定の信仰のもとに第二のバロールとなった者の物という仮説らしいが……確かにそういう点ではある意味ペストと同じレベルでの適性はあるだろう。死と退廃溢れる世界の象徴であり、功績と信仰の元に存在していた絶望として確かにこれで適性がなければ嘘だ

 

だが話には関係ないので無視する。別にジャックが気に入らないからでは断じてない。ないったらない

 

「まぁそれは置いておいて結局ノーネームとしてもウィルオウィスプとしてもこの収穫祭の間、ただの客では居られなくなったってコトだ。特に成果を求めるんだったら尚更だ」

「そうですね、それに気になるのはローブの人物です。巨人族を率いていたというのは日向さんの証言からほぼ間違いないでしょうが未だにその存在が掴めない以上、ただ警戒して待っているというわけにも行かないでしょう」

 

……とここまでが南の収穫祭、龍角を持つ鷲獅子としての問題。そしてここからが……

 

「そういった不審人物のことなら私と春日部さんからも言いたいことがひとつあるわ」

 

……俺にとっての本命である。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「ねぇ、春日部さん」

「……うん。言わなきゃいけないこと、聞きたいこともある」

 

少し勿体ぶった言い方、そしてそれまでの話題と違いかけらも共有されていなかった全く新しい情報に場の視線が二人に集中する

本来ならば広めるべきか躊躇う内容だ。確実に江ノ島の目的は世界全体にあり所詮言ってしまえば俺は目的のための通過点に過ぎない。その情報が広まることで江ノ島に対しての危機感を持ってもらうことは素晴らしい。だがそれは同時に江ノ島に注目するということである。

未だにこの世界の住人に絶望が広まったことはない。少なくとも俺の認識している範囲ではその兆候はない。だがあの江ノ島がそれを出来ないとは思えない。

とはいえここまで直接的に大勢に関わってきた以上、もうノーネームや白夜叉、サラマンドラ上部と言った所にはとどめてられない。話せばウィルオウィスプの属する二人はそこのトップに話すだろうし鷲獅子も同盟である以上情報は共有するだろう……それはつまり箱庭に絶望の訪れを本格的に知らせることだ

 

「……田中の事だな」

 

だから止まらないことは承知で……進むしかないだろう。いずれは通る道、覚悟を決めるのは俺じゃない。

 

「やっぱり日向くんの知り合いね。まぁ服装がこの世界のものじゃなかったからはじめからこの世界の知り合いだとは思ってなかったけど」

「……まさかまた来たのですか?罪木さんのような方が」

「蜜柑と同じ存在ね……て事はやっぱり狙いはそこの妖怪纏めちゃおうなのかしら?」

 

とことん不名誉なあだ名だ。そもそもそれは俺じゃないと軽く説明した筈なのだが……いやそれよりも訳が分らないと言った風のサラやサーシャ、フェイスレス。前回のことからか若干の理解を示しているジャックへとちゃんとわかるように説明しなければならない

 

「南が魔王の残党っていう問題を抱えてるように俺もまた似たような問題を抱えててな。まぁ行く先々で知り合いが派遣されては場を引っかき回してくれてるんだ……そしてそれは今回も同じってことさ」

「似たような問題ということはその相手もまた魔王……という認識でいいのかな?」

「……ほぼ確実にな。それでまぁ今回は接触した相手がそこの二人ってことだったんだろ。前はペストだった。問題はそいつがまず魔王の残党と結託してるかなんだが───────」

 

現状接触と言える接触をしてない俺は続きを二人へと促す。対する二人もここに臨むにあたってあらかじめある程度考えはまとめてきているようでほぼ間を空けることなく答えを返してきた

 

「それはないと思う。創の名前を出すまでは巨人からわたし達を守ってくれてたし巨人のことや霧のことはわたし達と同じく戸惑ってた」

「ならばそれが演技という可能性は?」

「本当に田中なら演技ができるほど器用じゃないはずだ……技術というよりも性格的な意味でだけどな」

 

捻くれている様で、本心を隠している様で、思ってることを出さない様で、その実田中は真っ直ぐな人間だ。手段を選ばないというところはあるが基本的には善性を持つ。

 

「私もそう思うわ。成功したところで日向くんのことを知らなかった時からわたし達を騙すメリットもないしね。私が聞きたいのはそう言う事ではなくて田中眼蛇夢という少年の人物像よ」

 

一瞬すごく疲れたような表情をしたことは俺の見間違いだということにしておいて、さも何もなかったかのように続けられた言葉にむしろ俺は安心感を覚えることになった

 

「まず回りくどい、言動が意味不明、レディに対しての常識の無い物言い。態度の変化もそうだし日向くんから聞いてたのとは全く違う戦闘力もそうよ」

「……戦闘力?そりゃ魔王の眷属や配下なんていったら強いもんだろ?実際前回だってそこの創ってやつは罪木ってやつにボコられたんだろ?」

 

サーシャの悪意のない言葉が突き刺さるがしかしやはり田中の言葉は久遠すら惑わせていたようだ。なにか日本語を間違えていたあの少女と何かしら噛み合っていたのはそういう所もあったのだろう。浸っている場合でないことは百も承知だがそれでも少し思い出した光景がやはり俺の疑問を加速させる。それすなわち果たして俺の前に立ちはだかった今までの三人は本物の彼らなのか否か……そういう疑問である。

花村の口ぶりや辺古山の未練とも言うべき絶望の根底からは修学旅行をリタイアした後があるかのように感じられた……だが実際そんなものは無いはずだし仮に存在したとしたならば上書きするべきデータが消えてなかったことになる。そこに超常の力が働いてゲームとは別のところで続いていたのだとすれば辺古山の未練には繋がりようもない。何故ならそこに辺古山ペコの上書きすべきデータが残っている以上辺古山本人が諦めなければまた九頭竜たちと頑張れる未来があるかもしれないからだ。辺古山本人がその努力をしたいと言いながら絶望に落ちて諦めているのは明らかな矛盾。都合のいいところだけ、都合のいいように作られた穴の抜けの台本……

 

「簡単に説明すれば俺の知り合いも俺もギフトを持ってなかったんだ。そして最近になって手に入れた。だから俺が知ってる田中は戦闘力と呼べるだけのものはなかったはずなのに今の田中や罪木が力を持っていることは実はそう不思議じゃない。そしてそのギフトも必ずその本人の性質や才能を元に発現している」

「なら眼蛇夢がもつ性質や才能って何?」

「春日部たちには前に一度言ったんだけどな。あいつの肩書きは超高校級の飼育委員。知っての通り動物と会話したりできる才能の元の持ち主で性質は多分『生死』に関係すること……というか生命とか生存って言葉が鍵だと思う。そうでなければ『獣』かな」

 

江ノ島の今の目的は俺の絶望だ。わざわざ無駄なことや都合の悪いことはしないだろう。だからそもそもどこかにデータが残っていたとしてもそれを使って俺にぶつける必要性は無いはずだ。現に力技で来た罪木はカムクラを呼び覚ますことが出来た。でも性格がそのままだから最終的に罪木が俺を元に戻すなんて形になったんだ。

つまり存在したとしても辺古山のような形で絶望するのはありえない、意図的にそう見せかけて何らかのギフトであいつらを呼び出したのだとすればそれはありえるがそれなら超高校級の絶望時代の花村たちを呼ぶほうが圧倒的にいい筈だ。カムクラを絶望に落とせるような女が計算ミス?そんな訳が無い、何らかのメリットがある……島での犯人ばかりが来るのもミスリードか?

疑問は答えへと至らないが今までどこか不思議に思っていたところは徐々に氷解しつつあった

 

「それじゃあ巨人を吹き飛ばしたり人間を獣みたいに出来たりするギフトの正体はそのどっちかが関係してるってこと?」

「他者の獣化ですか?他者に獣という恩恵を後天的に与えるギフトというとレティシアが持つ様な吸血鬼の鬼化のギフトとかが近いのかもしれませんが」

「いや、獣になるんじゃなくて姿はそのままに獣みたいになると言うか……」

 

さて、しかしその方が余程納得がいくと言う事も多い。例えばそれはちょうどジンたちが話していることで本来は俺たちが持たないはずのギフトの事だったりする。

結局信仰が力になるとはいえ元の世界では超高校級の絶望達も活動時期は短期間、その前は学生であることから才能の知名度や学園の知名度こそあれ個人の知名度は業界で期待される程度のものの筈なのだ。苗木誠のメールに書いてあったことからも彼らは潜伏していたりで大々的な活動をそこまで繰り返したわけでもない。要はギフトを得るだけの個人的な成果を望めないのだ。人外でありながら最も人間的という意味不明なカムクラはそれでも希望の象徴であったし江ノ島にとっても特別であったことは想像にかたくない。故に他の14人とは違うだろう。江ノ島本人は言うまでもない。

力を持って正式に箱庭に現象として誕生できる可能性があるのはカムクラや江ノ島、そしてそれを打倒した苗木誠位に思える。おそらく江ノ島は正規の手段でここにいる。俺はカムクラではないけれどノーネームにこの世界に招かれたいわば例外だ。苗木誠はそもそも俺がいた世界だとまだ生きていたわけだが此処はあらゆる時間軸、並行世界を肯定している。それにも関わらずいないということは何かが足りなかったのか仮説が間違っているのか……姿を現していないということはないだろう。江ノ島の苗木誠への執着は下手をすればカムクラのそれを上回り兼ねない。ならば当然彼がここにいれば江ノ島は彼の元にも似たようなことをしているはずでそれを受けたあの少年が動かないわけが無いからだ。

故に今いる正式な俺の世界の住人は2人。花村達は江ノ島が何らかの方法で連れてきたか……やはり俺の仮設通りの方法でここに現したか。どちらにせよギフトを与えたのもまず間違いなく江ノ島だ。だが前者と後者の場合、ギフトの中身が確実に変わる。前者はギフトを得るだけの力を与えることだが後者は江ノ島が作った、あるいは持っていたギフトを与える事になる。恐ろしいのは後者でペストの言う通り「馬鹿じゃないのか」と言いたくなるような内容になることが確定していると言っても過言じゃない。何せ元が各個人ではなく江ノ島だ。

今までのギフトから考えてもやはり俺の仮説の方が近いように思える。田中もそうであった場合今回も例に漏れず馬鹿げたギフトを持っていると考えられるわけで……

 

「肉体の変化じゃなくて内面の変化って言いたいんだろ?」

「……うん。眼蛇夢は『範囲の中なら例外無く防げない。お前は何故そのままなんだ?』みたいなことも言われた」

「それじゃ春日部には聞かなかったのか……ってことは効果を受けたのは久遠だな」

 

若干睨まれた気もするけどまぁだからなんだと言うのか。

 

「要するに性格が野蛮になるか理性を失うか。防げないってことを考えると若干本人によるところが多い性格の改変じゃなくて問答無用の理性の剥奪、むしろ攻撃的に考えたら『生存本能の爆発』……か?」

「生存本能の爆発……確かに獣みたいになる可能性はありますがそれでは春日部嬢に効かなかったことの理由や巨人族を吹き飛ばした理由にはならないかと」

「人間と動物を分けるために理性と本能という言葉がある。もし春日部に効かない理由を付けるとするなら春日部のその動物の力を得る力だろうな。人間は野生で生きることもなく本能に飲まれることも滅多にない……でも動物は違う。三毛猫を見て分かるとおり動物は理性を持っている。でも本能にも流される。人間よりもその二つの存在のバランスが保たれている分コントロールに長けているといっていい」

 

人間は普段から抑えようとする必要がない分コントロールできているように見えてそういう力は少ないという事なのか……まぁ獣人や意思疎通が測れる生き物も多いこの世界において例外はないと言うことはこの際どちらが上手いかは関係ないのか

 

「大事なのはそれらの力を春日部が得ているってことなんだろうな。田中のギフトが内面に働きかけるものなのは確実だ。それも働きかけてるのは精神じゃない。精神なら春日部は言ったら悪いが俺たちとそう変わらないと思うからさ」

「yes、確かに精神感応系ギフトならば人によっては防ぐ事も出来ます。ただ日向さんの言う通りだとすれば確かにそれは鍛えようがありませんしそんなピンポイントに防ぐギフトも普通はありません。対して春日部さんのギフトは動物の力を日常的に得るギフト……普段から実感するようなことも無いでしょうし確かめようもございませんが春日部さん友人の分だけその力が作用しているのであれば田中さんとやらのギフトを弾いたのも納得です」

 

この微妙な嫌らしさが非常にそれらしい。人間性を消す……田中の主張を嫌な方向に歪めた結果だ。田中は生きる事に誠実にならない人間を嫌悪していた。殺人に至った理由も生きる為に出来る事をするという本人のその主張に則った結果だ。そこからすれば確かに生存する事だけしか考えさせないギフトはその主張に合っている……だが田中はそんなギフトを果たして望むのか?生存本能の爆発は他者を蹴落とすと言える。腹が減ったら仲間を食う。危険を感じたら真っ先に逃げる……だが田中の愛した動物は腹が減ったからと仲間を食うか?危険が迫ったからと子供を盾にして逃げるのか?

 

相変わらず田中のことは分かりづらい。だがあの時の田中は間違えても生きる為に仲間を蹴落とす事を肯定していたようには思えない。

結果的にそうなったといえばそうだが田中は極限までその意志を行動には移さなかった。俺たちの仲間と生き残ろうとするその態度に始めから否定的ではなかったのだ

その理由は大袈裟なあの言い方ですら語られはしなかったがおそらくきっと……田中も人間らしかったという事なのだと思う

 

人間を嫌ってようが生きる為に手段を選ばないと主張しようがその根底にあるのは厳しい世界を見てきた故の人間らしい考え方に基づいた優しい主張のはずだった

 

 

 

 

花村は母親に楽をさせたかった

辺古山は九頭竜を守りたかっただけだ、誰かを切りたかった訳でもない

罪木は医療行為に歪んでいても価値を感じていただけだ、誰かを弱らせたいだなんて思ってたわけじゃない

 

 

田中だって同じだったはずだ、俺はそう信じてる

 

だから今度こそ救って見せたい。絶望に落ちて知らぬ間に苦しんでた仲間を余計に苦しめたり、半端な希望を仲間に押し付けて涙の中消えていくのを見送ったりするんじゃない。

 

 

 

 

 

 

──────仲間と一緒に今度こそ

 




まず大前提ひなた君は原作でもカムクラ君のことを知りません。当たり前ですがカムクラ君がどういう性格をしているのか、どのようにして超高校級の絶望と呼ばれたのかを知らない筈です。ゲームでも日向くんの中で絶望を囁くカムクラを纏めてブレークするところがありますがあれは確か日向くんのイメージのカムクラです。ひなた君が知るカムクラは船の中の狛枝とのワンシーンだけの筈なので多分その筈です。
なのでこの作品ではひなた君はカムクラの事をだいぶ偏見を持ってます。超絶望だと思ってます。
実際のカムクラは利用されてる面が強く致し方なく絶望として行動していたという感じらしいというのは聞いてますがなんかそれを理解してひなた君が今カムクラ受け入れてたら作品的にアウトですしね。
それに伴って前までマイルドカムクラとか読んでたのが本編カムクラ。絶望カムクラ日向のイメージの中のカムクラとかにしときます。今までどおりのシステムだと絶望カムクラが出てこれなくなるのでついでにそこも変更して超希望モードの対極が絶望カムクラだと思ってください。要するに希望しすぎてカムクラ化したひなた君が今度は絶望しすぎて自分の中の想像のカムクラを作ったよみたいな感じです

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