異世界より”超高校級”が参戦するようですよ!   作:ヤッサイモッサイ

34 / 52
はい更新しないしない詐欺ですどうもこんにちはヤッサイです。今回はまたもや説明回。ぶっちゃけ『日向「実は○○だったんだ!」一同「な、なんだってー!」』を繰り返すだけで面白くはないと思います。自己解釈も含むかもしれません。おっきなストーリーにはあまり関係ないので原作を知ってる人なら最悪飛ばしちゃってもいいです。えぇまじで、作者が書いてて面白くないっていうんだから間違いねぇです。
さてここからは普通の話、遂に3巻と4巻買いました。まだ読んでないですがとりあえず今回加えて次回あるいはそのまた次回あたりで3巻には突入するでしょう。読む時間さえ取れれば読むのは一日なので1週間更新は問題ないと思うのですが徐々に予備校が近づいてきてまして......浜松(地名)に通うことになりました。
往復が電車の中だけで4時間......執筆に当てるべきか浪人生らしく勉強に当てるべきか悩みどころです笑
ちなみに後書きでまた補足しておきます。カムクラのギフトのコトですね、はい。ではどうぞー



黒き嵐の過ぎし空

俺はかつての行いを後悔した事は無い、だが悔いたことが無いわけじゃない。毎度毎度何かがある度に起きた悲劇を嘆き、なんでそんなことになったのかとただ黒幕を恨んだ……だがその中でも彼女の一件だけは正直にいえば自分を責めた。他の事件とは違いその事件だけは……俺になら気づけたはずだったから。

絶望病と呼ばれる正体不明の病にかかった仲間達の看病を罪木が一人で請け負った時、彼女が俺のベッドへと上がり込んだ時……彼女がその病に感染していた兆候はあったのだ。無論モノクマの事だ、事件が起こるまで病が治ることはなく、被害だけが増えていった可能性もある。でもそんなこととは無関係にあの時気づけていればあの気弱な少女が道を誤る事はなかったかもしれない。代わりに誰かが誰かを殺すことになったとしても、それが防げなかったとしてもその時罪木を止めたことを間違いだとは思わなかっただろう。

 

 

……だから彼女が裁判のあの場で独り泣き叫んだ時、彼女の信用を裏切った時、俺はその罪悪感に蓋をしきる事が出来なかった。その感じなくてもいいといつもわかっている感情を抑えきることもできず後悔にも無力感にも似た、しかし確実にそれらとは違う中途半端なそれを抱えたままここまで来た。

俺がある意味彼女を特別扱いしているとすればそれは彼女が絶望として俺たちの前に立ちはだかったからとか彼女に同情してとかそう言う事ではなく……その消しきれなかったたった一つの名もない感情故だろう。

 

事件の後眺めるいつもの星空もどこか重かったのを今も覚えている。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

知らない天井……と言う言葉は前の世界のテンプレというものらしい。ふと目が覚めた時に見覚えのない景色広がった時に使うまさにそのままな言葉だがこの場合はむしろ知らない天蓋だとでもいうべきだろうか……なんにせよここまで頭がスッキリとした目覚めは何時ぶりだろうか?夢から体を持ち上げられ、そのまま目を開いたかのような……まるで寝ている間も精神だけはどこかで活動を続けていて瞬きと同時に景色が元の肉体に戻ったかのような感覚だ

 

「随分と静かなお目覚めじゃな。静かすぎていつや逝くかもとハラハラしたわ」

「……白夜叉か、ということはゲームは終わったんだな」

 

カッ、と些か荒んだ様子の白夜叉が眉をひそめて返す

 

「5日も前にの。なに、結局何もできんかった儂にとっては掘り返して欲しくもない話題じゃが……そうもいかんな。ここは普段の東側の支店より繋がる客間の一つじゃ。和室に合わぬ豪華な寝具はサラマンドラから渡されたものでの、向こうで寝かせていた時のをそのままちょいとの?」

 

……5日……というかそれ以前にベットごとというのはどうなんだろうか。畳も傷まないのか?

 

「……それで?俺がここにいる理由は?」

「まず一にあの三毛猫を連れた嬢が看病すると言って聞かなかったからじゃ。いくら丈夫とはいえ病み上がりの女子が寝ずにじーっと男の看病をすると言うのは無理があるでな。こっちに帰ってからはノーネームではなくこっちに置くことになった。愛されとるの?」

「無理な誤魔化しは結構だ……本当の理由を早く言え、だいたいわかってるから」

 

仮に春日部の話が真実だとしても彼女のそれは俺を焚き付けたという勝手な自分への責任転嫁だ。俺はあの言葉があったから頑張れた……頑張った結果がアレだったというのは不甲斐ないがな

 

「……儂は前に言ったな?それは身に余ると、百害しか無いぞ……と。それは訂正しよう、おんしのは千すら軽く飛び越えて億以上の害を招く。黒ウサギの話を聞いて、遠くよりあの気配を感じてもなお半信半疑だとも。だが常識さえとっぱらえば疑う要素は無い」

「やっぱりそうなったか……予感はしてたさ。実は前にも似たような事があってな。その間の記憶がないんだ」

「記憶がないで済むだけでも異常だ。あれだけの存在をどうやって押さえ込んでいる?何故あんなものが出てきた?」

 

最もな疑問だ、隠す理由ももうなく隠すことすらできない……でも理屈付けての説明は出来ない。俺の予想が正しかったとして、仮に俺の中でカムクラと脱出するときのあの力がせめぎあってるのだとしたら俺はそれをなんと説明すればいい?

 

「……十六夜達から話は聞いたか?」

「無論、関係者総出で話は聞いたとも。だがやはりあの話は全く事実と噛み合わんな」

「別に嘘は無いさ、ただ話さなかったことが多かっただけ……今度こそ話させてもらうよ」

「奴らを呼ぶことはできんぞ?」

 

……信用が無いな。まさかそれを辛いと思うとは思わなかったが……春日部との約束が予想以上に効いてるのか……それともあの島での約束をまともに守れたことが無かったのが俺にそう思わせているのか

 

「そんな顔をするな、全員おんしを心配していたとも。だがやはり儂の立場としてはこれ以上あのコミュニティを苦境に追い込むわけにもいかん、仮におんしが先の状態になったとして儂も他を庇いながら貴様を完璧に押さえ込む自信はないでな」

「……賢明な判断だと思うよ、純粋なる実力はさておいても本当に厄介なのはそこじゃないからな。とはいえ俺も二度話せる様な話しをするつもりはないんだ、何とか出来ないのか?」

 

そういう俺の問に白夜叉は拍で応えた。乾いた音が日本らしさを多々含んだ庭へと響き白夜叉の横の畳が湖面のように揺れ動く。まるで畳から生えるかのように姿を現したのは一枚の姿見

 

「言われると思っての。流石に準備はしておいた。最もおんしがいつ起きるともわからぬ故に向こうも直ぐには「創っ!?」──────この様子じゃと姿見の前で寝食をとっていたようじゃの、うちで引き取った意味が半減したわ」

 

畳の揺れが収めると同時に今度は鏡が揺れだしだんだんとその中に覚えのある景色が……横から飛び出した春日部によって遮られて見えなくなった

 

「久しぶりだな春日部。それで、これもギフトか?」

「当然、割と高級品故貸出のみだぞ?ほれ、小娘も離れんか、早く黒ウサギ達を呼んでこい」

「う、うん!」

 

鏡の前でずっと大丈夫かと声をかけてくれるのは嬉しいが俺の最後の記憶では彼女こそ病人だ。何とも複雑な気分だよ本当に

 

「さて小僧、話したくないことがあれば先に言っておけよ。後でフォロー位はしてやれるぞ?」

「言いたくない事しかねぇよ」

 

……でも残念ながらそれこそが一番話さなければいけないことだ。隠すことなんてできやしない、なにせみんながそれを目の当たりにしたのだから

 

「そうか、なんにしてもそんな戦場に臨むかのように決死の覚悟を決める必要はなかろう?」

「……え?」

「空気が張り詰めておる。まるでそれこそこれから殺し殺されをするかの様な……戦士の空気じゃ。それも前の世界のせいか?仲間と向き合う事がそこまでの覚悟を必要とするものか?」

 

……それもそうだ。ここは前の世界じゃない。ならばただ仲間と話すことに命が絡むものなのか?仮に彼らが俺を排斥しようとしたとしても殺すということはないだろう。ならば俺は何を緊張している?

 

「いや、その通りだ。これはただの癖みたいなもんだよ」

「違う世界のこととはいえ滅びと退廃の話に面白い物があった試しがない、だがそれこそペストのように滅ぼされた物ならまだしも滅んだ世界で生きたものの話は聞いたことがないでの。その感覚は儂にはわからん」

 

だが、とそこで白夜叉は区切りを入れて自身も何かを振り返るように続ける

 

「だが黒ウサギもジンも自身の寄りべを滅ぼされることを知っておる。あの小僧どもとて自ら捨てたとはいえ世界を失うということは理解しているはずだ……理屈があってもまだ納得できんか?」

「いや、そんなことはないさ。はじめから俺は仲間を疑うものだとしてきた。仲間だからこそ疑って、そうやって生きてきた」

 

だから俺は仲間のことを良く知っている。知ることも疑うこともその分仲間にしてもらった方がむしろバランスがいいというものだ

 

「ふむ、要らぬ気遣いだったか」

 

鏡の向こう側が騒がしくなって来た。どうやら春日部たちが戻ってきたようだ

 

「あぁ、全くそのとおりだな」

 

さぁ、今度こそこの身に余る大いなる絶望を語らせてもらうとしよう

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「よぉ、元気そうだな白雪姫様?」

「一体俺はどうやって起こされたんだよ、アホか」

 

開口一番軽口とは魔王と戦っても十六夜は変わらないな

 

「それに久遠も……元気そうでよかった」

「当たり前じゃない。やられっぱなしで終わる私じゃないわ」

 

それもそうだ。そんなに殊勝な性格をしていないことはよくわかっている

 

「言ってくれるわね、後でディーンで潰してあげるわ」

 

……ディーン?

 

「まぁ何にしても無事ゲームが終わったらしいな、安心したよ」

「安心ついでに弁明と今度こそ本当の真実を話してもらおうか、現人神……カムクライズルについて」

 

──────現人神?

 

「今更とぼける理由はないだろ、カムクライズル……神の座へと流れ出る……いや、むしろ神の座にて流れ出るか?世界を自身の法則へと書き換える一種のシステム、それがカムクライズルでお前はその依代……そんなとこじゃないのか?」

「面白い考え方だがカムクラ自体は別に神に至ろうだとか世界を変えるために生み出された存在じゃない、ただ人類の夢として生み出され、あらゆる可能性を秘めていたが故に絶望という性質を手に入れてしまったただの人間だよ」

 

……依代……そこだけはある意味間違っちゃいないし向こうの世界で何が一番神に近いかでいえばカムクラか江ノ島ではあるだろうが

 

「生み出された……それじゃまるで作られた存在みたいな……」

 

……………………。

 

「前も言ったんだが話は割と複雑でな、俺自身全部を知ってるわけじゃない、だから気になることがあるならそっちから聞いてくれ」

「じゃあまず手始めにカムクライズルってのはなんなんだ」

 

……まぁそう来るよな、直球ド本命で大変十六夜らしいチョイスだ

 

「カムクラ……は前に言った学園の研究成果……というべきか。とある人間を依代に記憶や感情、人格を形成するその全てを消して才能を扱う為だけに作られた存在。現存するあらゆる才能を体現し、人類の希望になる予定だった存在で俺達の言い方で言えば超高校級の希望……と呼ばれてた」

「改造人間……いやニュアンス的には少し違うか?」

「そうだな、その通り改造人間とは全然違う」

 

変わったのでも造られたのでもなくアイツはただ生まれてきたのだから

 

「じゃあなんでそれが急に出てきた?最悪の想像をしたところで矛盾が出てくるぜ?それともお前はそのカムクラと一緒にイリュージョンマジックでもやってたっていうのか?」

「……その最悪の想像の通りだ。前の世界でカムクラを生み出すために体を差し出したのが俺……だからカムクラが出てくるのは当たり前だろ」

 

……あまり言いたくは無かったんだがな

 

「な、なぜそんなことを」

「ちょっと待ってろレティシア。まだ俺が欲しかった答えは貰えてねぇ、答えろよ日向。なんでカムクラとお前が同じ体に存在してる?おかしいじゃねぇか」

「……どういうこと十六夜君?ひなた君が依代になったのだからひなた君の体にあの男がいるのは当たり前じゃないの?」

「……お嬢様のギフトとは訳が違う、日向のあれは何かに操られてるとか二重人格とかそう言うレベルじゃなく存在が……いや具体的にいえばもはや脳味噌からして全く別のものなんだよ。そんなに都合よく人間の脳は治ったり書き換えたりできるもんじゃねぇ、あいつの言う通り本当に人格を消して作ったのならその瞬間日向という人間は死んでなきゃならないっ!」

 

その通りだ。俺の体は本来は俺のものではない

 

「それにそれだと順番がおかしいんだよ、全部出鱈目のごちゃまぜだ。お前が前回言ったコロシアイってのがカムクラとして経験したことならば罪木の最後の言動はおかしいし、その生活を抜けてまでカムクラになる理由がねぇ」

「落ち着けよ、いま説明するさ」

 

糾弾される側……というのは辛いな。とはいえそれを受けると決めたのも、それほどの事態を招いたのも俺だ

 

「俺がカムクラになった時、確かに俺は消えたんだろうな。間違いなく消えたさ、何せそれ以降の事は記憶がない、コロシアイ生活のその最後に資料として見たぐらいだ」

「カムクラになったのはコロシアイの前……?それなら小僧の言う通り少しおかしなことになるぞ?」

「おかしな事なんて何もないさ、カムクラが生まれ僅か数年……カムクラを除いては勝てないと思われた江ノ島盾子が敗北して死に、そのまた後にカムクラは存在がリセットされたんだ」

 

自らその状況に飛び込み甘んじて受け入れた……というのは江ノ島盾子とかぶるのだが

 

「────ッ!?そうか、無人島に入る時は記憶が消されて……いやそれでもカムクラが初期化されるだけで日向に戻ることはねぇしお前が言った黒幕は既に死んだあとって事になる。それじゃ殺し合いは起きない「────ゲームなんだ」……はぁ?」

 

途端に事情が飲み込めず困惑する一同におれはだから、と前置きして再び繰り返した

 

「その島はゲームなんだよ」

「……それは遊びや試合……そういう意味の?」

「─────電脳世界そういう意味でのゲームさ」

 

そう、ゲームなんだ。殺し合いも物もあの生活も仲間ですらも……

 

「全部が全部入力された世界、子供がやるような仮想世界で俺達はその登場人物だったってことさ」

「ちょ、ちょっと待って?ゲームに試合以外の意味があるの?電脳世界って何!?」

 

……そうか、久遠はゲームが誕生するよりも前の時代の人間だったな

 

「電気を使った遊戯だ。あらかじめ設定しておいた世界をこの鏡みたいな物に映し出してアバターと呼ばれる人形を操ってその世界で遊ぶのさ」

「俺たちのは十六夜の言ったのとは少し違って直接その世界を体感するというものだったけどな。仕組みをいえば納得するんじゃないか?本人の脳を機械に接続、そこから学園に入る直前の姿と記憶を読み取ってアバターを作成、そのままそれをプレイするだけさ、それだけでこの前言った状況が完成する。ゲームの中じゃどうやっても真実にはたどり着けず、死んだら終わりな現実そのままのゲームが完成するんだ」

 

記憶がないのも魔法みたいなことが起きるのもそもそもあんなことができたのだって

 

「全部"ゲームだから"の一言で済んじまうんだよ」

「だが江ノ島盾子は死んでそれができる筈がない、誰がなんのために──────そうか、そう言う事か!」

 

相変わらず頭の回転が早い、今の話と今までのことだけで既にほぼ答えにたどり着いているのだろう

 

「何が『そうか』なのですか?」

「黒幕がゲームにいた理由、日向や罪木蜜柑と言ったひと学年がまるごと記憶を失ってまで……いや消されてまでゲームに入れられた理由(わけ)が良くわかった。そうか、だから日向がそこに……なるほどな、確かに大した地獄だよな、なにせそこまでしてもなおこれなんだから」

「わかってくれて何よりだよ。寝ても覚めても地獄ってのがまさに言葉通りに起きたわけだ」

「だから一体全体どういう事なんですか!?」

 

どういうことも何も……

 

「俺達が失った記憶は都合よく学園時代のもののみ。都合よくひと学年だけがまるで幸せに暮らせと言わんばかりの環境を整えられ学園生活をやり直せと言わんばかりの状況に追い込まれたわけだ」

「幸せに暮らすもなにも殺し合いが起きてるじゃない」

「それは黒幕が来たからだ。本来の目的は違ったんだよ、余程の甘ちゃんかよほど先を見通す力があるやつか企画したんだろうな。文字通りやり直させる為の世界か、発想がぶっ飛んでる。詰めの甘さも相手がそのカムクライズルだったってんならしょうがないってか?それも最終的には無事に終わらせたんだから大したもんだ」

 

……マジでよく理解したな。そこまでわかるならあまり説明もいらなかったんじゃ……いや流石にそれはダメか

 

「一言で言えば俺らをそのゲームに繋げた理由は江ノ島の死後の世界でそれでも江ノ島の意思をついで絶望を振りまいていた俺達の学年そのものの浄化……江ノ島と出会う前まで時を遡ってそこから新たな記憶を自分達で作ることで絶望としての自分を上書きしようとしたんだ。俺がゲームの中で死んだ奴を死んだっていうのもそこにある。上書きするべきデータが消えた以上その人間は空っぽになるんだから」

「……それはつまり日向さん達こそが世界を破壊した要因であると─────"世界の破壊者"であると!?」

「……その世界で超高校級とまで呼ばれた絶望は合計17人、うち二人は俺たちがゲームの世界に入る前に死んだ。そのうちの一人が江ノ島でありもう一人はその江ノ島の姉だ」

 

名前は確か戦刃とかいったか?

 

「ゲームの目的は絶望からの更生、殺し合いになったのは江ノ島の電脳体がカムクラの手で持ち込まれたから。江ノ島の目的はゲームの中の記憶で絶望を上書きする際に紛れ込み自身の肉体を現実で手に入れるため……ゲームの目的とかそういうのは全部それだけだ」

「ゲームが作られたのなら外からその江ノ島を排除すればいいんじゃ」

「電脳……ってのはそんな簡単じゃないんだよ。発展前から来たお嬢さまや箱庭の連中には馴染みないかもしれないがな」

「そこらへんのことは良く分からないが想定外の混入で対処ができなかったのは事実……介入も結局出来たのはゲームの終盤も終盤だ」

 

最終決戦のあの場所で、あの演出過多悪趣味全開の戦いは絶対に忘れない

 

「……まぁその話はもういいさ、理解しておくべきことはわかった……後はその絶望連中のスペックだ」

「……おそらく今後出てくる可能性があるとすれば2人か3人だろうな。今まで俺があったのは3人、その3人もゲームの中で事件を起こした順番通りに出てきた」

「つまり事件は5回、そしてそれに加えて江ノ島本人を加えた6人か」

 

……いや、そうではなく

 

「江ノ島が来るのはおそらく当然だろうな。俺が言いたいのはそいつじゃない」

 

────言うと決めた、だからこそ口に出すべきだ

 

「5回目の事件は……いや、事故の犯人の事だよ」

 

おそらく彼女が本当に絶望として出てきたとき……向き合うべきは俺で、最も向き合っちゃいけないのが俺なのだから

 

「事故じゃと?……まさかその時も」

「当たり前だ、犯人探しは起きたよ」

「そ、そんな!?事故でしょう?それじゃ最後の最後で死んだ人が報われないじゃない!」

「……いや飛鳥、多分それは違うと思う」

「……春日部さん?」

 

そう、それは違うのだと思う。もちろん彼女だって生きたがっていたはずだ。最後まで一緒に戦うと決めていたはずだ

 

「創はさっき絶望と呼ばれた人数を15人って言った。それは創の学年の数より一人足りない」

「……一人足りない?」

「……少なくとも創の学年の誰か……その時死んだ人は創達のためにゲームの中に入った人……違う?」

「……あぁ、そうだよ。何と言っても七海は超高校級のゲーマーだからな」

 

……彼女は誰よりも俺たちみんなで帰る未来を願っていた。だから俺は帰らなきゃならない。今度こそ後腐れなく絶望を乗り越えて

 

「……超高校級のゲーマーね、随分と多彩……いや、多才だな。お前の同級生の才能はなんなんだ?」

「犠牲者が詐欺師に写真家、軽音部に舞踊家、マネージャーと幸運。犯人とされたのが料理人と剣道家、保健委員に飼育委員、ゲーマーだ。生き残ってまだ向こうに居るのがメカニックに女王と体操部、極道」

「……少なくともそれらのスキルをカムクラは持ってんのか……江ノ島って奴はどうやってそんな化物を抑えたんだ?」

 

そうだな、残念ながら俺の記憶にその時のことはないわけだが……

 

「調べた過去の資料には江ノ島について書いてあったことがある。彼女は超高校級のギャルとして希望ヶ峰に入学してその後プログラマー、メカニック、神経学と言った多才なジャンルも収めたってな」

「「「「……ギャル!?」」」」

 

……気にするところはそこじゃない

 

「俺も詳しくは知らないが江ノ島には超高校級レベルの分析力なるものがあったらしい。未来予知の紛いごとや他人の才能を自分の物にするその力があれば環境さえ整えばカムクラをどうこうすることもできる。なにせ江ノ島にとってカムクラが完成することは何年も前からわかっていたことなんだから」

「……なるほど、いくらカムクラが凄まじくとも生まれる前ならカムクラは何もできないってことか。スペックの差を自身のその才能と時間で埋めたわけだ」

「後は絶望を何よりも理解した江ノ島とやらがその筋書きにカムクラ当て嵌めれば……お手軽に極上の悲劇が完成するわけだの」

 

……残念ながらその通り……というわけだ

 

「……じゃあなんでその未来がわかる上化け物で問答無用の絶望なんて力まで持つ江ノ島盾子は死んだ?」

「確かにの、未来予知だけに留まらん高スペックは確かに強力じゃ。無敵とは言わんが凄まじくもある。聞く限りそれを攻略するのは並大抵の才能とやらではなかろう?」

「あー、だから俺の記憶がない時の話はわからないことも多いんだよ」

 

……事実彼女を倒した彼について知ってることは余り多くない

 

「倒したのは苗木誠って言う名前の俺たちの後輩だ。確か……確かだけど才能は毎年全国からただ一人無条件に希望ヶ峰に入学する事を許される超高校級の幸運という枠で入ってきた。何故か知らないけど江ノ島にとって同じ思考力を持つカムクラ以外唯一自身の計算から外れた存在で江ノ島をもってして主人公と言わしめるカムクラとはまた違った超高校級の希望らしい……本当に話せることはもう無いぞ。俺もゲームの中で知ったこと以外は知らないから疑問だって多い」

 

後言えることがあるとすれば……仲間の詳しいプロフィールぐらいなのではないだろうか?

それ程にその実俺が知ることは少ない。記憶も消され資料とて江ノ島が用意した飛び飛びのもの。もっとたくさんのことを知っているであろう苗木誠とは話す機会も無く気がつけばこの世界

 

「じゃあ俺の疑問はこんなもんだな。白夜叉も満足したんじゃねぇか?『どうして』とか聞きたいことがあるならそれはまた個人で聞けばいいことだしな」

 

フム、と頷く白夜叉もどうやら納得はしてくれたようだ

 

「とにかく小僧も起き抜けに長々と済まなかったな」

「いや、当然の事だし俺も話せてスッキリした」

「とにかく一度話しは終いにしよう。小僧はもう暫くこちらで休ませる。話があるならこちらに来るといい、小僧もひとまずは腹ごしらえじゃろう」

 

そう言った白夜叉の拍で呼び出された店員に連れられて俺は部屋を後にする

きっと不満タラタラな久遠や未だに前回のことを気にしているレティシア、そしてついでに何やら途中から罪悪感なのか何なのか前半よりも顔を蒼白にし歪めていった黒ウサギ辺りは白夜叉の言葉通り飛んでくるだろう。

十六夜はおもしろがって見に来るだろうしジンもそれらを止めるために同行するはずだ。となればあれでいて寂しがりやな春日部も絶対に来てついでとばかりにイヤミを言ってくるに違いない。それもぼそっとすごく突き刺さる事をだ

 

 

「あれ、おかしいな。話が終わった後の方が大変そうだ」

 

白夜叉の店の居住区、庭園のついた縁側からいつものように空を見上げる。

いつぞや来た時のように桜が舞い散る景色より打って変わって緑が強くその生命を主張するその季節の空はどこまでも晴れやかに澄んでいる

何も気にすることなどないと言わんばかりの好気候……

 

「はぁ……腹が減っては戦は出来ぬってな」

 

前を行くいつもの毒舌の店員さんが急かすように咳払いするのを受けて俺は空から視線外す

……そうだともこの空の下には左右田達はいない……でも新しい仲間たちが居る。個性において何ら彼らに引けを取らない仲間だ

 

だったら気合を入れねばやってられないだろう

 

部屋を離れても聞こえてくる騒ぎ声に思わず笑いながら俺は遂に店員さん怒られたのだった

 




早速補足です。
感想欄でカムクラのギフトについて他作品の喩えを出して説明したので勘違いされた方がいるかもしれないので一応......他作品の技を出すつもりはありません。もちろん原理が似てる......とかはあるかもしれませんがまずオリジナル技を出すのかどうかも未定です。今までの書き方を見てくれればわかると思いますが別に作者技名を叫ばせたりとかないですしカムクラ君の万能性ゆえに色々なことをさせるとは思いますがそれも原作に出て来た才能でなるべく済ませたいとすら思ってます。もちろん作者が今後の展開はっきりさせてないので断言はできませんが少なくとも出てオリジナル才能系の描写が少し程度だと思います。
後少し前回の黒ウサギの心理描写をいれた所についての説明を忘れていたのでしますが確かにカムクラ君は「神造のギフト」を再現することはできません、ですが担い手が人間である、人型であるならば相手が持っていようが相手よりも上手く扱います。そんぐらいの理不尽を想像してるくらいでちょうどいいかと

最後に話が変わって人類最終試練だとかの話になります。Wikipediaでそこの項目だけ見てなんとなく理解はしたのですがあぁも難し目の話になると理解が追いついてるか怪しいです。誰かざっくり、ダンロン世界目線、もしくは現代目線で説明できる方がいましたらメッセージでも活動報告でもどこでもいいので説明頼みたいです。何人か説明してくださったこともあるのですがやはり専門用語というか閉鎖世界だのアジダカーハ?だの言われても少しピンと来ませんでした......申し訳ないです

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。