異世界より”超高校級”が参戦するようですよ! 作:ヤッサイモッサイ
今回でようやく前回みたいな話が進みませんんんんんみたいな流れを着ることができました。
ちなみにどうでもいいコトですが作者がアニメの世界に踏み込んだきっかけはひぐらしが鳴いちゃったりする某K少年が主人公なあれです。アレからアニメに入ったくせにそれから六年ちょいヤンデレ知識がなかったのは一体なんなんでしょうね?まぁ怖い怖いそしてマジでどうでもいい。
いつもと違って零時から遅れたのは今日が期日の1週間だと勘違いして急いで夜に書いたからです。今の今までずっとはじめから最後まで書いてました。でもまぁほぼ零時だしあげちゃいます。
今回作者のにわか知識で書いてる部分があるので言っておきますが作者は別に医学的知識も武術的知識も調理的知識もございません。あと今回の冒頭は割と原作そのままです。視点と書き方、説明を軽く省いてまで入れた理由はまぁ一応原作忘れたとか見てない人用になんでペストが侵入できたかとかを説明するためにいれました。
ではどうぞー
長く、長く続く廊下は今もどこか赤い色とは違い身を震わせるような冷気を持ってそこにあった。
本来ならば人の往来があるはずのそこも期日の前日の今日となっては動きもなく、病床に伏したその規模もあってどこか人の気配の割には物寂しい空気を出している。その廊下に並ぶ扉の1つに手を掛ける、それは俺の仲間が寝ている部屋につながるものだ。
「邪魔するぜ」
「……十六夜?」
どうやら寝起き……いや俺が起こした形になっちまったか
いくら体が強かろうが病……それもとびきりのものに侵された体を無理に起こそうとするのを手で留め、引っ張り出した椅子に座る
「容体はどうだ?」
そんな俺の問にも呆れたような視線が返ってくるのはまさに決戦前日……というところで隔離部屋にやってくるこの暴挙にたいしてだろうか。そうじゃなくその他の気遣いができてないという睨みであったのならさすがの俺も少し傷つく。
「ゲームクリアの目処はたったの?」
睨むついでに視線を落とし俺が手に持つ本へと今度は固定する。それこそ察して欲しいものだが……
「厳しいところだな。わかるところはさらりと出てくるがやっぱり核心には繋がらない。下手に多く情報を仕入れてもって思いはあるがとにかく今は関連情報や見方を変えて手を広げていってる」
……言ってしまえばお手上げだ。悪足掻きに近いそれは要するにヒラメキだよりという。それほど状況は芳しくないものだ
「ハーメルンの笛吹きにも様々な説がある……要するに今回のゲームはその伝承の仮説にもならないようなものを選べ……ということなんだろうがこれがまた厄介でな」
仮説を書き記したメモを春日部に渡しながら話を続ける
「メモのとおり敵の戦力は災害ないしとある現象の具現化に近いもんだ、どれもこれもが伝承の130人を満たすのになんら不足ない」
ラッテンとは前言った通りネズミのこと。ネズミと人心を操る悪魔の具現、現象。
ヴェーザーは川の氾濫や地盤沈下等の災害を悪魔のものとしたもの。
シュトロムはまんま嵐の意だしペストもその通りだ。
要は偽りの伝承を砕き真実の伝承を掲げよというゲームの一文は上記のいずれかのうち伝承で実際に起きたことを選べととれる。実際春日部にもそれはわかるようで黒ウサギがかつて言った『立体交差並行世界論』を利用した説明をむしろよりわかり易く変えて俺に返してきた。日向やお嬢さまに説明するときはそれでいこうと思う
「まぁ結局どんな考え方をしても上に並ぶもので一番浮く物といえばペストだ。なにせ本来の伝承では一夜の間に130人が死ななければならない。その考えの中でペストだけは今の状況の様に即効性がないわけだ」
だがそう考えると今度は勝利条件が被ってしまう。故に今ある情報ではこれ以上の発展が見込めない
「もう一つの伝承の内容とは関係なく条件を達成するための方法も解明だけは出来てるんだがな」
伝承を砕き掲げる……これはなにかの比喩ではなくそのまま砕くことができて掲げられるもの……そしてそれ自体が物語性をもつ複数あるもの……
「ステンドグラス……これしかないと思う。おそらくだが白夜叉の定めたルールを超えてあいつらがこのゲームにやってきた方法もそれだ。白夜叉のルールには主催者や参加者を縛るものはあっても出品された作品を縛るルールは無かった。実際確認したところ俺たちとは違うノーネームから100枚以上は登録されていたしな」
「……すごい発想だね」
「あぁ、正しくそのとおり。すごい発想過ぎて殺意が湧きそうだ。勢いに任せてかのステンドグラスを全部叩きわりたいぐらいにな、きっとスッキリする」
もちろんやらないが。
「正直それぐらい参ってる。結局ペストでいいのかもわからんしだとしてそれが真実なのかあるいは偽物なのかも曖昧だ。数の暴力ってのはまさにそれだな、把握していても確認して回るにも多すぎる」
「ということは今できる勝利条件は……」
「結局、魔王様を倒す他ねぇってことだ」
……それに問題はそれだけじゃない
「……浮かない顔だね」
「今の話で満面の笑顔を浮かべられるのはヤケになった黒ウサギぐらいだろ。あるいは余程の能天気だ」
「なんか普段の十六夜を考えると今の十六夜はみていて愉快だな。普段の分黒ウサギ達にも見せてきてあげたらいい」
……なんで俺が出張サービスをしなきゃならない?
……まぁなんにしても元気そうで何よりだ
「……ケッ、その様子じゃ心配いらなかったか」
俺のその反応が解せなかったか春日部が疑問の表情でこっちを見る。
「一人でこんな部屋に動くこともせずこもってたら気分が落ち込むかと思って見に来てやったんだよ」
「ありがとう、でも自分の気晴らしも兼ねてるんでしょ?」
「……そこで素直に感謝が出ないのはなんでだ。本来ならば『ありがとう十六夜様〜』くらいあってもいいはずだぜ?」
「感謝はしてるよ、君は本当に優しい人だもん。そんなのはとっくに知ってた」
……ん?
「……望んだ展開ではあるわけだがよくわからねぇな?そんなこと思ってたか?」
今度は俺の解せんという空気が伝わったのかフフっと非常に軽い笑みを浮かべてはなにをているのか視線を窓に向けた
「私が見て見ぬ振りをしてた創のために実際動いた……それだけで君は充分優しいよ」
「なるほど、こないだの事か……そう言えば日向はどこに行ったんだ?こないだから一度も見てないわけだが」
「何やら張り切ってどこか行っちゃった」
……大丈夫なのかね。伝承の悪魔達とは別……日向が話した話の中にいた死んだはずの存在。
結局気になることも聞くことが出来ずに日向は消えた。
「めんどくさいことにならなきゃいいんだがな」
「今の日向ならきっと大丈夫だよ」
……本当にそうならばいい。だが現実とはそうじゃない。決意一つでどうにかなるような優しい世界なんて……存在しないのだから
「……だといいがな」
「うん……そう言えば白夜叉は?」
「さぁな、接触もできないし解放の目処も立たない。封印の方法も全然わからん───────」
そこからは春日部の言葉をヒントに謎が解けた。出来ることはした、唯一の不安な要素があるとすればそれは……日向の口にした不吉な絶望と言う言葉だけだ
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
遠くから声が聞こえる。ゲームが始まる今日、その戦の前の士気をあげ、自身を鼓舞する声だろう。
そして少しの静寂があって今度は世界が光に飲まれた。石畳と赤で作られた黄昏の街は消え木によって作れた街が姿を現す。パステルカラーの家屋が立ち並ぶここはまるで時代を遡ったかのように錯覚させる
状況的に考えてここは伝承、ハーメルンの舞台だろうか?つまりはそのままハーメルンの街ということになるのだろう
「……向こうはきっと十六夜たちが上手くやる。今回は黒ウサギも参加するんだ、心配はいらない」
今回俺がやるべきはただ一つ、自分の戦いではなく俺達の戦いとして絶望を打ち破るということ……
遠くで空気が震え水しぶきが打ち上がっているのは十六夜のせいだろうか?もしくはあそこまで十六夜が荒ぶる敵ならばそれこそ敵の仕業なのかもしれない
開幕からあいつが突っ込んでいったとも考えられるが場所的には先ほどの声が聞こえたところから大差無い筈なのできっと向こうから来たのだろう。
「となればこっちも動く必要はなかったな」
「さすが日向さんです」
わざわざ後ろに現れたのはなにかの嫌がらせだろうか?鳥肌どころか血管の中に直接氷をぶち込まれたかのようなおぞましい気配に従って後ろを向けば薄暗い路地に案の定彼女が姿を現していた
「どうも、一週間と2時間7分32秒ぶりですねぇ、日向さん?」
……いちいち数えてないっての。
「不気味過ぎてガチで視線そらしちまったよ!一週間と2時間7分37秒ぶりだな、罪木」
今度は各地で上がる旋風に雷鳴、紅焔に黒い風……ここまてくればもはやこれは戦争だ
「……あの時代の日本に生きてて自分が戦争の中に放り出されるとは思ってなかったよ」
「そんなことはありません。終戦の後たった時間は戦の歴史に比べて刹那的なものです。いつまた何が起きて何かが壊れる時が来る……それを成し遂げたのがあの人なんですよぉ」
「……そんな記憶にない昔話に付き合う気は無いぞ」
「そんなこと言わず少しぐらい付き合ってください、あの時のように二人でぶつかり合いませんか?今度は邪魔物なんていない、あのゲロブタもあのゲロブタも……私をいじめるものなんて誰もいない!この場には!私と日向さんだけなんですよ、私と日向さんだけなんですぅ」
……やはりあの時見た罪木の狂気は何も変わっていない。俺は
「俺には仲間がいる。この場には戦っている仲間がいる。俺にはお前だけなんてことはないよ」
「……そう、ですか。なら私だけを見てください。私だけを聞いてください。私だけを嗅いで、私だけ味わって、私だけを触れてください。他なんていらない。私だってあの人と日向さん以外はいらない!だから!!だからなんですよぉっ!!!」
花村の時のように、辺古山の時のように罪木も錯乱し始めた。俺の直感なんてあてにはならないが会話は出来なくなってもこれはいい傾向のはずだ。彼女の本音……その理由こそが今、俺が知りたいもの。非力な俺が彼女に勝とうと思えば方法は三つだけ……再びあの力を手に入れるか十六夜たちが勝つまで絶望に飲まれないかもしくは……罪木に希望を取り戻してもらうしかない。辺古山にはできた事なんだ。罪木にだってできないことはない筈なんだ。たとえ彼女が根っこから絶望を信奉していたとしても俺が知る彼女ならば立ち上がってくれる……
「罪木……ッ!?」
これは……黒い風?なんで罪木が?罪木の体からペストが溢れ出てくる?
「私だけを見てもらう、これは私のワガママ、私が悪い?いや、私は悪くない」
体から溢れた黒い風はその量をどんどんと増していく。あの時のようにペストの使った黒い風が彼女を包むのではなく、彼女から溢れだした黒い風が彼女を包んでいるのだ
「毒を持って毒を制す……これはよく悪に対して悪を用いて制すると言う意味で使われますが言葉の通りの意味でもあるんですよ。古くは梅毒の治療に水銀が使われた例もありますし今でも病院で出されるワクチンというなの薬剤は本質的にはウィルスと同じなんです。まぁかと言って実際医者が黒死病を用いるのかと言わればそれも違いますがここで大事なのは医者だって病原菌を使うということです」
「病原菌を使う?」
「毒の解毒材を作るには同種の毒が要ります。作るのは医者ではありませんが医学というのは様々な道に分岐するものでして……薬学だけでなく食や武術、一般的なスポーツでさえ医学に通ずるところがあります。私が今使っているのはそういった広い意味でのいわば超医学。それが私のギフトなんですよ」
……超医学。スポーツ選手の体の調整、それはスポーツにとって通らなければならない道であるし武術というのも元は永年益寿という最終目的があるものも多い。東洋を中心にそういった物が多くまた実際に今でも太極拳や武術的要素を含んだヨガまでもが健康法として残っている。食に至っては漢方などの薬膳が既に薬と言う名前だ。そういった多岐に渡る全てを彼女はギフトとして手に入れた
「この前の縫合とやらも、俺の傷どころか汚れまで消したのもそのギフトか?」
「基本的な治療はもちろん、清潔もが全て病院が管理することですから。私の力は必要とされるものすべてに強制的に押し付けることができるんです!傷があれば相手が拒否しても治します!その度に私の影響を受ける!……特に日向さんであればその影響は目に見えて現れるでしょうねぇ?」
……この間のタネがそれか。俺が弱体化したのは罪木の超医学ならぬ超医術を受けたせい。
「もっとも押し付けるまでもなく綺麗な人や健康な人には発動できないという条件がありますが……それは今度は病魔を操る事でフォロー出来るわけですよ。特に今はペストさんの影響下にいるおかげで通常物理的な作用を持たないはずのただの病原菌がこうして黒い風と言う形で具現化してくれるのでぇ……健康体な人はこうして人為的に不健康にしてしまえばいいのです、怪我がない人は人工的に怪我を作ってしまえばいいんですよぉ」
「……よく喋ってくれるな?」
「えぇ!言ったじゃないですかぁ、私は日向さんに私を知って欲しいんです、聞いて欲しい、味わって欲しい!ですからぁ……ちゃんと受け止めてくださいね?」
罪木が持ち上げた腕の先……迸る黒い風が鎌首もたげてこちらへと向く
幸いその尋常じゃなく発せられる嫌な感じのお陰で見なくとも軌道がわかる。汚れがついてもダメとのことなので転ぶような回避はできないが前もってわかるのであれば怖くはない、なんとか余裕をもってその黒き嵐を回避する
「あれ?あれあれあれぇ?なんでよけるんですか?なんで受けてくれないんですか?拒絶するんですか排斥するんですか?私のことは嫌いですか?絶望するのが嫌なんですか?」
「……あぁ、俺は絶望するわけにはいかない。仲間のためにも……だ」
ペストが通りさって砕かれた路上が舞い上がってくるのを更によけながら罪木の言葉にそう返す
「……日向さんはそんなこと言いません
「くだらない仲間なんて今はいませんし
「あの時みたいに
「だから日向さんはそんなこと言っちゃいけないし
「むしろ私を受け入れてくれなきゃいけないんです
「おかしいです
「ダメなんです
「なんで
「なんで
「なんで
「なんで
「なんで
「なんで
「なんで
「なんで
「なんで
「なんで
「なんで
「なんで
「なんで
「なんで
「なんで
「なんで
「な ん で な ん で す か ! !」
罪木が言葉を紡ぐ度にペストが吹き上げ積み上がり重なって天を突くかの様に立ち昇る
明らかにやり過ぎていた、これでは本音を聞くも何も無い……しまった
「落ち着け罪木!」
「ウルサイっ!!」
悲鳴を上げるような声で拒絶された
「日向さんの声で私を呼ぶな!島で言ってくれたんだ!私を仲間だって!私が仲間だって!!」
蘇るのは何度か罪木と二人で島で時間を過ごした時の記憶……罪木があの島を天国のようだと言ったあの次の会話……みんなが自分をいじめないのは関心が無いからだと言った彼女に俺は仲間だと……そういった。そして罪木は確かに俺に微笑んだのだ
『信じたい』
……そういって確かに笑ったのだ
「日向さんは私の味方だった!いじめないと言った!仲間だって言ってくれたんです!!」
「私はほかの仲間なんて知らない!日向さんの言うほかの仲間なんて私は知らない!私はあの人と日向さんだけなんです!!二人だけが私を受け入れてくれる!!これは二人のための力だ!だから喜んでもらえるように治療に加えて絶望を付加するようにした、そうなったんです!!それを!!!」
あのおどおどとした罪木が叫ぶ、肺の中のものが無くなって途切れ途切れになりながらもそれでも言葉を絶やさぬようにと
「今更否定するな、絶望にならないと受け入れられないのなら絶望になって
罪木の周りを覆い隠していたもはや瘴気のようなそれがフッと消え天より嫌な感じではなくもはや形となって現れた嫌なモノが俺目掛けて落ちてくる
「罪木ッ!!」
違う!俺はただ!!
「みんなで──────」
声が届いたかはわからない。おそらく届かなかったのだろうと思う。
なにせ俺の声はもはや俺にすら届かず、ただただ深い闇の底から残響するように発せられた「絶望しろ」という彼の者の声にかき消されたからだ
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
─────黒い影が蠢く
ただ少年を求めた少女より発せられ、希望を求める少年を飲み込んだそれはどちらの思惑とも外れるように少女が望んだ少年を消し、少年が望んだそれを潰して絶望として誕生した。だかそれも彼にとっては瑣末ごと
「ツマラナイ」
さぁ既に舞台の幕が上がった。後はそれを
日向くんは一週間なにしてたんでしょう。意味深に行方不明になって意味深に登場して意味もなく散っていきました。ネオニュー日向なんてなかったんや......