異世界より”超高校級”が参戦するようですよ!   作:ヤッサイモッサイ

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ちょいとお話があります。この度携帯を変えることになりました。アンドロイドからiPhoneへの変更なので今まで使っていた便利なキーボードに変わるアプリや執筆のためのアプリを探さなくてはなりません。大きさも変わるのでちょっと更新が遅れるかもしれません。
そして一番の問題……それはこのアカウントのパスワードを忘れたということです。
意地でも何とかしますが何とかならない場合は別アカウントで書き直しになるかもしれません。土曜日には多分変更が終わるのでそれまでは感想の返信、誤字修正が滞りなく進むと思います。できればお早めにしていただけると嬉しいです。誤字報告を早めにとか何様だって感じですが言葉が見つかりませんでしたのでこれで。

まぁ多分いろいろなんとかなると思います。あとアプリに関して、特に執筆に向いたアプリに関してアドバイスをくれると嬉しいです。長々とすいませんでした本文も今回は割と長めです、ではどうぞ


やがてうねりを上げた業火に洗われる

やがてうねりを上げた業火に洗われる

 

 

 

───質量、それは時にあらゆる能力を凌駕する武器だ。

ひどい喩えにはなるが仮に世界を破壊してしまうようなとても剣とは言えないドリルのような剣があったとしても世界すらも超える質量を持った剣と打ち合わせたら果たして破壊できるのだろうか?

例えばかつて自身と夢をともにした同士たちと共にかつて駆けた荒野を再現する超秘術を身に付けたとしてその軍勢を軽く覆うような規模の物体が上から落ちてきた時対処できるのか?

こればかりはいくら力をつけようが、いくら策を練ろうが、いくら人を集めようが意味が無い。それこそまんま数の暴力に近いだろう。言ってしまえば”質量の暴力”だ。大きい……それはそれだけで武器であり自然に身を任せ落下するだけであらゆるものを粉砕し圧殺する。

当たり前のことだ、当たり前のことだからこそ……落下してきた巨大な根にかの幽鬼は押し潰された──

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

カードから取り出されたのは金色の刀……と言ってもこの金色は特別な力があるとか言うわけではなくただの金箔だ。強い力を加えるとその金箔だって剥がれてしまう、所詮観賞用の刀に過ぎない。だがどんなものだって剣豪が持てばそれはどんな名刀にだって勝る。木の棒でも竹刀でも斬れたのならばより本来の形に近いこれで斬れないはずがない。

そういった俺の意識がまた内に眠る何かを刺激し体に力を与える。今ならば十六夜の真似事すらできそうな気分だ。

袈裟気味に軽くひと振りしてから再び目標を捉える。

炎を完璧に潰す形で切り倒そうと思えば切る場所も正確でなければならない。そういうことを考えるのは全体を俯瞰できるこの位置の方がいい、渦の大きさからギリギリな感じもするが問題はなさそうだ。

一度地面を強く蹴って一息に距離を詰める。顔を叩く風が内包する熱をそのままぶつけて拒絶するのを無理やり掻き分け見定めた地点へと到達する。ここまで来ると内部の会話まで聞こえてくるが……相当追い詰められているらしい。早く炎から出してやりたいがこのまま斬れば春日部ごと潰してしまうためその前に春日部の聴覚を信頼して声をかける事にする

 

「春日部耀の──お仕置きタイムだッ!!」

 

もはや声かけでも何でもない雄叫びと共に上から下へ真っ直ぐに刃を振り下ろすと、スーッと通った立ち筋から根を通る水分が溢れ、徐々にずれていく。それを上からさらに踏み込むような形で蹴ってやるともはや子気味よさすら遥か彼方に通り越して暴力的な音を持って根が折れた。そのまま少し回転気味に急速に落下を始めた根は炎を割る様にして地面へと接触、風圧でもって出火元の地面ごと炎をあちこちへと吹き飛ばした。

 

『ヤホホホ♪嫌な予感とは往々にして当たるものですねぇ……』

 

しかしその根はすら叩き割り飛び跳ねるように炎の塊が迫り弾ける。

 

『どうもジャック・オー・ランタンと申します』

「自己紹介ありがとよ、俺は日向創だ」

 

炎が割れて現れた幽鬼に合わせて刀の柄をカボチャを叩き割る勢いで叩き込み再び地面へと返すとそのまま所々が焼き焦げた根の上に着地する……それにしても手が痛い。ジャックの頭部を殴ったのはいいがなんで人外の強度というか南瓜外の硬度をしてるんだよ。

 

「創……!?」

「あぁ、さっきぶりだな春日部。とりあえず走ってくれ、なんか足止めできるかすら不安になってきた」

 

ゲームの勝利はサポーターではなくプレイヤー本人が行わなくてはならない。俺がゴールしても意味が無いんだ。

 

「……ありがとう!」

 

少し躊躇ったふうな間の後ダメージのせいか少しゆっくり目に駆け出した春日部へと再び炎が迫る。手に持つ刀を突き刺すように投げて炎を弾き炎の発生源と春日部の間に入るように立つ。

 

「……別に構わないんだけどなぁ、春日部のあれは割と病気だな」

『いえいえ、美しいと思いますよ?あなた方の友情も……というわけで提案なのですがお互いパートナーが心配でしょう?争いなどやめて──』

「純粋なる速度じゃ俺はお前に勝てない。能力もないし技術もない……唯一迫れるスペックを活用した上で一番勝率の高い戦法はこれだけだ」

 

いくら身体が軽くなったとはいえそれだけで眼前の幽鬼は打倒できるほど軽くない。

この世界に来て発揮できた才能だって今だ辺古山の剣道家のものだけ、本人やカムクラならばいざ知らず流石に俺じゃその才能があっても扱いきることが叶わないしむしろ危険だろう。

 

『ヤホホホ♪アーシャに大見得切ってしまった故なんとしてもあのお嬢さんを行かせるわけにもいかないのですが……それに──貴方は何かいけない。こんな事を思ったのは初めてですよ。迷い人を導く幽鬼が今迷い人に恐怖を抱いている、貴方は何者なのでしょう?』

「……白夜叉にも聞かれたっけな、それ。まぁ俺が何者かなんて俺が一番知りたいよ。希望なのか絶望なのか、俺なのか僕なのか、仲間なのか敵なのか、普通なのか天才なのか……全く持ってわからない、気持ち悪くて仕方が無い」

 

でも仲間のことを思い出す度に思う……そんなこととは関係無しに……そんなこととは関係なく俺は俺……日向創なんだ

 

「でもべつに迷ってなんかないさ。気になりはするけどそんなことで道を見失うほど芯がないわけじゃない。今までの経験は確かに俺の中に居着いている。勝手に見くびるなよ」

 

俺の言葉がそんなに面白かったのかそれともそんなこととはまた関係がないのかジャックはその笑い声を辺りへと響かせ続ける

 

『なるほど、そうですか。お若いというのになんとも歪で真っ直ぐなコトですね。このジャック、度肝を抜かれました……ですがそれとこれとは別、押し通らせてもらいましょう』

「好きにしてくれ。でも不死だからって油断してるなら俺は持っていくぞ?今の俺は食材と剣が通る相手なら割りと無敵だ」

『ヤホホホ、それはそれは……たのしみですねぇ……』

 

飛び散った炎も再生する根に潰され今は落下してきた巨大なそれに燃え移り残る数少ない炎のみが熱を持つこの場で俺達は相手の出方を伺う。

俺にしてみればずっとこのままというのが理想だが生憎とジャックはそこまで愚かではない。今は異世界人というこの世界でも特異な存在に戸惑っているだけで初手さえ決めてしまえば戦況は一気に動くことだろう。

 

『──ふむ、では失礼♪』

 

───動いた、初手は……炎か!

ジャックの持つランタンが振りかぶる様に持ち上げられ無造作に振るわれると共に炎が波のように溢れ流れてくる。無論その全てがただの炎ではない、鉄すら一瞬で蒸散させられるであろうまさに業火……人体が触れればより悲惨な未来が待つであろうそれに触れることは出来ない……だがまだこの規模であれば対処もできる。なにせ炎というのは()()()()()()()恐怖の対象ではなく道具やパートナーのそれに近い。一流の料理人とは……

 

『炎すら操りますか……』

 

再び掲げたカードより取り出したのは調理器具でも食器でもなんでもないただのエプロン。しかしこのエプロンは超高校級とも呼ばれる料理人がつけていたものだ。それがこの程度に飲まれる訳が無い。炎の波がエプロンを避けるように割れて左右へと流れていく。

 

『先程の規模ならば操れない……様ですがよもやあの規模になるまで黙って見ているわけがありませんね』

「生憎と俺は遠距離の攻撃手段が物を投げるくらいしかなくてな。いちいち相手に合わせてよけていたらあんたそのまま春日部を追いかける気だろ?」

『なるほど、避けては通れないと……厳しいですね、時間をかけてはられないのですが……』

 

思案もそのままに再び周囲の風が動く今度現れたのは3つの炎の玉……炎が俺に効かないと悟った以上無駄な攻撃をするとは思えない。数で攻めるつもりなのかはたまた……目くらましか。ジャックは登場するとき炎に包まれて現れた。つまり──今打ち出された3つの玉にジャックが隠れている。

決断を下すが否やあちこちへと打ち出された玉の内の一つ、一番近いものに駆け出したエプロンでもって他の人へと弾く。そしてそのまま残った一つへと飛び上がりエプロンを巻いた拳でもって殴りつけた……感覚的には当たりのようだ。やはり南瓜外の硬度……異世界のカボチャはどうなっているんだが。

 

『ヤホホホ、まさか全て処理をするとは。私本体を当てたのは嗅覚のおかげですか?』

「あぁ、炎の玉を無視してまた炎に包まれたら手に負えないしな」

『私の炎を使って相殺するとは思いもよりませんでした。それにしても弱りましたね、となると純粋なる身体能力頼みになりますが……突破はできなさそうです』

 

……まったく困った顔をしていないというのが異常に気になる

 

「……なんか隠してたりするんじゃないのか?あんたウィルオウィスプの最高傑作なんだろ?」

『まぁ最高傑作と言われると何かこそばゆいものですが確かにウィルオウィスプのコミュニティリーダーの傑作と言う意味ではその通りです、ですからもちろん全力でと言う意味であればこのステージごとどうにかしてしまえないこともないのですが……ギフトゲームとは沢山の子供も楽しみにして見るエンターテイメントのようなもの。特にこの大会はそうでしょう?』

「子供大好きジャック・オー・ランタンはそんな無粋な真似出来ませんってか?」

『まさにそのとおりにございます、ヤホホホ♪』

 

……なるほど、どおりで俺でも何とか渡り合えていたわけか

 

『まぁそれにお嬢さんの体力を奪っておいたかいがありました』

「……なに?」

『たった今アーシャがゴールを見つけたようですよ。まもなくこのゲームは終了します。あのお嬢さんも頑張ったようですが流石にあの体であの差を埋めるのは無理がありますよ、仲間に頼らないお嬢さんもお嬢さんですが貴方も貴方で仲間に高いレベルで事を望み過ぎですねぇ』

 

俺が仲間に期待しすぎだと……?いや、でも俺はそんなこと……。

 

『さぞかし優秀で良き仲間に囲まれていたのでしょうね……ですがそれは今の仲間を見ない理由にはなりません。友を見て差し上げなさい。目を逸らさず、決めつけず、誰かを被せたりせずに”仲間”を見ることですね。友情というのは美しいものですが美しくあろうとする必要は無いのですよ……泥臭かろうと美しく見えるからこそ友情というのは美しいと言われるのです』

 

友を見る……そうなのか?久遠の言葉を俺は聞いてなかったと?前は確かに仲間と戦うことを決めた、でもそれはみんなが希望だったからなのか?そんな俺じゃない誰かがつけた名前を通して仲間を見ていたのか?

 

「……ならほど、確かに迷い人だな」

『ヤホホホ♪人とは迷うもの、正確に言えば私が導くのは迷い人ではなく人そのものなのですよ。少年よ、君もあの少女もまだまだ上が望める……迷う人にはなっても人として迷う事はないよう頑張りなさい』

 

はぁ、結局今回も……

 

「茶番じゃないか」

『ヤホホホ、エンターテイメントですから♪』

 

そう言ったジャックの言葉を裏付けるかのように一瞬の静寂のあと地面が揺れる程の歓声が天から聞こえてくる。どうやら本当に決着がついてしまったらしく、黒ウサギのアーシャの勝利を告げる声と共に世界が逆転していく。土の匂いもそれらが焼ける匂いもどんどんと遠くなり足が再び石畳の硬い感触を伝えてくる。

突然生じた気配に横を見れば春日部が満身創痍と言った様子で辛うじて立っていた。

あれからもステージを駆け回ったのだろう。

 

「大丈夫か、春日部?」

 

身長差から少し屈んで肩を貸してやりながら春日部の様子を見る。

自分でも春日部が限界なことを分かっていながらなぜ戦わせたのか不思議でならない。こうなることは消耗具合を見ればわかったはずなのだ……いや、見ていなかったから分からなかったのか。

 

「う、うん。大丈夫……だよ?」

「無理するなよ、いくら体が丈夫とはいえ休息は必要だろ?」

 

何故か戸惑ったような春日部の反応に少し不躾ながら視線をあちこちにやって怪我の有無を調べるが特に外傷はなさそうだ……となるとこの反応は何なのか?

 

『あぁやはり美しいですね。少年、そしてお嬢さん……1つお尋ねしても?』

「なんだよ、まだ何かあるのか?」

『僭越ながらどうもそれぞれ聞きたいこと、言いたいことが残ってまして……まずはお嬢さんから。』

 

そう言ってジャックは視線を下げて春日部へと合わせる

 

『見事なゲームメイクでした。開始直後にパートナーが吹き飛ばされる不測の事態にもよく対処しました……と言いたいところなのですがお嬢さんの場合は少し違いますね。お嬢さんのあの時のためらいはゲームメイクの事ではなくこの少年の安否についてだったように見えます』

「……同じコミュニティの仲間を心配した。何もおかしくない」

『えぇ、もちろん。ヤホホホ、とても美しいコトですねぇ、しかし問題はゲームに関して自分の中で何も問題にならなかったことです。お嬢さんはなぜ仲間に頼らないのでしょう?反応を見るに頼りにならない……そう思ってるわけでもないでしょうに。お嬢さんの考えまでは私には分かりませんが助け合わない仲間よりも助け合う仲間の方がより美しい……それは私にもわかるのですよ』

 

そう言って何度目かと言うふうにジャックは笑い声を上げる。

 

『少年に関してはもう特にいう事もない……予定だったのですがやはり老婆心から一つだけ……力強い意志の秘められた瞳……ですがなんともいい意味でその意志に精神が追いついていないようにも見えます。逆になぜそこまで強力な意志を持つに至ったのか全くわからないほどに精神と意志とのバランスが取れていません。だからこそその素晴らしい意志が君を縛り強迫観念のようになってしまっているのが残念でならないのですよ。何やら厄介なものも背負っているみたいですし早いところコントロールの術を見つけた方が良いと思いますよ』

 

……白夜叉といいこのカボチャといい箱庭の強い奴はみんなもれなく読心のギフトでも持ってるのか?

 

「肝に銘じとくよ、守らないと説教好きのカボチャが説教の押し売りに来るってな」

「……同上」

『ヤホホホ、それは良かった!さて、アーシャも何か言いたいことがあるのでしょう?』

 

そう言ってジャックがその巨体をスーッと横へと退かすと対照的に小さいアーシャが一切変わらぬ姿で現れた。

俺達は二人揃って割とボロボロなのだが何ともこれが実力の差と言う奴か。

 

「おい、オマエ!名前はなんていうの?出身外門は!?」

 

そんな状態でかつ相変わらずのしかめっ面で口を開くものだからまた何か嘲り混じりの言葉が飛んでくるのかと思って見れば出てきたのは何とも不器用な質問ばかり……もちろん返す春日部も

 

「……最初の紹介にあった通りだけど」

 

……こんな調子だ。

案の定ムッとしたアーシャに少しフォローをしてやろうと思う。あまり好ましい態度ではなかったが最後にはこうして歩み寄ってきてくれたのだ、無下にするのは少し心痛い

 

「こいつは春日部耀、出身は知らん。動物好きで友達が欲しい年頃の負けず嫌いその3だよ」

「創……!?」

「そうつんけんするなよ。ここには友達を作りに来たんだろ?」

 

心なしか肩に掛かる負担が増えた気がするがまぁ気のせいだろう。

一方アーシャはというと俺の言葉でも納得がいかなかったのか、それともその中身にははじめから興味がなかったのか、あるいは俺のことは未だに眼中にないのかもしれないがとにかく未だにしかめっ面を崩さないまま再び口を開き憎まれ口とさらっといれられた自己紹介と次こそは負けない的な宣戦布告をしてドスドスと去っていった。勝者が何よりも勝者らしくないというのはどういう事なのだろうか、不思議なもんだ。

 

『ヤホホホ、貴方風の言い方をすれば彼女は負けず嫌いその4と言ったところでしょうか?あれでも同年代の子に負けたことがないから悔しいのでしょう。きっとさっきの勝負も自分の力じゃないから負けだ……っと考えているのでしょう』

 

……ふーん、そんなものか──いやいやそれって

 

「「それこそジャックが言った協調の勝利じゃ……」」

 

俺たちの言葉にカボチャのお化けは一際大きな声で笑い空洞の頭を叩いてはこぎみの良い音を響かせて鳴いたのだった

 

『ヤホホホ!いや全くその通り!』

 

 

 

 

──そう、試合後の和やかな談笑に励む俺たちにしかし最悪たちは待つ事なく歩を進める。

 

「これ……は?」

 

それはまるでカラスが飛び立つ後に残す数枚の羽毛のように空から落ちてきた舞落ちる黒い紙に絶望の調べ……示すところは魔王のギフトゲーム。

 

「ギアスロール……魔王の……主催者権限の用いられたギアスロール!?」

 

笛を吹く道化師の封蝋を外して中身を確認する

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

『ギフトゲーム名”The PIED PIPER of HAMERIN”

 

・プレイヤー一覧 現時点で三九九九九九九外門・四○○○○○○外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者、主催者の全コミュニティ

 

・プレイヤー側ホスト指定ゲームマスター 太陽の運行者・星霊 白夜叉

 

・ホストマスター側勝利条件 全プレイヤーの屈服、及び殺害

 

・プレイヤー側 勝利条件

一、ゲームマスターを打倒

二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ

 

 

宣誓、上記を尊重し誇りと御旗とホストマスターの名の下ギフトゲームを開催します ”グリムグリモワール・ハーメルン”印』

 

△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

 

 

……グリムグリモワール・ハーメルン、魔王のコミュニティか。

 

『魔王のギフトゲーム……なぜ──いえ、今はそれどころではありませんか。お二人とも戦闘は?』

「俺は問題ない。むしろ絶好調なぐらいだが……春日部はきつそうだな」

「……動けるぐらいには回復した。全開には遠いけど」

 

そう言うので肩に回していた手を抜いてやると本当にある程度回復はしたようだ、流石は動物友達パワーか。

 

「ジャックさん!」

『アーシャ、無事でよかった。状況はわかりますね?』

 

目の前で確認を始めた二人から一旦視線を外して仲間の控えるバルコニーへと合わせる……途端にバルコニーから爆発したかの勢いで突風が吹き荒れ何人かの人影がこちらへと飛ばされてきた。空中で体勢を立て直しもう一人の人影までキャッチするその身体能力は……

 

「十六夜か!」

「よう、元気そうで何よりだぜ」

「皆様ご無事ですか!?」

 

十六夜、久遠に黒ウサギ、さらには舞台袖よりジンとレティシア……続々とノーネームのメンバーが舞台へと集まってきた

 

「サラマンドラの連中は客席まで飛ばされたみたいだな……」

「白夜叉は?」

「上で捕まってるぜ。気味の悪い黒い風に覆われてやがった。出て来れるのかはわからん」

 

……なんてこった。やっぱり封じる手段は持ってきてたか。

 

「……魔王が現れたってことでいいんだな?」

「はい」

 

ひと通り情報の整理が済んだであろう十六夜が黒ウサギに問いかけ黒ウサギもまたそれに肯定で返す。

つまり上でこっちを見下ろしてるあの集団は……

 

「あれだけの保険のすべてを突破して今ここにきたってことか?グリムグリモワール・ハーメルンってコミュニティは」

「そのようです。黒ウサギに誤魔化しは効きませんから、彼の魔王はルールに則ってあそこに立っているようです」

 

……とんでもないな。方法に全く見当がつかない。知識不足なのか単に裏をかく方法でもあったのか……なんにせよ最悪な状況だ

 

「十六夜、笑ってないで行動するぞ。白夜叉もそうだけど案の定さらりとここら一帯の全員が巻き込まれたのが最悪だ」

「だな。それにサラマンドラの連中も気になる。こっからは分担作業だ」

「では黒ウサギがサンドラ様達を探しに行きます。十六夜さんと日向さんは申し訳ありませんがレティシア様と魔王の足止めを、ジン坊ちゃん達は白夜叉をお願いします!」

 

……申し訳ないもんか、十六夜の顔を見ろよ。すっごいウキウキしてるっての──というかそうじゃなくて

 

「いや俺はジンの方に行かせてもらうよ」

「で、でもいくらなんでも十六夜さん達だけにここを任せるわけには!」

「むしろジンと久遠、未だに満身創痍の春日部だけで動かす方が危険だ。あそこにいるので全員かがわからないうちは特にな」

 

……それにあのバルコニーを覆う黒い風、あれは嫌な感じがする。

 

『人手が足りないというのであれば僭越ながらカボチャの手を貸させて頂きましょう。アーシャも、いいですね?』

「う、うん。頑張る」

 

事前の情報もなく巻き込まれたであろうウィルオウィスプの二人まで手伝いをかってでてくれた

 

「……わかりました。お二人は私と一緒にサンドラ様を探して下さい。ジャック様は参加資格を持たれないのでこっちで指示を仰ぐしかありません」

『承知していますよ』

 

直後それぞれ合わせた視線を合図に目的に向かって駆け出す。

 

「久遠、ジンも掴まれ!」

「え、ちょっ!?」

 

白夜叉のところに向かう四人の中で身体能力で劣る二人を担ぎ春日部と共にバルコニーへと駆け上がる。

何やら早速後ろで始まったドンパチの余波に気をつけながら一息に登りきると一気に入口へと飛び上がる。

 

「……ついたぞ」

「……ついたぞ……っじゃないわよ!もう少し丁寧に──」

「飛鳥、今はそんな余裕ない」

「……わかってるわよ、もう!」

 

……すいません。

 

「ジンも大丈夫か?」

「えぇ、それよりもこれは?」

「黒い風か……バルコニーには入れそうにないな」

 

久遠たちを吹き飛ばした黒い風がここでも行く手を阻む。

先程までのフラストレーションも溜まっていたのか久遠がキレて扉へも叫び出した

 

「白夜叉!中の状況はどうなっているの!?」

「わからん!だが行動が制限されている!ギアスロールには何かかいておらんか!?」

 

言われて拾ったギアスロールを広げてみれば確かに先程までになかった文面が追加されていた

 

「ゲームマスターの参戦条件がクリアされていない、参加したければクリアしろ……だって?」

「参戦条件は!?他には何もないのか!?」

「何もないな、書いてあるのはこれだけだ!」

 

……参戦条件がクリアされていない……でもそれって参戦条件がクリアされてしまえば魔王にとってはゲームオーバーってことだ。簡単にクリアできるものではない……もしくはたどり着けないほどに──

 

「小僧、聞いておるのか!?」

「え……あ、あぁ。聞いてる!」

 

悪い癖か、どうしても思考に耽ってしまう。

 

「良いか、今から伝えることを一言一句違えずに黒ウサギへと伝えるのだ。おんしらの不手際はそのまま参加者の死亡へとつながると知れ!」

「わかった!内容は!?」

 

今は大局を優先すべきだ。何をするにも圧倒的不利な現状からでは行動にも移せない、まずは白夜叉の指示に従おう

 

「第一にこのゲームはルール作成段階で故意に説明の不備を起こしている可能性がある!魔王がたまに使う手だ、最悪このゲームにはクリア方法が存在しない場合がある!」

「存在しない……っ!?」

 

また面倒なことになってきた。外の戦闘音もどんどん苛烈になっていくし……

 

「第二にこの魔王は新興のコミュニティの可能性が高い!!」

「わ、わかったわ!」

「そして第三に、ワシを封印した方法は恐らく──」

「はぁい、そこまでぇ♡」

 

扉の向こうより甘ったるい声が聞こえてきた。いやに耳につくというわけでもないがわざとらしくそう聞かせようとして作られた声だけに何とも印象に残る

 

「あっらー?誰と話していたの?」

「久遠、扉から離れろ!」

 

声の主がこちらへと意識を向けたのを悟りジンを引っ張りこんだが前に出ている久遠までは下げられ無かった。

扉を吹き飛ばしかねない勢いで突き破ってきたのは赤い蜥蜴……見た目的にいえばまんまそれは俺たちの想像するようなサラマンダーであり決して敵ではないはずの存在が三匹、そして声の主であろう背の高い女性が一人。手に持つのは銀の棒……いや表面の凹凸を見るに笛、フルートか。

 

「ん?人間かぁ、てっきりサラマンドラの頭首だと思ってたのに……まぁいいわ」

 

そう言って手に持つフルートを指揮棒かなにかのようにこちらに向けると再びサラマンダーが突進の構えを見せる

 

「全員下がれ!」

 

現状戦闘能力が一番高いのは俺だ。流石に体格差があろうとも全開の今サラマンダーに遅れを取ることはない……ただ攻めきることもできない。

サラマンダーはおそらく操られている。だからなるべく傷付けたくはないし殺傷なんてもっての外だが……ここに来て上昇した身体能力があだとなった。手加減ができないのだ。よりいうならば細かい調整が効かない故にサラマンダーを傷つけないようにするのが手一杯になってしまっている。

 

「創っ!」

 

春日部の俺を呼ぶ声に思わず振り返ると何やら手をこちらに向けて……ってなにか風の流れがおかしい──ッ!!

多少無理な体勢なのもいとわず目一杯足に力を入れてその場から離れる直後先程まで俺がいた空間を風の顎が撫で一直線に吹き飛ばしていく。もちろんサラマンダー達も風に巻き込まれて吹き飛ばされた……のはいいんだけど掛け声だけでチームプレイができるほど実践積んでないからできればもう一声欲しかったというか

 

「創だってさっきの試合の時意味不明なことを言いながら木を落としてきた」

 

……はい、すいませんでした。

 

「……グリフォンの力かしら、人間が持ってるとは珍しいわね。顔も整っているし……よし決めたわ。あなた気に入ったから私の駒にしてあげる」

「……春日部、久遠とジンを連れて黒ウサギの元へ」

「う、うん───」

「させないわよ」

 

女がフルートに口をつけると笛より魔性の音が奏でられる……そうかこれがサラマンダーを操っていたギフト!

答えに行き着くと同時に隣で久遠を担ごうとしていた春日部が急に倒れた

 

「春日部さん!?」

「そうか、耳がいいから俺達の誰よりも効果がでかいんだ」

「な、ならなんで日向くんは!?」

「わからない!でもとにかく春日部をなんとかしないと……」

「……いいから……逃げて」

 

そういう声もどこかか細く限界なのか体もガクガクと震えている

 

「バカ言わないで!!ジン君!」

「は、はい!?」

「先に謝っておくわ、ごめんなさい」

 

……何をする気なのかな久遠さん?

 

「コミュニティのリーダーとして春日部さんを連れて黒ウサギの元へ行きなさい!」

 

……久遠が口にしたのはただの言葉ではない。久遠から出された命令は……ギフトを持って打ちだされた威光ははそのまま形となって権限する。

現にジンはなんの疑問も抱かぬままに自身の体よりも大きい春日部を抱えてすごい速度で消えていく。

 

「……軽蔑したかしら?」

「別に?ただ次は絶対お前が後ろの笛女に目をつけられただろうなって」

「お前じゃないわ、飛鳥よ、日向くん?」

「私も笛女とは失礼ね。まぁ、当たってるけど?」

 

今の状況から久遠の能力を暴けるのはよほどの切れ者だろう。なにせ相手にしてみればジンが俺たちを置いていけるほど合理的な人間でない知らないのだから。だが興味を引くことにはなる。特に目の前から興味のあったものが消えたのだ、その次のターゲットは同じように容姿に優れ、かつ全てを背負い込もうとしている久遠に行くに決まってる。

 

「坊やは消えてもいいのよ?素体は良さそうだけど趣味じゃないし」

「なんだ買い物気分か?残念だけど相手してやれるほど暇でもないんだ遊び気分なら帰れ」

「だから暇がないのなら消えていいってば……でもそうねぇ」

 

そう言って再び笛を口へと近づかせる。先程よりも強力な音色でも流すつもりなのか……なんにせよ目線からして今度の狙いは俺か

 

「お姫様を運ぶのに騎士様の役目ぐらいはやらせてあげてもよくってよ?」

「結構よ!全員───そこを動くなッ!!」

 

しかし女が音色を奏でるよりも先に久遠がその威光を発揮した。

対象は口にしたとおり全員……俺と久遠以外の全員が例外無くガチンッと動きを止められる

久遠はギフトカードより銀十字の剣を、俺はそのまま素手で持って女へと迫るがその間にさらに人影が割って入る。

 

「な……っ!」

 

操られている人間ならば殴るわけにもいかない。打ち出した拳を止め体も急停止させる。

拳をたどって割って入った存在へと視線を向けるとどうやら乱入してきたのは女性のようだった。

 

「あはっ♡」

 

長い、しかし不揃いな髪に体の所々にラインを強調するように巻かれた包帯、清潔感の溢れるエプロン付きの衣服しかしそれらのチグハグな特徴のすべてを飲み込むかのように主張をする、見ているだけで頭がグチャグチャに掻き混ぜられているように錯覚させられる澱んだ瞳。

 

「お久しぶりですぅ、お迎えに上がりましたよ日向さぁん」

 

向けられるのは害意でも敵意でも殺意でも悪意でもなんでもないどこまでも純粋でおぞましい好意。あの日あの時目の前の彼女が死ぬその時まで盲愛していた彼女に向けるそれと同じものが今度は自分へと向けられている。

殺したのは俺なのに、俺は彼女を拒絶したにも関わらず目の前で少女は俺へと笑う

 

「来るのが遅いのよ」

「黙れ豚」

 

仲間であろう笛吹女の言葉にはぎゃくに絶対零度の温度で返す。その様子はやはりかつての彼女とは違う。まるで違ってしまっている。

 

「だ、誰なのひなたくん。知り合い?」

 

持っていた剣すら落として後退りしながらそれでも気丈に久遠が俺へと問う

 

「──罪木蜜柑、俺の世界では超高校級の保健委員……もとい超高校級の絶望って呼ばれてたよ」

 

かつての仲間……否、現在の仲間でありながら俺たちの中で一、二を争う狂気を見せた少女。俺はあのメンバーの中では罪木に近いほうだと思っているがそれでも今は好意を向けることができない……だというのにそれでも超高校級の絶望こと罪木蜜柑は──

 

「えへへへ、何ですか日向さぁん?」

 

 

───笑っていた

 




一気に書いたので肝心の後半集中力切れました。ラノベを見て携帯で書いてって辛い。しかも電子書籍で携帯の中に入ってるからページの切替辛い。
さらにいえば書き終わったのが23時38分……予約投稿まで30分切ってる辛い。


後半不自然なところあったらすいません言ってくだされば後日直します。
とにかく前書きと本文で体力使い果たしていうこと忘れましたということでスイマセンがまた今度では

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