異世界より”超高校級”が参戦するようですよ!   作:ヤッサイモッサイ

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来週などと言っておきながらすっかり執筆を忘れて友人と遊びながら何とか一日で書き上げました。タイトルは何のひねりもないです。ついでに小説説明文の「ダイナミック着水」が友達のツボだったことを何故か今日になって力説されましたよくわからん。

何にせよまだまだペスト編は続きます。ついでに本屋に行って原作買おうとしたら3〜7まで綺麗に抜けていて読みたくても読めなかったという。やばいな。探さなければ。
とりあえず時間やばいので前書きもこれくらいにしておきます、たぶんめちゃくちゃな前書きになっていると思いますがお気になさらないでください


燻りはやがて火事とならん

燻りはやがて火事と成らん

 

 

 

サラマンドラを交えた事情説明の後、俺たちはサウザンドアイズの移動店舗へと帰ってきていた。相変わらず太っ腹な事に白夜叉は俺たちをここに泊めてくれるらしい。

 

「それにしたって久遠のあの姿には驚かされたがな」

「ネズミに噛まれたらしいぞ。なんかちみっこいのも連れてたし面白くなってきたな」

 

どこがだよ……まったく。魔王の話にそこまでの食いつきを見せなかったから大人しくなったのかと期待をしていたらこれだ。

白夜叉、黒ウサギに久遠と春日部が風呂に入っている間にこうして俺たち男衆三人は毒舌の女性店員さんと共に歓談へと勤しんでいた

 

「ところでこの店、どうやって移動してきたんだ?」

 

十六夜が問うたのは最もな質問でジンを含むオレ達全員の疑問だった。もっともそれをふられた店員さんは酷く嫌そうに眉を寄らせながら口を開く

 

「別に移動してきたわけではありません、”境界門(アストラルゲート)”と同じ原理だといえばわかりますか?」

「まったく」

「さっぱり」

「……ひどく簡単に言えば初めから全ての入口が一つの出口に繋がっている、そういうことです」

 

俺らの答えに溜息をつきながらそう補足を加えてくれた。

 

「あー、つまりなんだ。あの店は支店を兼ねた本店……てことか?」

「違います、この店は間違いなく支店なんですよ。つまり私達の担当している支店はここ外周部……言ってしまえばサウザンドアイズ外周部支店ってところです」

「なるほどな。七桁、六桁、五桁とそれぞれの階層に支店があってその階層のあちこちに入口があるわけか。随分便利なんだな」

「ど〇でもド──」

「十六夜、それ以上はマジでやめろ」

 

それにしても便利な仕組みだ。一つの建物でもって瞬時に様々な場所で同条件で商談、取引ができるっていうのは正直革命的だ。人員も商売道具も土地も気にすることはないのだからどれだけ販売効率が上がることか……

 

「ちなみに本店の入口は一つしかありませんしここは過去に閉店した土地です故店舗と私室部をわけておりますので正面入口は開きません、悪しからず」

「マジで何でもありだな」

 

異世界ってのは便利なんだな……かと思えば車ひとつないってのはチグハグだが

 

「あら、そんなところで歓談中?」

 

そうやって話していたところに声を投げてきたのは浴衣から覗く首元の上気した肌がどこか官能的な久遠達だ。

 

「……いい眺めだな、日向、おチビ様」

「……頼むから俺に振らないでくれ」

「首元から覗くまだ露気の残る肌の色合いと白い浴衣のなすコントラスト、膨らみと帯が意識させるラインもどこか体からほとばしる熱量で緩くなり薄着ながらも様々な想像を掻き立てるそれぞれが持つシルエット!極めつけは肌同様消えきっていない水気が髪から滴ることによってそのラインをなぞる様に──」

 

十六夜の熱弁に思わず視線を逸らしたところでおそらく黒ウサギがもつハリセンの音が止まらぬ言葉の弾幕を根こそぎ吹き飛ばす。

十六夜の丁寧な説明のせいで気まずさの余り逸らした視線を戻せば案の定先程よりも全体的に赤みを増した女性陣が「変態しかいないのこのコミュニティは!?」……すいませんでした。

ただ久遠までそのお手製のハリセンを持っていたのは予想外です

 

「白夜叉様も十六夜さんもみんなお馬鹿様です!」

「ふ、二人とも落ち着け」

 

恥ずかしさ故か憤る二人をなだめるようにレティシアが声をかけるがどうにも効果は今ひとつだ、というか白夜叉も同じことをやっていたのか……俺もなんか嫌になってきた。

抑えに回るレティシアとは対称に早速三毛猫を抱きかかえてはボーッと宙を見つめだす春日部に十六夜と共にケラケラと笑う白夜叉。そんな様子を見て頭を抑えるジンに同情したように肩に手を置き何やら励ましの言葉をかけている店員さん……いっそのこと今魔王とやらの襲撃が来ればこのふざけた空気も状況とともに吹っ飛ぶのだろうか?

問題児しかいないこの場に昼間の試合のサポート以上の疲労を覚える。あっていいのかそんなこと?……しまいには握手をしだした十六夜と白夜叉を見て俺達三人は肩を落としたのだった

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「さて……そろそろ本題に入ってもらおうか」

 

その後なんとか沈静化した場をそのまま会場として魔王についての話の続きを促す。

その際に店員さんとレティシアがどこかに消えていたがまぁそれはいいだろう

 

「それでは第一回黒ウサギの衣装をエロ可愛くする会議を──」

「始めません!なんですかそれ!?」

「いや、始めます!!」

 

……それはいいとして今はこいつらをどうにかしてくれ。

 

「……始めてくれてもいいんだがそれ最後にしてくれるか?」

「む、そうじゃな。メインは最後というのか」

「わかってんなー、日向。よし、日向の案を採用してその話は最後だ」

 

なんでそうなる……

 

「日向くん、あなた……」

「……さいてー」

 

なんでそうなった!!

 

「いいからさっさと始めろ!!」

「そうかっかとするでない。言われなくても始めるわ……っとその前に黒ウサギに一つ頼みたいことがあるのだがの?」

「え、はい。なんでしょう?」

「明日から始まる決勝の審判……あれを黒ウサギに頼みたい」

 

あぁ、そう言えば黒ウサギは審判としての資格みたいなものがあるんだったか?それにしても工程が半分終わった今日、というか前日になっていきなり審判の依頼ってのはどうなんだ?

 

「随分と唐突な話なんだな、そんな簡単に決めていいことなのか?」

「いや、もちろん本来ならば前もって頼んでおくべき事だ。だが今回の事は少し予定外での……おんしら街で暴れまわったじゃろう?おかげで月の兎が来ていると噂になっていての。ここまで期待が高まってしまえば出さぬわけにもいかぬでの、黒ウサギには正式に審判・進行役を依頼させて欲しい。別途に報酬もだそう」

 

あー……黒ウサギってそう言えばすごい珍しい種族なんだったか?そんなにすごいのか。

 

「わかりました、明日の審判・進行はこの黒ウサギが承らせて頂きます」

 

その黒ウサギの承諾を革切りに再び始まる黒ウサギの弄りを横目に俺は一人思考に耽る。

何せこれから対峙するのは魔王そのもの……白夜叉が抑え込まれる所なんて想像が難しいがそれが可能な戦力が来るのは間違いないのだろう。だがそれはどんな戦力だ?純粋な力か、はたまた何らかの特殊な力なのか……力で白夜叉に勝るだけの魔王の素性が分からないと言うことはないだろう……今回程度のこと、といえば少し失礼になるが箱庭の長い歴史の中でずっと潜伏してきた箱庭最強クラスが一部地域の頭の交代に襲撃をかけてくる意味がわからない。かと言ってある日突然最強クラスの存在が生まれたなんてことも想像できないしそうなれば力とは別に何か白夜叉が行動に出れない要素を持っているということになるのだろう。それが純粋に物理的なものなのか立場的なものなのか……ひょっとすれば弱みなんて物もあるのかもしれない。だが何にしたってそんななにかを持つ相手にどう戦えばいいのか?

 

 

……わからない。あらゆる点でこちらに不利なことが多過ぎる。楽観視もできない、対処もできない、意味不明理解不能。現状人間離れし出している俺の頭でわからないならもう俺にできることはないようにも思える。ただ一つ言えることがあるのならそれは───”いやに静かだ”

 

「これおんし、聞いておるのか?」

「へ?」

 

白夜叉の声に顔を上げれば既に全員真剣な顔つきへと戻っていた。どうにも集中しすぎて気付かなかったらしい。

 

「あぁ悪い、なんの話なんだ?」

「春日部さんの明日の対戦相手、ラッテンフェンガーというコミュニティの話よ」

「正式にいえば話をしてるのはハーメルンの笛吹きだけどな」

 

……ラッテンフェンガー?

 

「対戦相手……ってたしかウィルオウィスプとラッテンフェンガーだったか?」

「そう言えばアナタは春日部さんのサポーターなんですって?ちゃんと聞いておきなさい、まったく」

「……注意します」

 

そう、ウィルオウィスプは何となくわかるがラッテンフェンガー……俺はこれを知らない。

 

「それで、ラッテンフェンガーってなんなんだ?」

「この世界にかつて君臨した悪魔の魔導書のコミュニティ……その下部に属していたコミュニティの名前が”ハーメルンの笛吹き”。ラッテンフェンガーとの繋がりは単純明快、ラッテンフェンガーそのものがドイツ語でハーメルンの笛吹きを指す隠語になってるのさ」

 

ラッテンフェンガー……ドイツ語か。確かに希望ヶ峰に入るために勉強を続けてきたがドイツ語などは触りだけに留まっていた。

 

「つまり今度襲撃をかけてくる魔王っていうのはその魔導書のコミュニティの奴らなのか?」

「いや、”幻想魔道書郡”は既に滅びたコミュニティだ。残党の可能性こそあれど魔王と呼ばれるほどの力はもうない筈なのじゃが……さて、なんなのかのぅ?」

「ハーメルンの笛吹き……確か童話だったな」

「グリム童話だ。元となった碑文があってそれにはこう書かれていた、『一二八四年、ヨハネとパウロの日 六月二六日 あらゆる色で着飾った笛吹き男に一三○人の子供達が誘い出され、丘の近くの処刑場で姿を消した』──ここで出てくる笛吹き男がハーメルンの笛吹き、つまりはラッテンフェンガーだ」

 

ラッテンフェンガー……たしかにハーメルンの笛吹きと結び付くといえばそうなんだが話を聞く限りは魔書の悪魔とのつながりが見えない。

 

「何にせよ奴らも”主催者権限”を持ち込むことができない以上残党という線が濃厚だがの」

「はぁ?何だそれ、聞いてねぇぞ俺たち」

「はて、言ってなかったかの?今回の魔王襲撃、予知できていて無防備に待ち構える必要もあるまい。事前にワシの主催者権限を用いて参加ルールに条件を入れておいた。簡単に言えば勝手に大規模なギフトゲームを開くこと、主催者権限の侵入禁止、主催者権限の発動禁止、参加者以外の侵入禁止じゃ」

 

参加者であればルールを守らねばならず、参加者でなければもちろん参加はできない……なるほど確かに予防線は張っておくべきだ。だがこれだけ張っていてなお侵入されたとしたら……根本的にどうしようもないな。白夜叉という切り札に加えてルールまで乗り越えて来たのならば打倒の方法は───ん?……なにか、おかしい。なにがおかしい……おかしくはない。白夜叉の手によって守りは万全で──()()()()()()()()()……か。

 

仮に、もし仮にだが相手が白夜叉を封じる、もしくは正面から打倒する策を秘めていた場合。無理してそれを行うメリットはあるのだろうか?期間を誕生祭に定めたのは誕生祭が特別な日だからということもあるだろうが階層支配者の就任に不満があるというだけなのならば白夜叉がいない祭典後の方が余計な力を割かずに済むように思える。だとすればなんで魔王は敢えて困難な道を進むのか……目的は階層支配者の地位ではない?白夜叉がいる今だからこそ襲撃をかける価値がある?最強の階層支配者の名か……あるいは白夜叉そのものか。普段は手を出せない位置にいる白夜叉が祭典故に出てくるから狙ったとしたのなら、襲撃者は白夜叉を打倒するほどの力を持っているわけではないという可能性が濃厚だ。条件もなくそれほどの戦力があるのであれば祭典でなくとも正面から戦闘を仕掛ければいいのだから。

つまり襲撃者は力の弱まった魔王、というよりは特徴が一致しないという情報から新参の魔王という線が強い。そして白夜叉を封じる手を持ち北の階層支配者に大して執着がない魔王ということになるのか……そこまで用意周到な魔王がそんな当然の準備に引っかかるのだろうか?

 

「……絶対に来る」

 

生憎と思考混じりのぼそっと呟いた程度の声量じゃ誰も拾うことはなかったようだが断言できる。所詮可能性でしかないし期待も多分に混じっているが仮にそうなのであれば間違いなく魔王は来る。

 

「とりあえずこちらでも監視などの打てる手は打っておく。それでもダメだった場合は……それこそおんしらの出番じゃ」

「任せろ」

 

そう言って十六夜を含む皆が首肯して立ち上がる中久遠と俺だけがその場で浮かない顔をして少しの間沈黙を守る。

その後宛てがわれた部屋に戻ってそれ以外の可能性をひたすらに考えるが……どうも一度考えてしまったことに引っ張られて結局考えもまともな形をなすこともできずに朝を迎えることになった

 

 

 




次回にはペスト襲来まで行きたいですね。無理だった場合はその次です。
更新はまた来週になると思います。ではまたー

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