異世界より”超高校級”が参戦するようですよ!   作:ヤッサイモッサイ

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どうも、約一カ月ぶりです。
今回はペスト編突入ですが如何せん記憶が曖昧なのでおかしいところがあるかもしれません。
他にも長い期間をかけて執筆した為不自然さがあるかもしれません。いつもどおり気になれば言ってください。特に原作の設定と違うところなどは。
では今回もあとがきで補足などを入れておきます。


chapter4 北の地より死の風薫る
喧嘩と祭りは異界の華、踏み荒らすは無粋な骨董


喧嘩と祭りは異界の華、踏み荒らすは無粋な骨董

 

 

 

 

……気まずい。自分で招いた結果ながら非常に気まずいぞこれは。冷や汗混じりに視線を横に逸らせば絶対零度のオーラをまとって微動だにしない久遠と頬をリスのように膨らませて半眼でこちらをチラチラと睨む春日部、十六夜は先ほどチェスをして遊んでいた俺を置いて何処かへと消えたため行方は知らないが何にせよ空気を読んで俺も連れて行って欲しかった。

 

「……なんなんだろうな。」

 

 

ゾクッ!

……あまりの息苦しさにため息とともに漏れた言葉のせいか余計に室内温度が下がった気がする……おいおいまだ肌寒い時期だってのにこれ以上冷房をかけるのはやめてくれよ。

そうしてそのまま無言が続きただ虚しく時計の針が時を刻む音を三人で鑑賞していると何処かへと消えた十六夜が帰ってきた。それも何故か傍らにジンを抱えて。

 

「お前ら、出かける準備をしろ!」

 

…………。

 

「「「はぁ?」」」

 

……まぁ意味はよくわからないけど……ナイスだ十六夜。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

というわけで時は流れて都合三度目の白夜叉宅……というよりはサウザンドアイズの支店。

今回は黒ウサギを伴わず十六夜、久遠、春日部、ジン、俺というメンバーでお邪魔している。

何の話かはよく聴いていないからわからないが何やらこのメンツでどこかのお祭りへと行くらしい。それに当たって白夜叉に送迎役を頼みたい……そう言う事だろう。対する白夜叉の口からは何やら不穏な言葉が聞こえてくるが何をそんなに焦っているのか十六夜はそれを二つ返事で承諾し白夜叉の一拍とともにお祭り会場へと俺たちは送り込まれた……なんでそんなに解説口調なのかって?会話に入ろうにも他二人の視線が冷たすぎては入れないんだ。もはや今の俺は置物に近いな。さりげなく……というか明らかに巻き込まれたジンのhelpの視線すら応えることはできない

 

「というか手を叩くだけでテレポートとか……よく聞いてなかったけどノーネーム本拠からはだいぶ遠いんだろ?」

「あぁ、俺の脚でもそこそこの時間はかかったろうぜ。」

 

……そこそこ?十六夜のいうそこそこ……多分俺の想像の万倍はかたいそこそこなんだろうな。ますます魔王ってのはチート臭い存在だよ。

なんて一人密かに戦いていたところにそれとはまた別種の寒気が襲って来る。ひたすらに警鐘を鳴らす自分の中の希望に従って上を仰げば遥か上空にポツンとひとつの黒点……

 

「……待て、十六夜。おまえ黒ウサギに何か言ったか?」

「あ?あぁ、俺らに今回のこと隠していたみたいだからよ。罰として俺らとの鬼ごっこに負けたら俺ら全員コミュニティを抜けることにしてきた。」

 

……() () () ! !

良く見れば落下してくる影は確かに髪が赤く既に相当お怒りであることが伺える。

後ろではやはり当の本人達が白夜叉と談笑しており上から迫る危機には気づいていない

 

「おい、お前ら「本当にこの問題児様がたはぁぁぁぁ……」──遅かったか。」

 

早速春日部が捕まった。

十六夜は既に久遠を連れて脱出しており白夜叉は目の前のその惨状を見て呵々々と笑っている。

まずは十六夜の素晴らしい危機回避能力と久遠を助けるというさりげないジェントルマンシップを褒め称えたいところだがそれよりもまず……

 

「ひぃなったサァァン?」

 

目の前の修羅をどうにかしないといけないな。

 

「……捕まえるというよりは殺されそうだ。」

 

まず俺は話を理解していないわけだがそれにしたって逃げなきゃいけないことはわかる。出来るならば白夜叉あたりに事情を聞く時間が欲しかったよ!

高台のようになっているそこから飛び出し全体的に赤いという印象を受ける石畳の街へと飛び降りる。

後ろから追ってくる気配は確かにある。でも振り返る度胸は俺にはない。

後ろも見ずになにやら露店などが立ち並ぶ活気ある街を高速で疾駆して脅威から逃げ回る。

 

「い い か げ ん に し て く だ さ い !」

 

何がだよ!?わからねぇよ!ってか……

 

「どう考えても原因は十六夜だろ!そっちにいけよ!!」

 

叫ぶと同時に思わず向けた視線で紛うことなき羅刹を確認してしまい恐怖に体を震わせる。おかげで壁を蹴り損ねて体から家屋に突っ込むところだった。

……あれはウサギが出せるものじゃない、いつからウサギをやめたんだ黒ウサギ!

 

「まずは……」

 

……ヤバイっ!

 

「──一人ずつです!!」

 

今までのテンポを崩すような溜めのあと俺がよけたその空間をたがわずに赤い閃光が駆け抜けた。

しかもご丁寧に通り間際に腕を伸ばして俺を引っ掛けていくのだからたまったものではない。

今まで以上の速度で流れる景色の中相変わらず揺れ動かない脳は冷静に体に指令を送る。掴まれた袖口から腕を絡ませ姿勢を入れ替えてから黒ウサギの上へと陣取りそのまま跳躍。

相変わらず光線のような勢いで跳ぶ黒ウサギとは真反対に飛ぶことになるので距離は自然と開いた。

 

「し、死ぬかと思った。」

 

頭の中は冷静でも意識はそうじゃない。冷静に対処してもこわいものはこわかった。というか接触の時点で意識がブラックアウトしなかったのがむしろおかしいだろう。

既に彼方へと消えた黒ウサギが帰ってこないのを確認してからようやく周りを見渡す余裕ができた。高台からはだいぶ離れたが街はとても広くちょうどこの辺が中心……と言ったところだろうか?

 

「それにしても……祭りみたいだな。」

 

あちこちに出ている露店で売られているのは一見なんなのかわからない奇妙な形の物が多い。ひとつ近寄ってみてみれば工芸品……といえばいいのだろうか?緻密な意匠が施された燭台のようなものが並べられている。他にもそれは皿であったりメダルのような物であったり。大きいものではタンスサイズのモノまで存在した。

 

……なんとなくだが読めてきた。俺はこう言った祭りの話は聞いていない。それは多分団体行動が基本な俺たち全員に言える事だろう。

だがその俺たちが聞いていなかった「おもしろそうな話」を十六夜がどこからか聞きつけ……黒ウサギに秘密でやってきた。あの黒ウサギの怒り具合はその際に十六夜が焚き付けたということだろう。そしてさらにこの祭り……もしくは周辺で白夜叉が俺たちに頼みたいことがあったと……。うん、これなら辻褄があうけど……肝心の黒ウサギの怒りの詳しい原因と白夜叉の頼みがわからないな。いや黒ウサギの怒りが十六夜のイタズラに関することだけならばいいんだが……あんなものそろそろ慣れてもいいだろうに。

 

「……やれやれ、何にせよ俺は肝心な場面で意識を飛ばしていたみたいだな。」

 

全くもって困ったもんだ。

勝手に動いてもナニかあるとは思えない……があの黒ウサギの必死さがひょっとしたら白夜叉の頼みになにか関わりがあるのだとしたら大人しく黒ウサギに従うのがいいんだろう。

かと言ってあの状態の黒ウサギに捕まるのもなぁ……うん、一度白夜叉のところに戻るか。道中の露店にも興味がないこともないがいまは命を大事にってやつだ。

 

そうと決まれば行動は早い。早くも高台の方へと足を向け再び高速で疾駆する。

心なしか行きよりもスピードが速いがそれは別に黒ウサギがまた帰ってくるかもしれないという恐怖からではない。違うと言ったら違うのだ、断じて違う。

長いようで割と一瞬だった道のりだが距離が距離なだけあってひょっとしたらもう白夜叉はいないかもしれない……という予想はいい意味で覆されその白き影は春日部と一緒に何ら変わらぬ様子でそこにいた。

 

「ちょうどよかった。」

 

そう発したのは説明を求めわざわざ街から戻ってきた俺を待ち構えるようにしてその場にいた白夜叉だった。

 

「……は?」

「いやなにこの娘にも言っていたことなのだがの。ちょうどこの街でギフトを競い合う、いわば大会のような催しが開かれるのじゃ。」

 

ギフトを競い合う……ということは必然とギフトを持つことになるわけだが……もちろん俺はギフトなんぞ持っている訳がない。白夜叉の言葉が結論に至る前にその話の流れから終着点を予測したがなんとも要領を得ないが……そんな俺の表情を見て白夜叉は呆れた顔で先に続けた

 

「そう急くでない。ほれ、前にワシがやったラプラスの紙片……出してみると良い。」

 

貰ったはいいがギフトを持たない俺にはいまいち使いどころがない為ポケットに入れっぱなしだった灰色のそれを抜き出して見てみると……何だこれ?

 

「ふむ、やはりのぅ。」

「……日向、いつの間にギフトを手に入れたの?」

「……いや、わからない。」

 

白夜叉に促されるがままに取り出したカードは前のようにカード自身の刺繍だけでなく他に2つほど、彩りが増えた状態でそこにあった……と言っても色は相変わらず黒地にアッシュグレイという地味を極めた色合いなのだが……。

増えた項目は上記の通り二つ『博愛の下町料理』と『献愛・正義執行!』……うん、よくわかった。何が良くわかったってそりゃまぁ印象に強過ぎるこの名前はどう考えても原因はアイツらの物だろう。

 

「この間のペルセウス戦の時、実はワシも店の私室からではあるが見学していたんだがの。その時小僧の体……いや正式にはその中身というべきかの?異変が見て取れた訳じゃ。」

「たしかにこの前の戦いの時はすごかったですけど。」

 

……結局ペルセウス戦後、辺古山との戦いは外からは感知できなかったという結論に至った。もちろん誰に聞くわけにも行かなかった以上確証ではないが誰も何も言ってこない時点でそう言う事のはずだ。ということは白夜叉が言っているのはその後十六夜たちの前に姿を現した時のことか。

 

「……なるほどな、それでギフトのことがわかったというわけか。」

「何度もいうがワシはギフトの鑑定に関しては専門外もいいところじゃ。気が付いたのは小僧が随分とわかり易く変化していたから……というのが大きい。どうせ前と変わらず自分でも何が起きているのか……わからんのじゃろぅ?」

 

……確かにそのとおりだ。結局分かったことといえば自身の中のカムクラと何故かこちらの世界で蘇った仲間がいることだけ。詳しいこともなんで俺がここまで力を行使できているのかも未だに良くわかってはいない。

 

「……だから力試しもかねてその大会に出てみろってことか?」

「……創もでるの?」

「まぁ確かにメリットは大きいよ。」

 

……ただしその大会で俺の身に起きていることが判明するとは思えないがな。

 

「うむ、では二人ともでるという事で話を通しておこう。」

「──いや待て白夜叉。」

 

春日部が持っていた紙を横から覗いてルールを確認するとこの大会ペアでも出られるらしい。片方は補佐という役目に近いらしいが……うん。

 

「俺は補佐役でいい。そもそも俺のギフトが創作系かは少し怪しいところもあるしな。」

「む?まぁ小僧が良いというのならば止めはせんが……それでは出場する意味が無いのではないか?」

「そんなことはないさ。貴重な経験になるよ。」

 

……思えば今の今まで本当の意味で仲間として協力したことはない。どこまでやれるかはわからないが……

 

「そう言う事でいいか、春日部?」

「うん、問題ない。一緒にがんばって黒ウサギと仲直りしよ?」

 

……忘れてた。

 

「それはいいんだがその件で一つ、聞きたいことがあるんだ。」

「なんじゃ?儂に答えられる範囲でよければ答えよう。」

「……なんで俺たちはここにいるんだ?」

 

嫌な沈黙が高台に広がった。

 

「……聞いてなかったんですか?」

 

恐る恐るというふうにジンが何とか声を絞り出す。

 

「あぁ、祭りに来たということと黒ウサギが俺らを捕まえないと全員もれなく脱退と言う話だけは聞いた。」

「……肝心なところを聞いとらんのか、なるほどのう。続きは夜と言った手前おんしらにだけ話すというのも二度手間だが……今回の儂の──否、北の階層支配者(フロアマスター)からの依頼は『打倒魔王』を掲げるコミュニティへの依頼……言わずともその内容は知れよう?」

「……それが確実な話なのかもしもを考えての話なのかでだいぶ変わると思うけどな。」

「此度の祭りはここの階層支配者が交代したが故のもの。そして新たな階層支配者はまだまだ若く反対勢力も少なくない。」

 

……そこだけ聞けばまだ俺らに依頼をするような段階に思えないけどな。そもそも俺たちは実績も無いし名前も旗もない。影で白夜叉のセールスがあったとしてもなんだってそんな影もない噂に怯えて……罠か?いや、白夜叉がかんでる時点でそれはないはずだ……だったらなんで?

 

「あー、ごちゃごちゃ考えているところ悪いがそれはおんしらのコミュニティと若き階層支配者に親交があったからじゃ。それよりも──」

 

と説明の流れのままに白夜叉が市街地に向けた視線の先で派手な爆発が起きる。

 

「あれは流石にお祭り騒ぎがすぎるでの。止めに行った方が良いのではないか?」

「……俺には無理だ。」

「な、なんで黒ウサギまで……」

「綺麗な時計塔だったのに……もったいない。」

 

目の前で爆発したのは街の中央部に鎮座していた建物の中でも頭一つ分以上飛び抜けた時計塔。目を凝らせば散らばった瓦礫を砕きながら落下する十六夜、黒ウサギとそこに接近する赤い影が見える。

 

「なあ白夜叉、あの赤いのはなんだ?」

「ん?あぁ、あれは件の階層支配者の兄上殿だよ。面倒くさいことにはなったが……まぁ黒ウサギならばなんとかするじゃろう。」

 

……大した信頼だな。でも黒ウサギって年の割には意外とガキっぽい──ッ!!?

時計塔の方角から一瞬すごい殺気が……相変わらず無駄にいい視力が黒ウサギの唇の動きを捉える。

 

『───あ と ひ と り』

 

………………。

 

「悪い春日部、俺大会前に死ぬかもない。」

「創!?」

「だ、大丈夫ですよ!いくらなんでも黒ウサギはそこまでしない筈です!……少し長い説教が待ってるかもしれないですけど……。」

 

あぁ、たぶんその説教とやらも俺の想像の万倍は……長いんだろうなぁ

 




はい、どうでしたでしょうか?
今回の補足は主に十六夜くんです。
まず原作だと確かに祭りのことに気がついたのは飛鳥でしたがここでは十六夜くんになってます。特に物語に影響があるわけではありませんが気まずい空気とそれを壊す十六夜くんが書きたかっただけです。
そして鬼ごっこ……これはまぁ序盤に日向が追われるシーンがあるぐらいですね。
春日部さんが参加するゲームのサポーターもジン君からひなた君に変わってます。
あとは……あれか、980000kmをそこそこと言った十六夜くんについて。
まぁ計算するとなんですが十六夜くんの速度を話す時によく出るのが「第三宇宙速度」……これは簡単に言えば打ち出された物体が太陽の重力を振り切って太陽系から飛び出すことができる速度と言われてます。……確かね?
まぁそれで具体的な速度が秒速16~17kmくらい。計算すると第三宇宙速度でもって16時間ほどぶっ通しで移動すると980000km移動したことになります。十六夜くん自身の速度は知りませんし16時間全力疾走なんて馬鹿げた事出来るかは知りませんが十六夜くんの見栄も含めた結果だと思ってくれれば違和感がなくもない感じまで行くんではないでしょうか?
ちなみに光でも3秒ちょいかかる距離……マジでとんでもねぇ

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