異世界より”超高校級”が参戦するようですよ! 作:ヤッサイモッサイ
詳しくはまえがきを見て欲しいのですがそろそろ受験勉強があやしく執筆にそれほど時間が取れません。
ただ中途半端なところで凍結というのも嫌なのでペルセウス編だけでも合間に書いてあげていこうと思います。
受験自体は2月の中旬に終わるので本格的な再開はその日になるのかな?
むしろそれまでの間に自分が無駄に投稿していたりしたら「勉強しろ」と怒鳴ってください笑
老婆は姉妹ではなく英雄を見る。それが現実、それが史実。
……早くほろばないかなこんな世界。
若干カムクラすらも飛び越えて黒く染まった思考にドン引きしながらそれでも現実を見たくない俺は顔に手を当て目を覆い隠すようにして目の前の集団から1人離れていた。
「ひょっとして君たち芸人のコミュニティなわけ?ならホントまじでうちのコミュニティに来いよ!」
そうバカにするわけでもなく大真面目にうちの主戦力三人……十六夜、久遠、黒ウサギをスカウトするのは俺が朝必死に調べたペルセウスのリーダー、ルイオスだ。
つまり今の俺達は”敵”だと見られていない……それだけならば何も問題はない。その隙をつけばいいはなし何だから。
だが問題は確かにあって……十六夜たちがなぜ相手に舐められるのをよしとしているのか……それがわからない。
……まぁ個人的には白夜叉がセッティングしてくれたこの緊張感漂うべきである状況においてルイオスに勧誘させるほどネタに走る十六夜たちに目を背けているわけだが……。いやまじでどんなくだらない理由で絶望させられてるんだよ俺。なんかこっちに来てから情緒不安定か!?
「……マジで滅びろこんな世界」
「───世界の破壊者ッ!?」
「どうした、日向と黒ウサギ揃って中二病か?」
「ふざけるなよ十六夜。いやまじで睡眠時間足りてなくてこのテンションは辛いんだよ。」
「おやおやなんだい?眠れなくなるようなことでもあったわけ?」
何やら付け入る隙を見つけたと言わんばかりに嫌味ったらしくルイオスなる外見チャラ男が問いかけてきた。
「……まぁ、うちのコミュニティどうも規模だけは大きいみたいだからな、不法侵入が絶えないんだよな。昨日と一昨日だけでも三回だぜ?まったく礼儀も知らない奴らが蔓延ってるんだな箱庭ってのは」
だが返しには言外にレティシアの行動は独断であると言う事を滲ませて返す。ご丁寧なそれに少しいらついた様子ながらもルイオスは余裕を崩さない。
むしろ黒ウサギが俺の発言に食ってかかろうとするのを十六夜が止めるという構図がとなりで完成した。
「新参者がでかい顔してるからじゃないの?厚顔無恥ってのはすごいねぇ、箱庭のルールも知らずにそんなことが言えちゃうんだから。」
「英雄様には敵わないけどな。神話の中でも現実でもやってることはただのヤンキーじゃないか。弱肉強食はルールとは言わないんだよ、何処ぞの虎じゃあるまいし。」
「……ひ、日向くん?」
「う、うむ、どうした小僧。睡眠が足りぬのなら隣で寝るか?布団を用意させるぞ?」
「別に必要ない。」
久遠と白夜叉の珍しく狼狽した声が俺を落ち着かせようとしてくるが昨日のこと……そして十六夜達の呆れる会話のせいで少し暗い思考にとらわれた俺は止まらない。
「親の七光りの坊ちゃんがを先輩ヅラするなよ。そのポジションだって神話みたいに親を殺して座ったもんなんじゃないのか?」
「───お、お前ぇっ!!」
「おい日向、質がわりぃぞ。」
「うむ、やはりおぬしはとなりで休んだ方がいい。」
今度変な形の剣を取り出したルイオスに割り込むように俺をたしなめたのは十六夜だ。
そしてそれに白夜叉が続く。
「必要ない───ここは『白夜叉』が用意した『対話』の席だ。いくら無礼があろうと俺には関係ないけど……剣まで持ち出すのはどうなんだ?それは白夜叉を軽く見ているのか……はたまた俺たちとギフトゲームでもしたいのか?」
どの口が言うのか……まさに厚顔無恥だがそれでも俺は態度を変えない。
白夜叉は俺一人の見る目を変えたところで仲間に向ける目は変えないだろうし味方の目は今更だ。
言葉の上での厚顔無恥はどこまで行こうが俺に捨てるものは少ない。ただし対するルイオスは違う。あくまでもあいつは白夜叉との関わりを持つコミュニティの長でありここは何を言われようが手さえ出され無ければふんぞり返っているべきなのだ。
「───こ、の……ッ!」
振り上げた剣を俺の言葉に止められルイオスは振り下ろすことができないでいる。
当たり前だ。この場で俺に剣を振り下ろすということは……
「ギフトゲーム……ってことでいいんだな?」
……そう言う事である。
そしてその一線を超える事が出来ないのならば……あるいはできたのならば……
「───振り下ろせばいいじゃないか」
「誰も責めたりなんかしない」
「それが当たり前だろう?」
「そしてそれがルールだ」
「弱気は淘汰され強者が永遠に君臨し続ける」
「それがルールだと言ったのはお前だろう?」
「ならハッキリさせてやろうじゃないか……」
”────お前のそのチンケな希望なんか絶望の前では塵芥に等しいということを”
俺の言葉が場を支配する。
絶望は伝播する……かつてあらゆる絶望を知り尽くした少女は言った……希望であれば希望であるほど絶望しやすい……と。
「───ウワアアアァァァァッ!!」
ルイオスが構えた剣に力を込めて振り下ろす。
この瞬間確かにあったルイオスの希望は完璧に砕かれた。ノーネームとの勝負を避けるつもりだったなら初めから関わらなければよかった、耳を貸さなければ良かった、無駄な挑発行為は控えるべきだった……だが振り下ろされた剣は止まらない。
勝負の必要があるのならばそれは何もこちらから挑む必要はないのだ……相手に挑ませればいい。
夜に思っていた経過とは少し違うがそれもまた俺らしい……だが伝播したそれを断ち切ることができるものも確かに存在する。
「なるほど、今は黒日向モードか?」
「黒日向?随分な素敵ネームをつけてくれるじゃないか。黒ウサギでも意識したのか?」
十六夜が風の如く動き振り下ろされた剣先に指を合わせることで無理やり剣を止めていた。
……一応言っておくが真剣白刃取りのように左右から挟み込むではなく刃に対して人差し指をまっすぐ当てるような形で進路を塞いでいるのだ。皮膚なのか肉なのかは知らないが硬度が人間じゃない。
「我ながらいいネーミングだろう?……それにしてもお前……なんで動かなかった?」
「なんで?なんで動く必要があるんだよ?」
「そのなんでは俺が動く確信があったからじゃないだろ。振り下ろされて自分が切られたとしても問題がないと……そう考えてるんだよな?」
「実際そんなに問題じゃないだろう?現にお前だって切られてるじゃないか」
刃すら通さないやつに言われるのはなんとも違和感を感じる
俺の言葉に指を弾くようにして刃を押し返した十六夜はルイオスがよろめくのにも目を向けずこちらへと向き直った
「馬鹿言え、俺とお前は違うだろ。」
「似たようなもんさ。」
「嫌味かこの野郎……っとあまりお客様をほっておくのも悪いか。話はまたあとだな。」
「俺たちもお客様のカテゴリーじゃないか?どちらかといえば。」
……というかほっておくも何も……
「憤慨して帰っちゃってるけどな。ガキかよ英雄様は」
まぁおかげでレティシアの件が有耶無耶になった訳だけど……あぁくそっ!カムクラが絡むと計画が崩れる!
「別の計画が必要だな……。」
「……あのぅ、日向さん?また何か無茶をしようとしていませんか?」
「うむ、割と肝が冷えたぞさっきのは。」
「心不全を起こさないでくれよご老人方。」
「「若いのがそんなに正義かっ!!」」
「当たり前だ。若さは正義で、正義は若さだ。」
冗談はさておきペルセウスをギフトゲームへ引っ張り出すのは失敗した。
どうも思考が黒くなると歯止めが効かないな……全くままならない。
……というか仮にギフトゲームが成立したとしたら俺が狙われるんじゃないか?
……ロクなことが無いな。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「グランアイ?」
話し合いと言う名のガキの喧嘩も終わり特に収穫もないまま帰路に着いたそのすがら、十六夜が俺に口を寄せてきた。
「それにクラーケン。白夜叉が言ってたんだよ、ペルセウス攻略の鍵になるだろうってな。」
「グランアイは一つ目の老婆だろ?クラーケンはイカだ。何が攻略に繋がるって言うんだ?」
「お前も疑問に思っちゃいたんだろ?ペルセウスと言う名前とその実情のギャップを。」
確かに十六夜の言う通り……俺はそこに状況をひっくり返す芽があるんじゃないかと踏んでいた……
「その二体の試練を突破すればペルセウスへの挑戦権が得られる……それならある程度神話にも沿うし、英雄らしくもあるな。」
「つーわけでちゃっちゃと取ってくるからお前留守番な。」
………………おい。
「ならなんでそのことを俺に言ったんだよ?言わなきゃいいだろ言わなきゃ。」
まぁ元から付いていって何ができるわけでもないけどさ。
「だってお前伝えとかねぇと一人でペルセウスに突っ込みそうだったからよ。念のためってやつだな。」
「ねぇよ!お前じゃあるまいし!」
カムクラの影響があるのならば……まぁ確かにやるかもしれないけど……。
「俺とお前は似たようなもんなんだろ?自分で言ってたじゃねぇか。」
……それは俺じゃない、カムクラだ。
「……わかったから行ってこい。あんまり時間もかけてられないだろ?」
いつまで経っても動かない十六夜に発破のつもりでそう言葉をかける。
ようやく動く気になったか一歩分俺との距離を離して体の向きを変えた。
「わかってねぇな日向。」
……………?
「エンターテイナーに時間の説教は無用だぜ?」
些細なことでカムクラかするようになった日向くん。なんだかんだ言って先日のことが後を引いてます笑
ちょっとこの世界に来てから些細なことに絶望しすぎじゃないかな日向くん。