今回は気分転換として、とある変わったデッキを使う主人公で遊戯王GX物の短編を書いて見ました。
ちなみに副題は「自分なりにアンチリスペクト物を書いてみたww」です。どうか、暇つぶしにでもお読みください。
書かない理由:主人公の使うカードのカテゴリが少なすぎるため(遊戯王GX)
ここは海馬ランドの象徴的施設である海馬ドーム。
現在ここでは、エリート決闘者デュエリスト養成学校として名高いデュエリストアカデミアの高等部への編入試験が行われていた。
【デュエルアカデミア】。
それは、彼の史上最強のデュエリストと呼ばれた『決闘王デュエルキング』武藤遊戯の永遠の宿敵ライバルと称された伝説のデュエリストであるKC海馬コーポレーション社『社長』海馬瀬戸が創設した、次代のDMデュエルモンスターズ界を担う人材を育てるための学校の名。
KC社の力を使い、世界各地から優秀なデュエリスト、教育者などを集め、さらにはDMの産みの親であるI2インダストリアル・イリュージョン社会長のペガサス・J・クロフォードの協力もあり、既に多くのプロデュエリストや、有名なカードデザイナーを輩出することに成功している。
そのおかげで、このデュエルアカデミアは、まだ歴史の浅い学校でありながら、既に全国屈指の人気を誇る名門校となっていた。
そして毎年、日本中の明日を夢見る青少年たちが、この時期になると、こうして海馬ランドで行われる中等部入学試験、そして高等部編入試験のために全国各地から集まってくるというわけである。
そして、現在試験会場でデュエルアカデミアの実技担当最高責任者である”クロノス・デ・メディチ”と対峙しているその少年も、そんな受験者たちの内の一人だった。
★
★
「あなたが受験番号0番”
「はい、問題ありません……」
「そ、そうですーカ(や、やりづらいーノ)」
クロノス・デ・メディチは困惑していた。
デュエルアカデミアの実技最高責任者である彼は、その若き頃母国イタリアのオープントーナメントで優勝したこともあるほどのデュエルの腕前と、アカデミア創立直後からの教師としての長い勤務歴から、アカデミアの教師たちの間では比較的第一人者とされ、だからこそ今回の高等部編入試験や中等部入学試験などの重要なイベントの際は、自然と他の職員たちを取りまとめ、取り仕切るのが彼の役目になっていた。
そんな彼にとっての毎年のことであるはずの今回の編入試験。しかし、今回に限って、いつもと違って普段と違う出来事があった。
それは、特別推薦枠である『受験番号0番』が適用された受験生が存在したことだった。
本来なら、高等部編入試験の受験者たちに贈られる受験番号は、実技試験の前日に行われる筆記試験で決まり、それは筆記試験一位の生徒から順に受験番号1、2と渡されるのだが、実はアカデミアにはとある制度が活用されることにより筆記試験が免除されることがあり、受験生0番は、その制度が適応された受験生にのみ渡されるのだ。
そしてその制度こそが『特別推薦枠』。
この特別推薦枠とは、毎年デュエルアカデミアの高等部編入試験のみに三名分ほど用意されている、文字通り特別な推薦枠のことで、それはデュエルアカデミアオーナーである海馬瀬戸にアカデミア理事長の影丸。そして外部の人間ではあるが、DMの産みの親でありアカデミア創立に多大な協力を果たしたI2社会長であるペガサス・J・クロフォードの三名がそれぞれ特別に推薦したいデュエリストがいた場合、この特別推薦枠を使いデュエルアカデミアへの入学を推薦するのだ。
この特別推薦枠によって推薦された生徒には様々な特典がもたらされる。
筆記試験免除は当然として、実技試験に無事に合格することができれば三年間の学費は免除され、高等部編入でありながら、所属寮はアカデミアに三つあるうちの最高ランクであるオベリスクブルーへと自然に決定される。
他にも購買部での買い物が割引される特別な生徒手帳や、デュエルシュミレーターの優先使用権など、本当に様々な特典がこの特別推薦枠を得て試験に合格した受験生には与えられるのだが、少し考えればわかるとおり、この特別推薦枠を得るのは並大抵のことではない。
特別推薦を行える3人は3人ともDM界の大物ばかり。そんな3人から推薦を受けることなど並大抵のことではなく、最低でもデュエルの腕は一国のジュニアチャンピオンクラスの実力を持っていなければならず、それ相応のコネも必要だ。
尤もそれだけの実力者ならば普通に試験を受けてもまず問題なく、その難易度もあってかこの特別推薦枠を使用した受験生はアカデミア創設から数えても、片手の数ほどもない。だからこそ、現在アカデミアで雇われている教師の中で最古参の一人であるクロノスも、この特別推薦を得て編入試験へとやってくる受験生の担当をしたのは、殆どなく、二年前に二人で日本ジュニアチャンピオンの座を争っていた丸藤亮と天上院吹雪の二人だけ。
だからこそ、アカデミア内でもエリート主義で知られたクロノスは今回のデュエルを楽しみにし、またはりきっていた。
特別推薦枠を得るほどのデュエリスト。しかも話に聞くと、その少年は単純な実績ならばクロノスが所属しているアカデミア本校に匹敵するといわれている、アメリカ・デュエルアカデミアの中等部で日本人でありながら主席の地位についていたという。
なんでも、校長がいうにはとある事情から、このアカデミア本校に入学することとなり、そのために特別推薦を受けることとなったらしいのだが……。
「(まあ、そんなことは私には関係ないのーネ。重要なのは彼が滅多に見ないほどのエリートデュエリストだというこートですかーラ)」
そう、将来デュエリストとして成功することがほぼ確実である彼のようなエリートを自らが教え、そして導くのが、栄光あるメディチ家の人間であり、学園一のエリート教師である自分の役目であると、そう確信していた。
そしてあわよくば、彼を次代のデュエルスターへと成長させ、そして広告塔にし、まだまだ歴史の浅いこの学校を、文字通りのデュエル界の中心地といえるべき存在にまで成長させようと企んだのだ。
だからこそ、彼はいつものように編入試験の責任者としてではなく、一教師として、自慢のデッキを持ちはりきって今回の試験へと臨んだのだが、
「(な、なんなのーネこのボーイ、この威圧感ーワ!?)」
そう、彼が困惑していた理由。それは今回特別推薦枠を受けたこの少年、「崔黄慈」から発せられる雰囲気が、他の受験生、そして自分がよく知るアカデミアの生徒たちとも大きくかけ離れたものだったからだ。
崔黄慈。
紫がかった流れるような銀色の髪に鮮血のような紅い瞳を持つその少年の容姿は、少々眼つきが鋭すぎるような印象を受けるが、それ以外は一見そこいらにいるようなごく普通の少年。
しかし、腐っても学園で指折りである歴戦のデュエリストであるクロノスには感じ取れた。彼から感じ取れる、圧倒的なまでの『鬼気』とも呼ぶべき
クロノスはそこから、彼のデュエリストとしての実力の高さを敏感に感じ取ったのだ。
「(な、なるほード、どうやらただの生徒の一人だと思ったら大間違いのよーネ)」
黄慈からプレッシャーに冷や汗を流しながらも力量を感じ取ったクロノスは、そう一人ごちると気を引き締め直る。
先ほどまでは、いかに特別推薦を受けた生徒とはいえただの生徒には違いないとどこかで油断していたが、彼のプレッシャーを真正面から受けたクロノスには先ほどまでの油断は一切なく、ただ一人のデュエリストとして向かい合うと決意する。
「(そうなーノ。私は栄光あるデュエルアカデミア実技担当最高責任者クロノス・デ・メディチ。彼がどれだけの実力者だったとしてーも、全力で応対しなけれーば名が廃るというものーデス!!)」
そう決意したクロノスは、自身の特別製のデュエルディスクをデッキにセットして構える。
するとそれに呼応してか、先ほどまで沈黙していた黄慈も自身のデッキを手持ちの黒いデュエルディスクをクロノスと相対するように構えた。
「それでは、これより高等部編入特別試験を始めますーノ。準備はよろしいですーネ?」
「はい……」
「それでは」
「「デュエル!!」」
そして、『デュエルアカデミア実技担当最高責任者』クロノスと、謎のデュエリスト『受験番号0番』崔黄慈。二人のデュエルは始まった。
クロノス
LP:4000
手札:5枚
黄慈
LP:4000
手札:5枚
デュエルが開始すると共に、クロノスは口を開く。
「先行は慣例として、受験生に明け渡されるーノ」
「……わかりました。ドロー」
クロノスの言葉を聞いた黄慈は、少しの間が空いたが素直に頷くとカードをドローする。
「私のターン」
黄慈
LP:4000
手札:6枚
黄慈は、ドローしたカードを一瞬ちらりと確認すると、1枚の魔法カードを発動させる。
「……私は魔法カード「天使の施し」を発動。このカードの効果により手札からカードを3枚引いて2枚を墓地へと送る」
通常魔法
自分のデッキからカードを3枚ドローし、その後手札を2枚選択して捨てる。
天使の施しの効果により黄慈はカードを3枚引き2枚を墓地へと送ると、手札の中から一枚のカードを抜き出した。
「さらにモンスターをセット。カードを1枚セットしてターンを終了します」
黄慈
LP:4000
手札4枚
場:セットモンスター(1体)
魔法、罠:伏せカード(1枚)
1ターン目、黄慈はモンスターと伏せカードをそれぞれ1枚ずつ伏せてから、クロノスに自分のターンの
「(なるほど、まずは様子見ということですーカ、ぺトリョーシカ。――-しかーシ、このクロノス・デ・メディチを相手にして、その程度の防御で護りきれると思っているとしたーラ、片腹痛いのーネ!!)それでは、私のターン、ドローニョ!!」
クロノス
LP:4000
手札:6枚
クロノスは、ドローしたカードを横目で確認すると一瞬目を見開いたが、すぐにその表情を喜びの感情で歪にゆがめた。
「くくく、これはいいカードを引いたーノ。――-私はフィールド魔法「歯車街」を発動!」
「……ッ!?」
フィールド魔法
「アンティーク・ギア」と名のついたモンスターを召喚する場合に
必要なリリースを1体少なくする事ができる。
このカードが破壊され墓地へ送られた時、自分の手札・デッキ・墓地から
「アンティーク・ギア」と名のついたモンスター1体を選んで特殊召喚できる。
クロノスの宣言と共にデュエル場を包み込むように出現する機械の街、歯車街。
それはクロノスのデッキである「暗黒の中世」デッキにおいて、中核となるカードの一つ。
その効果はアンティーク・ギアと名のつく上級モンスターを召喚するためのリリースを一つ少なくすることができるというものだが、実はこのカードにはもう一つ、さらに隠された効果がある。
その効果を発動するために、クロノスはデュエルを続ける。
「そして私ーは、カードを2枚伏せて魔法カード大嵐を発動しますーノ!!これでフィールド上の全ての魔法、罠カードを破壊しまース!!」
「やはり……ッ!!」
通常魔法
フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。
フィールド上に嵐が巻き起こり、歯車街を破壊していく。
だが、その光景を見て、デュエルを観戦していたアカデミア生たちの何人かが、今のクロノスの行動を見て疑問の声を上げる。
『あれ?なんでわざわざフィールド魔法に、伏せカードまでセットしてから大嵐を発動したんだ?』
『あれじゃあ、自分のカードが破壊されちまうよ』
『まさか、クロノス先生のミスか?』
「(やれやれ、どうやら補習が必要な生徒ーガ、何人かいるようなーノ)」
観戦席から聞こえてくる自らの生徒たちの声に、クロノスは内心思わず落胆する。まさか、仮にもデュエルエリートの卵であるデュエルアカデミアの生徒たちが、今の自分の行動を理解できていないとは。
「(まあ、尤も彼はさすがに理解できているようですーガ)」
クロノスが視線を黄慈の方に戻すと、彼はその顔を僅かに険しくしていた。そこから、彼がクロノスがこれから何をしようとしているのか理解しているのが見てとれる。
「(ですが、さすがに伏せカードを破壊されたら何もできないでーショ。ムフフフ」
―――だが、クロノスのその考えは甘いものだった。
このまま、何もしないままクロノスの行動を何もしないで見過ごすかと思われた黄慈は、ここでこのまま破壊されるかと思われた伏せカードを発動させた。
「……私はこの瞬間、大嵐にチェーンして伏せカード「和睦の使者」を発動」
「なんですート!?」
通常罠
このターン、相手モンスターから受ける
全ての戦闘ダメージは0になり、
自分のモンスターは戦闘では破壊されない。
和睦の使者の発動により、黄慈の目の前に青いシスター服に身に纏った修道女の集団が現れる。
「このカードが発動したターン、私に対しての戦闘ダメージを無効にし、私のモンスターは戦闘では破壊されなくなります」
「ぐぬうッ!?」
淡々とカードの効果を説明する黄慈の姿に、しかしクロノスは内心歯噛みする。これで、彼の計算が狂ってしまったからだ。
「(まさか、フリーチェーンの防御カードを伏せていたとーワ。せっかく、1ターンキルを決めるチャンスだったのーニ)」
そう、クロノスはこのターン、必殺のコンボで一気に決着をつけようとしていたのだが、今の黄慈の和睦の使者の発動により、その目論見があっさりと崩れ去ってしまった。
クロノスは黄慈の予想外の行動に心乱されるが、やがて我に帰ると、頭を振りかぶり無理やり動揺を鎮める。
「(いや、それほど深く考える必要はないですーノ。相手が実力者なのはわかっていた。ならばこれくらいやって当然!!それに攻撃を防がれたのなら、次のターンに万全の攻撃ができるように場を整えればいいだけの話なのですかーラ)」
そして、気を取り直したクロノスは、大嵐が全ての魔法、罠を破壊したのを見計らい、歯車街の真の力を発動させる。
「私は、大嵐によって破壊された歯車街の効果を発動!このカードが破壊された時、自分の手札、デッキ、墓地からアンティーク・ギアと名のついたモンスターを特殊召喚することができる。私はデッキから、「|古代の機械巨竜」を特殊召喚しまース!!」
効果モンスター
星8/地属性/機械族/攻3000/守2000
このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。
このカードの召喚のためにリリースしたモンスターによって以下の効果を得る。
●グリーン・ガジェット:このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
●レッド・ガジェット:このカードが相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、
相手ライフに400ポイントダメージを与える。
●イエロー・ガジェット:このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、
相手ライフに600ポイントダメージを与える。
そのクロノスの言葉と共に、クロノスのフィールド上に現れるのは機械と歯車が集合して創り出された巨大な竜。
そう、クロノスが歯車街をわざわざ自分から破壊したのは、歯車街の隠された効果により、このカードを召喚するためだったのだ。
そして、会場はそんなクロノスの戦術の巧みさに湧き上がる。
『おおー!!』
『すっげー!?』
『まさか、あそこからあんな強力モンスターを……』
『さすが、クロノス先生だ』
会場の声援に、クロノスは気をよくして思わず頬を緩めるが、クロノスの攻めはここでは終わらない。
ここで、クロノスは大嵐によって破壊された2枚の伏せカードも発動する。
「これだけでは終わらないーノ。私はさらに2枚の破壊された伏せカード、「黄金の邪神像」の効果を発動しまース」
通常罠
セットされたこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
自分フィールド上に「邪神トークン」(悪魔族・闇・星4・攻/守1000)1体を
特殊召喚する。
「セットされた黄金の邪神像が破壊され墓地に送られた時、自分フィールド上に星4、攻守1000の邪神トークンを2体特殊召喚しまース」
クロノス
場:古代の機械巨竜(攻:3000)
邪神トークン(攻:1000)
邪神トークン(攻:1000)
フィールド上に2体の黄金の悪魔が召喚されたのを確認したクロノスは、さらに手札から1枚のカードを引き抜いた。―――自身の尤も信頼するエースを召喚するために。
「そして、私は2体の邪神トークンを生贄に、このデッキの真のエースを召喚しまース」
「真のエース?」
「そのとおーリ!見よ、これこそが我が至宝である伝説のレアカード。
―――|古代の機械巨人を召喚するのーネ!!!」
効果モンスター
星8/地属性/機械族/攻3000/守3000
このカードは特殊召喚できない。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
このカードが攻撃する場合、
相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。
―――そして、その巨人は地中から、圧倒的な存在感を撒き散らせながら現れた。
「古代の機械巨人……」
「そう、これこそが私の自慢のカードでース」
古代の機械巨人。
おそらく、デュエルを学ぶものならば一度は耳にしたことがあるであろう伝説のレアカードの1枚。
あの、世界に3枚しか存在しない「青眼の白龍」に匹敵する攻撃力を持ち、特殊召喚こそできないが貫通効果を持ち、このカードが攻撃する時、相手はダメージステップ終了時までフィールド上の魔法、罠を発動できないという強力な効果を持つ、まさに切り札という言葉に相応しい強力なカード。
そんなカードがフィールド上に召喚されたことにより、再び観客席が沸いた。
『す、すっげー!!』
『あれって、伝説のレアカードの
『俺、初めてみたぜ!』
『来てよかったー』
『あいつ、終わったなww』
「(ムフフのフン!今日の客はわかってるーノ)私はさらにカードを1枚伏せてターンを終了しまース。さあ、あなたのターンですーネ!!」
クロノス
LP:4000
手札:0枚
場:古代の機械巨竜(攻:3000)
古代の機械巨人(攻:3000)
魔法、罠:伏せカード(1枚)
「私のターン、ドロー」
そして、ターンは受験生、崔黄慈へと移る。
黄慈
LP:4000
手札:4枚
場:セットモンスター(1体)
最初のターン、得意な大嵐を使用したコンボにより、圧倒的優位に立つことに成功し気分が高揚していたクロノスであったが、黄慈へと視線を戻すと頭を冷やし冷静になる。
劣勢なはずの黄慈本人の顔が、全く動揺を見せず、つとめて冷静な表情を崩していなかったからだ。
「(ふむ、この絶体絶命の状況でも動揺一つみせない。やはりかなりの修羅場をくぐった実力者のようですーノ―――ですーが、私の伏せカードは「聖なるバリア―ミラーフォース」。例えこのターン、私のアンティーク・ギアモンスターたちを超えるモンスターを召喚することに成功したとしてーモ、このカードで返り討ちなのーネ。ヒョヒョヒョのヒョ♪)」
そんなクロノスの考えを知ってか知らずか、黄慈はただ淡々とデュエルを続ける。
「私はセットしていたモンスターを攻撃表示に。魔導雑貨商人を反転召喚する」
効果モンスター
星1/光属性/昆虫族/攻 200/守 700
リバース:魔法・罠カードが出るまで自分のデッキをめくり、
そのカードを手札に加える。
それ以外のめくったカードは全て墓地へ送る。
黄慈のフィールド上にセットされてあったモンスターが表になるとそこからなにやら大きな荷物を背負った二足歩行の昆虫が姿を現した。
このモンスターは、リバースすることにより魔法、罠カードが出るまで自分のデッキをめくり、そのカードを手札に加えるという効果があるのだが、彼の本来の狙いは別にある。
そして、デュエルアカデミアの教師であるクロノスは、そんな黄慈の狙いを正確に洞察していた。
「(魔導雑貨商人。……なるほど、墓地肥やしですーカ)」
そう、魔導雑貨商人は魔法、罠カードが出るまでにデッキからめくったカードを全て墓地に送る効果を持っており、そのためか、殆どのデュエリストは本来の魔法、罠カードを手札に加えるためではなく、デッキからカードを墓地に送る「墓地肥やし」を行うためにこのカードをデッキに入れるものが多い。
そして、クロノスはその持ち前のデュエリストとしての感と経験により、その彼の狙いを察知したのだ。
そして黄慈は魔導雑貨商人の効果により、デッキから3枚ほどのカードを墓地に送ってから1枚の魔法カードを手札に加え、そして発動した。
「……そして、私は今手札に加えた魔法カード「苦渋の選択」を発動」
「ッ!?そのカードは!!」
通常魔法
自分のデッキからカードを5枚選択して相手に見せる。
相手はその中から1枚を選択する。
相手が選択したカード1枚を自分の手札に加え、
残りのカードを墓地へ捨てる。
クロノスは黄慈が発動したカードに驚愕の表情を浮かべる。
苦渋の選択。それは使用した者のデッキによっては多大なアドバンテージを与える強力なカード。
その効果は、自分のデッキからカードを5枚選択して相手に見せ、その中から相手に1枚選択させ手札に加える。そしてそれ以外の残りのカードは全て墓地に送るというもの。
そして、黄慈は苦渋の選択の効果により5枚のカードを選択し、クロノスに対して掲げて見せた。
「私が選択するのはこのカードたちです」
■選択したカード
・人造人間サイコ・リターナー
・人造人間サイコ・リターナー
・人造人間サイコ・リターナー
・ネクロ・ガードナー
・ネクロ・ガードナー
クロノスの目の前に掲示される5枚のカード。クロノスはそのカードたちを見て、訝しげに眉を潜める。
黄慈が選択した「人造人間サイコ・リターナー」というモンスター。そのモンスターの名をクロノスは聞いたことがなかったからだ。
「(ネクロ・ガードナーの効果は、確か墓地から除外することにより、相手の攻撃を1回無効にすることができる。苦渋の選択で選択するのはわかるーノ。しかし人造人間サイコ・リターナー?あのカードは私も聞いたことがないカードなのーネ)」
ネクロ・ガードナー
効果モンスター
星3/闇属性/戦士族/攻 600/守1300
(1):相手ターンに墓地のこのカードを除外して発動できる。
このターン、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする。
そして、クロノスはしばしどのカードを選択するかを迷ったが、結局ネクロ・ガードナーを選択することにする。
わけのわからないカードについてどうこう悩むより、今は墓地に送られたらやっかいなカードを1枚でも少なくしたほうがいいと考えたのだ。
「私ーは、ネクロ・ガードナーを選択しますーノ」
「了解しました」
そして、黄慈はクロノスの選択したネクロ・ガードナーを手札に加え、残りのカードを墓地へと送る。
そして、その瞬間クロノスは気づく。
―――黄慈の口元が、いつの間にか歪に歪んでいることに。
「………ツ!?(な、なんなのーネ、この殺気は)!!」
突如黄慈から溢れ出る暴力的な圧力に、クロノスは思わず後ずさる。
黄慈は、そんなクロノスの様子を嘲笑うかのように、先ほどの無表情とはうって変わって、口元に邪悪な笑みを浮かべながら、クロノスの息の根を止めるべく、行動を開始する。
「悪いがクロノス先生、このデュエルはどうやら俺の勝ちのようだぜえ?」
「な、なんですートッ!?」
「この瞬間、
―――よって、俺は3体のサイコ・ショッカーを墓地から特殊召喚する!!」
「ッ!?」
「出でよ、我がしもべたちよ!!」
効果モンスター
星3/闇属性/機械族/攻 600/守1400
このカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。
このカードが墓地へ送られた時、自分の墓地の
「人造人間-サイコ・ショッカー」1体を選択して特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚した「人造人間-サイコ・ショッカー」は、
自分のエンドフェイズ時に破壊される。
黄慈の叫びと共に、フィールドに闇が産まれ、そこから三体の電脳魔人が咆哮と共に現れる。
『ぐおおおおおおおおおおおお!!』
効果モンスター
星6/闇属性/機械族/攻2400/守1500
(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
お互いにフィールドの罠カードの効果を発動できず、
フィールドの罠カードの効果は無効化される。
『人造人間-サイコ・ショッカー』。
かつて、バトルシティにて
彼の魂のカードである「
そんな、滅多に見られないモンスターが、フィールド上に一瞬にして3体も並んだことにより、観客席のボルテージはさらに上がるが、逆に対戦相手のクロノスは、出てきたモンスターがサイコ・ショッカーであることを知り、こっそり安堵の溜め息をつく。
「な、なんですーノ、いきなり何が出てくるかと思えーバ、たかだか攻撃力2400のモンスター。確かに1ターンで上級モンスターを3体も並べるタクティクスは認めますーガ、そんなモンスターでは、私のアンティーク・ギアたちに太刀打ちなど、できるわけないのーネ!!」
だが、黄慈はそんなクロノスの言葉に、さらに邪悪な笑みを深める。
「ククク、それはど・お・か・な?」
「ひょ?」
挑発的な黄慈の言葉に、思わずどこぞの弱虫野郎のような呆けた声を出すクロノス。
そして黄慈は手札から1枚の魔法カードを引き抜き、デュエルディスクの魔法、罠スロットに差し込んだ。―――デュエルの決着を着けるための
「俺はさらに速攻魔法発動!「リミッター解除」!!」
「げぇ!?そ、そのカードーワ!!」
リミッター
速攻魔法(制限カード)
このカードの発動時に自分フィールド上に表側表示で存在する
全ての機械族モンスターは、ターン終了時まで攻撃力が倍になる。
このターンのエンドフェイズ時、
この効果を受けたモンスターを全て破壊する。
黄慈の発動した魔法カードに、クロノスは思わず某三国最強の武将と出会った時のような声を上げる。
だが、それも仕方ない。リミッター解除とは、機械族のモンスターの攻撃力を倍にする切り札級の魔法カード。機械族のエキスパートであるクロノスも、その威力はよく知っており、彼のデッキにも同じカードが入ってる。
そして、人造人間サイコ・ショッカーも機械族モンスターであり、リミッター解除の効果を受け、電脳の魔人たちの力は古代の機械巨人の力を上回る圧倒的な力を手に入れることとなる。
黄慈
LP:4000
場:人造人間サイコ・ショッカー(攻撃力2400→4800)
人造人間サイコ・ショッカー(攻撃力2400→4800)
人造人間サイコ・ショッカー(攻撃力2400→4800)
「あ……あ…ああ……」
自慢のエースである古代の機械たちをも上回る大きさにまで巨大化したサイコ・ショッカーたちの姿に、絶望の表情を浮かべるクロノス。
そんなクロノスの顔を一瞥してから、黄慈は告げる。―――クロノスへの死刑宣告を。
「これで終わりだ。3体のサイコ・ショッカーで総攻撃!
―――|電脳《サイバー)エナジーショック。三連打アアアアアアアア!!!」
黄慈のその声と共に、1体目のサイコ・ショッカーが古代の機械巨竜を破壊し、2体目のサイコ・ショッカーが古代の機械巨人を破壊した。
「ぐうううううッ!?」
クロノス
LP:4000→2200→400
2体の古代の機械たちが破壊されたことにより、その爆風に巻き込まれたクロノスは苦悶の声を上げる。
………そして、
「……あ」
目の前に現れた最後のサイコ・ショッカー。そのサイコ・ショッカーが放つ黒き波導が、クロノスに叩きこまれた。
『ぐおおおおおおおおおおおお!!』
「マンマミーーーーーヤーーーーー!?!!」
クロノス
LP:400→-1400
サイコ・ショッカーの攻撃により吹き飛ばされるクロノス。
「ククククク。
――――ハーーーーハッハッハッハッハッハッハッハ!!」
―――そして、デュエルの勝敗は受験番号0。崔黄慈の勝利に決定した。
★
★
海馬ドームの男子トイレ内。その個室の一つにその姿があった。
「……はあ、またやっちまった」
便座に座りながら、暗いオーラを漂わせている男。
彼の名は崔黄慈。そう、先ほどハイテンションでクロノス・ディ・メディチを瞬殺したデュエリストである。
彼は、先ほどのクロノス戦の時に見せた悪役染みた態度が嘘のように引っこんでおり、両手で顔を押えながら項垂れていた。
せっかく、実技試験に勝利したのになぜ彼がここまで落ち込んでいるのか?それはデュエル中に見せた彼の態度にあった。
「なんで、俺いつもああなっちゃうんだろう。
―――テンションが上がると悪役じみたとるようになるなんて」
そうなのだ。実は彼、先ほどクロノスと決着をつける際、かなり悪役染みた態度を見せていたが、実はあれは彼の本心ではなく、いわゆる彼の癖の一つだった。
彼は昔から激しい人見知りで、まともに人と目を合わせて喋れないようなコミュ障男なのだが、昔から大好きなデュエルで興奮した時、クロノスの時のように悪役染みたハイテンションになってしまう、困った体質を持っていたのだ。
そして、その状態の時には無意味に挑発的な態度をとってしまうものだから、その元々の性質もあいまって、彼は昔から殆ど友達ができたことがなく、所謂「ぼっち」生活を送っていた。
それはアメリカアカデミアにいた時も同じで、だからこそペガサス会長からこのデュエルアカデミア本島への編入の打診を受けた時、自分のことを誰にも知られていない新天地なら友達ができるかと、その話に食いついたのだが、
「(あんな公衆の面前であんな姿を見せてしまって……。これじゃあ、ここでも友達できないよ、絶対)」
そして、再び深々と溜息をつく黄慈。
だが、そんな彼に声をかける者がいた。
『まあまあ、そんな落ち込まないでくださいよ、マスター。また次がありますって!』
「ショッカー……」
涙目で、顔を上げる黄慈の視線の先にいるのは、ピンク色の肌を持ち、顔にガスマスクのようなものを着けた人型のモンスターの姿がそこにあった。
そう、彼の名前は「人造人間サイコ・ショッカー」。黄慈のエースモンスターであり、某所では「ハゲ」とも揶揄されることがあるモンスター。
しかし、彼は先ほどのクロノス戦のように
それはなぜか?実は、黄慈が持っている人造人間サイコ・ショッカーのカード。実はあのカードは普通のカードではなく、カードの精霊が宿る特別なカードだったからである。
カードの精霊。それはDMの都市伝説の一つで、なんでもこの世界とは別の異世界に、DMのモンスターの精霊たちが住まう世界があり、カードにその精霊が宿る場合があるのだ。
そして、彼が持つ人造人間サイコ・ショッカーのカードも、そんな精霊が宿るカードの1枚だったというわけだ。
黄慈は元々精霊の姿を見る力など持っていなかったが、ある事件がきっかけでその力に目覚め、それからは彼と共に、本場アメリカでの過酷なデュエルを生き抜いてきた。だからこそ、黄慈にとっては彼は最も信頼できる存在となっていた。
『確かに、あの場面を見た多くにはひかれちまったかもしれませんが、それでも何人かは大丈夫でしょう。それにアカデミア生はあそこにいた人数が全てじゃありやせん。まだまだマスターに友人ができる機会はあるでしょう』
「……本当に?」
『はい。ワシはマスターに嘘はつきやせん』
黄慈の言葉に頷くサイコ・ショッカー。そんなサイコ・ショッカーの言葉を受けて、黄慈は何度も下を見ながら、「そうか。そうだよな」と何度も頷くと、勢いよく立ち上がる。
「よし!!アカデミアで友達を作るために、特訓だ。急いで帰るぞ、ショッカー!!」
『了解だぜ、マスター!!』
そして、黄慈は駆け足で自宅へと急ぐ。最高の相棒である電脳の魔人を引き連れて。
――――だが、この時黄慈はまだ知らなかった。
『あれが、鮫島師範が気をつけるようにいっていた、噂のサイコ流の使い手か。おもしろい』
自身の相棒のせいで、デュエルアカデミアで、とてもめんどくさいことに巻き込まれてしまうことに。
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この小説の主人公。日本生まれの日本人で間違いはないが、小学三年生の頃に両親の仕事の都合で、アメリカに引越し、それからはずっとアメリカで暮らしている。
かなりの人見知りでコミュ障。人と話すときは眼を見て話すことはできないが、むりやり眼に力を入れれば話すことは可能。しかし、その場合は本人の緊張感が表に出て、相手に多大な威圧感を与えてしまう。
整った顔つきをしているが、眼つきが鋭く、またコミュ障のために言葉足らず。さらにはデュエルでテンションが上がると挑発的な悪役染みた態度をとってしまうことから、日本でもアメリカでもぼっち。主席をとったアメリカアカデミアでは、とある二人以外の生徒とは全く交流を持っておらず、事務的なことしか話さない。ゆえに「孤高のデュエリスト」とも呼ばれていた。
デュエリストとしての腕は一流。本人がデュエルが好きなこともあり、アメリカではいろんな相手にデュエルを挑んでいたが、そのせいでさらに孤立していたことは本人は知らない。
アメリカでとある事件にあい、精霊を見る力を手に入れて、相棒であるサイコ・ショッカーの精霊と出会った。その後、アメリカアカデミアで起きた闇のゲームに関するとある事件を解決し、それをペガサスが知ったことがきっかけで、特別推薦、受験番号0番として、デュエルアカデミアの高等部編入試験でクロノスを瞬殺し、無事にアカデミアへと入学を果たすこととなる。
所持デッキは人造人間サイコ・ショッカーをエースとした、【人造人間サイコ・ショッカー】。
得意戦術は魔法、罠で墓地に送ったサイコ・リターナーやサイコ・ジャッカーなどを使用したサイコ・ショッカーの大量召喚。
ちなみに名前の由来は「サイコ」。
本人は知らないが、アメリカアカデミアで起きた事件を殆ど単独で解決したため、(精霊であるサイコ・ショッカーは通常の人間では見えないので除外。その筋ではDM関係のオカルト事件の専門家として知られている。
■人造人間サイコ・ショッカー
黄慈の所持する精霊のカード。元々黄慈のデッキのカードに宿っていたが、とある事件で黄慈が精霊を見る力を得てからは、黄慈が最も信頼する存在となっている。
某クリアモンスター使いが元々所持していたオネストと同じ、実体化が可能な上級精霊でもあり、その力を使い、アメリカアカデミアで起きた闇のゲームが関係する事件を解決するのに協力した。
ちなみに、喋り方が適当なのは、作者がサイコ・ショッカーの喋り方をどうしようか迷った結果、もう適当でいいやと、ちょっと雑な喋り方になった。
性格は軽いが、マスターである黄慈への忠誠心は高い。
どうでしたでしょうか。ベテランのデュエリストならタイトルをみればわかったでしょうが、この主人公が使うデッキは「人造人間サイコ・ショッカー」をエースとしたデッキになります。
【未来ハゲ】が構築不可能になり、活躍の場が少なくなったサイコ・ショッカーですが、GXでの環境ならまだまだ現役だなーと思い、少しずつ書いていたものです。最近はサイコ・ジャッカーの販売も決定しましたし、それを記念してってことです。
そして、サイコ・ショッカーを使うぼっちデュエリストは、アカデミアでとあるリスペクト流派の使い手たちに敵対流派と勘違いされ……みたいな感じのものを書いてみたかったんですが、ちょっと、正直サイコ・ショッカーデッキで小説を書くにはオリカに大部分を頼らなくてはいけないと思い、残念ながら断念しました。正直、オリカに頼りすぎるとご都合主義が過ぎてしまう気がしますし。
……誰か、代わりに書いてくれないかなー?(チラッ