ただこの話はいずれいろいろ調べて書き直すかもしれませんのでそこらへんはよろしくお願いします。
書かない理由:空手の知識が足りないため(史上最強の弟子ケンイチ)
~これは一つの善行により武の才を手に入れた一人の転生者の物語~
★
★
俺がその記憶を思い出したのは、俺が五歳の時、階段から落ちて頭を打ち付けて気絶してしまったのがきっかけだった。
前世の俺は、小説や漫画の題材になるほどの伝説的な存在である空手家の子孫の家に産まれ、幼いころからその空手家が創始した流派の跡取り息子として、武術家としての英才教育を受けてきた。
それは常識的に考えて子供に施すような教育ではなかったが、幼いころより一線級の武術家として活躍する父親や兄弟子たちの背中を見てきて育った俺は、そんな彼らに憧れを抱いており、早く追いつきたかった俺は、時に泣きたくなるほど厳しい修業でも、文句一ついわずに黙々とこなしていた。
一流の武術家を目指して修業に励む日々。しかし俺は全くつらくはなかった。それが憧れの人たちに近づく行為だと信じていたからだ。……だがそんな俺の夢も唐突に終わりを迎えた。
俺が十五の時、家の流派の総師範である祖父に告げられたのだ。
『―――武の道を諦めろ』
先にいっておくが、別に祖父は意地悪で俺にこのようなことをいっているのではない。理由は全て俺にあった。
―――俺には絶望的に武術の才能がなかったのだ。
薄々は感づいていた。同期の門下生が簡単に覚える技の習得も俺は時間をかけなければいけないし、大会に出てもなかなか結果を出せない。
自分で言うのもなんだがそこいらの人間とは修業時間が違うので試合に勝てないわけではないのだが、それでも世界的な流派の宗家である実家の後を継ぐ人間に求められる実力に達せられるほどの才能がなかったのだ。
だが俺も幼いころから父親たちの背中を追いかけて修業に励んできた身。いわれてそう簡単にあきらめられるわけがない。
そう考えた俺は、俺が武の道を辞めた際後を継ぐ予定であるという兄弟子との試合を要求。それに勝てたら今のまま後継ぎとして武術の道を諦めずにすむことになった。
その兄弟子には俺も幼いころから修業をつけてもらっており、文字通り兄のように慕っていたのだが、その腕は凄まじく、体格的に追いついた今でも勝てたためしはない。
それは絶望的な戦い。だが諦めるわけにはいかない俺は一カ月の猶予を貰い、自身に今までの修業が可愛く思えるほどの猛特訓を課し、その試合に臨み―――
―――そして敗北した。
それは一方的な試合で、俺のことをよく知る兄弟子たちの中にはやりすぎではという声も上がったのだが、彼と付き合いの長い俺にはわかった。俺を殴る度に彼の瞳に苦悶の表情が浮かんでいたことを。
おそらく彼も苦しかったのだろう。俺が彼のことを兄と慕っていたように彼も俺を弟のように思ってくれていることを知っていたからだ。
後で他の兄弟子に聞いたところによると、今回の試合は本当は彼の本意ではないそうなのだが、祖父にこれから俺がこの道をずるずると続けてもためにならず、ならば早いうちに引導をわたし諦めさせたほうがいいということで、この試合を受けたんだそうだ。
それを聞いた俺は、もうなにもいうことができず、祖父の言葉に従い武術の道を諦め普通の人生を歩むことにした。
普通の学生としての生活は、俺が想像したより楽しく刺激に満ちた時間だったが、それでも今までの生きがいでもある武術を失ったためなのか、どこか胸にぽっかりと穴のあいたような虚しさを常に感じていた。
それはとある会社に就職し、妻を迎え子を為しても変わらず、そんな思いを振り切るためにも俺はがむしゃらに働いたのだが、それでも武術への情熱を振り切ることはできなかった。
だからだろうか。自宅に変える途中にチンピラに絡まれている学生を見て助けてしまったのも。
純粋に彼が哀れだったのもあるが、武術の道を閉ざされ使う機会がなくなった空手の技を使いたくなってしまったのだ。………尤もそのせいで報復として、後日チンピラの中の一人に報復としてナイフで刺されて死んでしまったのだが。
だが俺は運がよかった。思わぬ形で死んでしまい人生の幕を閉ざしてしまったはずの俺は彼(・・・)に出会うことができたのだから。
そう―――
――『神様』と呼ばれる存在に。
★
★
彼がいうには俺がチンピラから助けた学生は、将来世界を救う救世主になる存在らしいのだが、あのままではチンピラに抵抗したことでその怒りを買ってしまい、俺と同じくナイフで刺されて死んでしまうところだったらしい。そんな彼の運命を俺が代わりに請け負ったことにより世界は救われたので、そのお礼として新しい人生をプレゼントしたいといってきた。
しかし俺はそんな彼の言葉にさほど興味を持てなかった。またあのような虚しい日々を送るくらいなら、このまま死んで天国やら地獄やらにつれていってもらったほうがいいかもと思ってしまったからだ。
だが神様のとある言葉に俺は耳を疑った。―――欲しい才能があるのならくれてやるという言葉に。
俺はその彼の言葉に祖父の言葉を思い出した。「武術をやめろ」という言葉を。
俺は才能のために武術の道を諦めたが、才能があったら諦めずにすんだのにと何度思ったことか。
そんな何度も頭の中で繰り返したIF(もしも)。それが現実になるという言葉に俺は逆らえることはできず、彼の申し出を受けることにした。
★
★
そして新しい生を受けた俺は、なにか理由があったのか物心ついた時からとある小さな孤児院に世話になっていたが、そこの院長は年寄りだが温厚で思いやりのある性格で、俺も含めた孤児院の皆に多大な愛情を持って接してくれたので、生活にこれといった不自由はなかった。
そしてある程度年齢が経ってから肝心の才能の方も試すために生前学んだ空手の技を試してみてわかった。自身の体のキレが生前とは圧倒的に違うのを。
力や体力はもちろん厳しい修業を積んだ生前の体の方がすぐれているが、それ以外では少し体を動かした今の方が優れていることが理解できたのだ。
俺はこれに歓喜した。これだ!これこそが俺の求めていたものなのだと!!
それからの俺は自分より年少の子供たちの世話をしながら生前行っていた修業の中で今の自分が行える修業を全て行っていった。
その度に力がつき、キレが増していく自身の体に俺はますます自身の体を鍛え上げるのにのめり込んでいった。
血の繋がっていない俺のことを「息子」と呼び愛情を注いでくれる院長に、俺を兄と慕って懐いてくれる子供たち。そして日に日に上がっていく俺の実力と、俺は幸福な毎日を送っていた。
―――この男が現れるまでは。
「―――ぐあッ!?」
「じいさん!!」
「ざまあみやがれ、このジジイ!!」
俺をたった今殴り倒したこの男の名は氷室(ひむろ)。関東系のとあるヤクザの幹部をやっている男であり、この孤児院の土地を狙い、何度かうちの孤児院へとやってきていた。
だが家の院長であるじいさんはそれを断り続けていた。この孤児院が潰れてしまえば俺たちがどうなってしまうかわからないからだ。
そんなじいさんの様子に痺れを切らした氷室が組員を連れてここに押し寄せてきたのだ。
「―――このクソ野郎!!」
じいさんを殴られて頭に血が上った俺は氷室に殴りかかる。それを防ぐかのように氷室の部下が割って入るが、
「がっ!?」
「ぐあ!?」
「なにッ!?」
俺を取り押さえようと伸ばしてきたその手をよけて二人の護衛を殴り飛ばす。
そのまま驚愕の票所を浮かべている氷室に殴りかかろうとするが、
「ぐ、なめるなクソガキが!!」
「なッ!?」
先ほど殴り倒した男の一人が俺の体にへばりついて動きを体をはって止めてきたのだ。
氷室はそんな俺の硬直を見逃さず、手に持っていた拳銃の柄で殴り飛ばす。
「ぐはッ!?」
俺はそのまま先ほど殴り飛ばされたじいさんに体ごとぶつがった。
「うぐッ。だ、大丈夫か?」
「お、おう。なんとか……」
俺を気遣うじいさんの言葉に、俺はなんとかそれだけを返す。
そんな俺たちを苛立たしげに見ていた氷室は、俺を殴り飛ばすために使った拳銃をそのまま俺たちへと向ける。
「ふざけやがって、このクソガキ!そんなに死にたかったらこのまま殺してやるぜ!!」
そして氷室が引き金を引こうとした……その時だった。
「―――いやー、子供を殺すのはさすがにやりすぎでしょう」
―――その声が聞こえてきたのは。
「ッ!?だ、だれだ!!」
突然聞こえてきたその声に、氷室は声のした方に振り向き、俺たちもそれにつられて視線を向ける。
そこには一人の青年が経っていた。
ぱっと見、どこかの大学生だといわれても通じるような青年だったが、前世の経験と神様に貰った武術の才能により俺は気づくことができた。
―――その身に秘める、彼の暴力的なまでの圧倒的な力に。
暴力の世界に身を置く者として、彼もそんな青年の実力を感じることができたのか、氷室は額から冷や汗を流しながらも虚勢をはり、彼を怒鳴りつける。
「だ、誰だてめえは!?外の見張りはどうした!!」
「ん?ああ、彼らなら眠ってもらったよ?今頃いい夢でも見てるんじゃないかな?」
「―――なッ!?」
なんでもないことのようにそう答える青年の言葉に、思わず絶句する氷室。
それも仕方ないだろう。俺たちがこの部屋でやりとりをしている間、外からはなにも物音が聞こえなかった。
ということは目の前のこの青年は拳銃を所持した男数人を、物音を立てずに無力化したということなのだから。
だが青年がゆっくりとこちらに歩いてくる姿に、氷室は怯えるかのように俺たちに向けていた拳銃をその青年へと急いで向ける。
「く、来るんじゃねえ!?おまえらやっちまえ!!」
その氷室の言葉と同時に彼の手下たちは各々の武器を取り出し、青年に襲いかかった。
「に、逃げろ!!」
その光景に思わず俺はそう叫んでしまう。彼がとんでもない実力者なのは感じ取れるがどう考えても絶体絶命な状況。常識的に考えても彼がそれを逃れることができるとは思えなかったからだ。
―――だからこそ、俺はその時見た光景を信じることができなかった。
「ふッ!」
青年は襲いかかってくるヤクザ者たちの姿を一つ鼻で笑うと、一息でそいつらをとんでもない力で瞬く間に全員殴り飛ばした。
「なッ!?」
そんな常識はずれな光景に、氷室も思わず驚愕の声を出す。
だがそれも仕方ないだろう。俺は前世では多くの武術家、格闘家を見てきたが、そんな俺の経験でも今目の前でみた光景を理解することなどできなかったからだ。
自らを阻む者がいなくなったからか、青年は再び氷室へと向かって歩むを進める。
「く、くるんじゃねええええええええええ!!」
化け物のような実力を示した青年が自身に近づいてくる姿を見て、恐怖に負けたのか引き金を連続で引き絞るが、青年はその銃弾の軌道が見えているのか、体をしなやかにゆらし、ついに氷室の目の前にまで到着すると、彼が手に持つ拳銃を掴むと、そのまま握りつぶす。
「なんだとッ!?」
「―――寝ていろ」
驚愕する氷室に青年は一言そうつぶやくと、首に手刀を落とすと、氷室はその場で崩れ落ちた。どうやら気絶したらしい。
(あんな漫画染みた方法でよくもまあ……)
俺の今までの常識を覆す事態に、呆然とする俺とじいさん。
そんな俺たちの様子に気づくと、青年はにこやかな笑顔で俺たちに近づいてくる。先ほどまでの圧倒的な覇気が嘘のようなさわやかさだ。
「大丈夫でしたか?」
「あ、ああ助かったよ。ところで君はいったい……?」
じいさんの言葉に青年は一瞬きょとんとしたが、やがて何かを思い出したかのような表情を浮かべると、申し訳なさそうな表情で口を開く。
「ああ、そういえばいってませんでしたね」
そういうと、青年は再びさわやかな、それでいてどこか深みのある笑みを浮かべて言葉を続ける。
「―――僕の名前は”鈴木はじめ”。しがない空手家ですよ」
―――これが俺、『筑波歳三(つくばさいぞう)』と生涯の師と仰ぐこととなる空手の達人『鈴木はじめ』の出会いだった。
★
★
■筑波歳三(つくばさいぞう)
・この小説の主人公にして転生者。
前世では漫画の題材にされるほど高名な空手家の子孫として産まれ、その空手家が作り上げたとある空手の流派の跡取り息子として生きるが、才能がなく武術の道を諦める。
しかし諦めたはいいが武術の道を諦めきれず、再び技を振るいたいと思った歳三はある日チンピラに絡まれていた学生を発見。救助の目的で以前学んでいた空手の技を使い、そのチンピラ達を打ちのめすが、それを逆恨みしたチンピラの一人によってナイフで刺されて死亡するが、助けた学生は実は将来世界を救う救世主で、自分はその身代りで死んだことをしる。
そしてそのお礼として神様により武術の才能を与えられ「最強の弟子ケンイチ」の世界に転生。とある理由により物ごころついたころより孤児院で育つが、そこの院長の愛情を存分に注がれ、また自身の兄弟である年少の子供たち、そして前世では考えられないほどの速さで成長していく自身の成長に幸せを感じていたが、ある日、孤児院の土地を狙っていたヤクザ者、氷室が急襲。絶体絶命のところを空手家の達人である鈴木に助けられる。
空手馬鹿で、転生してある程度体が自由になる年齢になってからほぼ毎日鍛錬を行っている。
今一番の悩みは顔がいかついために初対面の子供がたいていは怖がってしまうこと。
……まあそんなわけで転生した原作キャラとは、原作では空手部最強の空手家(笑)として名高い筑波さんでした。当たった人はいましたかね?いるわけないか。
今回この話を書いたきっかけは、一影九拳が一人である本郷と梁山泊の一人、酒鬼の過去編で出てきた空手の達人、鈴木はじめの話を見て、彼の空手を受け継ぐ空手家がいたらいいなあと思い書いてみました。(後原作で出てくる空手家の達人クラス以外のキャラでよさそうなのがなかなかいないっていうのもあります。本郷さんの弟子の叶君は空手以外も使っちゃうし、他の弟子はキャラ薄いし(おい)
まあそんなわけで主人公を孤児院育ちに設定し、そこに鈴木君が助けにかけつけたわけです。
……え?主人公を筑波君にした理由?特にないよ(おい