江戸川コナン、いや工藤新一にはかつて一人の兄がいた。
その兄の名は”
今でこそ(といってもコナンへと変わってしまう前の話だが)天才高校生探偵などと世間から持て囃されていたが、彼は天才という名は自分等より兄の方がよっぽど相応しいと常々考えていた。
勉強はテストで満点をとるのは当たり前。小学生の時に、あまりに兄が好成績を取り続けるために教師が遊び半分で有名大学の入試問題を授業中に出して、軽く正解したことはその中学では半ば伝説となっている。
さらにその頭脳もさることながら運動神経も抜群で、体を鍛えてはいたが運動部やクラブに入っているわけでもないのにどんなスポーツをこなし、得意のサッカーでもなかなか勝てなくて何度も悔しい想いをしたのはよく覚えている。
高校に入ってから始めた空手では、ずぶの素人だったはずなのに入部一年目で空手を習うために入った空手部の全国大会優勝に大きく貢献し、二年に上がった時にはまだ空手を始めて二年ほどしか経っていないにも関わらず、個人で全国優勝を果たした。
そこまでなんでもできるならば調子の一つにでものりそうなものだが、彼に限ってはそのようなことはなく、進んで敵対する相手には容赦がないところはあったが、誰に対しても優しく寛容で、困っている人たちには進んで手を差し伸べ、そのためか彼の周りにはいつも彼を慕う人たちが集まり、彼はいつもその中心でにこやかな笑みを浮かべている。
さらに彼はどこか巻き込まれ体質なところがあるらしく、行く先々でいろいろな事件に巻き込まれることが多かったのだが、そんな数々の難事件を彼は世界的に有名な有名な推理作家である父親譲りの推理力で解決していき、いつの間にか一部のメディアから「若き名探偵」と持て囃されるようになる。
元々父親が父親なだけあり、幼いころから数々の推理小説を愛読し、幼いころから既にそんな推理小説の主人公の中でもシャーロック・ホームズに憧れを抱いていた新一は、そのシャーロックホームズにも重なる完璧な兄の姿に、心の底から憧れを覚え、両親が仕事でよく自宅を空けていたこともあり、小さい頃はよく兄の後ろをついてまわっていたのを、新一はよく覚えている。
新一は早く大きくなって兄と一緒に難事件を解決する一流の探偵になりたいと、幼なごころにそう思いながらも、両親と憧れの兄から深い愛情や様々な知識と共にいろいろな物を与えられながら平凡で、だからこそ幸せな生活を送っていたのだが、そんなある日、あるとんでもない事件が起きる。
それは新一が未だ中学生の時のこと。その当時高校生であった光一が、何を思ったのか海外でのボランティア活動に参加するためにとある国を訪れていたのだが、とある事件に巻き込まれてしまいそのまま行方知れずになってしまったのだ。
当然それを知った彼らの両親は、海外の知り合いなどの伝手を頼って必死に彼の行方を探したが、しかし結局彼の行方はわからずに、そのまま彼の捜索は中断されてしまうことに。
新一は慕っていた兄が突然いなくなってしまったことにより一時部屋に引きこもってしまうほどのショックを受けてしまうが、しかし幼馴染の蘭を始めとした周りの人々の支えによりなんとか立ち直った彼は、いなくなってしまった兄の代わりとでもいうように探偵として様々な事件の解決に協力し、兄と同じく探偵としての名声を手にし、やがて「東の名探偵」と呼ばれるようになる。
現在はとある事情により少年の姿となり、「江戸川コナン」として幼馴染の蘭の家で、正体を隠しながら小学生として生活しているが、目立たってはいけないと思いながらも、阿笠博士の発明を駆使して蘭の父親である毛利小五郎を(いいかたは悪いが)隠れ蓑とし、このような姿となってからも探偵としての活動を続けている。
それは探偵としての本能に基づいた行動ということもあるが、それ以前に彼は示したかったのだ。自らの憧れである兄。自分はそんな兄に相応しい弟だということに。
だが、そんな彼だからこそわからなかった。
「なぜだ、なぜあんたが
そう、行方不明となっていた
そんな彼の言葉を受けて、しかし彼の兄
まるで弟と敵対することとなった今の現状を、心の底から待ちわびたとでもいうかのようにその頬を僅かに紅潮させながら。
「くくく。別にいいだろうそんなこと。それより始めようじゃないか新一、いや江戸川コナン。
――――命を賭けたゲームを」
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■江戸川コナン
この小説の主人公にして原作主人公。
なんでもできる完璧な存在である兄を心の底から慕っていたが、ある日彼が海外で行方不明になると一時的に引きこもり状態に。だが蘭を始めとした周りの人間に支えられて一念発起。その後は自身が兄に相応しい弟であるように。いずれ兄が戻って来ても恥ずかしくないようにという想いもあり、原作通り様々な難事件を解決して東の高校生探偵として有名に。
その後コナンへとなってしまった後も、幼馴染の父親である小五郎を矢面に立たせて隠れ蓑にしながら様々な事件を解決していったが、ある事件に黒づくめの組織が関わっていることが発覚。仲間たちの助けもあり、持ち前の推理力と行動力で彼らを追い詰めるが、そこに彼らと同じ黒づくめの服装に身を包んだ
■工藤光一
この小説では新一の兄として登場。
頭脳明晰、運動神経抜群と完璧超人と知られていたが、実は巷でいう神様転生系の転生者で、彼の能力が軒並み高いのは自信を転生させた神様から貰った特典のおかげ。
初めはそのスペックの高さにはしゃいではいたのだが、やがて何をやってもなんでもできる。同年代はおろか身内以外の存在の殆どがいい大人でも自身より能力で劣るその状況に退屈を感じていた。
そんなある日、その能力の高さを見込んで黒の組織から勧誘にあい、犯罪組織である彼らの仲間になればそれぞれ得意分野なら自身より上な両親や、頭の回転なら自分の上をいく可能性を当時から見せていた新一、つまりコナンといずれ戦うことになるだろうと考え、この日々に退屈して腐っていくよりはと彼らの仲間になるという選択をとった、退屈を紛らわすために犯罪組織に入ったという、実は性格がどこかおかしい人物。
コードネームは特に考えていない。お酒には詳しくないもので(すいません)。
本当はマイクロフト・ホームズみたいに能力の優れた兄が新一にいたらなーと思いこれを書こうと考えたんですが、そういえばマイクロフトの方はなんかの秘密組織に所属してたんだっけ?という考えに至り、コナンの世界での秘密組織が黒づくめの組織しか思い浮かばず、なぜかコナンたちと敵対することになってしまった。……本当は海外で知り合った世良さんといちゃつく感じにしたかったのに。世良さんマジ可愛いよ世良さん。