えんとつそうじのネタ帳   作:えんとつそうじ

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どうも、最近は遊戯王はクラウンブレードというデッキを作って遊んでいるえんとつそうじです。

知っている人は知っていると思いますが、強いですよねクラウンブレード。使ってて結構楽しいです。

さて、今回の短編はよく神様転生物の小説である「平穏に暮らしたい」とかいいながら、ハーレムを作っちゃったり、なんだかんだで首を突っ込んだりする転生者。所謂踏み台転生者たちもいる世界で苦労している、そんな彼らに送るおすすめの転生特典のお話です。

まあ、ぶっちゃけ一番てっとり早いのは、神様に原作に関わらず平穏に暮らせる幸運が欲しいみたいなことをいえばいいと思うのですが、そこら辺はつっこまず、軽い気持ちで暇つぶしがてらお読みください。

それではどうぞ。

※このお話は、小説家になろうでも投稿されています。


踏み台転生者がいる世界で平穏に過ごしたい人におすすめな転生特典:オリジナル

 ………突然ですが、画面の向こうの皆様。あなた方は最近ネット小説で流行の「転生物」というジャンルを御存知だろうか?

 

 転生。仏教用語でいう生まれ変わりを意味する言葉だが、この転生物というのは漫画やライトノベルなどの創作物、または過去の歴史の教科書に載っているような時代や、剣や魔法の世界と呼ばれるようなファンタジー世界などいろいろな世界に、これまたいろいろな理由でこの転生という物を果たした主人公たちが活躍するというもので、その転生する理由として一番よく使われているのが、何をかくそう「神様転生」である。

 

 これは、簡単にいえば神様のミスや暇つぶし、ただの仕事や全くの偶然で死んでしまった主人公を、神様が所謂転生特典と呼ばれる主人公に転生先でも十分に生きていける力を与えて前述したように様々な世界に転生させ、その主人公がその転生した世界で活躍するというもので、その男(・・・)はよく暇つぶしがてらこの手の話をよく読んでいた。

 

 しかし、これはあくまでお話の世界のことであり、実際にそのようなことが存在するわけがない。少なくともこの小説を愛読している人たちですら、いや愛読している人たちであるからこそそのようなことが絶対にあるわけないと理解しているだろう。そして、その男もそんな人たちの例に漏れず、そう考えていた。

 

 だからこそ、彼は自身がそのような境遇(・・・)になった時心の底から驚愕したものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――まさか、「本当に神様転生などというものが存在するとは」と。

 

 これは、他にも神様により転生した性質の悪い転生者たちがいる世界に転生した、ごく普通の平穏を求める転生者が、自分の平和な生活のためにとったある行動の物語。

 

 

 

 どうも、皆さまはじめまして。僕の名前は”田中太郎”。この平凡な名前からも見てわかるとおり、ごくごく普通の一般家庭に生まれた、少し他よりは頭がいいと評判のごく普通の小学生だ。

 

 そんな僕にはある一つの秘密があるのだが、誰にも喋らないと約束してくれるならば、その秘密を教えてもいい。……ごめん嘘です。ぶっちゃけ誰かに話したいので是非聞いてください。よろしくお願いします(土下座)。

 

 実は僕は所謂前世の記憶というものがあり、神様と呼ばれる存在により転生特典というものを貰いながらもこの世界に転生した、通称「神転系転生者」と呼ばれる存在だったりするのです。

 

 前世の僕は、とある食品関係の会社で一応部長職についていたのですが、ある日仕事からの帰り道、最近入ったばかりの新入社員にナイフで刺されそのまま死んでしまったのだ。

 

 そして気づいたら自らを神と名乗るなんか凄い威厳を感じる老人と出会い、なんでも自分たちのミスのせいで僕の死期が縮んでしまったからと、転生特典を2つ上げるのでとあるアニメの世界でお詫びとして第二の人生を送らないかという話を持ちかけられた。

 

 その転生する先のアニメの世界というのが、前世ではオタクに大人気であり、普通の人々でも結構名前だけは知っているんじゃないかというほど有名なとある魔法少女アニメの世界らしいことを聞いた僕は、そのアニメ自体はオタクではあるがあまり興味がなかったが、その手のタイプの同胞たちは喜びそうだと思い、また本当にこんなネット小説のようなことがあるんだなーとどこか他人事のように考えていたが、そこで僕はある一つの疑問が生じたので、神様にそのことを質問することにしたんだ。

 

 その疑問とは、なぜ神様ともあろう存在がただの人間である僕のような存在相手に「お詫び」などするのかというもの。

 

 僕の勝手な考えかもしれないが、「神様」と呼ばれる存在は万能な存在であり、ミスなどしないと思うし、仮にミスなどしても人間に対して圧倒的に立場が上のはずの神様がお詫びなどする必要が無いはずだ。

 

 まあ、前述したようにこれはあくまで僕の勝手な考えなので、本来なら神様といえどミスもするかもしれないし、この神様は人間相手にも親身に接してくれる慈愛溢れる性格なのかもしれない。

 

 本当にただ興味本位で聞いただけだったのだが、その質問は実にその神様の心によく響いたようで、聞いた途端に「聞いてくれるのか!?」とそれまでの威厳溢れる姿とはうって変わった様子で俺に詰め寄りながらも口早に僕に対して語り出した。

 

 なんでも、僕はミスをしたというのは神様のことだったらしいのだが、それは僕の勘違いで本当は部下の天使がミスをして、彼はその尻拭いとしてここに立っているらしく、彼よりさらに位の高い神が決めた規律に乗っ取り、こうしてその部下のミスで死んでいった人間たちに特典を与えてそれを転生させていたのだが、その転生させることとなった人間たちがこれがまた性質の悪いやつらで、こちらがミスしたことにつけこんでいろいろ罵倒されて無茶な注文をされてしまったらしい。

 

 自分のミスではないのになぜ自分がこんな思いをしながらもこのようなことをしなければと、彼は余程鬱憤が溜まってしまっていたらしく、こうして僕の言葉をきっかけに爆発してしまったということらしいのだが、僕はそんな彼の言葉を我ながら真摯に聞いていたと思う。

 

 なにせ、私も規模は中堅といえど部長職についていた身。使えない部下など多く見てきたし、何をかくそう僕を刺した新入社員も、僕がミスを注意しても口答えや言い訳ばかりする正直早くクビにしたい類の人間であったのだ。おそらく僕を刺したのも日頃ミスの注意を何度もしたからこその逆キレからだろう。あいつの性格上十分有り得る。

 

 だからこそ、僕はその神様の話にとても共感が沸き、とても意気投合した。

 

 そのおかげだろうか。その神様は大分機嫌がよくなり、僕に対しては本来転生特典は2つだけのはずなのに3つにオマケしてくれ、「時々またお互いの話でもしよう」と笑顔で送り出してくれた。

 

 そうして僕は、今現在僕が生活しているこの世界へと転生したというわけなのだ。

 

 ちなみに僕が貰った転生特典は「不自然ではない程度の整った容姿」と「学習すればするだけ成長する力」の2つ。ちなみに後一つは保留にしてもらった。

 

 ……うん、いいたいことはわかる。転生特典が地味だといいたいんでしょう?でもこれでいいんだ。僕にはよくこの手の小説のオリ主がするような原作介入をする予定はなく、ただ平穏に、しかし特典を有効利用して所謂勝ち組になりながらも平穏に暮らしたいだけなんだから。

 

 だってそうでしょう?確かに強力な転生特典を持って原作にヒーローの如く介入し、ヒロインとフラグを立てたり活躍したりしたいのは、前世で一オタクだった身である僕も理解はできる。

 しかし、今僕たちがいる世界は現実であり、ただ単に前世で有名だったアニメに酷似しているというだけの世界。無駄に命を賭けて死んでしまっては元も子もないし、そもそもアニメでは主人公である魔法少女たちが、悲しい出来事は度々あったがきっちり事件を解決していた。

 

 だからこそ、僕はこの世界で起きる事件の全ては彼女たちに任せ、自分は特典を使って前世とは違い高い学歴を持つことで一流の会社に入社し、勝ち組になって平穏に過ごそうと考えたのだ。

 

 しかし、そんな僕の野望も、とある人物たちのせいで脆くも崩れ去ろうとしていた。

 

 それは今現在目の前でこの世界の主人公たちにつきまとって嫌がられている三人の独特な風貌の少年たちに会った。

 

「おーい、奈葉。一緒に帰ろうぜ!!」

「え、一緒に返るのはちょっと。……それに名前で呼ぶのは止めてほしいって何回もいっているんだけど」

 

 一人目はこの世界の主人公である少女に一緒に下校しようと誘ったが、顔を引き攣らせられながらも名前呼びと一緒に断られた銀髪オッドアイの少年”鬼龍院北斗(きりゅういんほくと)

 見た目も名前もそして中身も厨ニ病まっさかりの彼は、主人公である少女がお気に入りらしく、度々一緒に帰る誘いをかけては彼女に断られているが、それにも関わらず彼女につきまといストーカー行為を繰り返しているともっぱらの噂だ。

 

「ちょっと、いい加減どっか生きなさいよ!?あんたたちの顔なんて見たくないんだから!!」

「またまたー。安奈はツンデレさんだな☆」

 

 二人目は主人公の親友であるツンデレ少女に思いっきりどっか行けといわれているにもかかわらず、頓珍漢なことをいってさらにその少女につきまとっている金髪碧眼の明らかに日本人でない外見な少年”鳳凰堂刹那(ほうおうどうせつな)”。

 彼は度々あの少女を口説いているのだが、毎回ああいう感じで真っ向から拒絶されている。しかし彼はその度にそれを彼女がツンデレ。要するに素直になれないだけだといいきり、懲りずにまた口説くことを続けているという、悪い意味で前向きの少年だった利する。

 

「――――でさあ?この間結構洒落た喫茶店を見つけたんだけど、一緒にいってみない?」

「………」

 

 そして最後に三人目。主人公のライバル的存在であるクール系少女に、眉間に皺を寄せながらもずっと無視されているにも関わらず、延々と喋り続けている赤髪の所謂男の娘といったタイプの中性的な容姿の少年の名は”狂音殺介(きょうおんころすけ)”。

 名字の”狂”はともかく、名前に”殺”すという文字を入れるという、明らかに親のネーミングセンスを疑う名前の彼は、どうやらドMらしく、ああして彼女に延々と話しかけ、我慢できなくなった彼女が冷徹な瞳で罵倒してくるのを待っているという変態だ。

 

 三人が三人とも整った容姿ではあるが奇抜な見た目である彼らには実は2つの共通点があり、1つは先ほどもいったとおり、この世界の物語の主人公たちにしつこくつきまとっていること。そしてもう1つは、彼女たちに近づく男子たちをことごとく排除しようと働くこと。

 困ったことに、彼らは彼女たちを自分たちだけで独占したいらしく、ちょっとした用事で話しかけようとしただけ出会ったも、「モブ」だの「害虫」だのいって難癖をつけて彼らを力づくで排除しようとする。そのせいで今この学校では彼らに近づくことは男子生徒どころか教師であろうともタブーな事とされており、必要最低限の接触だけで遠回しに敬遠するようになった。

 

 そんな彼らの正体を、そして彼らがなぜ主人公たちにああしてつきまとっているのか、実は僕はその全てを知っている。

 その理由を話すには、実はたった一言あれば方がつく。そう、彼らは所謂”踏み台転生者”というやつだ。

 

 踏み台転生者とは、好きなアニメの世界や漫画の世界に転生した転生者が、その世界を現実とは認識せず、どうせ創作物の世界だと前述したようにその世界の主人公やヒロインたちにストーカー行為を働いたり、彼女たちに近づく男たちをモブだのなんだのいい、理不尽に罵倒し、力づくで遠ざけようとする。

 そのせいでヒロインたちはおろか周りからも蛇蝎の如く嫌われたりするのだが、本人たちは神様に選ばれた自分たちにそんなことはあり得ないとでも考えているのか、迷惑行為を繰り返す存在で、よくあるネット小説なんかでは、そんな嫌われ者の彼らをオリ主が倒し、文字通り彼らの人気の「踏み台」になることから「踏み台転生者」と呼ばれている。

 

 おそらく、その言動から転生する際にあの神様から聞いた、彼が転生させた性質の悪い人間たちだと考えた僕は、しかし実は最初は放っておこうとも考えた。

 

 確かにあのような存在自体迷惑な人間につきまとわれているなど道場に値するが、平穏な勝ち組生活を目指している僕としては、あのような存在と関わって、目をつけられているのは勘弁してもらいたかったからだ。

 

 しかし、そう思って行動をしなかった彼らの行動が、全く関係のない男子生徒たちの排除や彼女たちのプライベートに入りだすと、流石に僕も彼らの行動を見逃せなくなってしまった。

 なにせ、この世界で未来に起こるはずの事件には、下手をすれば世界が滅亡してしまいかねない規模の事件もある。だから彼らが彼女たちに精神的疲労を与え続け、その疲労のせいで万が一原作どおりに彼女たちが事件を解決できなくなってしまっては、勝ち組生活どころではないからだ。

 

 だからこそ、僕は保留にしている残り一つの転生特典で彼らをなんとかしなけらばと考えたのだが、しかしあの神様の話では、彼らは各々が考える抜群の容姿と最強クラスの戦闘スキルを手に入れていると僕はその時聞いており、彼らの傲慢な性格から完全には使いこなせてはいないと思うが、しかしたった一つの特典では彼らを力づくでどうにかするのは無理だとまずは結論付け、その次にはいっそのこと彼らの命ごとこの世界から消してやろうとも考えたが、さすがに忌避はするが恨みもない相手を殺すのは忍びない。

 

 それからしばらくうんうんと唸りながら考えていた僕は、ふとある考えが浮かび、それを実行に移すために、神様へ、これが最後の転生特典としてある願いを捧げた。

 

 そして、神様に願いを捧げた翌日。何時も通り学校に投稿した僕は、周りの子たちの噂話からその願いが叶ったことを確信し、思わず口元をにやりと歪めた。

 

「ねえ、聞いた?あの三人組が失踪したっていう話」

「聞いた聞いた。家族も気づかない間にどこかにいっちゃったんでしょ。その代わりになぜか全く似ても似つかないおっさんがあの子たちの部屋にいたんだって」

「なにそれちょー意味わかんない上に超怖いじゃんww……でも、正直あの子たちいなくなってせいせいしたよ。確かに顔はいいけど、行動自体かなり迷惑だったし」

「あははは、確かにー」

 

 談笑している女生徒達の話を聞き、僕は内心思わず笑みを深める。

 

 今の彼女たちの言葉を聞けばわかる人はわかると思うが、僕が神様に転生特典として願ったのは彼ら「僕以外の転生たちの転生特典の完全消失」。そのおかげで彼らは転生特典であるである抜群の容姿と最強クラスの戦闘スキルを失い、この世界で生きていた彼らとは全く別人である、前世のオタクであった彼らの姿そのままになってしまったというわけだ。

 

 おそらく、彼らは幼児誘拐の容疑でもかけられて刑務所に入るか、意味不明の発言をしまくって精神病院に強制入院でもさせられるかもしれない。

 

 そこは少しすまないとは思うが、しかし彼らの行動が世界を滅亡に導く可能性があったし、彼らの存在自体が迷惑だったのは事実。(現に彼らが姿を消したという話を聞いた同級生たちはその口元に笑顔を浮かべていたし、特に教室に向かう途中で見かけた主人公たち三人組は人目もはばからず万歳三唱。とち狂ったように喜んでいた)

 

 だからこそ彼らの人生設計を台無しにした罪悪感は既に僕にはなく、むしろいいことをしたといい気分になりながらも僕はいつもの教室へと、鼻歌を歌いながらもその歩みを進める。――――これで僕の人生は安泰だと思いながら。

 

 

 

 

 

田中太郎(たなかたろう)

 

この小説の主人公。

 

前世ではとある食品関係の会社で部長職を勤めていたが、ミスを指摘して叱った新入社員に逆キレされ、ナイフで刺されて死亡してしまう。

 

部長職であるがゆえに使えない部下をどう使うかなど部下関係でいろいろ苦労しており、そのためか、部下の尻拭いのために鬱憤が溜まっていた神様と意気投合。そのおかげか、本来は2つだけしか貰えないはずの転生特典を3つ貰えることとなり、アニメの世界に転生することを知りながら、『平穏な勝ち組人生』を送るために「不自然ではない程度の整った容姿」と「学習すればするだけ成長する能力」の2つを貰い、残りの1つは難病にでもかかってしまった場合の保険にでもしようと保留にしておいた。

 

しかし、同じく彼と同じ世界に転生した踏み台転生者たちの行動があまりにも目に余り、このままでは主人公たちに悪い影響を与え、間接的に自身の平穏な生活を脅かすと結論づけ、最後の転生特典を使い、神様に「自分以外の転生者たちの転生特典の完全消失」を願い、彼らを人知れず社会的に抹殺した。

 

自身の平穏を脅かす者や敵対する者には容赦はないが、前世部長職で磨いたコミュスキルで温和な性格を演じているために、彼を慕う者は多い。

 

転生者としては、ちゃんとその世界を現実だと認識しており、例え原作に起きた事件が起こったとしても、原作通りに進めばなんとかなるだろうというスタンスなため、原作に介入することはない。




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