えんとつそうじのネタ帳   作:えんとつそうじ

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どうも、えんとつそうじです。

今回のお話は、偶然ようつべで恋姫無双のエンディング動画を見て、元々ゲームはやったことはないですが、二次創作では結構読んでいたので書いてみました。まあこういう話もあり得るかなと思いながら暇つぶしにでも読んでいただけたら幸いです。


恋姫無双異伝~偽物の大徳~:恋姫無双

 【赤壁の戦い】。

 

 それは中国後漢末期の208年、長江の赤壁において起こった曹操軍と孫権・劉備連合軍の間の戦いである。

 

 三国志好きのみならずとも一度は聞いたことがあるであろうほど後に有名になるその戦場の一角に、その男はいた。

 

「……ようやくここまできたか」

 

 眼下に広がる「魏」と大きく書かれた旗を掲げる大軍のその姿に、これからその大軍と戦う一軍の指導者の一人であるはずの彼は、しかしその圧倒的な数の多さに緊張する様子は見せずに、むしろどこかホッとしたような笑みを浮かべながらどこか感慨深げにそう呟いた。

 

 男は少しの間そのまま大軍に目を向けていたが、ふと何を思ったのかその顔を気紛れに上げる。そこにはかつての彼の元々いた世界(・・・)では絶対に見られないような満点の星空が広がっていた。

 

 そんな星空を見ながら、彼は内心こんなことを思っていた

 

「(思えば、俺も遠いところまで来たもんだ。―――まさか、1800年まえの中国。それも『恋姫無双の世界(・・・)』に来るなんてな)」

 

 ……ここで彼の紹介をしておこう。

 

 彼の名前は『劉備玄徳(・・・)』。本来桃色の髪を持つ少女の名を称する蜀の王。

 

 そして所謂

 

 ――――「転生者」という存在である

 

 

 涿(たく)郡涿県。現在でいうところの河北省保定市涿州のとある場所にあるとある村にその男は生まれた。

 

 母を幼くして病で亡くし、州郡の官吏に勤めている父と二人で生活をしていた彼は父の方針で幼いころから私塾で勉学を学んでいたのだが、そこで彼は優秀な成績を収め、そのためかその村で彼は神童としてその名が知られていたのだが、そんな彼にはとある秘密があった。

 

 それは彼に所謂「前世の記憶」というものがあるということ。

 

 彼の前世は、彼が今いる世界より1800年もの未来、彼はそこでどこにでもいるような、ごく普通の大学生として日々の生活を送っていた。

 

 平穏であるが、代わり映えしない毎日に彼は退屈していたのだが、そんなある日彼は突如なんの前触れもなくトラックに体を轢かれてしまい、その命を落とすこととなる。

 

 わけもわからず意識を失った彼は、なぜか1800年前の中国、ちょうど有名な「三国志」が始まる直前の時代にこうして転生しているというわけなのである。

 

 普通なら困惑し、そして現代で慣れてしまった便利な生活を送れないこと、親しい人たちともう会えないことで嘆き悲しむのかもしれないが、彼はそのようなことはなく、むしろこれ幸いと喜んだ。

 

 それは彼が前世では大学生は大学生でも軽くオタクを拗らせた大学生であり、重度の二次小説中毒であったため、日々に退屈していただけもあり、まるで二次小説の主人公のような展開に彼は心が躍った。それは時が経ち、現在漢の要職に就いている人たちの何人かが、本来この時代その職に就けないはずの女性(・・・)が就いてあることを知った時、その思いはさらに高まった。彼はその情報から、彼が生前好きだったゲーム「恋姫無双」の世界であることを確信したからだ。

 

【恋姫無双】

 

 それは簡単にいえば三国志の時代にタイムスリップした主人公が、なぜか美少女にTSした三国志の登場人物と共に乱世を生き抜くというもので、戦闘あり友情あり謀略ありそして恋愛ありと、元々は18禁ゲームではあったが、通常版も発売しており、その美麗なイラストと、三国志ファンが思わずにやりとしてしまう三国志の有名な出来事をきっちり織り込まれたストーリー。そして魅力的なヒロインたちに、このソフトは多くのコアなファンを掴み、アニメ化やカード化までされるほどの人気を博すことに。

 

 もちろん彼の好きな二次小説でもこれを題材にした作品が多くあり、だからこそ彼はこの恋姫無双の世界に転生したことを知った彼は歓喜した。自分が物語の主役になるような才能を持っているとは思えない。しかし、今から勉強や特訓をして身体能力を上げたりすれば、魏か蜀が呉。その三勢力のどれかの重要な地位につけるかもしれないし、もしかしたらヒロインの誰かと結ばれることができるかもしれない。

 

 だからこそ、彼は必死に勉学に励み体を鍛え始めた。前世で読んだ漫画を参考に体術のような動きの練習もしてみたが、それは才能というか鍛え方が我流だったためかそれほど効果はなかったというより、効果を確認することはできなかった。ただ、勉学の方は生前それなりに有名な大学に入っていた彼は効率的な勉強法を身につけており、そのため父に通わされた私塾ではトップの成績を誇り、周りの人間からは神童と呼ばれるようになる。

 

 まさに順調に第二の人生を歩んでいた彼だったのだが、実はそんな彼にも当時悩みというものが存在した。それは彼の幼馴染にあった。

 

『まってよー、○○くーん!!』

 

 いつもそんなことをいいながら彼の後をカルガモのようについてまわっているその少女の名は劉備玄徳。そう、現在彼が使っていた名前の元々の持ち主であり、彼が転生した恋姫世界のメインヒロイン的存在の一人である、未来の蜀王。実は彼は彼女の幼馴染として生まれたのだ。

 

 正直彼は彼女が嫌いだった。

 

 見た目は確かに美少女なのだが、元々生前の彼はアンチ蜀というやつで生前ゲームやアニメで見た彼女が話す言葉言葉がただの綺麗事にしか思えず、趣味で読んでいた二次創作で、よくアンチ蜀物を読んでいたこともあり、その先入観からか、彼は彼女を毛嫌いし、いつも適当にあしらっていたのだが、しかし何がおもしろいのかいくら追い払っても彼女は彼に懐き、彼の名前をちょろちょろと付きまとうようになり、彼も未だに彼女への嫌悪感はぬぐい切れなかったが、しかしさすがにしつこく懐かれては、世間的の目もあるから村の人気者である彼女をそう邪険にすることができず、結局彼は劉備となあなあな付き合いを続けていた。

 

 そんなある日のことだった。村に盗賊が襲撃してきたのは。

 

 その日、彼は劉備にどうしても手伝ってほしいといわれ、森で薪集めをしていた帰り道、村のあちこちから煙が上がっているのを見た彼は、劉備にそのままそこにいるように言い含めると村へと急いで駆けつけた。するとそこには村を襲撃している盗賊たちの姿がおり、その姿を見て怒った彼は手近にいた盗賊の武器を奪うと、そのまま盗賊たちを殲滅するために戦い始める。

 

 彼はまだ年若く、体ができはじめたばかりであったのでさすがに達人級とまではいかなかったが、それでも幼いころからの訓練のおかげか村人の中で今は一番の腕っ節へと成長した彼には、殺人に慣れていたとしても弱者を蹂躙することにしか慣れてない賊程度では敵うわけもなく、彼がなるべく不意打ちになるように事を運んでいただけあって、盗賊たちは一人ずつ確実に数を減らしていったのだが、そんな時だった。彼が血塗れで倒れている自身の父親の姿を発見したのは。

 

『――――父上!!』

 

 彼は急いで地面へ倒れ伏している父親の元に駆け寄った。

 

 しかし父親の瞳には既に光がなく、もう息を引き取っているのがわかる。片手に短剣のようなものを握っているところから察するに、賊に抵抗はしたが、そのかい虚しく殺されてしまったのだろう。

 

 前世も含めて身内の死を目撃した彼は、何が起こったのか頭が理解せず、そのまま硬直する。――――それがいけなかった 。

 

『このクソがきゃああああああ!!』

『な!?ぐふっ!!』

 

 先ほど仕留めたはずの賊の一人が突如起き上がり、頭から血を垂れ流しながら彼を蹴り飛ばしたのだ。

 

 父親のあんまりな姿に呆然としていた彼はそのことに気づくのが遅れ、そのままその男の蹴りに無様に転がっていく。

 

 二転三転して彼は吹き飛ばされるが、彼を消し飛ばした男は先ほどのされかかった恨みか、そのまま勢いよく彼へと向けて手に持っていた剣を振りおろした。

 

『死ねやああああああ!!』

 

 自らに降り注ぐ悪意の刃。彼はそんな光景を見て、ああ俺の新しい人生もこれで終わりか。そんなことを考えていたのだが、そんな彼を咄嗟に庇う者がいた。

 

『駄目えええええええ!?』

『劉備!!」

 

 そう、その彼を庇う者とは村の外で待っているようにいいつけておいたはずの少女劉備。彼に待っているようにいわれた劉備であったが、さすがに彼が心配になり自分にもなにかできるんじゃないかと彼を追いかけてきたのだ。

 

 そして賊に殺されそうになっていた彼を見つけた劉備は、咄嗟に彼を庇い彼の代わりに賊にその華奢な体を切り裂かれてしまう。

 

『りゅ……桃香(・・・)!?』

 

 衝撃の光景に、彼は思わず預けられてはいたが呼ぶのをためらっていた彼女の真名を叫びながら、賊をその場で怒りのままに斬り捨てると、腹から血を流している彼女の傍へと駆け寄った。

 

 彼は彼女の腹部から流れ出る血を止めるために必死で彼女の傷口を押えこむが、しかし血は止まるどころか、さらに血の流れは勢いを増す。

 

『くそっ!?止まれ、止まれよ!!』

 

 何度も必死にそう叫び続ける彼の姿に、息も絶え絶えになっている桃香は、何がおもしろいのか苦痛で額に冷や汗を流しながらもなにやら嬉しそうにその口元に笑みを浮かべた。

 

『や、やっと真名を呼んでくれたね○○君』

『煩い!なんで俺を庇った。なんでお前をあんなに邪険に扱っていた俺を!!』

 

 彼のその言葉に、彼女はどこか穏やかな笑みを浮かべながらも口を開く。

 

『うん、○○君が私のことをどこかで嫌っているのはわかってた。でも、私は○○君が本当は優しいことを知ってる』

 

 なんだかんだで私のわがままも聞いてくれるしねと彼女は苦笑しながらもぽつぽつと昔にあった出来事を話し続ける。

 

 一緒に食べたおやつの時。意地悪な男の子に泣かされた時。村の皆でやったかくれんぼの時。勉強がわからなくて泣きついた時。そして人手が欲しくて薪拾いを一緒に頼んだ時など、つい最近のことから彼がすっかり忘れていた頃の時まで、彼女は意識が薄れていくことを感じながらも、懐かしそうな笑みを浮かべながらも語り続ける。

 

『○○君にはいろいろお世話になったからね、私も助けになろうと必死だったんだけれど……』

 

 こんなことになっちゃったと笑みを浮かべながら言葉を続ける彼女のその笑顔は、もう自分の命がここで尽きることがわかっているのだろう、どこか諦めと悲しみの感情が混じっているのが透けて見える。

 

『そんな……そんなことっ!?』

 

 なんとか彼女のその言葉を否定しようと彼は狼狽しながらも言葉を上げようとするが、そのと中で言葉に詰まり、結局なにもいうことできずにいた。

 

 そんな彼の様子に、劉備は穏やかな笑みを浮かべながらも静かに顔を上げる。

 

『あー、でも……残念…だった……な。こ……れで…私の夢…もう……叶わない…や…』

 

 その彼女の言葉に彼は思い出す。彼女が常々語っていた夢。「誰もが笑顔になれる世界」を作ること。

 

 それを語られる旅に、彼は「現実を見ていない」「夢物語」だといつも嘲笑ったり、無理だと諭したりして来たが、彼女は悲しそうに顔を歪めたりしたことはあっても、決して自分の夢を取り下げようとはしていなかった。

 

 彼はその度に「なんて頑迷なやつだ」と内心憤ったり溜息をついたりしていたが、なぜだろうか、死に際にまでその夢を語る彼女の姿がどこか輝いて、神聖な物に彼には見えた。

 

 だからだろうか、彼が思わずその言葉を呟いたのは。

 

『……なら、その「夢」は俺が叶える』

『……え?』

 

 彼のその言葉があまりに予想外だったのか、呆然と彼女は彼を見上げるが、しかし彼は彼女のその視線にも自らの言葉を撤回することはなく、真剣な顔で言葉を続ける。

 

 自分がその存在を一度は否定した彼女、そんな彼女に対してのせめてもの懺悔として彼は言葉を続ける。せめて彼女が安心して眠れるようにと。

 

『お前の夢は俺が叶える。だからお前は天国から見守っていればいい。この国がお前のいうとおり、「誰もが笑顔になれる国」になっているのを。俺が”劉備”としてその国を作ってやるから』

 

 彼がそういうと、彼女は一瞬驚きで目を瞠るが、次の瞬間には心底安心したような満面の笑みを浮かべた。

 

『……よかったあ』

 

 

 

 

 

 

 ――――それが彼女『劉備玄徳』の最後の言葉であり、彼『劉備玄徳』の始まりの言葉だった。

 

 

 

 今までの出来事を思い出しながらも、彼はそのまま星空を眺め続ける。このどこかの星の上から彼女もこの光景を眺めているかもしれないと。

 

「見ているか桃香。この戦が終わればやっと、やっとお前の夢を叶えるための一歩が踏める」

 

 思えばこれまで苦労の連続だったと彼はあの彼女へと誓った時から起こった出来事の全てを振りかえる。

 

 なんとか蜀の王の地位についたはいいが、彼には本物の劉備玄徳ほどの人望はなく、思うように人が集まらず、また市井の出ということで役人には舐められ足元を見られてしまったために、なんども苦汁をのまされた。おそらく自分の夢に、いや『彼女の夢』に賛同してくれた二人の兄弟を初めとした仲間たちの支えがなければとっくに潰れてしまっていたからもしれない。

 

 そんなことを考えていると、

 

「――――劉備様!!」

「ん?」

 

 突如聞こえてきたその声に、彼がとっさに振り向くと、そこには彼の副官をしている女性兵士がこちらに駆けてくるところが見える。

 

 その兵士は彼の近くに到着するとそこで止まり、僅かに荒くなった息を整えると再び口を開く。

 

「ここにいらっしゃいましたか、探しましたよ」

 

 どこかこちらを非難するようなその表情に、しかしそれに対する彼は頭を後ろ手で掻きながら、どこかばつが悪そうに苦笑を浮かべる。

 

 彼は自分がここに来ることをそういえば誰にも何もいっていなかったことを思い出したからだ。

 

「あはは、悪い悪い。戦の前に相手の軍勢がどんなものか見たかったものでな」

 

 彼がその言葉を口にすると、その兵士はどこか納得したような表情を浮かべるが、それと同じくどこか呆れたような表情を浮かべる。

 

「気持ちはわかりますが、どこかに行く時は護衛の兵士を連れていくか、せめて誰かにどこに行くか伝えておいてください。御身はもうただの弱小領主じゃないのですから」

「あーわかったわかった。――――で、結局何の用事だったんだ?俺のことを探してたんだろ?」

 

 彼がそういうと、その兵士は「あ!」と何かを思い出すような仕草を見せる。

 

「そうでしたそうでした。呉の孫権様からの使いがそろそろ作戦会議の時間だと陣まで来ているのですよ」

「孫権殿の使いが?――――ああ、そういえばもうそんな時間か。わかった、すぐに行くとその使いの方に伝えておいてくれ」

 

 劉備のその言葉に、兵士は先ほどの気安げな態度はどこへやら、顔を真剣な表情に引き締めながら「ハっ!!」と一つ敬礼すると踵を返して駆け足で去っていく。

 

 そんな彼女の後姿を見ながらもふと先ほどまで眺めていた星空にその視線を再び一瞥すると、彼も踵を先ほどの兵士に習い踵を返しながらも、さきほどの兵士とは違い一歩一歩、力強く使いが待っているという自らの陣営の陣立てへと歩みを進める。

 

 ――――少しでも早く彼女との約束を果たすために。

 

 

 

 

 

■劉備玄徳《りゅうびげんとく》

 

この小説の主人公。転生者。

 

元々はただのオタク気味の大学生であったが、ある日突然自分が好きだった恋姫無双の世界へと転生を果たす。

 

恋姫無双の本来の劉備玄徳である桃香と同じ村に彼女の幼なじみとして生まれるが、元々アンチ蜀気味だったので、彼女のことはあまり好きではないというか内心少し嫌悪すらしていたのだが、しかしそんなこと知らんとばかりに桃香の方は彼になつき振り回し続けたため、少しづつ彼も桃香にほだされはじめるが、最初の印象が強すぎたのかなかなか素直になれないでいた。

 

そんな時村が賊に教われる出来事があり主人公は幼いころから特訓で体を鍛えていたために、多数の盗賊相手に有利に戦っていたのだか、しかし転生した先の父親の死体を発見し、それを発見したことにより思考が硬直していたところを不意をつかれ殺されかけていたところを桃香が庇い、代わりに彼女が死亡してしまうことに。

 

その際に死の間際にも夢のことを語る彼女のことがどこか神聖なものに見え、彼女を安心させながら眠らせてあげるためにも、無意識では彼女が自分の代わりに死んだという負い目もあり、彼女の代わりに劉備玄徳を名乗り彼女の代わりに「皆を笑顔にする」ことを決意することとなる。

 

桃香より能力としては圧倒的に上だが、人望という点では桃香には劣る。力で皆を引っ張っていくタイプの指導者。

 

イメージは正史劉備。スペック的にも愛紗たち恋姫には及ばないものの、そこいらの将軍程度相手には負けない程度の剣腕の持ち主であり、スペックバランスも正史劉備に似ている。




というわけで劉備の意志を受け継ぐ転生者がいたらみたいな話でしたが、どうだったでしょうか?本当は劉備の意志に本当の意味で同調して見たいな感じで書きたかったのですが、技量不足で。……すみません。

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