えんとつそうじのネタ帳   作:えんとつそうじ

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転生の奇術師の四話目です。暇つぶしにでもどうぞ。


第三話:奇術師の決闘。VS異次元の王(1)黒の魔術師の登場

 遊勝塾専用実技用決闘場(デュエルフィールド)。普段は生徒たちが試行錯誤して作り上げた自らのデッキを試す場所として使われているこの場所では、現在二人の男が相対していた。

 

「いやあ、すみませんね無理いっちゃって」

「いや、かまわないよ」

 

 一人は燕尾服のような服を身に纏い、赤いハットを被った男。名は遊緋久遠。五年前に失踪した義父である榊遊勝の行方を捜しに家を飛び出した遊勝塾の長兄的存在だ。

 

 そしてもう一人の赤いマフラーをした男の名は赤馬零児。アクションデュエルにおいて重要な役目を持つ質量を持った立体映像を開発したことで知られる大企業レオ・コーポレーションの社長にして、若干16歳にしてプロ資格を持つ天才デュエリスト。

 

 なぜこの二人がこうして向かい合っているのか。それは遊勝塾の経営権を賭けたお互いの生徒たちを戦わせ、結局一勝一敗一分けで終わってしまったデュエル三本勝負。その決着をつけるために彼らはこうしてこの場にいるというわけだ。

 

 本来ならば遊勝塾からは唯一一勝を獲得した榊遊勝が出るはずだったが、突如現れたこの男、久遠が彼の代役として出ることとなったのだ。

 

 相対する二人のデュエリストの姿を観覧席から眺めながら、本来赤馬の代わりにこのデュエルに出るはずだったLDSの生徒、光津真澄が口を開く。

 

「よろしかったんですか、理事長。彼の出場を認めて」

「かまわないわ。それなら零児さんの出場自体取りやめにしなきゃならないだろうし、なによりどこの馬の骨ともわからない相手に零児さんが負けるわけありませんからね」

 

 自信満々で真澄の言葉にそう答える赤馬理事長だったが、実は彼女が久遠の出場を認めたのには一つの理由があった。

 

「(あの遊緋久遠という少年、榊遊矢の義兄という話だけれど私たちの集めた情報網にそんな人物の名前は無かった。五年前に義父である榊遊勝の行方を捜しに海外にいっていたというけれど、ということはこの五年間彼の行動を正確に知るものは誰もいない。だということはもし榊遊勝が私と零児さんの敵と関係があるのなら彼が接触している可能性があるわ。それを探らないと)」

 

 そしてその遊緋久遠の味方である遊勝塾サイドだったが、その中で真澄と同じく久遠の出場に異論を唱えている者が一人いた。遊勝塾の新人である少年、紫雲院素良だ。

 

「いいの、遊矢あの人に任せちゃって。知り合いみたいだけど相手の人強そうだよ?遊矢がやったほうがよかったんじゃない?」

 

 この素良の一見失礼とも思える疑問。

 

 だがこれは当然のことだ。この試合は遊勝塾の存亡を賭けた大事な試合。彼のことを知らない素良にとっては、赤馬理事長ではないがどこの馬の骨ともわからない人物に勝敗を任せるのを不安に思ったのだ。

 

 遊勝塾の生徒たちである三人の子供たち。タツヤ、フトシ、アユの三人も素良の言葉に同感なのか、遊矢のことを不安そうに見つめながらも何度も頷いた。

 

 だが聞かれた当の本人である遊矢は、そんな彼らの質問に自信満々で答えた。

 

「大丈夫だ。兄貴は強いからな」

「うむ。あの人なら間違いない。必ずや我らに勝利をもたらしてくれるだろう」

 

 遊矢のその言葉に、部外者ではあるが幼いころより遊勝塾に出入りしていたために彼と面識があった権現坂も頷く。

 

 そんな彼らの様子に素良は首を傾げる。彼らの自身の根源がわからなかったからだ。

 

 なので素良は彼らの他に唯一彼と面識がありそうな柚子に話を聞くことにした。

 

「あの人ってそんなに強いの?海外に行っていたとは聞いてたけど」

 

 素良にそう聞かれた柚子は、顎に指を当てながらしばしなにやら考える仕草を見せていたが、なにやら思いついたような表情を浮かべると、片目を閉じながらどこか悪戯めいた笑みを浮かべる。

 

「うーん、ここでいってもいいんだけれど実際に見た方が早いと思うわ。―――ほら、そろそろ始まるし」

 

 そういって柚子が指し示した先には準備が終わったのかデッキをセットしたデュエルディスクを携えた二人の姿があった。

 

「それではデュエルフィールドはどうします?」

「ご自由に……」

 

 久遠のその言葉に、零児が言葉少なげにそう答える。

 

 これは自身がプロ資格を持つための自負からなる余裕の言葉。相手を舐めているといってもいい言動だったが、久遠は特に気にしたようすもなくしばしなにやら考え込んでいたが、やがて何か結論を出したのかコントロール室にいた柊修三に向かって呼びかける。

 

「というわけで塾長。デュエルフィールドは適当に選んどいてくださーい!」

「いや、適当にってお前」

 

 柊塾長はそんな彼の言葉に何やら呆れたような表情を浮かべるが、やがて気を取り直すとデュエルフィールドを選択するコントロールパネルへと意識を戻す。

 

「(久遠はああいったが、相手はプロ資格を持つ天才赤馬零児。下手なフィールドを選んで彼を有利にするわけにはいかないが。例え卑怯といわれようと、ここは久遠のため、そして遊勝塾のため、久遠が最も得意とするフィールで……)」

 

 とそこで彼の視線が一つのフィールドパネルへと止まった。

 

 それは五年前、未だ遊勝塾で遊矢と共に遊勝のエンタメデュエルを学んでいた頃、彼が最も得意としていたフィールドだった。

 

「!?これならば……!!」

 

 そして柊塾長は高らかに宣言しながらも、迷わずそのアクションフィールドを選択した。

 

「頼んだぞ、久遠。お前の成長を俺たちに見せてくれ!

 

 

 

 ―――アクションフィールドオン!フィールド魔法発動、『マジカルブロードウェイ』!!」

 

 その言葉と共に久遠と零児が相対していたデュエル場にフィールド魔法が展開されると、観客席から驚きの声が上がる。

 

「これはマジカルブロードウェイ!?父さんの得意だったフィールドだ!!」

 

 そう、天高く聳える摩天楼が立て並ぶこのフィールドは、かつて彼らの父である榊遊勝も得意としていたフィールドだった。

 

 彼の教えを最も受けた一人である久遠がこのフィールドを最も得意とするのも実はそれが理由だった。

 

 自身の得意なフィールドを塾長が敢えて選択したということに気づいた久遠は、困ったような笑みを浮かべてコントロール室の窓ガラスに視線を向ける。そこには久遠にサムズアップする柊塾長の姿があった。

 

「やれやれ。全く心配性ですねえ塾長も。……最もその心配も当然かもしれませんが(ぼそ」

 

 そう誰ともなしに呟くと彼は目の前にいる今回の彼の相手となる人物、赤馬零児へと視線を向ける。実は彼のことは久遠もその噂を耳にしていたのだ。

 

「(大企業の社長でありながら、プロ資格を持つ天才デュエリスト。まるで物語の主人公のような人物ですねえ)」

 

 彼が今は社長業に専念しているためにプロ資格をとってからは公式戦には出ていないが、それまで全勝無敗を誇った人物であることを知っていた久遠。彼が今回このデュエルを買って出たのは実は遊矢ではまだそんな彼には勝てないということを知っていたから……というわけでは実はない。

 

 確かに今の遊矢では彼には勝てないと人はいうだろうが、遊矢がこの世界の主人公のポジションにいる(推測ではあるが)ことを知っていた久遠にとっては別に彼に任せてもその後の展開はなんとなる可能性が高いと踏んでいた。

 

 ではなぜ彼は遊矢の代わりに戦おうとしているのか?それは実は単に彼が戦いたかっただけだったりする。

 

「(おそらくこの状況からして彼はこの物語のライバルとして配されたであろう人物。ここは遊矢に任せるのが筋なのでしょうが、こんな状況でなければ彼と戦う機会など滅多にありませんでしょうからね。それに遊矢のライバルならばここで私が彼がどんな戦い方をするのか知っていれば後々遊矢の役にも立つでしょうし(言い訳))」

 

 最も久遠が負ければ遊勝塾の経営権が取られてしまうが、実は久遠はそこまで考えてない。

 

 つまり彼が今回のデュエルを受けたのはこの世界に転生してから七年、その影響を受けたせいで根っからのデュエル脳になってしまった故の選択だったのだ。

 

 最も実はそれは彼が塾の存亡をそれほど重要視していないということもある。

 

 彼にとっては大事なのは義父の残した教えである明るく楽しいエンタメデュエルの考え方であり、もし仮に塾が乗っ取られても新しくまた他の場所で塾をやればいいというだろう。

 

 このように彼が転生者だからかもしれないが、彼は感情の起伏が激しい人物たちが集う遊勝塾の中では珍しく、このように物事を理性的に考える癖がついていた。(もちろん、塾も義父の残したものには違いないので好きにさせようとはしないだろうが)

 

「それじゃあ、場も整ったことですしそろそろ始めましょうか」

「いいだろう」

 

 久遠の言葉に零児は一つ頷いて答えると、デュエルディスクを構える。

 

 そんな彼らの様子を見ていた観覧客にいる遊矢や柚子たち遊勝塾の生徒たちは、久遠の勝利への祈願も込めて、お互いの顔を見ながら一つ頷くと、勢いよく叫びだす。

 

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリストたちが!」

「モンスターと共に、地を蹴り、宙を舞い!」

「フィールド内を駆け巡る!」

「見よ!これぞデュエルの最強進化系!」

「アクショォ――ン……」

 

 

 

「「―――デュエル!!」 」

 

 そして遊勝塾の今後を賭けた最後のデュエルが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~

 

赤馬零児(以下零児)

LP:4000

手札五枚

 

遊緋久遠(以下久遠)

LP:4000

手札五枚

 

~~~~~~

 

 

 

「フィールドの選択権は譲っていただきましたからね。お礼代わりに先行はそちらに譲りましょう」

 

 久遠は公平性を保つために、零児にそう申し出るが、しかし零児はその言葉を聞いて、眉を潜めながら若干不快そうな声をあげる。

 

「お礼?譲る?……なるほど、君はそういう思考をするのか」

「ふむ?」

「まあ、いい。申し出は受け取っておこう。では、私のターン」

 

 

 

~~~~~~

 

零児

LP:4000

手札五枚

 

~~~~~~

 

 

 

 先行は零児。ルールにより先行はドローができないために、ドローフェイズは行わず、そのままスタンバイフェイズ、そしてメインフェイズに移行する。

 

「私は魔法カードを三枚発動する。まずは、一枚。永続魔法「地獄門の契約書」を発動!」

 

 

 

~~~~~~

 

地獄門の契約書

永続魔法

①:自分スタンバイフェイズに発動する。

自分は1000ダメージを受ける。

②:1ターンに1度、デッキからレベル4以下の「DD」モンスター1体を手札に加える事ができる。

 

~~~~~~

 

 

 

「このカードは自分のターンのスタンバイフェイズに、自分自身が1000ポイントのダメージを受ける」

「ほう……」

 

 零児が口にした魔法カードの効果に、何かを感じ取ったのか感心とも警戒ともつかぬ声をあげる久遠。

 

 だが、それは彼が天才と呼ばれていたことを知る彼だからこその、「この男が無意味にこんなことをするはずがない」という警戒心から出てきた言葉であり、赤馬零児という男をがどういう人物たちか全く知らない柚子たちは、その魔法カードの効果に驚きの声を上げる。

 

「自分のターンが来るたびに」

「自分自身に1000ポイントのダメージだと!?」

 

 しかしそんな彼女たちの声が聞こえていないのか、それとも意図的に無視しているのか。零児はそのままデュエルを続行する。

 

「さらに1ターンに一度、デッキからレベル4以下の「DD」と名のついたカードをデッキから一枚手札に加えることができる」

 

 そして零児はデッキからカードを一枚抜くと、そのカードがどういうカードなのか久遠に確認させる。

 

「私は「DDケルベロス」を手札に加える」

 

 

 

~~~~~~

 

DDケルベロス

効果モンスター

星4/闇属性/XX族/攻 1800/守 XXXX

(7月8日現在テキスト不明)

 

~~~~~~

 

 

 

 その零児の言葉に遊勝塾の生徒の一人である太めの少年、フトシが疑問の声を上げる。

 

「DD?なんだそれ?」

 

 それに答えたのは横で一人、チョコレートを齧っていた素良が答える。

 

D(ディファレント)D(ディメンション)。異次元のことだよ」

「へー」

 

 以外に物知りな素良のその言葉に子供たちが感心の声を上げる中、まだまだデュエルは続く。

 

「さらに、二枚目の魔法カード。これも同じく地獄門の契約書」

 

 それに困惑の声を上げるのは、遊勝塾と昔から懇意にし、そしてライバル関係にあるデュエル塾の跡取りである、権現坂と、遊勝塾塾長の一人娘である柚子の二人だった。

 

「なに!?これで次の自分のターン」

「自分自身に2000ポイントのダメージが……?」

 

 自らハイリスクを負う、今まで彼らが経験してきたデュエルとは全く違うまさに「異次元」にふさわしいそのデュエルに、遊勝塾の面々の顔にうっすらと不安の影が差し始める。

 

 しかし、そんな彼らの不安を払拭したのは、今デュエル場に立っている男の一人である遊緋久遠の義弟である遊矢だった。

 

「大丈夫。兄さんは必ず勝つ」

「遊矢……?」

「なにせ、兄さんは父さんが俺たちの中で唯一一人前と認めたデュエリスト。あんなやつに負けるもんか。(そうだろ、兄さん)」

 

 絶対の信頼を込めて、相手の不可解な行動に、しかし未だ余裕なのか柔らかな笑みを浮かべている久遠へと視線を戻す。

 

 遊勝塾の面々は、そんな彼の姿にどこか安心したのか、彼と同じく、視線をデュエル場へと戻すが、そんな彼らを横目で見ていた赤羽理事長は怪訝な表情を浮かべる。

 

「(榊遊勝が認めたデュエリスト?そんな話聞いたことがない。しかし彼の息子である榊遊矢がいうのならばそのとおりなのでしょうが……)」

 

 そして彼女はデュエル場にいる自らの愛する息子へと視線を向ける。

 

「(どうやら一筋縄でいく相手ではなさそうですよ、零児さん……)」

 

 そんな彼女の懸念をよそに、デュエルは続く。

 

「私は二枚目の地獄門の契約書の効果により、デッキから「DDリリス」を手札に加える」

 

 

 

~~~~~~

 

DDリリス

効果モンスター

星4/闇属性/悪魔族/攻 100/守 2100

①:このカードが手札から特殊召喚に成功した場合、

自分の墓地の「DD」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを手札に加える。

 

~~~~~~

 

 

 

 ユリの花を模した様な花を手札に加えると、零児は三枚目の魔法カードを発動させる。

 

「私はさらに三枚目の永続魔法「魔神王の契約書」を発動」

 

 

 

~~~~~~

 

魔神王の契約書

永続魔法

①:自分スタンバイフェイズに発動する。

自分は1000ダメージを受ける。

②:1ターンに1度、自分の手札・フィールドから、

悪魔族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、

その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚できる。

 

~~~~~~

 

 

「このカードも地獄門の契約書同様、自分のスタンバイフェイズ時、自分自身に1000ポイントのダメージを与える」

「これで合計3000ポイントのダメージですか」

 

 久遠の言葉に、しかし零児の表情は変わず、彼は淡々と自身のカードの効果を読み上げる。

 

「魔神王の契約書は1ターンに一度、悪魔族融合モンスターを融合魔法無しに融合召喚できる」

「なッ!?」

「融合魔法無しに、融合召喚!?」

 

 その彼の言葉に反応したのは、融合使いである素良と、その素良と戦い苦戦させられた遊矢の二人だった。

 

 その二人の声が聞こえたのか、零児はどこか不適な笑みを浮かべる。

 

「私が融合するのはDDケルベロスとDDリリス」

 

 そして零児は先ほど地獄門の契約書の効果により手札に加えた二枚のカードを天高く掲げると叫びだす。―――まるで王の誕生を祝うが如く。

 

「牙むく地獄の番犬よ、闇夜に誘う妖婦よ。冥府に渦巻く光の中で、今一つとなりて新たな王を生み出さん!!融合召喚。―――生誕せよ「DDD烈火王テムジン」!!」

 

 そして天から一人の紅き王が現れる。

 

 

 

~~~~~~

 

DDD烈火王テムジン

融合・効果モンスター

星6/炎属性/悪魔族/攻2000/守1500

「DD」モンスター×2

「DDD烈火王テムジン」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがモンスターゾーンに存在し、

自分フィールドにこのカード以外の「DD」モンスターが特殊召喚された場合、

自分の墓地の「DD」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

(2):このカードが戦闘または相手の効果で破壊された場合、

自分の墓地の「契約書」カード1枚を対象として発動できる。

そのカードを手札に加える。

 

~~~~~~

 

 

 

 素良と遊矢。そして柚子と真澄のデュエルにより融合召喚については知っていた遊勝塾の面々も、それらとはまた違った融合召喚の方法を披露した零児のやり方に驚きを隠せない。

 

「あいつ融合使いか!!」

「でもあのモンスターを呼び出すためだけにあんなリスクを?」

「今度はDDD……」

「Dが三つ?」

「どういう意味だ?」

 

 困惑する遊勝塾の面々。塾長である柊修三も、今までの試合で零児が一回も融合召喚を使っていないことを確認すると不安そうな表情を浮かべるが、しかし当の本人である久遠だけは、ただ感心の声を上げるだけでいつものペースを崩さない。

 

「ほー、融合魔法無しで融合召喚ですか。フュージョンゲートを使うわけでも無し、専用の融合魔法でも無し。珍しいカードを使いますねえ」

 

 そんな彼の言葉に、しかし零児は無言で返すと、カードを二枚伏せる。

 

「私はこれでターンエンドだ」

 

 

 

~~~~~~

 

零児

LP:4000

手札:0枚

場:DDD烈火王テムジン

魔法、罠:地獄門の契約書×2

     魔神王の契約書

     伏せカード二枚

 

~~~~~~

 

 

 

 そして、ターンは久遠へと移行する。

 

「それでは、私のターン。ドロー!!」

 

 

 

~~~~~~

 

久遠

LP:4000

手札6枚

 

~~~~~~

 

 

 

 久遠はドローカードを確認すると、それがよほどいいカードだったのか、うっすらと笑みを浮かべる、さっそくという感じで一体のモンスターを召喚する。

 

「私はまずはこのモンスターを召喚しましょう。タロットカードの大アルカナの一つ「Temperance(節制)」を司る魔術師。魔導召喚師テンペルを召喚!!」

 

 すると、二つの杯を持ったローブで身を隠した一人の魔法使いが現れる。

 

 

 

~~~~~~

 

魔導召喚士テンペル

効果モンスター

星3/地属性/魔法使い族/攻1000/守1000

自分が「魔導書」と名のついた魔法カードを発動した

自分のターンのメインフェイズ時、

このカードをリリースして発動できる。

デッキから光属性または闇属性の

魔法使い族・レベル5以上のモンスター1体を特殊召喚する。

この効果を発動するターン、

自分は他のレベル5以上のモンスターを特殊召喚できない。

 

~~~~~~

 

 

 

 攻撃力2000ポイントを誇るテムジンを前に攻撃力が1000ポイントほどしかないモンスターを攻撃表示で出すという久遠のその一見間違えているといってもいい行動に、零児は眉を潜め眼光を鋭くするが、それは弱小といってもいいモンスターが獲物として現れたことによる慢心でも、舐められているという不快感からくる怒りでもなく、それは未知の行動をしてくる敵に対しての、王者だからこその警戒からの行動だった。

 

 そんな彼の様子を見て、久遠は満足げな笑みを浮かべる。

 

「ふふふ、珍しいものを見せてもらったお礼といってはなんですが、私も見せて差し上げましょう。―――私のエースモンスターを」

「……なに?」

 

 零児はそんな彼の言葉に訝しげな表情を見せるが、久遠はそんな彼に一つ笑みを見せると、両手を天高く掲げる。

 

 それは見せ場が訪れると、彼の義弟である遊矢。そして彼の義父である遊勝がよくやるお決まりともいえる行動だった。

 

「レディース&ジェントルメーン!!今回は我がマジックショーにご来場いただきありがとうございまーす」

 

 遊矢がペンデュラム召喚を行う際に必ずといってもいいほど喋る、決め台詞と同じ、しかし彼よりよほど堂に入った言葉でそういうと、久遠は手札から一枚の魔法カードを引き抜いた。

 

「これより皆様に今回のマジックショーの主役を紹介しましょう。私は魔法カード、グリモの魔導書を発動!」

 

 

 

~~~~~~

 

グリモの魔導書

通常魔法

デッキから「グリモの魔導書」以外の

「魔導書」と名のついたカード1枚を手札に加える。

「グリモの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

 

~~~~~~

 

 

 

「私はこの効果により、デッキから「ヒュグロの魔導書」を手札に加える」

 

 

 

~~~~~~

 

ヒュグロの魔導書

通常魔法

自分フィールド上の魔法使い族モンスター1体を選択して発動できる。

このターンのエンドフェイズ時まで、

選択したモンスターの攻撃力は1000ポイントアップし、

戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、

デッキから「魔導書」と名のついた魔法カード1枚を手札に加える事ができる。

「ヒュグロの魔導書」は1ターンに1枚しか発動できない。

 

~~~~~~

 

 

 

 ヒュグロの魔導書。魔法使い族の攻撃力をエンドフェイズまで1000ポイントアップさせ、戦闘により相手モンスターを破壊した場合、デッキから魔導書カードを一枚手札に加えることができる。つまり実質手札を減らさずに攻撃力を上げることができる強力な魔法カード。

 

 しかし彼の本当の狙いは、その魔法カードを手札に加えることではなく、「魔導書」と名のついたカードを発動させることにあった。

 

「そしてこの瞬間、魔導召喚士テンペルの効果を発動!」

 

 すると、その言葉と共にテンペルの体が光り輝く。

 

「な、なんだあれは!?」

 

 その光景に、LDSの生徒の一人である志島北斗が驚きの声を上げる。見れば他のLDSの生徒たちも、その表情を驚愕の感情で染めていた。

 

 

 

 ―――そして久遠は、告げる。自らの半身たるその魔術師の名を。

 

「出でよ、我が矛にして我が盾にして我が半身。この者こそがデュエルモンスターズ創世記よりその頂点に存在する最上級魔導師。

 

 

 

 

 

 ―――来い、「ブラック・マジシャン」!!」

 

 その久遠の言葉と共に、光が晴れるとその中から一人の魔法使いが現れた。

 

 

 

~~~~~~

 

ブラック・マジシャン

通常モンスター

星7/闇属性/魔法使い族/攻2500/守2100

魔法使いとしては、攻撃力・守備力ともに最高クラス。

 

~~~~~~

 

 

 

 赤紫のローブに身を纏い、褐色の肌をしたその魔導師の登場に、零児はその時初めてその表情を大きく崩した。

 

「……ッ!?ばかな、ブラック・マジシャン。伝説の黒魔導師だと!!」

 

 そんな零児の様子を見て、久遠はその口元を不敵に歪める。

 

 

 

 

 

 

「―――さあ、マジックショーを始めましょう」


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