生徒会変態共!   作:真田蟲

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七人目

 

【だれ?】

 

特に行事ごともない5月中旬の生徒会室。

 

「うぃ!」

 

扉を開けて見知らぬ女性が入ってきた。

フランクに挨拶してくるおそらくこの学園の教師であろう。

他の教師のようなスーツ姿ではなくラフないまどきの格好をしており、

髪もショートにしてさわやかさを演出している。なかなかの美人である。

 

「え?」

 

突然の来訪に固まる生徒会の面々。

特に津田は、彼が生徒会に入ってからこの部屋に教師が来たのは初めてのことで予期せぬ客に驚いていた。

 

「誰? ここは関係者以外立ち入り禁止よ?」

 

その女教師が津田を目に留め、話しかけてきた。

彼からしたら、この教師こそ誰だという話である。

少なくとも津田はこの学園に入学してから彼女を見たことはない。

 

「あの、そちらこそどちら様?」

 

彼の問いはもっともだろう。

美人にあったらあまり忘れることのない津田が、見たことのない人物なのだ。

少なくとも生徒会関係者とは思えない。

 

「私? 私は生徒会の担当顧問よ」

 

津田の問いかけに胸を張って答える教師。

その内容に驚く津田。彼としては生徒会に入ってから特別紹介されることも挨拶に行くように言われたこともない。

正直この生徒会には顧問なんていないんじゃないかと思っていたのだ。

彼が生徒会に入ってから1か月以上が経つが、一度も顧問の話題も名前すら出てこなかったのだ。

無理からぬことだろう。

 

「ん?」

 

そこに遅れて部屋に入ってきたシノ。

見慣れない顔ぶれが部屋にいることに気付く。

 

「やぁ天草」

 

女教師が気さくにシノに話しかける。

その様は確かに親しい生徒に話しかける態度そのもの。

その姿に本当にここの顧問なんだ、と思う津田。

 

「? ここは関係者以外立ち入り禁止ですが?」

 

「あるぇー!?」

 

しかしシノの不審者を見るような視線に、やはり本当に顧問なのかどうかわからなくなる津田だった。

 

 

 

 

 

 

【生つば?】

 

「お前ら私のこと完全に忘れてただろう……」

 

呆れた声をあげる顧問。

しかたないだろう、彼女は全然生徒会に顔を出さなかったのだから。

特に今までの仕事で顧問の意見が必要だったこともなかったのだ。

こちら側から会いに行くこともなかったため、必然的に会うこともない。

彼等の中では既に顧問はいないものと判断されていた。

 

「では改めて、私が生徒会の担当顧問の横島ナルコよ」

 

「そういえば横島先生はうちの顧問でしたね」

 

「全然来ないからすっぽり忘れてたわ」

 

スズとアリアの言葉にさすがに何も言えない横島先生。

記憶力のいいスズですら、おそらく彼女が自己紹介をするまで名前を忘れていたに違いない。

それまで横島先生が部屋に入ってきてから一言もしゃべろうとしなかったのが証拠である。

まぁいいや、と気持ちを切り替える横島先生。

彼女はあまり深く考え込んで落ち込むことはしないのだ。

良く言えばさばさばとした前向きな性格、悪く言えば面倒くさがりでいろいろと無頓着なのである。

 

「それで、あんたが新しい生徒会役員?」

 

横島先生が津田に向きなおって話しかける。

それに対応して挨拶と自己紹介をする津田。

彼的にも、彼女が顧問だというのならよろしくするのはかまわない。

むしろ美人な分嬉しいくらいである。

 

「どうも、一年の津田タカトシです」

 

「はは、元気いいなぁ……じゅるり」

 

彼女は津田の全身を眺めまわしながら、舌舐めずりをするのだった。

 

 

 

 

 

 

【10さいくらい?】

 

津田のことを気に入ったのか、それとも単に男子生徒という生き物が好きなのか。

その辺は今の時点ではよくわからないが、非常に機嫌がよさそうである。

 

「よーし、津田! 私に質問あったら何でも聞いていいわよ」

 

親睦深めよーぜ、と楽しそうに言う先生。

しかしその笑顔は純粋に楽しそうにも見えるのだが、目だけは津田の体を未だに舐めまわすかのように見ていた。

ちょっと興奮し始める津田。その二人の様子を見てまた変態が増えるのかと危惧するスズ。

シノとアリアはあまり先生には興味がなさそうである。

 

「えーと、じゃあ……先生のバストは何センチですか!?」

 

「「いきなりそれか」」

 

胸の話題が出て一気に不機嫌になるのが二人ほどいた。

しかし津田の問いに先生は目を輝かせる。

 

「おいおい、初対面でいきなりそれか?

 いきなり女に年齢を聞いてきたら説教してやろうと思ってたのに。

 なかなか見どころがあるじゃないか」

 

今の発言のどこに見どころがあるというのか。

呆れて何も言えないというか、今のこの二人にあまりかかわりたくないスズ。

 

「ふん、津田のおっぱい星人め……」

 

「まぁまぁシノちゃん」

 

シノは椅子の上で三角座りしてすねていた。

別に津田にこれといって特別な感情を抱いているつもりはないが、あまり胸にばかり目が行かれると面白くないのである。

それを慰めるアリアだったが、彼女の大きく立派なものがシノの心を逆に追い詰めるのだった。

 

「そんなに知りたいなら教えてやらんでもないが……体でな」

 

「マジですか!」

 

「はいそこー、それ以上はNGよー。津田も冗談だって気づきなさいねー」

 

津田の手を引いて外に行こうとする先生を、手を叩いて現実に戻すスズ。

あまりかかわりたくないがこれ以上は本当に駄目である。

この作品は18禁には対応していないのである。

というか自分の知っている相手同士が、知っているところでそんな関係になってほしくない。

決してそれ以外の理由など存在しない。ないったらない。

 

「じゃあ質問を変えて……先生って経験者ですよね?」

 

「は? 何の?」

 

正気に戻った津田が先生に別の質問をする。

あえて何の経験者なのかは言わなかったのだが、スズ以外は何について言っているのかわかったようである。

こちらに背を向けていたシノとアリアがこちらに向き直る。

 

「ああそうだな、私はいろいろと経験豊富だぞ?

 伊達に教師をやっていないからな!」

 

「「「おお~!!」」」

 

初めて先生を尊敬した目で見つめる三人。

この時点でスズにも彼等がこれだけ喜んでいるところを見て何の話題か理解した。

ああ、もう私ではこいつらを抑えるのは無理だ。

ツッコムだけ無駄だと思ったスズは、今日はもうツッコミは休もうと思った。

 

「それで、初めての経験は何歳だったんですか!?」

 

「ん~、10さいだったかな?」

 

「いや、ありえないだろ!!」

 

やっぱりツッコんでしまったスズであった。

 

 

 

 

 

 

【理性との戦い】

 

まだまだ続く先生への質問タイム。

 

「先生は何で教師になったんですか?」

 

「う~ん、まぁドラマの影響かな」

 

先生が語るのは、よくある青春ドラマに見られる物語。

問題児が集まるクラスに赴任し、生徒たちを熱血指導で更生させていく。

物語の中で生まれる師弟愛。そして生徒同士の友情。それを見て涙を流す自分。

ある種使い古された、だけどそれゆえに感動するものを多く含んだストーリー。

 

「でも駄目だわー。この学園の生徒みんな優秀なんだもん」

 

問題児なんていやしない、とつまらなそうに話す先生。

 

「まぁ一応進学校ですし、絵に描いた不良なんて最近じゃあまり見かけませんしね」

 

「みんな真面目だものねぇ」

 

「ですねぇ」

 

「……私からしたらあんた達も十分問題ありだと思うんですけどね」

 

特に大きな問題は起こしてないだろうが、下ネタばかり言う生徒はどうなのだろう?

少なくとも、セクハラばかりしてスズ自身何度か被害にあっている津田は問題児とみていいと思う。

 

「まぁ、正直去年まではつまらなかったけどね。

 共学化で生徒よりもむしろ私の方が今は問題起こしそう……じゅるり」

 

ピンク色の妄想をして舌舐めずりする横島先生。

その眼は津田を獲物として狙っていた。

 

「Wao! もしかして俺先生相手に大人の階段のぼっちゃう!?」

 

「いいぜー、のぼろうぜー」

 

先生の視線に気づいた津田が調子にのって冗談を言う。

彼女もノリノリで手まねきしていた。

 

「先生も津田も冗談だけにしてくださいね。

 少なくとも生徒会に所属しているうちは18禁展開は関心しません」

 

「「えー?」」

 

スズが何かツッコミを入れるべきかと思っていると、意外なことにシノが二人を注意した。

普段は自分も一緒になってふざけるはずなのに……と驚くスズ。

今日の会長は真面目モードなのだろうか。

 

「ふふ、シノちゃんってばヤキモチ?」

 

「ば!? ち、違うぞ!?

 私は単純に生徒会役員は生徒の模範としてのだな!」

 

「ほほう? 天草も津田の童貞を狙っているのか?」

 

「えっ、そうなんですか!?」

 

「いや、違う! 違うぞ?」

 

慌てるシノを見てにやにやとしているアリアと横島先生。

真面目なんじゃなくて結局全員色ボケかと溜息をつくスズ。

 

「じゃあこの4人の中で誰が津田君の童貞を奪うか競争ね?」

 

「ふふ、望むところだ!!」

 

「む?きょ、競争か?……って何を言ってるんだアリア!?」

 

楽しそうにシノをからかうアリアと先生。

二人にからかわれて彼女は珍しく耳まで真っ赤にして慌てふためいていた。

冗談だとは分かっていても、自分の童貞を取り合う美女の集まりに妄想がとどまる所を知らない津田。

 

「4人って……ナチュラルに私まで巻き込むんじゃねえ」

 

スズのぼやきは誰も聞いてはくれなかった。

 

 

 

 

 

 

【アレ】

 

とあるお昼休みの生徒会室。

向かい合って席に座り一緒に弁当を食べていた津田とアリア。

津田は彼女の弁当の中のおかずの豪華さに毎度驚かされる。

学校にもってくる弁当の中身なんて基本晩御飯の残り物が多いだろう。

弁当箱にいつも高級食材がふんだんに使われているアリアの弁当からは、彼女の家での食生活の豊かさがうかがえる。

今日も彼女の弁当の中には伊勢エビがまるまる一匹入っていた。

 

「七条先輩の家のご飯って豪華そうですよねー」

 

思わず口に出た津田の言葉は、尤もであろう。

彼の弁当の中身は昨日の晩の残りの肉じゃがと冷凍食品のオンパレード。

対してアリアの弁当はまるでおせちのよう。

弁当がそのままお互いの家庭の食卓を表していた。

 

「う~ん、でも私高級料理よりも庶民じみた料理の方が好きなんだけどね。

 お味噌汁とか納豆とか」

 

「へー、そうなんだ」

 

意外にも舌は庶民はであると主張するアリア。

津田はその言葉に意外そうな声を上げる。

正直お味噌汁はともかく納豆を食べるアリアは想像できなかった。

むしろ納豆を食べているのではなく納豆をかけられてネバネバになってしまった彼女の方が想像しやすい。

食事中に駄目な妄想をしてしまう津田君、彼はどうしようもなく思春期なのである。

 

「特にアワビは苦手ね」

 

「へぇ」

 

「共食いしてる気分になるから」

 

「わかります。俺もマツタケは苦手で……

 どうしてもそっちの気はないのにBLな気分になっちゃうんですよね」

 

「そうそう、私も一応ノーマルなのにね?」

 

お互いの共通したことも見つけて盛り上がる二人。

 

「あの……すでにこの会話がノーマルじゃないんだが……」

 

何気に津田の隣で会話には参加していなくとも食事をしていたスズ。

今の会話が聞こえてしまって嫌がおうにも食欲がなくなってしまった。

せめて食事中はそのての話題は避けてほしいと思う行儀のいいスズだった。

 

 

 

 

【子だくさん】

 

お昼休みの生徒会室。

各自弁当を食べ終えて雑談タイム。

 

「そういえば、俺の通っていた小学校なんですが、今度廃校になるらしいんです」

 

雑談の話題として、今朝がた聞いた情報を提示する津田。

少子化という日本の未来にとっての危機に、各々が何か思うところがあるような表情をする。

 

「私のところも入学した生徒が2クラスしかないらしいわ」

 

改めて少子化を実感するわねー、と困った顔をするアリア。

そうなのだ。どこの小学校も今現在の生徒数が昔よりも少なくなっている。

一学年に平均3クラスだったのが、今は2クラス。

少ない学校では1クラスで人数が足りてしまうらしい。

なにもそれはこの町に限ったことではなく、全国的にそうなのだ。

人数が少なくなり、廃校になったり隣の学校と合併したりといった事が増えている。

 

「少子化問題、深刻ですね」

 

「うむ、いいことを思いついた!」

 

がたり、と椅子から立ち上がるシノ。

 

「またふざけたこと思いついたんじゃないでしょーね?」

 

「失礼な。私はいつも真剣だ。

 我々生徒会もこの少子化問題にできる限りのことをするのだ!」

 

「具体的には?」

 

「将来、性行為をするときは常に中○しだ!!」

 

「そんなことよく臆面もなく言えますね」

 

「ていうか会長、それっていちいち宣言するほどのことですか?」

 

「なんだと?」

 

「俺は性行為の時は避妊はするつもりはありませんよ?

 子供が出来ても責任とるつもり満々ですし。俺のような人間も結構います」

 

「避妊しないからこそ、できちゃっても否認しないのね。えらいわ津田君」

 

「えらいのか? そんなに若いうちから覚悟できてるやつも少ないと思うけど?」

 

「ふむ、じゃあどうすればいいのだ津田。他にいい案があるとでも?」

 

「ええ、子供のいない夫婦の家庭にバイア○ラを配りましょう」

 

「まぁ、それはいい考えね」

 

「いや、駄目だろ」

 

「そうだぞ津田。学生の我々がバイ○グラなどどうやって調達するんだ」

 

「いやいやいや、会長も調達できれば配るんですか。止めてくださいよ」

 

「じゃあ市民にコンド○ムを配るのはどうですか?」

 

「? それだと避妊だろ?」

 

「ええ、だからあらかじめ全てのゴ○に小さな針で穴を開けとくんですよ」

 

「まぁ、それはいい考えね」

 

「いやいやいやいやいやいやいやいやいや、それはさすがに駄目だろ!! 

 本気で駄目だろ!!」

 

「……なるほど、それでできちゃった婚に追い込むわけだな?」

 

「結婚に踏み込めない男を逃がさない、ある意味常套手段ね」

 

「……本気じゃないですよね?まさかやりませんよね? 

 津田、ねぇ笑ってないでなんとか言いなさいよ。ねぇ!?」

 

なんだかものすごく未来が不安なスズだった。

 

 

 


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