【参考DVD】
いつもの放課後の生徒会室。
彼女たちにとある依頼がきていた。
「新聞部から取材のオファー?」
「はい」
依頼とは学園の新聞部から生徒会への取材がしたいというものだった。
この学園の新聞部はなかなかに活動熱心であり、いつも記事の内容に使えそうなものを探している。
今回は4月に入り、新体制で始まった生徒会に対する取材を考えているようだ。
「取材……するとインタビューとかされるわけか。練習しておく必要があるな」
「津田君、インタビューの指導してあげたら?」
実はインタビューなどの体験は初めてのシノ。
去年まではその年の会長職に就いていた彼女の先輩が請け負っていたのだ。
会長としては今年が初めてなので、当然インタビューなども初めてだったのである。
練習が必要というシノの言葉に、何故かアリアが津田に指導をするよう求める。
「へ? なんで俺が?」
「津田はむしろ練習する側なのでは?」
意味がわからないと首をかしげる津田。
その隣のスズもアリアの言葉に不可解そうに眉をひそめる。
津田はこの学園始まって以来の初めての男の生徒会役員だ。
記事のネタとしては注目度も高いはずで、この男が目をつけられるのは予想がつく。
普段頭の悪そうな会話ばかりしている彼等だが、締めるべき時は締める。
そうでなくてはとても人の上には立てない。そうでなくては困る。そう思いたい。
しかし、この場合考えれば会長よりも津田の方が本番でぼろを出しやすいとスズは考えた。
普段から変態な言動が多い津田。
一応生徒会メンバーの前以外ではそれなりに真面目を装っている……はず。
少なくとも以前スズが本人に聞いた時はそう答えていたし、何故か学園内でまだ津田が変態だとあまり知れ渡っていない。
だからまだごまかしが効くのではないかと思う。
あまり生徒会が変態だらけというイメージを持たれたくないスズであった。
「だってAVでよくあるじゃない? インタビューのシーン」
「うむ、よろしく頼む」
「頼まないでください会長。あと七条先輩、もっと真面目に考えてください」
なんでAVにそんなシーンがあるのを知っているのか、とか、あんた見てるのかとかは聞かなかった。
彼女らの言葉に、変態というイメージは避けられないかもなぁと早々にあきらめたスズ。
とりあえず自分まで同一視されないようにはどうするべきか、本気で考え始めた。
【インタビュー練習】
結局、津田が質問する側を引き受けて練習をすることになった。
どうせ真面目に練習にはならないだろうと予測した少女は、用事があると言って先に帰ってしまった。
家で自分だけはまともに見られる方法を模索するのだ。
そのため今現在この生徒会室にはツッコミ役が不在である。
「えっと、それじゃあインタビューを始めたいと思います」
「おお、よろしく頼む」
向かい合って椅子に座る会長と副会長。
それを興味深げに観察する書記のアリア。
「そ、それじゃあ名前と、あ、あと年齢を教えてもらおうかな?」
役になりきっているのか、何故かどもりながら質問する津田。
「う、うむ。天草シノ、16歳だ」
それにこれまた何故か緊張した雰囲気をかもしだしたシノが答える。
「駄目じゃないシノちゃん。もっとこう、可愛らしい女の子言葉を使わなきゃ。
もっとこういう時は女優さんも可愛い言葉使ってるでしょ?」
「そ、そうは言ってもな。これがなかなか難しくて……」
シノの言葉使いにアリアから駄目だしが入る。
「そんなに言うならアリアが手本を見せてくれ」
「そうね、わかったわ。津田君、お願いできる?」
何故か今度はアリアが挑戦することになった。
【インタビュー練習・改】
「そ、それじゃあ名前と、あ、あと年齢を教えてもらおうかな?」
仕切りなおして、今度は同じようにアリアに対して質問する津田。
相変わらず役になりきっていた。
「えっと~……初めまして~。七条アリアって言います~。16歳高校二年生です!」
どうやら彼女の中の女優のイメージはぶりっこらしい。
少し恥じらうように言葉にあわせてもじもじとするあたりかなり演技派である。
「その制服か、か、可愛いね~」
「そうでしょ~? 私も気に言ってるんだー」
「き、き、きれいなか、かみかみ、髪してるよね?
いつもお手入れた、大変じゃない?」
「え~、そんなことないですよ~」
やだ~と、頬に手をあて、褒めてもらえて満更でもないことをアピールする。
「ふむ、アリアは演技派だな」
「い、いい、いい匂いだね。か、嗅いでみても、い、いいかな」
「え~、ちょっとだけですよ~」
嬉しいような恥ずかしいような顔をしてOKするアリア。
最初からあれだったが、少し雲行きが怪しくなってきた。
「……ハァハァ、これは……クンクン……いい、なんだかお菓子みたいな」
「おじさんきもちわる~い」
「あっ! ごめ、ごめんね? おじさん焦りすぎたね? ごめんね?」
「もう~」
「……」
彼女の髪に顔を近づけて匂いを嗅ぐ。
なんだか演技だけでなく本気ではぁはぁと息を荒くさせ始めた津田。
それを笑って気持ち悪いと冗談めかして指摘するアリア。
改めて書いておくがこの場所には今現在ツッコミ役がいない。
「そ、それにしても、アリアちゃん、お、お、おっぱい大きいよね?」
「そ~かな~? 普通だよ~」
「……ははは」
胸の大きさをしてきされて謙遜するアリア。
しかし言葉で謙遜しながらも自信げに胸を揺らして見せる。ぽよんぽよんと擬音がなってそうだ。
それを見ていたシノが自身の胸と見比べて乾いた笑いをあげる。
「ハァハァ、ハァハァな、何カップあるのかな~?」
「えっとね~、F?」
「くそう!! なんだこの圧倒的戦力差は!!」
可愛らしく首をかしげてみせるアリア。
シノは悔しそうな声をあげて机をダンダンと叩く。
きっと彼女の演技力と自分の演技力の差に憤っているのだろう。そういうことにしておいてあげてほしい。
「さ、さ、さわ……ハァハァ……触っていいかな?」
「え~、おじさんセクハラだよ~?」
「……?」
津田は涎を流して彼女の胸を凝視していた。
両手を前にして指をわきわきと動かす様がいやらしい。
楽しそうに笑うアリアとは反対に、シノは津田が演技だけでなく本気で興奮しているのに気が付いた。
「もう……辛抱たまらん!!」
「お、おい……津田?」
彼はおもむろに椅子から立ち上がった。
「ア~リアちゃ~ん!!」
彼は一瞬で服を脱いで飛び込み台から飛び込むように彼女の胸へとダイブした。
いわゆるルパンダイブである。違うところはただ一つ。
パンツさえも脱いでしまって全裸だということだ。
「きゃあ!?」
「ふん!!」
「あふん!?」
驚きの声を上げるアリア。
しかしシノは事前に正気に戻っていたので、なんとなく予想がついていた。
アリアに接触する前に、手刀で津田を床にはたき落とす。
「な、なんで止めるんですか会長! 会長もノリノリだったじゃないですか!!」
あと少しで男子高校生の理想郷にたどり着けたはずの津田が抗議する。
確かに先ほどまでは彼女もノリノリだったのだ。これはイケると思った。
アリアは顔を真っ赤にして胸を両手で隠している。
しかし別に反射的に胸を隠しているだけで、本気で嫌がっているわけでもなさそうだ。
その証拠に彼女が顔を赤くしているのは何も羞恥だけでのことではない。
(津田君のあそこ……見えそうで見えない)
津田は今現在全裸なのだが、床にうつぶせに叩きつけられた状態から上半身だけのけぞらせてシノを見ている。
よって、絶妙な角度で体がひねられて股間が視覚的に隠された状態だったのだ。
彼女はその見えそうで見えない状態にドキドキしているのだった。
「ああ、たしかにノリノリだった。そこは私も認めよう。だがここでおしまいだ」
「何故ですか!!」
「ここらで止めないとお前はたぶん最後まで行くだろう?
さすがにそうなったら私だけでは止められそうにない。故に止めた」
「いいじゃないですか!! ちゃんと責任は取ります!!」
「まぁ……」
ちょっと男らしいことを言う津田。
首から上だけなら今のセリフを言っている顔はビジュアル的にはイケメンだった。
そのセリフを聞いてちょっと胸をときめかせるアリア。
逆にその言葉にため息をつくシノ。
「津田、残念なことだがこの作品はあくまでR-15相当だ。
そこから先はいくらなんでも18禁になってしまう。この意味がわかるな?」
「……ちくしょう!! 作者の馬鹿野郎ぉおおおおおおおおおおおおお!!」
彼は本気で号泣した。床に拳を叩きつけて号泣した。
そのあと彼は脱水症状に陥るまで泣きはらしたという。
【取材当日】
インタビュー練習から二日後の生徒会室。
「新聞部の畑です。よろしくお願いします」
そう言って生徒会室に新聞部の生徒が入ってきた。
彼女の名前は畑ランコ。黒髪を肩のあたりの長さで切りそろえた二年生らしい。
ポーカーフェイスなのか、表情からは何も感情的なものが読み取れない。
「う、うむ。こちらこそよろしく頼む」
結局練習は全員が暴走し、意味をなさなかったためにシノはちゃんとできるか緊張していた。
「そんなに緊張なさらなくとも大丈夫ですよ。
あまり緊張せずに楽にしていてください」
「そ、そうか?」
その言葉に甘えて何故か生徒会室の机の上に寝そべるシノ。
「いやぁ、今日は多い日でな。立ってても座っててもつらい」
「じゃあ仕方ないですね」
「えっ、いいんですか?」
スズが困惑顔で畑に聞くが、彼女は無表情でOKサインを出す。
この非常識な行動にまったく動揺した様子がない。
生徒会メンバーの言動にいちいち動揺したり怒ったりする自分とはえらい違いだ、と彼女は尊敬した。
【メイン画面】
会長であるシノの取材が終わった生徒会室。
「では次は写真撮影を行います」
「えー、恥ずかしいなぁ。ポーズとった方がいい?」
「七条先輩ノリノリですね」
「いえ、紹介記事として使うので生徒会室をバックに皆さんは普通に立っていてください」
「なるほど、ギャルゲー式画面撮りというやつか」
「そんなん初めて聞いたんですけど」
ノリノリな先輩二人に少し呆れるスズ。
「なぁ萩村?」
「何、津田?」
「脱いだ方がいいのかな?」
「さっきの聞いてなかったの? 普通に立ってればいいのよ」
「そうか、普通に起ってるだけでいいのか」
「ちゃんと人の話は聞きなさい」
「ごめんごめん」
【超ジェンダーフリー】
あらかた写真を撮り終わった取材中の生徒会室。
「では最後に男子代表として新副会長の津田君から今後の抱負を一言」
「俺ですか?」
最後に畑は津田に抱負を聞いてきた。
「そうですね、男女とも隔たりのない関係を築いていきたいと思っています」
その質問に無難な回答をする津田。
そもそも男子である津田はその立場からこの手の質問はされると考え、
あらかじめスズが津田にこのように受け答えするように指示を出していたのだ。
彼女の予想は大当たりだった。
(よしよし、今日はなんとかまともに会話が成立してるわね)
事前に津田に言い含んでおいたおかげか、今日は彼はいつもと違って普通に見える。
そのことに安堵していた彼女だったが……
「なるほど、つまり更衣室やシャワーの壁を取っ払う気ですか」
「なんでそうなるんですか」
何故か畑は完璧だったはずの津田の回答を曲解して受け取った。
あまりの言葉に思わずツッコミをいれるスズ。
本気で何故そうなるのかわからなかった。
「エロスね」
「性欲の塊だな」
これまた何故か嬉しそうな女子二人。
「……それはいい!! その発想はなかった!!
そうだ、今の俺は学園を変えることができる立場なんだから、できる!!
いや、やってみせる!!」
輝かしい未来を想像した津田が目をきらきらさせてガッツポーズをした。
「副会長はエロい……と」
そんなことを取材用のメモ帳に書き込む畑。
どうやら無表情だからわからなかったが、彼女も生徒会メンバーと似たような人種だったらしい。
「あんたもそっち側なのか……」
先ほど感じた尊敬の感情を捨てたスズちゃんだった。