生徒会変態共!   作:真田蟲

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三十三人目

 

 

【旅支度をしよう】

 

「今度の冬休みなんだけど、私の別荘でクリスマスパーティーなどいかが?」

 

冬休みを目前に控え、気持ちの弾む学生達。

桜才学園の生徒も例外ではなく、それは生徒会役員であっても楽しみであった。

津田の携帯に、アリアからのお誘いの電話がかかってきたのはそんな時である。

 

「―――――って七条先輩に誘われた」

 

「へー」

 

冬休み、受験生であるコトミにとっては最後の追い込みシーズンでもある。

そんな妹の勉強を見てやっていた兄の電話に興味を持ったコトミ。

ぶっちゃけ、勉強からの逃避のために聞いたといっても過言ではない。

内容を尋ねてみれば、クリスマスパーティーのお誘いとのこと。

 

「ほんでいつから」

 

「23日から二泊三日」

 

妹として、兄のリア充ぶりには恐れ入る。

まぁ受験生である自分にはクリスマスなんて関係ないけどね……とならないのがコトミクオリティ。

 

「その辺は近いから生理用品用意しなきゃ」

 

「ついてくる気満々ですね」

 

受験とかよりも、面白そうなこと優先なコトミであった。

基本、津田家の人間は享楽主義者である。

 

 

 

 

 

 

 

 

【りっぱなタテモノ】

 

なんだかんだで当日。

七条家所有のリムジンに乗り、別荘に到着した生徒会役員共+α。

 

「ここがウチの別荘だよー」

 

車から降りた面々の眼前にあるのは、立派な二階建てのログハウスだった。

周囲を森に囲まれており、物静かで落ち着いた雰囲気を醸し出している。

 

「立派な建物だな」

 

「りっぱー」

 

別荘を見上げるシノが漏らした言葉に、コトミも同意する。

 

「立派だわ」

 

彼女達の言葉と同じ感想を抱いたスズが、別荘を称える。

だが、彼女の立ち居地は津田の真横であった。

 

「萩村、その位置でその台詞は駄目だ!!」

 

「?」

 

彼らの背後にいるシノとコトミには、スズの視線がまるで津田の股間を見ているかのように見えた。

 

「実際タカ兄のは立派だよ?」

 

「ほぅ」

 

「通常時だとこれくらいで、半勃ちだとこれくらい。MAXだと……」

 

「ほぅほぅ!!」

 

「確かに立派だったわねぇ」

 

「…………」

 

本人を置き去りにして、兄のサイズを事細かに他人に教える妹。

説教するべきか、自分も会話に混ざるべきか判断に困る。

というか何故にアリアは「だった」と過去形で話すのだろうか?

自分はまだ彼女達に見せた覚えのない津田は首をかしげた。

見せたことのないはずのコトミが知っているのは最早今更である。

他のメンツについては、詳細は皆で海に行ったときの話を参照してください。

 

「……れろ忘れろ忘れろ忘れろ……」

 

彼女達の会話に、ようやく何の話をしているのか理解したスズ。

海水浴の宿で見た津田のアレを思い出して、必死に忘れようとするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

【守護メイド】

 

別荘に入っていく面々。

津田も後に続こうとすると、運転手を務めた七条家のメイドに呼び止められた。

 

「津田さん」

 

「はい、なんでしょう?」

 

振り向くと、こちらを感情の読めない目で見つめる出島さん。

 

「私の許可なく、お嬢様に手を出すことのないようお願いします」

 

「はぁ……別に出す気があるわけでもないですが」

 

逆に言えば、出さないわけでもないような?

津田とて一応、自制心を持ち合わせているわけで。

ただ、しばしば我慢できなくなりそうになるだけの話なわけで。

最初からやる気満々だなんて、まさかそんな、ねぇ?

 

「気を悪くされたらすみません。しかし主の身を守るのもメイドの務め」

 

彼女はスカートのポケットを漁ると、何かの鍵を取り出した。

 

「だから貞操帯の鍵も私が握っています」

 

「面倒くせぇ主従関係」

 

「私の見えない所でお嬢様のロストヴァージンなどさせませんので」

 

「そっちが本音?」

 

主のいけない姿を想像してか、鼻から愛が流れ出ている出島さん。

メイドの勤めとか義務とか、そういった説得力は一切見受けられなかった。

 

「逆に言えば出島さんも交えてならOKということですか?」

 

「お嬢様のアナ○の初めてを私にお譲りいただけるのなら考えないこともないこともないこともないことも……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【テンションあがりまくり】

 

「ちょっと探検してくる!!」

 

「あんまりうろつくなよ」

 

リビングにて、荷物を降ろして一息つく面々。

元気が有り余って興奮収まらぬコトミは、荷物を降ろすと即座に探検しにいった。

その様は来年高校生とは思えないほどに落ち着きがない。

兄の津田は、ませていてもこういうところは子供というか小学生みたいだなと思った。

 

「落ち着きない奴ですみません会長」

 

ソファーの隣に座っているはずのシノに向かって謝る津田。

しかしそこに、会長の姿はなかった。

 

「会長なら妹さんと一緒に行ったわよ」

 

「あれ―――――?」

 

生徒会役員共の中で、コトミと一番精神年齢が近いのは意外にも会長であった。

いや、意外でもないのかもしれないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

【末恐ろしい娘】

 

「七条先輩、トイレって……」

 

「そこ出て突き当りよ」

 

コトミとシノが探検中。

残った面々でリビングで会話していると、スズが尿意を我慢しきれなくなったらしい。

若干赤面しつつトイレの場所を聞き駆け込む。

数分後、トイレでスッキリしてきたにしては妙に釈然としないような顔をしたスズが帰ってきた。

 

「あのー、あの便器の落書きって……」

 

「ごめんねー。私が子供の頃にやっちゃったの」

 

油性マジックで書いたせいでなかなか消えなくってー、と語るアリア。

この別荘のトイレは一階と二階両方に設置されているが、何を隠そうどちらの便器にも「肉」と書かれているのだ。

 

「それ聞いて5倍ドン引きです」

 

 

 

 

 

 

【末恐ろしい娘達】

 

「待たせたな」

 

「いやー、むちゃくちゃ広いですねこの別荘!!」

 

「おかえりー」

 

探検に満足したのか、シノとコトミが帰ってきた。

別荘でも自分の家より広い、とコトミは未だ興奮している。

 

「アリア、あのトイレの落書きはお前が書いたのか?」

 

「子供のころにねー」

 

「おお、やっぱりですか!!」

 

「まぁ子供の頃は落書きとかいたずらしてしまうものだしな」

 

「私も昔、同じことして怒られました!」

 

「何を隠そう私もだ」

 

「あらそうなの? みんな一緒ね」

 

「「「あはははははははは」」」

 

皆昔はやんちゃだった。

共通点を見つけて楽しそうに笑う女性人……スズを除く。

 

「……津田?」

 

「ウチのトイレの便器にも肉って書いてあるよ。昔コトミがな」

 

そういって姦しく笑う妹を指差す兄。

つまり萩村家意外の家のトイレには、便器に肉と書いてあるのだった。

それを聞いてさらにドン引きするスズであった。

 

 

 

 

 

 

【誤作動】

 

「ん、何だこの箱?」

 

リビングのテーブルの上に、ラッピングされた箱が一つ置かれていることに津田は気がついた。

ラッピングされているからには誰かへのプレゼントなのだろうが。

明日のパーティー本番、全員でプレゼントを交換することになっている。

誰に何が当たるかは当日のお楽しみなので、今はまだみんな荷物の中にしまっているはず。

誰かが出したまま、忘れているのだろう。

 

「あ、これ明日のパーティーのためのプレゼントです」

 

「あぁ出島さんのでしたか」

 

どうやらそれは出島さんのものらしい。

先ほど荷物の整理をしていたときにしまい忘れたらしい。

彼女が箱を手に取ると、中のものが誤作動を起こしてしまったようだ。

 

―――ヴィィィィィィイイ―――

 

小さな振動音を立てて震える箱。

見なくてもなんとなく中身がわかってしまった。

 

「まぁ男性でも使い方しだいでは使えますから」

 

「はっはっは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【わらわら】

 

全員入浴を終えて、就寝するまでのくつろぎタイム。

コトミは荷物からなにやら大きめの箱を取り出した。

「人○ゲーム」と題打たれた、定番のボードゲームである。

 

「寝る前にゲーム大会でもどうでしょう?」

 

「いいよー」

 

「勉強しろよ」

 

「いやー、そのつもりだったんですけど勉強道具一式忘れてきちゃって」

 

てへ、とわざとらしい嘘をつくコトミ。

こいつは本当に受験に成功する気はあるのだろうかと、疑問に思うスズであった。

だが、疑問に思ったところで持ってきていないのでは勉強させることもできないわけで。

ならば遊ぶときには遊ぶのが有意義な時間のすごし方と言えよう。

 

「津田も誘いますか?」

 

「うむ。みんなで津田の部屋に行こうか」

 

というわけで、津田に割り当てられた部屋に向かう面々。

ノックをして返事を聞くまもなく扉をあける。

そこにはいきなり扉が開いてちょっとおどろいたような表情の津田。

特に自家発電とかしていたわけでもなく、普通にベッドに座ってぼーっとしていたらしい。

いきなり扉をあければいけない現場に遭遇するかもとちょっと期待していた書記さんはすこしがっかりである。

妹? 彼女は家で鍛えられた聴力ですでに兄が自家発電中ではないことは見抜いていたので特に何も感じていないよ?

 

「フフフ……今夜は寝かせないぞ……」

 

扉が半分ほど開かれ、そこから部屋を除く女性三人+α。

皆湯上りでいい感じに肌が火照っており、パジャマ姿といういでたち。

この公式から津田が導き出した答えはただ一つ。

 

「わかりました。初めてですが全員を満足させられるよう善処します」

 

そういってズボンに手をかけて脱ごうとする津田。

 

「違うわ馬鹿者」

 

瞬歩と見まごう素早さで彼の前に移動したスズの健脚が、彼の顎に吸い込まれた。

 

 


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