生徒会変態共!   作:真田蟲

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二十七人目

 

【似た者兄妹】

 

前回に引き続き、未だ体育祭の真っ最中の桜才学園。

今現在は午前の部を終えて昼休憩の時間である。

今日は売店も食堂も休業のため、各自弁当持参である。

津田の妹のコトミは兄の弁当を届るついでに応援に来ていた。

コトミから弁当を受け取っているところにアリアが昼食に誘おうとやってきた。

 

「あれ、津田君その子……」

 

「妹のコトミです」

 

同じ生徒会のメンバーが親しげに誰かと話している。

しかもそれが学園の生徒でなければ、誰かと気になるだろう。

津田は彼女が聞きたがっているのを察して隣の妹を紹介した。

コトミの背中を押して、彼女にも自己紹介するように促す。

 

「いつも兄がお世話になってます」

 

こうして並んで見ると、男女の顔立ちの違いはあるが成程、目元などがよく似ている。

 

「へー、兄妹だけあって似てるねー」

 

「そうですね。共にまだ性体験もありませんし」

 

「そういう意味じゃないよ」

 

「じゃあどういう……ああ!

 そうですね。私もタカ兄も乳首は右の方が感度がいいですよ」

 

「そういう意味でもないんだけどね」

 

「コトミ……なんで知ってるんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【差が際立……たない?】

 

昼食が終わり午後の部。

最初の種目は二人三脚である。

この競技には生徒会の二年生もペアで出場していた。

そのため、観客席では津田とコトミが観戦している。

 

「シノちゃん、一位目指そうね」

 

「ああ」

 

スタート位置に並ぶ次の走者たち。

彼女たちはペアを組むものと足元を紐で結び、肩を組んでいる。

ラインに並ぶ位置に、先ほど会話した人がいるのをコトミが気づいた。

 

「あっ、さっきの綺麗な先輩だ。隣にいる人も美人さんだねぇ」

 

「ああ。隣にいるのは生徒会長の天草シノ先輩だよ」

 

「へー……でもあの人、美人だけど偽乳だね」

 

「……言わないであげて」

 

パット2枚も入れてるな、と見抜くコトミ。

兄ももちろん気づいてはいたが、あえて今まで口にしなかったのだ。

 

「別に貧乳はそれはそれでいいものだと思うけど。

 一種のステータスじゃん」

 

「それも本人には言わないであげて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【加速度】

 

種目が進み、残すところあと2つの競技のみとなった体育祭。

次の100M走で出場するので、津田はクラスメートと準備をしつつ作戦をたてていた。

彼の友人である眼鏡君がプレッシャーをかけてくる。

 

「次タカトシが一位になればうちのクラズがトップだ。頑張れよ」

 

「がんばれー」

 

「プレッシャーかけんなよ」

 

眼鏡君の言葉に、特に考えもなく他のクラスメートも応援するだけだ。

その言葉に無駄に今からプレッシャーがかかる津田。

ちなみに眼鏡君とは、津田が教室で一番よく話す男子生徒である。

その呼び名の通り眼鏡をかけているのが特徴でそれ以外に特徴らしいものをもたない男子だ。

おかげで入学早々みんなから「眼鏡」とあだ名をつけられて本名を呼ばれない。

むしろ名前をみんな覚えていない切ない生徒である。

しかしそんな彼のことは無視して、コトミが兄に助言した。

 

「クラウチングスタートでスタートダッシュ決めてみれば?」

 

「どーやんのそれ?」

 

「えっとね……まず服従のポーズを取る」

 

「こうか?」

 

津田は妹の解説通りに服従のポーズをとった。

ただし、地面に手をついてうなだれるようなポーズではない。

犬がするように腹を上にした仰向けの形だ。

 

「次に腰を突き出す」

 

「腰を突き出す?」

 

説明通りに動いたため、仰向けの状態から腰を上に突き出した。

ちょうど人が乗っていれば騎乗位の下から突き上げた形だ。

 

「…………」

 

「コトミ、これはどういうことだ」

 

何を思ったか、津田の妹は彼の突きだされた腰の上にまたぐようにして腰を降ろしたのだった。

明らかに変な行動だが、津田の妹ということでもはやクラスメートからは納得されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

【戦いの下ごしらえ】

 

「最後はサークル対抗リレーだ」

 

体育祭最後の競技。

それはエキシビジョンをかねたものだ。

部活や同好会、委員会などのグループによるリレーである。

出場希望のグループは一組四人をメンバーとして一人200M走ることになる。

当然、委員会枠の代表として生徒会も出場する。

 

「我々も生徒会として出場するぞ」

 

「「「おー!」」」

 

シノの声に、残りのメンバーが声を上げる。

最後の競技ということもあってなかなかに気合いが入っていた。

 

「さっそく作戦考えなきゃね」

 

「走る時に重要なのは位置取りですかね」

 

誰を何番目に配置するかで変わってくるだろう。

走りの速い順にするか、遅い順にするか。

それとも交互にするのか。

しかしスズのその考えを全く他のメンバーは理解していなかった。

 

「そ……そうなのか」

 

「ブリーフなら固定できるんじゃない?」

 

シノとアリアは津田の股間を凝視している。

 

「あんたらはもう少ししっかりしたほうがいい」

 

その視線に津田は少し嬉しそうに照れ笑いをしていた。

 

「へへへ」

 

「お前もだぞ津田」

 

「すみません」

 

スズに注意されて一応謝る津田。

しかしそんな彼の肩を背後から叩くものがいた。

後を振り向けば、そこにいたのは妹のコトミ。

 

「ブリーフはないけど、おむつならあるよ。貸そうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【オーバーラン】

 

リレーが開始され第一走者がスタートする。

一番目のアリアから好調な走り出しだ。

普段おっとりしているイメージの強い彼女だが、こう見えて運動神経もいいのである。

走者と一緒に、トラックの外周ではカメラを持った畑ランコが激走していた。

そのレンズは絶えずシャッターを切り、アリアを含む女子生徒の乳揺れを激写している。

一位通過でアリアが津田にバトンを渡す。

それを危なげなくキャッチし、津田も快調に走りだした。

それに平行するように畑も外周を走り、走るごとにきらめく汗を激写している。

 

「会長、今度は負けませんよ」

 

「いいだろう」

 

第三走者のスタートラインでは、シノと風紀委員の五十嵐カエデが不敵に笑い合っていた。

この作品では一切描写されなかったが、借り物競走のさいに彼女はシノに負けているのである。

そこに、第二走者のメンバーがすぐ近くまで走り込んできた。

自身のスタートを切るタイミングがもうすぐだと感じ、二人ともいつでも走りだせるように構える。

背後には、一位を走る津田の姿。

 

「会長ー!!」

 

「こい津田!!」

 

いままさにシノにバトンが渡される、その瞬間。

まだバトンを受け取ってすらいない隣の五十嵐が走りだした。

 

「「「え!?」」」

 

思わずバトンを空振りしてしまう。

五十嵐にバトンを渡そうとしていた風紀委員のメンバーを一緒に戸惑いの声をあげてしまった。

しかし一度空振りしたものの、ちゃんとバトンを渡して今度はシノがスタートする。

思わぬアクシデントで気が抜けそうになったが、このまま一位で走りぬく!

そう決意するシノであった。

しかし彼女に並走する二つの影。

津田と畑であった。もちろん畑は走る生徒会長の姿を激写している。

 

「な、なんで津田がまだ走ってるんだ!?」

 

「いや、なんていうか……男の本能?」

 

逃げられれば追わずにはいられない。

もはやトラックを離れてどこかへと逃げる五十嵐。

それにあわせて津田も並走を止め、彼女の跡を追って爆走した。

 

「いーーーーやーーーーーーーーー!!」

 

風紀委員長の恐怖の叫びが、人ごみに消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【疾走少女】

 

シノからバトンを受け取り、小さな体ながら一生懸命走りぬけるスズ。

小柄なため、他の走者と歩幅で劣っているもののそのまま一位を守りきった。

ちなみに、シノがゴールすると同時に畑は力尽きて真白になっている。

今はトラックの隅に倒れて他の新聞部員に看病されていた。

 

「流れる汗……踊る肉体……乳揺れ……売れる……これは売れる……」

 

燃え尽きながらも、ゴールまでは走り切れなかったが満足げな畑。

その顔はやりきった感がにじみ出ていた。

しかし、後日写真を確信してみると、容量が一杯だったという彼女らしくない初歩的ミスが発覚。

おかげで最後のリレーの写真は一枚もデータに残っていなかった。

体育祭から数日間、新聞部の部員には暗い影が降りていたという。

 

 


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