生徒会変態共!   作:真田蟲

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二十三人目

 

 

【再び目安箱】

 

生徒会室前に設置されている目安箱。

設置当初はいろいろな生徒の要望が入っていたが、さすがに二学期にもなると利用者がかなり減っていた。

 

「最近これあんまり使われてないんですよね。

 先生も何か不満とかあったら書いてくださいよ」

 

「ん? 教師の私でもいいのか?」

 

横島先生は津田の提案にどうしたものかと、尋ねるような視線をシノに向ける。

その視線の意図を理解したシノは特に反対することもなかった。

 

「良いんじゃないですか? 別に不満をもっているのは生徒だけでもないでしょう。

 他の教師の方々にも声をかけておいてください」

 

「そうね、私達もクラスのみんなに声かけして意見を出してもらいましょう」

 

「それがいいですね」

 

最近めっきり使われなくなった目安箱の現状を憂い、話し合った結果、

今一度周囲に不満や要望があれば投書するように呼びかけることが決まった。

前回は生徒の意見のみであったが、今回は横島先生の協力のもとに教師の意見も加わることとなった。

 

 

 

 

 

【数日後、開封してみた】

 

それから数日後の生徒会室。

今日はあれから投書された目安箱の中身を開けて確かめてみることになっている。

 

「ふむ、なかなか多くの意見が寄せられているようだな」

 

ではさっそく……と目安箱をひっくり返して中身を机の上にぶちまけるシノ。

箱唯一の穴である※の落書きをされた場所からいくつも紙が飛び出してきた。

 

「……ちょっと卑猥だなこれ」

 

「落書きした張本人が言うな」

 

なんだかちょっと嬉しそうなシノにスズが突っ込む。

本当、なんでこんな落書きしたんだったか、今となってはどうでもいいことだが。

箱の中にはたくさんの折りたたまれた紙が入っており、たくさんの意見が寄せられているのがわかる。

その中の中身を一枚、津田が無造作に手にとって開いて見せた。

 

「え~、なになに?……ペンネーム・おまるこさんからの意見。

 【最近好きな人が出来たのですが、どうやって彼をゲットすればいいのかわかりません。

  どうしたらいいでしょうか?】だって」

 

「知るか」

 

「なんだペンネームって、ラジオ番組かなんかのつもりか?」

 

「おまるこさんって、まるを○に変えると大変ね」

 

かなりどうでもいい内容に一言で切ってすてるスズ。

対照的にシノとアリアは少し興味を持ったようではあるが、やっぱりどうでもいいことなので次に行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

【2枚目】

 

 

「えーっと、次!……最近不満なもの=欲求」

 

「……直球だな」

 

「誰だこんなふざけた内容書いたのは?」

 

「匿名だからわかりませんね」

 

「あらあら……」

 

あまりに直球すぎる内容に、どう対応すべきか悩む。

津田としては内容に関しては大いに賛成できるのだが……

いや、津田に限らずシノもアリアも若い性衝動を持て余すことは多々あるが、

知りたかったのはそういう不満ではない。

この場合、聞きたかった意見というのは学園の改善案に役立つ意見なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【どんどんいこう】

 

最初からふざけたような内容の意見だったが、気を取り直して次の確認を行うことにした。

さっきまでは津田が引いていたので、今度はシノが適当に見つくろって手にとって見た。

きっと常に欲求が不満気味な津田が引くからこのような意見を引き当てるのだろう。

そう思って手に取った紙を広げる。

 

「え~と……不満→欲求………」

 

「またですか?」

 

「あらあら……」

 

その内容も、先ほどと同じものであった。

呆れかえるスズであったが、もしや同一人物がいたずらで同じ内容を書いたのかと疑った。

しかし先ほどの物と今の物を見比べてみるが筆跡は明らかに別人である。

 

「まぁまぁ、思春期だしね。高校生なんだからしょうがないんじゃないか?」

 

眉間にしわの寄るスズをなだめる津田だったが、彼が言うともの凄く説得力を感じるスズであった。

主に思春期というところにである。

まぁ、彼を思春期というほぼ高校生全員にあてはまる言葉でカテゴライズしていいものかどうかは判断に迷うが。

二度あることは三度あるとも言うし、これは必然だったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

【改善要望】

 

さすがに次は違うだろうとシノはもう一枚手にとって開いてみた。

 

「次だ次!……女子の体操服をブルマ指定に戻してください」

 

「却下ですね」

 

速攻で否を唱えるスズ。

しかし今回は津田がそれに意見した。

 

「ちょっと待って! いいじゃないですかブルマ! 俺は賛成です!!」

 

「おぉう!? いつになく目が輝いているな津田……」

 

「あらあら……」

 

「……」

 

椅子から立ちあがり、拳を握って力強く発言する津田にさすがのシノもちょっと引いた。

アリアは特に困った様子もないが、スズは無言で津田をゴミを見るような眼で見ている。

 

 

 

 

 

 

【下に履くもの】

 

ぜひ女生徒の体操服は指定をブルマにすべきだと熱く語る津田。

 

「赤ブルマもいいけどやっぱりここは定番の紺がいいと思うんですよ!!

 そんで上着をブルマの中に入れることを校則とすべきです!!」

 

「キモい」

 

顔を紅潮させて熱弁する津田を、軽蔑した目で見るスズ。

しかしその視線になんだか興奮しちゃってさらに頬を染めてテンションがあがる津田であった。

まさに悪循環である。

 

「確かにブルマはすばらしいものであると私も思うが……」

 

「思わないでください」

 

「……しかし今は男女平等の時代だ。

 女性だけあんな露出の多い恰好は嫌がる子も多いのではないか?」

 

珍しく正論を口にするシノ。

その隣でアリアは何かを真剣に考えていた。

 

「確かに不平等化もしれませんが、これも美の追求のためです」

 

美じゃなくてエロスへの追求だろ、と心の中で突っ込むスズであった。

今の彼に話しかけるのはなんだか気持悪いのであえて口にはしなかったが。

そこでいままで黙っていたアリアが何かいい案を閃いたらしい。

 

「そうだ。 女子だけブルマだから不平等なのよ! 

 男子も下はブルマにすればいいんだわ!!」

 

「成程、それは盲点だったな!! さすがアリアだ」

 

いいこと思いついたと言わんばかりに発言するアリアに、シノが同意する。

しかし津田はリアルに男のブルマ姿を想像してしまった。

 

「……やっぱりブルマは諦めます」

 

「……賢明な判断ね」

 

 

 

 

 

 

 

【改善要求その2】

 

津田に続き、シノが引き当てるものも大概変なものであった。

そのために次にチャレンジするのはアリアである。

彼女は自分に一番近い紙を指で掴み広げてみせた。

 

「これは……購買部にコンド○ムの入荷希望だって」

 

それは購買部に商品に関する改善要求。

しかし、希望する商品が非常にあれなものだった。

 

「おい、そいつ校内で不純異性交遊する気満々じゃないか?」

 

「却下で」

 

そもそもこの学園は校内恋愛を禁止している。

普通に考えて恋愛の先にあるであろう不純異性交遊ももちろん禁止である。

というかコンドー○を購買で売っている高校など聞いたこともない。

 

「でもシノちゃん……この人は不純同性交遊かもしれないよ?」

 

「同性?……BLか!?」

 

「ありえねーよ」

 

 

 

 

 

 

【集計結果】

 

全ての投書を確認し、集計してみた。

その結果は下の通り。

 

・欲求が不満であるという意見 27票(内1票は横島先生らしき筆跡)

・ブルマ希望 3票

・コンドームの入荷希望 1票

・ブルマが駄目ならスパッツ希望 6票

・彼氏or彼女が欲しい、どうにかしてくれ 31票

・結婚してください 2票

・七条先輩のブラをください 1票

・会長に罵ってもらいたい 2票

・もっと部の予算を増やしてほしい 1票

 

集計結果に愕然とする生徒会役員共であった。

この学園にはこのての人間しかいないのだろうか?と頭が痛くなるスズ。

 

「というか名指しでこんな意見出されてもなぁ……」

 

「困っちゃうよねぇ」

 

特に名指しで変な願いをされているシノとアリアは困惑気味だ。

そもそもまともそうな意見が部の予算を増やすという1票しかないのはどういうことか。

 

「……てか、この紙って七条先輩の字ですよね?」

 

津田がそう言って手に取った紙には筆を使って書かれた達筆な文字で『性欲』と書かれていた。

 

「あらあらうふふ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【無人ノック】

 

二学期も始まって2週目に突入した桜才学園。

その生徒会室で役員共が集まっている中、入口の扉がこんこんとノックされた。

 

「ハーイ……あれ?」

 

津田が返事をして扉を開けるが、そこには誰の姿もなかった。

確かに誰かがノックしたはずだがどういうことだろう?と首を傾げる。

そんな彼の態度にどうしたのかとシノが話しかけた。

 

「どうした津田、誰か来たんじゃないのか?」

 

「いえ、それが……確かにノックはされたんですけど誰もいないんです。

 誰か女の子の気配は残っているんですけど……感覚からして金髪でちょっと気の強い感じの人だと思います」

 

「なんでそんなこと解るんだ」

 

金髪で気が強いと聞いて、何となくシノがスズを見やる。

 

「私じゃないですよ。というか部屋の中にいる私には無理に決まってるじゃないですか」

 

「ふむ、それはそうだ」

 

その時再び扉がノックされる音が聞こえた。

今度はアリアが返事をして扉を開ける。

 

「ハーイ」

 

「失礼します」

 

扉を開けたそこには、金髪の凛とした表情の女生徒がいた。

てっきりまた誰もいないと思ったのに、これは一体どういうことか。

 

「あれぇ?」

 

さっきはなんでいなかったのだろうと首を傾げる津田であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【正しい接客?】

 

彼女の名前は五十嵐カエデ。

二年生の女子生徒で風紀委員長を担当している人である。

その容姿は津田が感じ取っていた通り金髪で、2本のおさげを作って背中に垂らしていた。

眼は意思の強そうな凛としたものであり、なかなかに気の強そうな雰囲気を醸し出している。

 

「立ち話もなんなので、椅子をどうぞ」

 

「ありがとう。座らせてもらうわね」

 

入口で立ったままの彼女に気を利かせたスズが、椅子を引いて座るように促した。

それに応じてシノの対面へと着席する五十嵐。

先を越されたと感じた津田は、即座に氷入りの麦茶を用意する。

 

「今日は暑いですからね、冷たいお茶どうぞ」

 

「あ、あ、ありがとう……きょ、きょ、今日は暑いものね……」

 

何故かプルプルと震えながら距離を保って礼を述べる五十嵐。

彼女はどこか津田を警戒しているようであった。

しかしその体の震えを別のものと解釈したアリアが、鞄からある物を取り出して五十嵐に見せる。

 

「ムラムラしちゃうものね。はい、ピンクロ○ター」

 

「いりません」

 

アリアが彼女に渡そうとしたもの。

それは掌の上でブブブブブ……と音を立てて振動するピンク色の物体だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【へりくつともいう】

 

真剣な顔をしてシノと向かい合う五十嵐。

彼女は今日ここに来た本題を話し始めた。

 

「では本題に入ります。

 現在、生徒会にはある嫌疑がかけられています」

 

「何?」

 

嫌疑をかけられていると言われ、眉をひそめるシノ。

彼女は自分の行いに何らいかがわしいことはないと思っているので、この意見は寝耳に水である。

アリアも津田も少なからず驚きの表情をしている。

だが皆一様に驚く表情をしている中、スズは他の役員共を見て何かやらかしたのだろうと考えていた。

正確には津田を諦めた表情で見ていた。

 

「夏休み中あなた方が男女で外泊!! しかも同じ部屋で!!」

 

そう言って五十嵐が机に広げたのは数枚の写真だった。

 

「私も嫌疑に入ってたのね」

 

「海に行った時のだから全員だろうねぇ」

 

何気なく写真を眺める津田とスズ。

そこにはどうやって入手したのかと疑う写真がいくつもあった。

浴衣を着てアリアがトイレから出てくる写真。

同じ浴衣を着て牛乳を一気飲みしているスズの写真。

同じ浴衣を着て廊下を歩くシノと津田の写真。

津田が露天風呂でかめはめ波の練習をしている写真。

津田の腕枕で眠るシノの写真。

ス巻きにされて悦んでいる横島先生の写真。

寝ぼけて津田の布団の中にもぐりこもうとするアリアの写真。

幸せそうに眠るスズと、写真の奥で涎を垂らして悦に浸っている横島先生の写真。

浴衣を脱いで下着姿になっているスズの写真は、見つけた瞬間に彼女が跡形もなく葬り去った。

 

「こんなのどこで入手したんですか?」

 

津田の問いに、五十嵐は静かに自分の隣を指さした。

そこにはいつの間にいたのか、新聞部の畑ランコがちゃっかり椅子に座ってお茶を飲んでいる。

 

「畑さん!? 誤解をまねくから他人に話さないって約束したじゃないですか!?」

 

「あぁ……津田君、そんな畑さんなんて……他人行儀な呼び方をしないでくださいな」

 

津田が以前の約束を破ったのかと問いただすと、畑は声だけは悲しそう?に嘆いた。

相変わらずの無表情であったが、それが逆に声とのギャップで違和感絶大である。

 

「お姉様! 誰にもしゃべらないって約束してくれたじゃないですか!」

 

訂正して、畑をお姉様と呼んで問いただす津田。

その理由を知らないシノ以外の者は、何故にお姉様?と首をかしげていた。

 

「いや、言ってませんよ? ただ写真を見せただけですから。」

 

「さっすがお姉様!! 屁理屈が上手なんですね!そこに痺れる憧れるぅ!!」

 

「そこは褒める所じゃないぞ津田。

 あと畑もそんなトンチはいらんぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

【真面目な会話】

 

「生徒会長ともあろう人がこのような不埒な行為、見逃すわけにはいきません」

 

腕を組んで相手を詰問するかのように話す五十嵐。

その間に、いつの間にか畑は忍者のようにどこかへと消え去っていた。

だがそれについては畑だから、と誰も気にしている様子はない。

 

「というと?」

 

シノが彼女の話の先を促す。

 

「当然、解任という事態になりかねません」

 

「「「「…………!?」」」」

 

その言葉に衝撃を受ける生徒会役員達。

しかし当の本人であるシノにはいまいち上手く伝わっていなかったようだ。

 

「別に懐妊なんてしてないぞ?」

 

「やることやってませんもんねぇ」

 

「そうよねぇ」

 

訂正、シノだけでなく津田もアリアにも上手く伝わっていなかったようだ。

 

「は?」

 

「この人達基本変なので気にしないでください」

 

呆気にとられる五十嵐に、スズがフォローになっていないフォローをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

【潔白の証明】

 

スズにちゃんと理解できるように説明を受けたシノは、改めて五十嵐と対峙する。

 

「そもそも、その件には大きな誤解がある。

 酒癖の悪い横島先生がかくかくしこしこ……」

 

「しかじかでしょ」

 

ついつい言い間違えたシノの言葉をスズが訂正しているころ、職員室で横島先生がくしゃみをしていた。

そのくしゃみで机の上のプリントが飛び、飛んできたプリントに驚いた科学の山田先生。

その山田先生が運んでいたコーヒーが近くに座っていた数学の広谷先生42歳男の後頭部にかかり火傷を負わせ、

突然襲いかかった熱に跳び上がった広谷先生が頭から前の席に座る社会の関口先生の巨乳の谷間に突っ込んだ。

関口先生は悲鳴をあげて広谷先生を突き飛ばし、突き飛ばされた彼は教頭先生に激突。

その衝撃で教頭先生のカツラが外れてしまい、彼のヅラ疑惑の真相が職員室中に知られてしまっていた。

……話を戻して生徒会室。

 

「そうだよ、不埒なんていいがかりだよ!」

 

ちょっと怒った様子でアリアが五十嵐に言う。

 

「しかしそれを証明できますか?」

 

だが向かい合う五十嵐も負けてはいない。

そもそも疑いがあるというだけで駄目なのである。

今回の嫌疑が間違っていると証明できないのであれば、それは即生徒会への不信につながるのだ。

こういう場合、事実の有無が分からない場合はたとえ無実であろうと疑いを持つのだ常である。

 

「証明?勿論できるよ!! ちゃんと全員膜あるから!!」

 

さぁトイレに行こうと息をまくアリア。

 

「「……」」

 

そういう証明方法なのかと無言になるシノとスズ。

 

「すみません。俺は男なので膜はないんですけど……

 俺の亀さんもまだ未使用のピンク色なんでよかったら見ます?」

 

ちょっと仲間外れで残念なような、むしろ嬉しいような複雑な表情で照れる津田。

 

「やっぱり証明しなくていいです」

 

五十嵐は即答だった。

 

 

 

 

 

 

 

【そっぽ】

 

 

「そ、そんなことせずとも私は洞察力に自信があるので

 嘘か真かは相手の目を見ればわかります」

 

腕を組んで言い切る五十嵐。

その言葉に前に出る挑戦者は津田であった。

この中で唯一の男である自分が行くべきであると判断したのだ。

男が自分しかいないのだから、自分の疑いが晴れればそれだけで生徒会への不純異性交遊の疑いは晴れる。

 

「望むところです。

 先輩達の言うとおり、俺たちは潔白ですよ!」

 

真剣な表情できりりと顔を作る津田。

しかし、五十嵐の前に立つもすぐに顔をそらされた。

 

「あれ?」

 

彼女の顔の前に回り込むも、再びそっぽを向かれる。

そのことに不思議そうな顔をする津田であったが、その答えをアリアが語った。

 

「言い忘れていたけど五十嵐さんて男性恐怖症なの」

 

「さっきから津田が避けられていたのはそれでだったんですね」

 

「フッ、なら一層、見られないわけにはいくまい!!」

 

これは自分への挑戦と受け取った津田。

彼は素早く五十嵐の視界へと移動した。

 

「ひっ!?」

 

慌てて首を動かして目を合わせまいとする五十嵐。

しかし彼女が視線を移動させた場所には既に津田が立っていた。

 

「ひぃぃ!?」

 

右を向いても、左を向いても、前も後も360度。

どこを見ても津田が先回りをしている。

なんで!?なんでどこを見ても彼がいるの!?……と混乱し始めた五十嵐。

咄嗟に天井を向くも、そこには天井に蜘蛛のようにへばりついた津田がいる。

 

「ハッハッハ!! これでも子供のころはNINJAを目指してましたからね!

 このくらいは朝飯前ですよ!」

 

「いやああああ!!」

 

光のような速さで移動する彼に、目をつぶって半泣きになる委員長。

むちゃくちゃに首を振るうが、彼女がいつ目を開けてもいいように津田も常に彼女の顔の正面に立とうとする。

いい加減五十嵐が可哀そうになってきたスズは、適当に前方を蹴り上げた。

 

「いい加減にしろ津田」

 

「ぐぼぅ!?………ぁぁぁぁ~……」

 

適当に蹴り上げたかのように見えた足は、高速で動きまわる津田の股間を正確にとらえた。

そのまま丁度開いていた窓に向かって吹っ飛び、彼は下へと落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

【スーパー紳士】

 

津田が窓から落ちて静かになった生徒会室。

正気に戻った五十嵐が、残ったメンバーと向かい合っていた。

 

「わかりました。あなたがたの言い分を信じましょう」

 

ただし……と忠告を付け加える。

だが肝心の忠告の対象をなる人物はここにはいなかった。

 

「今後、津田副会長が本当に女子に手を出すようなことがあれば、

 その時は覚悟しておいてくださいね」

 

「それはわかったが……それは津田本人に向かって言うべきではないか?」

 

シノの言葉ももっともであるが、男性恐怖症の委員長はその言葉にうっ……と詰まる。

 

「こ、この場に彼がいないのでは仕方無いでしょう?」

 

「いますよ?」

 

彼女の言葉に掃除用具入れから津田が出てきた。

 

「ひぃ!?」

 

「ややこしくなるからもう少しそこでおとなしくしてろ」

 

「ああ!?」

 

しかし津田が出てこようとしたのを発見したスズが、いち早く彼を掃除用具入れに押し込んで閉じ込めた。

ジェスチャーで話を先に進めるようにシノに合図を送る。

シノはスズのジェスチャーの意味を理解したのか、津田をスルーすることに決めた。

 

「まぁ津田には後で私の方から伝えておこう。

 しかしそんな警戒しなくても津田はそんなことしないぞ?」

 

「……そうでしょうか?」

 

「そうだ。津田は責めるよりも責められるほうが好きだからな。

 よく萩村に蹴られて悦んでるし」

 

「それに津田君の場合、出すなら手じゃなくて白濁液よね?」

 

「不届き者―――――!!」

 

五十嵐カエデは生徒会室から逃げ出した。

本人を無視して変態ということになってしまった津田。

しかしあながち間違いではないというところが、彼の駄目なところであった。

 

 

 

 


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