生徒会変態共!   作:真田蟲

22 / 36
二十二人目

 

【新競技】

 

二学期も始まった桜才学園。

その生徒会室では、来月に行われる体育祭についての会議が行われていた。

 

「今日の議題は来月に迫った体育祭についてだが……

 共学化して初めての体育祭だ。何か新しいことができるといいのだがな」

 

何かいい案はないか?と役員達に尋ねるシノ。

各々妙案を思い描こうと思案顔をする。

 

「そうなると競技ですよね。

 リレー、借り物競走、玉入れ……」

 

「君は何を言ってるんだ?」

 

津田のつぶやいた言葉に、シノが不思議そうな顔をして疑問をあげる。

逆に津田やスズ、アリアは解らない顔をしていた。

 

「え?」

 

「会長知らないんですか? 玉入れ」

 

「入れるのは玉じゃなくて竿だろ?」

 

スズの問いかけにちょっと頬を赤く染めて応えるシノ。

 

「せっかく珍しく津田がまともに考えていたのに」

 

あんたがそういう流れに持ってってどうするんだ。

呆れかえるスズの隣で、あぁ!と理解をしたように手を打つアリア。

 

「シノちゃんは津田君の竿を入れたいのね?」

 

「そうなんですか!?」

 

「いや、違うぞ?これは単なる冗談……なんで脱ぐ!?」

 

津田は嬉しそうにズボンを下ろそうとベルトを外す。

うふふと笑うアリアと一緒にシノににじり寄った。

 

「や、違うんだ!……悪かったから! な?」

 

「もうシノちゃんったら、遠慮しなくてもいいのに」

 

「遠慮じゃなくて!? だ、駄目だ津田!!……まだ駄目―――――!?」

 

「がふっ!?」

 

シノににじり寄ってからかう二人を止めたのは、やっぱりスズによる津田の股間への蹴りだった。

 

 

 

 

 

 

 

【天然お嬢さん】

 

「じゃあ参考までに去年行った競技名書いていくねー」

 

何事もなかったかのように、ホワイトボードに記入していくアリア。

シノもスズも津田を無視して椅子に座り、真面目そうな顔をしている。

その後ろでは津田が壁に手をついて腰をトントンと叩いていた。

彼等にとってはこの程度、日常茶飯事である。

 

「アリア、誤字があるぞ」

 

「え?」

 

どれだろう?と自分が書きだした内容を上から確認してみる。

・玉入れGOLD

・あいつのアレを奪い取れ騎馬戦

・障害があるほど燃え上がる恋のようだね競争

・ドキ!くんずほぐれつ女子校生だらけの組体操

・あなたの彼氏貸してください!借り物競走

・私のハートを受け取って!クラス対抗リレー

・あの子を出し抜く100m走

・パンツじゃないよ、パンを食べる競争だよ

・etc…

 

「あっ、間違えた。正解はこっちかー」

 

失敗失敗、と笑って女子校生の校を消して高に書き換える。

 

「うっかり屋だなアリアは」

 

「わざとじゃないですよね? ていうか本当にそんな競技名だったんんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【へろへろ】

 

まだまだ会議中の生徒会室。

ちょっと疑問なんですが、とスズが手をあげた。

 

「何だ萩村? 何か気になったのか?」

 

「男子がいるクラスといないクラスで戦力に差がでませんかね?」

 

女子と男子では基礎体力も違うでしょうし、と話す。

 

「一理あるな」

 

「綱引きとか力を使う競技は特にねー」

 

ふぅむ、と悩む生徒会の面々。

この学園はまだ一年生にしか男子はいない。

しかもその数は圧倒的に少ないせいで、男子の数がクラスごとで釣り合わないのだ。

 

「よし、ハンデをつけるか」

 

「例えば?」

 

津田の問いにしたり顔でシノは答えた。

 

「男子は前日に限界まで自家発電を……」

 

「それじゃ徹夜になっちゃうよ」

 

「あらあら、津田君ったら絶倫さんね!」

 

「あんたらもーちょっと真面目に考えようや」

 

 

 

 

 

 

 

【先駆者】

 

「こういうのはどうでしょう?」

 

そう言って津田が話す内容は、男子に競技の参加出場回数に関する制限を設けるということだった。

なかなかの理にかなっている案に皆が同意する。

 

「あんたが楽したいだけじゃないの?」

 

ただ、スズは津田がいい案を出したことにちょっと悔しそうだったが。

でも彼女も特に反対しているわけではない。

 

「うむ、新しい観点を得るために君をスカウトしたのは正解だった。

 今後も新しい桜才のパイオツマニアとして期待しているぞ!」

 

親指を立てて決めてみせるシノ。

だがその内容は残念なものに聞こえた。

 

「パイオツマニア?……何言ってるんですか会長」

 

どうしてそこでそんな単語が出てくるんだと呆れるスズ。

脈絡ないにもほどがあるだろう。

 

「……パイオニアを噛んでしまった」

 

「器用に噛みましたね。…まぁ確かにおっぱいは好きですけど。

 でも俺は女の子の髪もうなじも手も足も腰つきもすべてが好きです」

 

「お前も何言ってるんだ津田……」

 

 

 

 

 

 

 

 

【受験生です】

 

その夜、津田の家にて。

コンコンと部屋の扉がノックされる音がした。

 

「どうぞー」

 

部屋で漫画を読んでいた津田は、枕の下に瞬時にその漫画を隠す。

まぁ、なんだ。ちょっと18歳未満には適しない本だった。

 

「タカ兄ー、勉強教えてー」

 

扉から顔をのぞかせたのは妹のコトミであった。

その頭部には矢が刺さっており、ぼろぼろの甲冑を着込んでいた。

全部コトミの手作りである。彼女は一応受験生であった。

 

「何?」

 

「英語ー」

 

いつものごとくスルーする津田に、いつも通りスルーされても平然としているコトミ。

甲冑の下に履いているスカートに手をつっこんで教科書を取り出してみせる。

その本はEnglishⅢと書かれている。

しかしその表紙に描かれている外国人のイラストは真っ赤な絵の具に塗りつぶされていた。

 

「お前、教科書が血糊でべったりじゃないか。もっと大事に扱えよ!」

 

「てひひ、ごめん。

 でもそれ血糊じゃないよ?今ちょうど生理だからさー」

 

この兄妹にとってはこれが日常であった。

 

「お前英語苦手だなー、桜才の受験大丈夫か?」

 

「他の教科でカバーするさ!」

 

無問題モウマンターイ!と騒ぐコトミ。

そんな妹に本当に大丈夫かと溜息をはく兄であった。

 

「私って生粋の日本人なんだね、横文字とか難しすぎだよー。

 この前も授業でクリーニングのことクンニリングスって言っちゃったし」

 

「俺も中学の時はよく間違えたなぁ」

 

「あっ、そうなの?……そっかー、タカ兄もそうなんだー」

 

「なんで嬉しそうなんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

【初対面】

 

次の日の朝、津田家のチャイムが鳴った。

制服に着替えた津田が出てみると、そこに立っていたのはスズであった。

 

「あれ、萩村?どうしたの?」

 

「今日校門で制服チェックするでしょ。

 あんた以前遅刻したから迎えに来てやったわ」

 

感謝しなさいよね、と言うスズに津田は感動した。

 

「萩村が、俺のために……サンキュな!」

 

「べ、別に……生徒会の人間が後から遅れて来られたら締まらないのよ!

 それだけなんだからね!」

 

ちょっと赤くなって顔をそむけるスズに、ツンデレの定義を垣間見た津田であった。

そこへ、こんな朝早くに誰が来たのか気になったコトミがやってくる。

 

「タカ兄、誰ー?」

 

「!?」

 

玄関にやってきたコトミは、何故か裸の上に白いYシャツだけを着た格好であった。

ピンクの二つのぽっちが透けている。

 

「ああ萩村、紹介するよ。これ妹のコトミ」

 

なんてことないように普通に紹介を始める津田の様子から、彼女のこの格好はいつものことなのだろう。

やっぱりこいつと同じように家族も頭おかしいのかしら?と疑いをもつスズであった。

 

「タカ兄ってペド?」

 

明らかに子供扱いする、彼女に対して言ってはいけない言葉を口にするコトミ。

それにやはり彼女はぶちぎれた。

 

「せめてロリって言え!!」

 

「そっち!?」

 

「いいかぁ!? ペドってのはなぁ、正式にはペドフィリア!!

 アメリカの精神医学の診断基準での定義ではペドが性的対象とする年齢は13歳以下!!

 津田と私を見て、こいつをペドだって言うなら私は13歳以下ってことじゃない!!」

 

「……10歳くらいじゃないの?」

 

「キ――――――――――――――――――――――――!!」

 

 

 

 

 

 

 

【自己紹介3回目】

 

「私は萩村スズ! あんたより年上の16歳!

 しかもIQ180の帰国子女!! 英語ペラペラ!!

 10桁の暗算なんて朝飯前!! どう、これでもまだ私を子供扱いする!!」

 

いかに自分がすごいかをまくしたてるスズ。

しかし低い身長に、今はさらに玄関の下にいるので段差のせいで余計に小さく見える。

だからどうしてもコトミには、彼女が高校生には見えなかった。

 

「そういう夢を見たの?」

 

「現実だー!!」

 

「そうだぞコトミ、萩村は色気ある大人の女だ」

 

「そうよ、もっと言ってやりなさい津田」

 

思わぬ援護射撃に自信気に胸を張るスズ。

しかし津田のいうことはなんというか、ずれたものであった。

 

「萩村の脚線美はな、生徒会一なんだぞ!!」

 

「わー、本当だ―。凄い綺麗な足してるー」

 

いつのまにか、コトミがスズの隣にしゃがみこんでスカートを大きくめくりあげていた。

黒タイツに包まれた彼女の下半身が露わにされ、タイツの下のうさぎさんが透けて見えていた。

 

「朝っぱらから何すんじゃー!?」

 

「なんで俺ぶほぁ!?」

 

しっかりと目に焼き付けていた津田は、朝から彼女のコークスクリューパンチを腹に喰らって屑折れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

【もっとある】

 

とある日の生徒会室。

今日は特に会議でもなく、それぞれ集まってふり当てられた仕事をこなしていた。

その丁度休憩時間。

アリアがシノにちょっとした遊びをしかけた。

 

「シノちゃん、雌犬って10回言ってみて」

 

「む?」

 

なるほど、引っかけ問題か。懐かしいな。

小学生の時にはよくやっていたと昔を懐かしみながら、彼女はアリアの誘いに乗ることにした。

 

「雌犬雌犬雌犬雌犬雌犬雌いにっ!?……噛んでしまった。

 もう一度、雌犬雌犬雌犬雌犬雌犬雌犬雌犬雌犬雌犬雌犬……」

 

指を数えながら、途中噛んでしまったものの言い切るシノ。

 

「雌犬の乳首の数は?」

 

「二つ」

 

「……」

 

同じく休憩中だったスズは、突っ込むのも面倒だったので無視して仕事を一人再開した。

 

「はっ!? 図ったな!?」

 

 

 

 

 

 

 

【試してみた】

 

その時、津田がトイレから帰ってきた。

彼を見てシノの瞳が怪しく光る。それは獲物をとらえた眼であった。

自分が引っ掛かってしまったこの難問を、こいつにも試してやろうと思ったのだ。

 

「なぁ津田、ちょっといいか?」

 

「はい? 何です?」

 

「雌犬って10回言ってみてくれ」

 

「いいですよ。雌犬雌犬雌犬雌犬雌犬雌犬雌犬雌犬雌犬雌犬……でいいんですかね?」

 

「うむ。それでは雌犬の乳首の数は?」

 

「えーっと……あれ? 犬って乳首いくつなんでしょう? 6つ? 8つ?」

 

すくなくとも人間よりずっと多いですよね? と返す津田。

その言葉に考え顔をするアリア。

結局最初に問題を振ってきた彼女も知らなかったのだ。

 

「……プッ」

 

引っかけようとして引っかからなかった津田に愕然とするシノ。

その彼女の顔を見て思わず拭いてしまうスズであった。

 

「くそ―――!! 津田の癖に―――!!」

 

「あっ、ちょっ、会長!? どこ行くんですか会長―――!!」

 

最近他人にいたずらをしようと目論んだりしても、上手くいかない会長であった。

 

 

 

 

 

 

【そして天然】

 

生徒会の書記を務める七条アリア。

彼女はいいとこのお嬢様である。

 

「華道以外にも何かやってるんですか?」

 

彼女は確かいろいろと習い事をしていると言っていたことを思い出した津田。

特に用事もない時になんとなく聞いてみた。

 

「うん。お茶にお琴に、あと書道」

 

「へー、凄いですね。なんか正に大和撫子になるための修行って感じです」

 

「ふふ、そうかな。

 でもあんまり日常では習い事で習うことってあんまり使わないんだよ?」

 

そう言いつつ照れる彼女だったが、満更でもなさそうである。

飾り付けの花を変えようと思って持っていた花瓶を机に置いた。

 

「そんなことないでしょう?

 それに、書道って書記にはぴったりじゃないですか。」

 

「うん。書道を習って字も綺麗に書けるようになったし、私も書道は好きなんだ。

 今ちょうど作品あるんだけど見てくれる?」

 

花瓶を置いた彼女は、自分の鞄を手に取るとごそごそと目的の物を探す。

やがて白い折りたたまれた一枚の和紙を取り出した。

それを津田の前で開いて見せる。

達筆な文字で書かれているのは【妻妾同衾】という言葉。

 

「やっぱり皆仲良くできるのって素敵だよねぇ」

 

「そうですね」

 

わー、生々しい。

確かにそれは妻と妾が仲良くないとできないだろうが、何か違う気がする津田であった。

でもそう思いつつそんな指摘はしない。その方が面白いから。

だから彼は精一杯のさわやかな微笑みを彼女に向けるのであった。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。