生徒会変態共!   作:真田蟲

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十四人目

 

 

【お嬢さんこんにちわ】

 

シノの誕生日の翌日、津田は風邪で休んでいた。

彼が学校を休むのは初めてだったので心配した生徒会役員共。

今日は代表でシノが学校帰りに見舞いにやってきた。

 

「普通の家だな……」

 

彼の住んでいると思われる家を見上げてつぶやく。

特に裕福というわけでもなく、貧しいわけでもない。

そんなありきたりな中級階級の家庭を彷彿とさせる一軒家。

玄関前でシノはチャイムを押した。

ピンポーン、と聞きなれた呼び出し音が響く。

 

「はーい!」

 

すぐに家の中から誰かの声が聞こえてきた。

まだどこか子供っぽいような女の子の声。

おそらく以前津田に聞いていた妹さんだろうとあたりをつける。

 

「はーい」

 

がちゃり、と音を立てて一人の少女が出てきた。

 

「初めまして、タカトシ君のぅおおおおお!?」

 

自己紹介しようとしていた言葉が途中から絶叫に変わる。

シノは目を見開き、眼前の少女の腹部を凝視する。

そこには包丁が深々と刺さっており、血で真っ赤に服が染まっていた。

 

「ん?……ああ! これは偽物ですよ偽物ー」

 

「へ? 偽物?」

 

平然とへらへらと笑う少女の言葉にあっけにとられるシノ。

良く見れば確かに作りもので、包丁は刺さっているのではなく服にくっついているだけ。

刃は途中から折れており、しかも銀メッキのプラスチック製だった。

 

「なんだ……驚いた」

 

「あははー、すいません驚かして。

 死んだふりの格好のままだったの忘れてたー」

 

てへり、と茶目っ気たっぷりに舌をだしてウィンクする少女。

長い髪をツインテールにし、どこか幼い雰囲気ながらも津田に似ている。

 

「それで、どちら様ですか?」

 

「ああ、これは失礼。私は天草シノと申します。

 タカトシ君のお見舞いに来ました」

 

「お見舞い?……ああ!?」

 

お見舞いと聞いて納得がいったかのように手を叩く。

その拍子に腹部の偽包丁がぼとりと落ちて音をたてる。

 

「出張ヘル○の方ですか」

 

「は?」

 

「お見舞いプレイとはまた斬新ですねー」

 

 

 

 

 

 

【僕は大人?子供?】

 

津田の妹、コトミに彼の部屋に案内されたシノ。

そこでは津田が眠っていたが、彼女の来訪に気づき上半身を起き上がらせた。

 

「大丈夫か津田?」

 

「わざわざすいません。もう平気ですよ」

 

お見舞いに来るほど心配させてしまったことに苦笑する津田。

おそらくシノは昨日自分に傘を貸したせいで津田が風邪をひいたと思っているのだろう。

心配させまいと笑顔ではにかみながら元気であることをアピールした。

 

「そうか、大丈夫そうでちょっと安心した。

 私のせいで風邪をひかせてしまったんじゃないか? 悪かったな」

 

「そんな……風邪とか大げさなもんじゃないですよ。

 疲れたから熱が出ただけみたいです。

 別に濡れて帰ったせいじゃありませんから会長が気にする必要はありませんよ」

 

彼の言葉にどこか安心した様子のシノ。

 

(お見舞いに来たはずが……逆に気を使わせてしまったかな?)

 

津田なりに彼女のことを想っての気遣いであることはわかっているつもりだ。

でも実際にシノに傘を貸して濡れた日に風邪をひいているのだ。

無関係とは思えない。疲れと言うのも彼に気をつかわせていたせいかもしれない。

だから雨のことは津田が否定するので抜きにしても、ここは謝るべきだと彼女は考えた。

 

「しかし君が疲れるほど重責を負わせていたのは事実だ。

 すまなかったな」

 

「そんな……頭をあげてください会長。

 会長は気にせずに今まで通りにしてくれていいんですよ。

 この程度なんでもありませんから」

 

「津田……」

 

頭をさげる彼女への罪悪感から少し胸が痛む津田。

本当に風邪をひいた理由を話したら彼女がどんな反応をするかと期待していたのだが……

これでは到底本当の理由を話すことなどできない。

 

(単に雨に濡れたままオナ○ーし続けて下半身が冷えたなんて……言えない)

 

空気を読んで語らなかった彼は大人であった。

 

 

 

 

 

【妹とからむの巻】

 

二人きりの空間に扉をノックする音が鳴る。

がちゃりと音を立てて入室してきたのは、津田の妹だった。

 

「お茶入れたよー、お母さんが」

 

言葉通り、どうやらお茶を持ってきてくれたらしく手には盆を持っている。

盆の上には二人分の湯気を立てるお茶と菓子が乗っていた。

 

「ああ、これはどうもご親切に」

 

シノが丁寧に頭を下げる。

そのしぐさを見て津田の妹も机の上に盆を置き、シノに向かった軽く頭をさげた。

 

「こいつは妹のコトミです」

 

津田が妹を紹介する。

ふむ、と頷いてシノは改めて彼女を観察した。

コトミの服装は先ほどとは違い、別のラフな服装になっている。

何より腹部にあった包丁が無くなっていてまともな格好だった。

シノの視線に気づいたのか、コトミが照れ臭そうに笑う。

 

「はは、さっきはどうも……」

 

「ああいや、こちらこそ」

 

「ほらコトミ。自己紹介しろ」

 

津田に催促され、コトミがシノに向いて自己紹介をすることになった。

へへへ、と笑みを浮かべる表情は子供っぽく、まだあどけなさが色濃く残る。

その表情に、先ほどの包丁の件も年相応のいたずらだろうと考えるシノ。

中学生と聞いていたが、まだまだ子供っぽい可愛い子だと認識した。

 

「津田コトミです。どうぞゆっくりしていってくださいね。

 ……あっ!? でもゆっくりっていっても兄が遅漏ってわけじゃないですよ?」

 

二人の関係をナニと勘違いしたのか慌てて訂正するコトミ。

そんな彼女に、子供っぽいというのは間違いかもしれないと認識を改めた。

実に耳年増な妹さんである。

まぁ、それは別にいいとしてだ。シノも彼女の年の時にはそういう思考回路であったことだし。

問題は津田が遅漏ではないという発言だろう。

 

「なんだ津田、お前早漏なのか?」

 

「そんなバナナ」

 

シノの発言に慌てたのはむしろコトミだった。

自分のいらない一言のせいで兄に早漏の嫌疑がかけられている。

急いで誤解を解かないと……と焦った。

 

「ち、違うんですよ!? 兄は早漏じゃなくて……

 どっちかっていうと高校生にしては遅めというか……

 だいたいオナ○ーも一発目がでるまでにこすり始めてから10分はかかりますし!」

 

「ほう、そうなのか津田?」

 

「コトミ……なんでお前が知ってるんだ?」

 

兄としてちょっと妹と話し合わなければならないなぁと思う津田だった。

とりあえず今夜からは覗き防止に徹底しなければならない。

 

 

 

 

 

【総勢12人の○】

 

コトミが退室した津田の部屋。

シノと津田が他の生徒会メンバーについて話し合っていた。

 

「これは生徒会のみんなからの見舞の品だ」

 

そう言って差し出されたのは小さなサボテン。

彼としても見舞いに花を持ってこられても花瓶も持たず花の世話も苦手。

面倒くさがりな彼から見て嬉しい見舞いの品だった。

みんな彼のめんどうくさがりな面をよく知っていて考慮してくれたのだろうと推測する。

 

「ありがとうございます」

 

「本当はアリアと萩村も心配していてな、一緒に来る予定だったんだが……

 大勢でおしかけるのも家の人に迷惑だろうからな」

 

だから私が代表で来た、と語るシノ。

どうやら気をいろいろと使わせてしまったようである。

 

「クスッ……そんなに気を使わなくてもいいのに」

 

大勢と言ってもシノにアリアと萩村をあわせても三人だ。

そこまで気を使う人数ではないと思うのだが。

彼としては悪いと思いつつも、その気遣いが嬉しかった。

 

「そうか? だがアリアはお前に妹が一人いると聞いて他に妹を11人連れてくる気だったぞ?

 なんでもお前にリアルシスター○リン○スをさせるとか言ってな?

 おもしろそうだったんだが迷惑だしな、私と萩村で止めたんだ」

 

「ワーオ。さっすが七条先輩発想が俺の斜め上を行くぜぃ」

 

もし本当にそんなものを連れてこられた日には、嬉しいかもしれない。

しかし家族とご近所からの彼を見る目が変化するのは確定だろう。

 

 

 

 

 

 

 

【青少年はピンク色】

 

なんとなく、二人して沈黙してしまう。

津田は、妹や母以外で異性が自分の部屋にくるのは小学校以来なので何気に緊張していた。

いつものようにセクハラ発言で場を和ませようにも、なんとなく会話の一言目に勇気がいる。

シノの場合、小学校どころか異性の部屋は父親のもの以外生まれて初めてだったりする。

さっきから何を話せばいいか上手く思い浮かばない。

お見舞いに来るまでは特に会話の内容なんて考えていなかった。

津田が黙ってしまえば、上手く自分から話せないシノも黙るしかない。

なんとはなしに部屋の中を見渡して気を紛らわす。

そうしているうちにあることに気づいた。

 

(津田の部屋、あんまりイカ臭くない……)

 

そう、事前に聞いていたよりも男の匂いが少ないのだ。

思春期の男の部屋はイカ臭いと話には聞いていたが、津田の部屋は特にそうは思えなかった。

普段あれだけセクハラ発言をする彼だったが、本来はプラトニックなのか?と考える。

それとも風邪のせいでここしばらくはできなかったのかもしれない。

実際は昨晩も自家発電をしている。

単にシノは巧妙に家具に隠された4つの置き型フ○ブリーズ(無臭タイプ)に気づいていないだけだった。

だがその存在に気づいていないシノは、さぞ溜まっているだろうと憶測する。

でもその考えにいたったからといってどうするというのか。

彼女には彼の性欲をどうにかしてやることなどできない。

できたとして、この状況ではそのまま不純異性交遊に発展してしまう。

だが彼女は待てよ、と考えた。

溜まっているといえば、別に性欲に限らずともあるだろう……と。

 

「ところで津田……二日も寝たままじゃ溜まっているだろう」

 

「はい?」

 

「私でよければその……気持ちよくしてやるぞ?」

 

ちょっと恥ずかしそうに提案するシノに、思わずドキッとする津田。

もしかして気持ち良くってナニのことだろうか?と考えてしまう。

だがシノは下ネタは好きでも意外と身もちは固い。

そのギャップが何気に彼にとってお気に入りではあるのだが。

なら何についてたまっているというのだろう。

 

「私は耳掃除が得意なんだ」

 

得意げに語って用意したのは一本の耳かき。

シノは正坐して膝の上に頭を載せるように津田を手まねきした。

 

「まぁ、わかってはいたけどね」

 

少し残念そうな津田。

合体に発展することはないと思ってはいたが、残念な物は残念なのであった。

誘われるままにシノに膝枕をしてもらう津田。

彼女の股の方を向いて頭を乗せる。

 

「お願いします」

 

「こらこら津田。顔の向きが反対だそ?」

 

「お約束ですよお約束」

 

そういいつつも身体を動かして向きを変える。

 

「む、確かにそうだ」

 

なら仕方ない、と頷くシノであった。

 

「でしょ?」

 

本当はお約束で彼女の太ももに顔をこすりつけてくんかくんかと匂いを嗅ぎたいのだが、

それをするといろいろと我慢できそうにないので自重する津田。

 

「うむ、それでは始めるぞ」

 

耳かきの先端を、津田の耳穴に入れる。

まずは外側から徐々に内側へと流れるように動かす。

 

「くぅ……んあ……」

 

「こ、こら津田! 変な声出すな!!」

 

「お約束ですよお約束」

 

「む、そうか」

 

なら仕方ない、と頷くシノであった。

 

 

 

 

【隣人の吐息】

 

隣の自室で、受験勉強をさぼって携帯ゲーム機で遊んでいたコトミ。

そんな彼女の耳に、壁ごしに甘い響きのある声がかすかに聞こえてきた。

 

「?」

 

なんだろう?と聞き耳を立てる。

壁の向こうは兄の部屋で、今現在同じ学校の女性が見舞いに来ていたはずだ。

 

『くぅっ!……はぁ……あぁ……』

 

『どうだ津田、ここがいいのか?』

 

『くぅ……いた!?……会長、もっと優しくほじってくださいよ!!』

 

聞こえてきたのはなんとも怪しげな二人の声。

どうやらあのおとなしそうな女の先輩に兄が責められているらしい。

 

(ほ、ほ、ほじるって……ほじるって……!?)

 

ひゃぁぁああああ~~~~、と耳まで真っ赤にさせて興奮するコトミ。

彼女は聞き漏らすまいと全身でべったりと壁にくっついていた。

 

『君が動くからだ。私のテクニックを信じろ』

 

『そ、そうは言っても……』

 

『ほら、大人しくしなさい』

 

『はい……はぁあ……』

 

『どうだ?気持ちいいだろう?』

 

『はい……すごくいいです……』

 

『ふふ、こんなのはどうだ?』

 

『くああ!? そこは!?』

 

相も変わらず聞こえてくるのはピンク色の妄想を掻き立ててくれる言葉の応酬。

コトミは口をあわあわと動かし、悶えていた。

 

「た、タカ兄が大人の階段を上ってる……」

 

知らない間に随分と大人な体験をしているらしい兄に鼻息を荒くする妹だった。

 

 

 

 

 

【交代】

 

両耳とも津田の耳掃除が終わって一息ついた二人。

 

「ありがとうございました」

 

「ふふ、なんのなんの」

 

礼を言う津田に自慢げに胸を張るシノ。

彼女の耳掃除テクニックに、すっかり耳の中がすっきりとした気分の津田。

 

「よかったらお礼に俺も会長のしましょうか?」

 

「む? だがそれでは……」

 

「俺もこの二日寝てばかりで退屈だったんで、よかったらさせてくれませんか?」

 

「そ、そうか?」

 

それじゃ頼もうか、と頷くシノ。

津田はベッドに腰掛け膝の上を叩く。

シノもベッドに上り、寝台のスプリングがぎしりと音を立てた。

彼女は正座した津田の膝の上に頭を置いて寝転ぶ。

ただし顔を彼の股間にむけて。

すんすんと鼻を鳴らして匂いを嗅ごうとするシノ。

 

「あの、会長……?」

 

「お約束だ、津田」

 

「ですよねー」

 

部屋と違って彼の股間近くは何気に少しイカ臭いな、と思ったシノ。

意識すると恥ずかしくて顔が赤くなったが、顔は津田の腹の方向に向いていたために彼にはばれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

【隣人の吐息2】

 

嬉しそうに責めるシノとされるがままにあえぐ津田の声。

その声が聞こえなくなってしまった。

 

「もう終わったのかな?」

 

壁に耳をつけても、特にそれらしい音も聞こえてこない。

既に終わって部屋の中で行為の余韻に浸っているのだろうか、と考える。

もう耳をそばだてていても無駄と思い壁から離れようとした。

その時、壁の向こうからベッドがぎしりときしむ音が聞こえた。

瞬時に壁にへばりつきまた耳をそばだてる。

 

『さぁ、会長……力を抜いて』

 

『だ、だが……どうにも緊張してしまって』

 

『クスッ、ならここをこうしましょうか』

 

『ふぁあ!? こ、こら津田! そこは!?』

 

『あれ? 駄目でした?』

 

『いや、駄目というわけでは……そこは性感帯でな、もう少し優しくしてくれ』

 

『こうですか』

 

『あぁ……んくっ、そう……そんな風に……ひぃん!?』

 

『おや、会長はここも弱いんですね』

 

『ば、馬鹿もの!!……ひゃうん!?』

 

耳にかすかに届く二人の声にぶるぶると体を震わせるコトミ。

 

(攻守逆転してるーーーーーーー!?)

 

どういった経緯を経て先ほどと180度攻守が逆転したのか。

その肝心な部分を聞き逃してちょっと後悔する。

しかし、わからないからこそ妄想は膨らんでいくもの。

彼女はゲーム機を床に投げ捨て、二人の声に耳を立てながらいけない作業に没頭し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

【兄想い】

 

「それじゃあ、また明日学校で」

 

「ええ、ありがとうございました」

 

玄関でシノを見送った津田。

その彼の背中に声をかける人物がいた。

 

「タカ兄……」

 

「ん?」

 

振り返るとそこにいたのはコトミだった。

なんだかもじもじとしながらこちらを窺っている。

 

「どうした?」

 

「あ、あ、あの……これ!」

 

意を決して背中に隠していた物を兄に渡すコトミ。

それは中心が丸くくりぬかれた形のざぶとんだった。

 

「お尻大変でしょ?」

 

彼女の言葉に、ああ、また聞き耳立ててたなぁと理解する津田。

まぁ、毎度のことだと思うのであまりそこはつっこまない。

シノとの耳掃除でお互いふざけて艶っぽい声を出していたのを聞いたのだろう。

そして18禁な行為をしていたと勘違いしているのだろう。

兄としては、おもしろいので誤解させたままにしておいた。

だが、そんな優しい?兄である彼も妹に聞かなければならないことがある。

 

「なんで……下に何も着てないんだ?」

 

「てへ、さっきちょっと汚しちゃって……」

 

シーツと一緒に洗濯中、と茶目っ気たっぷりに舌をだしておどけるコトミであった。

 

 

 


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