生徒会変態共!   作:真田蟲

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十二人目

 

【ここが怪しい】

 

6月に入り、衣替えで制服が夏服になった桜才学園。

今日も放課後、生徒会室に会議のために集まった面々。

 

「ん?」

 

部屋の中に入ってそうそう、シノが何かに気づいた。

 

「んーーーーー……」

 

机の上、下とどうやら何かを探しているそぶりである。

しかし机の周辺にはシノが探しているものがなかったようで、眉根をよせている。

 

「どうしたのシノちゃん?」

 

「……ふむ」

 

彼女の行動を疑問に思ったアリアが声をかける。

シノは、そんな彼女の立ち姿を無言で眺めたあと、なにか思案しながら唐突に彼女の胸を揉みしだいた。

 

「あん!」

 

いきなり胸をもまれて、色っぽいをあげるアリア。

 

「う~む、無いな……」

 

そこに探し物がなかったと落胆する。

逆に目の前で突発的に始まった百合的な匂いを醸し出す展開にちょっと興奮する津田。

 

「興味無いけど一応聞きますね……何が?」

 

いつものように始まったばかばかしい行動を呆れた目で見つつも、一応何を探しているのか聞いてあげるスズであった。

 

「……あっ、ホック外れちゃった」

 

どうやら先ほどの行動でアリアはブラのホックが外れたらしく、カーテンに隠れてホックをつけなおすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

【ここも怪しい】

 

「購買で買ったメロンパンを昼の間にここに置いておいたのだが……」

 

どこにいった?ときょろきょろと首を動かして探すシノ。

メロンパンを探しているのはいいとして、何故アリアの胸を揉む必要があるのか。

まぁ、スズから見てもあの大きな胸は本物かと疑いたい気持ちもわからないでもない。

まごうこと無き本物の乳であることはわかっているのだが……

 

「メロンパンですか?」

 

「ふーーーー……む」

 

次にシノの目に留まったのは津田の股間の膨らみだった。

彼の前にしゃがんで、そこを凝視するシノ。

津田は彼女に股間を視姦されて興奮したのか、ますます膨らみは大きくなっていった。

さきほどのアリアの時とおなじく、そこを探ろうと彼女が手を伸ばす。

しかしその手はあと数センチというところで横から伸びた別の手に阻まれた。

 

「ちょっと待て」

 

「む? なんだ萩村?」

 

「あんた本当にそんなところにパンがあると思ってるのか?」

 

万が一にあったと仮定して、彼女はそれを食べる気なのだろうか?

普通食べないだろうが、思春期のシノならむしろ自分から食べてみせようとする可能性もないこともないのが怖いところだった。

 

 

 

 

 

 

 

【犯人は誰だ】

 

メロンパン紛失事件について仕切りなおした面々。

 

「さて……私のメロンパンが机の上にあったはずなのだが、誰か知らないか?」

 

生徒会メンバーに質問するシノ。

それに応える皆の答えはほぼ同じだった。

 

「知りません」

 

端的に知らない事実を告げるスズ。

 

「さあ?」

 

知らないし持っていないと股間をパンパンとたたいてアピールする津田。

 

「こんなところに隠さないよー」

 

ちょっと怒り気味になりながらも自身の胸を揉むアリア。

彼女としても自分の胸を偽乳と疑われたも同然なのだ、いい気はしないだろう。

 

「そうか、アリアも津田も疑って悪かったな。

 だとすると……当時この部屋には鍵がかかっていた。

 つまり内部による者の犯行、それすなわち……」

 

そこで今まで無言だった横島先生の方を向く。

 

「横島先生、私のメロンパン食べたでしょ」

 

「一直線にきた!!」

 

迷いなく自分を犯人と断定するシノに驚く先生。

アリアや津田を相手にした時と違い、疑いではなくもはや確信している言動。

彼女の人望のなさがあらわれていた。

 

 

 

 

 

 

【ごちそうさまでした】

 

「まぁ、確かに食ったの私だけど……」

 

素直に自分が無断で食べたことを認める横島先生。

ポケットの小銭入れから小銭と取り出すと、パン代としてシノに手渡した。

それを受け取りながらため息をつくシノ。

 

「生徒のもの勝手に取るなんてなに考えてるんです」

 

教師とは生徒の模範とならなければならないのに、呆れたことをする先生。

人としてどうかと思われる人間が、自分たちの顧問なのかと落胆の目で皆に見られていた。

その蔑みの視線にすこし頬を赤らめながらも言い訳をする。

 

「あのホラ……人間って辛い物食べると甘いものほしくなるじゃん!?」

 

ムショウに口直ししたい時ってあるだろ?と同意を求めてくる。

その言葉に少し視線に蔑みがやわらぐ。

まぁ、辛い物を食べたら口の中を元に戻すために甘いものが欲しくなるというのはよくある話だ。

それでも生徒のものを勝手に食べるなどいい行いではないが、動機はわからなくもない。

 

「なにか辛い物食べたんですか?」

 

「いや……私の場合は苦い飲み物だったんだけど」

 

横島先生は大の年下好きだった。

どうやら彼女の悪い癖がどこかで今日も発動したあとのようである。

 

「まぁ、これからは気をつけてくださいね?」

 

幾分和らいでいた視線が、先ほどよりもさらに侮蔑の色に染まるシノ。

 

「一生気をつけないと思いますよこの人」

 

すでに見放しているスズ。

 

「あらあら、つまみ食いもほどほどにね?」

 

やんわりと教師に注意するアリア。

 

「……」

 

なんで自分の苦いものは手を出されていないのだろうと不思議に思う津田だった。

 

 

 

 

 

【信じる心】

 

メロンパン事件が一件落着した生徒会室。

そこでスズがシノに感心した声を上げていた。

 

「それにしても会長、よく犯人が一発でわかりましたね」

 

実際にはそれまでに津田とアリアを一度疑っているわけだが。

それでも内部犯と推理してすぐ、犯人を特定したのは凄いと思われた。

彼の言葉に、購買で買いなおしてきたメロンパンを頬張っていたシノが顔をあげる。

 

「うむ……君たちが知らないというのならそれは真実なのだろう。

 ここにいる者は嘘をつかない人間と私は信じている」

 

「会長……」

 

「さすがシノちゃん」

 

彼女の言葉に感動した顔をするスズとアリア。

皆を信頼している、と生徒会の絆を感じさせる。

しかしそこは黒一点の津田、気になったことを口にした。

 

「でも会長……胸の大きさ偽ってますよね?」

 

「ぬぁ!? なっ、なにを言うんだ津田!?」

 

明らかに狼狽するシノ。

そんな彼女の様子に胸を本物か偽物かと凝視する三人。

彼女は自身の胸を腕で隠して後ずさる。

 

「い、いったい何を根拠に、そ、そんな……」

 

「俺にはわかりますよ会長。

 その胸の膨らみ……ブラの生地の厚みを引いても会長の本来の大きさよりも1センチと6ミリ大きい!」

 

本来の会長のバストは79センチ4ミリのはずだ、と断言した。

 

「おまえミリ単位でわかるのか」

 

「まぁ、そうなのシノちゃん?」

 

「くっ!……いいじゃないかー!! パットくらい、少しくらい、私だってなーー!!」

 

先ほどまでの凛とした表情はどこへやら、半泣きになって反論する様は幼稚園児のようであった。

 

 

 

 

 

【女の命】

 

いつもの生徒会室。

窓際でシノとアリアが雑談に興じていた。

 

「さっき枝毛見つけちゃったの。ショックだよー」

 

「キューティクルが傷んでるな」

 

ちゃんと風呂で手入れしているか?とシノが確認していた。

女の子なのだから、毛先が傷んでいるかどうかということは重大なことなのだろう。

二人して真剣にキューティクルを保つにはどうするべきかと話し合っていた。

 

「人間の髪の毛なんて一〇〇〇〇〇本はあるんだからそんなに気にすることないんじゃないですか?」

 

その二人の会話に割って入る津田。

しかしその行動をアリアがたしなめる。

 

「もう津田君、女の子のプライベート話に割り込んじゃ駄目だよ?」

 

「そーゆーもんすか?」

 

それほど今の会話が割り込むのをためらうような内容には聞こえていなかった。

近くではスズが一人で文庫本を読んでいるため、別段津田のみを除いた話ではないと思ったのだが。

 

「陰毛の話してるんだから」

 

「なるほど、プライベートですね」

 

どうりでスズが話に入れないわけである。

たぶん彼女は津田の予想では容姿相応にまだだろうとふんでいる。

 

「いや、でもどうだろう? ここは男の意見も聞くのもいいのではないか?」

 

「そう? う~ん……それもいいかもしれないわね」

 

しかしシノの提案で女のプライベートトークに参加の許可が下りた。

自分でよければなんでも聞いてください、と頷いた。

 

「時に津田、女の子の陰毛に枝毛があった場合お前はどうしたらいいと思う?」

 

「うーん……そうですね。俺はあまり気にすることもないと思いますが」

 

「それでも気になる物は気になるよー」

 

「じゃあ剃ってしまえばいいんじゃないですか?」

 

「しかしパイ○ンは許容できる男とそうでない男がいると聞くが……」

 

「会長はパ○パン嫌いなんですか?」

 

「いや、むしろ好きな方ではあるが。アリアはどうだ?」

 

「私はどっちでも。気分で剃ったり剃らなかったり」

 

「そうですか……じゃあ、枝毛を理由に相手に剃ってもらうよう頼むとか」

 

「なるほど!? それを理由に剃毛プ○イにこぎつけるわけだな!!」

 

「さすが津田君!! すごい発想ね!!」

 

「よかったら俺が剃るの手伝いましょうか?」

 

「まぁ……」

 

「ほほぅ……」

 

段々とあやしい方向に転がり始める三人の会話。

その内容を文庫本を読むふりをしつつ聞いていたスズは、困っていた。

 

(誰から突っ込むべきなんだろう……)

 

彼女はツッコミを入れようにも、タイミングを逃して上手くツッコミができないでいた。

 

 

 


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