生徒会変態共!   作:真田蟲

11 / 36
十一人目

 

 

【お嬢様生活】

 

七条アリア。

桜才学園生徒会の書記を務める二年生。

彼女は性格も優しく、容姿端麗な爆弾ボディをもつ。

そんな彼女が階段の前で突っ立ったままぼんやりとしていた。

津田はちょうど一階から上ってきたところで、彼女を見上げる形となる。

 

(先輩のパンツ、今日は黒かぁ)

 

アリアは下の階段の踊り場から見れば、下着が丸見えだった。

相変わらず高校生とは思えない色っぽい下着を着用している。

黒のレースのパンツで、生地が薄いのかうっすらと布の向こうの肌の色が見て取れた。

津田は見たことがないが、時折パンツをはいていない時すらある彼女からすれば、今日はまだおとなしい方だった。

 

「先輩?」

 

「あっ、津田君……」

 

いつまでもこのような人の往来でパンツを覗いてるわけにもいかない。

津田は呆ける彼女に話しかけた。

その時になって初めて動きだすアリア。

 

「何呆けてたんですか?」

 

「えっ?……あっ、そうか」

 

「?」

 

「学校はエスカレーターじゃないんだよね。うっかり」

 

「なんて家だ」

 

彼女は金持ち兼天然であった。

 

 

 

 

【待ち遠しい衣替え】

 

五月も半ばを過ぎた生徒会室。

まだ春とは思えない暑さに津田がうなだれていた。

 

「あー、5月なのになんて暑さだ……」

 

温暖化恐るべし、と愚痴をこぼす津田。

 

「コラ津田だらしないぞ」

 

あまりの暑さに制服を着崩してだれる彼を注意するシノ。

彼女は彼とは違い、このむし暑さのなかでも制服を着崩すことはしていなかった。

 

「会長は暑くないんですか?」

 

「まぁ、暑いことは暑いが……私は校則に反する着崩しはしない」

 

凛として胸をはるシノ。

なかなかの精神力である。心頭滅却すればなんとやらということだろうか。

 

「だから見えないところで着崩している」

 

そういって自身の胸を抱き抱え、スカートのすそを掴んで股間をガードするポーズを取る。

そのポーズが示す答えは一つ。

 

「会長、もしかして今ノーパンノーブラなんですか?」

 

「うむ、ちょっとスースーする」

 

恥ずかしそうに体をくねらせるシノ。

恥ずかしいけど、でもちょっと指摘されて嬉しそう。

 

「ああっと、足が滑ったぁああああ!!」

 

「きゃああああ!?」

 

津田は彼女の股の真下にヘッドスライディングをかました。天井をむきながら。

彼に迷いはなかった。

 

「なんてことだ……毛が……」

 

シノは昨晩下の毛をすべて剃っていたあとだった。

 

「ば、ば、馬鹿ものーー!」

 

 

 

 

 

【隙などない】

 

穏やかな午後。会議中の生徒会室。

議題について語る彼等の中から、一つの寝息が聞こえてきた。

寝息の元をたどれば、スズが机に突っ伏して寝てしまっている。

 

「萩村寝ちゃってますね」

 

「まぁ休ませてやろう」

 

いつも人一倍頑張ってくれてるしな、とスズを気遣うシノ。

その言葉にうなずく津田とアリア。

彼等は皆、スズが昼寝をしないと一日体力がもたないことを既に知っていた。

 

「ふふ、本当に気持ち良さそうに寝てるわね」

 

彼女の寝顔をほほえましく見守るアリア。

その視線は、まるで幼い妹でも見るかのような慈愛に満ちたものだった。

 

「そうですね」

 

「今なら少しくらいいたずらしても起きないんじゃないか?」

 

「いや、さっき一番最初に休ませてやろうって言ったの会長じゃないですか」

 

「あら? でも今なら耳を舐めるくらいなら大丈夫じゃないかしら?」

 

「いやー、それは起きるでしょ」

 

「どうだろうな……津田、ちょっと試してみたらどうだ?」

 

シノが乗り気になって提案する。

先ほどまでは寝かせておく気だったのに、今はおもしろそうだとはやし立てる側にまわった。

アリアもわくわくと期待に満ちた表情でこちらを見ている。

津田としてはスズを寝かせておいてやりたい反面、耳を舐めたいかと聞かれれば、舐めたいに決まっている。

この間、スズの家で暴走してしまって彼女の耳を舐めまわした時、それはそれはなまめかしい声を上げてくれた。

もし寝ている最中にそんなことをしたら、彼女は今度はどんな反応をしてくれるのか。

横ではいけいけー、と小さな声でシノとアリアの二人がはやし立てる。

ドキドキしつつ、誘惑に負けてゆっくりとスズの耳に顔を近づけていく津田。

 

「……やらせないわよ」

 

「はぶぅ!?」

 

しかし、もう少しというところでスズが津田の顔面を掴み、机に叩きつけた。

 

「「おおっ!?」」

 

「全部聞こえてんのよ。起こすなら普通に起してください」

 

彼女の特技には、睡眠聴取というものがあった。

寝ていても周囲の声を聞き分け、反応することができる。

天才に隙はなかった。

 

 

 

 

【パンツ履いてる】

 

武道場の近くの水道。

偶然通りかかった津田はそこで顔を洗う三葉を見かけた。

 

「三葉」

 

「?」

 

声を掛けられた彼女が、洗っていた顔をあげ、水道を止める。

水に濡れた顔をタオルで拭いて彼の方に向き直った。

 

「あっ、タカトシ君」

 

「柔道部の調子どう?」

 

津田は、設立に自分も少しは関わっていたので部活が上手くいっているか少し気になった。

まぁ見た感じでは今も三葉は部活に精を出していたところのようだし問題はなさそうだが。

彼女の明るく元気な様子から楽しくやっているのはなんとなくわかる。

 

「はは、おかげ様で。

 部長ってポジションも結構大変だけどねー」

 

「ああ~まぁ、どんなものでも人の上に立ってまとめ役になるのは大変だしなぁ」

 

「そうそう!部員はみんな仲良くしてくれるからまとめるってのはそんなに大変じゃないんだけど……

 私の場合、備品そろえるために部費のやりくりとかにてこずっちゃって」

 

恥ずかしそうに頭をかく三葉。

私こういう計算とか苦手だからね~、と苦笑いだ。

 

「ん? 柔道部って胴衣の他に何かいるの?」

 

津田としては柔道部なんて畳のある練習場所と胴衣さえあれば成り立つような気がする。

他に何か必要なものと考えても何も思い浮かばない。

 

「紐パン。下着のラインを隠すのに必要なんだって七条先輩が教えてくれて」

 

「なるほど」

 

それは盲点だった、と納得する津田。

 

「さすが七条先輩、目の付けどころが違うな」

 

「そうだよねー、女の子なんだから気をつけなさいだって。

 でも紐パンって普通のパンツよりも高いんだよねー」

 

三葉の言葉にうなずく津田。

確かに、布の面積は紐パンのほうが少ないものの、エロい下着のほうが値がはりそうなイメージがある。

 

「ならいっそ履かなきゃいいんじゃないか?

 浴衣って本来下着履かないだろ。胴衣も一応和服なんだしさ」

 

「ふぇ? 浴衣って下着履かないの?」

 

津田の言葉に初めて聞いた、と驚く彼女。

どうやら三葉にとっては初耳の知識だったらしい。

 

「そうそう、元々下に履いてなかったのに今はみんな履くようになったから下着の線が出ちゃうんだよ。

 本来は履かないものだからね」

 

「そうなんだー。

 でも柔道着は何も下に履かないのはつらいかも」

 

「なんで?」

 

「だって生地が固いしさ。動きも激しいからこすれてきっと痛いと思う」

 

「そっか、そりゃ難しいな」

 

「うん」

 

「練習中や試合中に気持ち良くなりすぎても駄目だしな」

 

「うん?」

 

津田の言っている意味がよくわからなかったが、とりあえず頷いておく三葉であった。

 

 

 

 

 

【どいつも】

 

5月も残り少なくなった季節。生徒会室にて。

津田がだらしなくブレザーを脱いで、カッターシャツもボタンをいくつか外して涼んでいた。

プァンプァンとプラスチック製の下敷きを団扇代わりにしている音が部屋の中で鳴る。

 

「津田君、だらしない恰好してるとまたシノちゃんに怒られるぞ~」

 

その格好を見たアリアが冗談交じりで注意する。

津田としても、着崩しているのを嫌うシノが見たら怒るだろうなぁと思う。

しかし暑いものは暑いのだ。

特に今は授業中でもないのだし構わないと思ってしまう。

 

「でも最近クールビズとかあるし……無理して熱中症にでもなったら元もこもないですよ?」

 

「なるほど……そっかーー」

 

津田の屁理屈に納得させられてしまうアリア。

じゃあ私もー、と彼女も服をはだけさせる。

口ではなんだかんだと言いながらも、彼女も暑いを感じていたのだ。

制服のタイを外し机の上に置く。

ブレザーの前のボタンを外し、シャツのボタンも上から順番に外していく。

ボタンが一つ外れる度に、彼女の甘い体臭が生徒会室に解き放たれる。

ブレザーは肩からずり落ち、腕に引っかかっている状態だった。

シャツの三つ目のボタンを外し、四つ目の取りかかろうとしたところでふと気づく。

露わになる彼女の深い胸の谷間。

白いシャツは汗で肌に張り付き、彼女の健康的な肌の色が透けて見える。

そう、透けて見えるのだ。乳房の頂上にあると思しきピンク色も。

 

「先輩……今日ノーブラですか?」

 

津田の言葉に、アリアは今日下着をつけてくるのを忘れていたのを思い出した。

 

「そうだった!! なんかいかがわしい感じになっちゃったよ~~~~!!」

 

想定外にいやらしい状態になってしまい泣きだした。

 

「ちょ、ちょっと……七条先輩?」

 

なだめようと津田がアリアに近づく。

彼女が彼を見れば、津田も同じくシャツが肌に張り付いてる。

 

「うわ~~ん!!」

 

「先輩!? せんぱ~~~~い!?」

 

こんなはずじゃなかったのに~~~~、とエコーを聞かせながら彼女は走り去った。

一人取り残される津田。

 

「なんだこの状況……」

 

津田も別にこんないかがわしいと思われるような状況になるとは思っていなかった。

でも普段の下ネタ好きの彼女ならこのシチュエーションならむしろ喜ぶのでは?

しかし現実は何故か泣きだして走り去った。

やはり彼女は天然なのか、いまいち他のメンバーよりも思考が読み取れない。

 

「俺が悪いのか?」

 

つぶやくも、その問に答えてくれる人物などいない。

別に彼が脱げと言ったわけでもなく、勝手にアリアが脱ぎ出したのだが……

それともノーブラのことを指摘したのがまずかったのだろうか?

 

「……とりあえず脱ぐか」

 

考えても仕方がない。

もし自分が悪いのなら彼女が落ち着いてから謝っておこうと思う。

とりあえず今は生徒会室には彼しかいない。

汗で張り付いたシャツもぬいで、この不快な汗を拭き取ろうと考えた。

 

 

 

 

【こいつも】

 

生徒会室に向かって廊下を歩くシノ。

 

「うわ~~~ん!!」

 

「ん? あ、アリア!?」

 

部屋まであと50メートルといったところで生徒会室からアリアが飛び出してきた。

彼女はどうやら泣いているらしく、服もはだけていた。

シノの呼びかけも聞かずに走り去る。

全力疾走の動きでスカートがめくれあがり、パンツをはいていない生の尻が見えた。

 

「な、なんだというんだ……」

 

泣いて逃げるように走り去る友人。

服ははだけ、下着を履いていない。

これではまるで、いかがわしい行為をされそうになったかのようだ。

彼女は生徒会室から出てきた。

つまり、彼女の想像が当たっている場合、犯人はまだ生徒会室にいる。

そしてシノが知る限り生徒会室に出入りする男は一人しかいない。

アリアを追うかとも考えたが、生徒会室に足をむけた。

部屋の扉の前で立ち止まる。

緊張でごくり、と息をのんだ。

もし想像どおりなら、この向こうには彼の姿が……

 

(ええい、あいつに限ってそんなことあるものか!

変態でもちゃんとその辺はわきまえてるやつなんだ、私が部下を信じてやらずにどうする!)

 

決意を固め、思いっきり扉を開いた。

 

「「……あっ」」

 

そこには、今やトランクス一枚しか身につけていない津田の姿。

そのトランクスも、今まさに脱ごうと手をかけているところだった。

 

(つーーーーーーーーだーーーーーーーーーーー……)

 

この後彼が彼女の誤解を解くのに3日を要することになる。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。