ウルトラ5番目の使い魔   作:エマーソン

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第66話  裏切りの代償

 第66話

 裏切りの代償

 

 アンドロイド少女・ゼロワン 登場

 

 

 ハルケギニアの北方の、海上から海岸線を回遊する浮遊大陸アルビオンに、最初の人間が足を踏み入れたのが正確にいつなのかはわかっていない。しかし、六千年の昔にハルケギニアに光臨したとされる始祖ブリミルの三人の子供たちの一人が、現在のアルビオン王国を建国したとされているから、この大陸の歴史はそのときから始まったと考えてよいだろう。

 だが、今や王国は二つに割れて内乱の只中にある。王党派とレコン・キスタの二大勢力のどちらが勝つかで、この国はおろか近隣諸国のその後も大きく変わっていくことを強いられてしまう。

 ただし、誰もが争う二勢力の勝敗を固唾を呑んで見守る中で、それは表面上のことであって、裏では血も凍るような陰謀がめぐらされていることを知る者は、人間の中には存在しなかった。

 

 

 その、アルビオン王党派の現在の本拠地となっている名も無い城の、四階の外壁に面した小さな部屋で、ミシェルは客人用に用意されたベッドの上に腰掛け、憮然とうつむいていた。

「銃士隊副隊長の肩書きも、今日を持って最後だな……」

 今頃、ワルドはレコン・キスタ上層部からの密命に従ってウェールズを暗殺しているのだろうかと、彼女はこの国に来る前に、レコン・キスタ上層部より下された密命を思い出していた。

 そう、ワルドがレコン・キスタの内通者であり暗殺者であった以上、彼と行動を共にしていた彼女もまた、内通者であった。

 ただ、野心に燃えるワルドとは違って、ミシェルには私心はなかった。

「すべては、腐敗した王政を打倒し、トリステインを変えるため……」

 まるで自分に言い聞かせるように、彼女は単語一つ一つをじっくりと噛み締めてつぶやいた。以前才人に語ったように、彼女は幼い頃に実家が没落し、社会の底辺で生きてきた。そんな、天涯孤独の身の上となった彼女が、どんな経緯を持ってアルビオン貴族派であるレコン・キスタの協力者となったのかを知る者は、彼女の他にはごくわずかしかいない。けれどそのときの、弱者に対する強者、持てる者、力あるものの仕打ちの無情さが、彼女を強行をなしても社会の変革、破壊をおこなうように差し向け、その原動力となっていたのは間違いはない。

 はじめは、まだ無名の部隊であった銃士隊の中で地位を確立し、信頼と国内の有力者へのコネを作ろうとしてきた。そして銃士隊が名を上げ、社会的地位が高まっていくにつれて、国内の重要な情報にも触れられるようになり、諜報活動の幅も広がった。そのときは、その勢いを大きく加速させてくれた、ベロクロンのトリスタニア破壊に感謝したくらいだ。

 

 しかしその後、トリステインにも革命を成功させるために、間諜として動き続けていた彼女の信念は、この数ヶ月で大きく揺らぎはじめていた。言うまでもない、革命によらずともトリステインは変革を迎えてきていたからである。

 はじめは、温室で育てられた籠の鳥とミシェルもあなどっていたアンリエッタ王女は、意外にも非凡な政治手腕の持ち主であった。王女は国内の混乱をむしろ好機として、反対勢力が動く前に、軍政への平民の雇用、神学に凝り固まっていた魔法アカデミーの方針変換など、通常なら様々な手続きが必要となる改革を、短期間で成し遂げてしまったのだ。むろん、その後ろにはマザリーニ枢機卿などの協力者がいたのは確かだが、王女自身にもそれなりの実力がなければ、この改革は不可能だったろう。

 また、それと同時にアンリエッタという人間に対しても、評価がいちじるしく変化していた。あの、魔法学院への行幸のときに、アンリエッタはメイドやコックなどの平民にもわけ隔てなく接していた。それは、弱者を虐げて収奪する権力者の頂点に立つ王族、すなわち世間知らずで自分勝手で冷酷だとして、ミシェルが抱いていたイメージとは遠くかけ離れたものであった。以前、アルビオンへの船上で才人に自分の考えをもらしたのは、その表れだったのかもしれない。

 さらに、そのとき彼の言った言葉が彼女の胸に深く突き刺さっていた。

「あいつは言った。トリステインに革命は必要ない、と……」

 それが、彼女の最大の葛藤となっていた。貴族にいいように使われる平民の代表のような使い魔の才人は、トリステインはなかなかいい国と言い、実際自分もそれを実感してきている。せっかく、よい方面への改革が進んでいるトリステインを、無理にレコン・キスタの支配下に置いたとして、それがさらによい方向へゆくことになるのだろうか。もしも、自分が今何もない状態で、仰ぐ旗を決められるとしたらどちらを選ぶのであろうかと、彼女は苦悩する。もし、運命の女神とやらがいるとしたら、そいつの背中の翼は黒いコウモリのそれに違いない。

「それでも、もはや私に引き返す道はない……今頃、トリステインでは隊長たちが、私のしてきた数々の内部工作に気づいているだろう。そうなれば、私は国家反逆罪で……」

 そこから先は、考える必要もなかった。もう、トリステインに自分の帰る場所はない。あとはどこまでも、レコン・キスタの一員として戦い、征服者として恐怖され、裏切り者として怨嗟の視線を浴びながら生きるしかない。

 これまで、アニエス、才人らと、こんな自分にはもったいないくらい信頼できるパートナーと共に戦えてきたが、最後に組むことになったのが薄汚い野心家のワルドだったというのは、ある意味自分にふさわしいと彼女は苦笑した。二人は、これまでは別々にトリステイン国内の情報をリークしたり、また内部工作をおこなったりとほとんど関わりを持つことは無かったが、クロムウェルの指揮能力に疑問を抱き始めたレコン・キスタの上層部が、他国の大使ならば怪しまれずにウェールズに近づいて暗殺できると考えて、トリステイン国内の大物協力者に人事の工作を頼んだ結果、その人選によってはじめて共に行動をおこなっていた。

 ただし、二人の間柄は初期から良好ではなく、性格の違いをはじめ、互いに任務だから仕方なく協力しているのだという空気を隠そうともしていなかった。それでも任務は任務であるから、彼女はワルドが暗に指示したとおりに、彼がウェールズを暗殺した後に、即座にこの城を離れてレコン・キスタに合流できるように脱出の準備を整えていた。

「それにしても……遅いな」

 壁にかけられた古い時計を見上げて、彼女は首をかしげた。ワルドはトリステインでも数少ないスクウェアクラスの使い手、一対一でウェールズを仕留め損なうとも思えない。第一、万が一にも仕損じていたら自分も即座に捕縛されているだろう。

 だが、しびれを切らせて様子を見に行こうかと腰を上げたとき、部屋のドアが開いてワルドが顔を見せてきた。

 

「やあ、待たせたね。ミシェルくん」

 ミシェル……くん? 現れたワルドの異様に明るい態度と共に、ミシェルは妙になれなれしくなった彼の言葉使いに眉をひそめたものの、とりあえず任務の成否を尋ねようとした。

「遅かったな。それで、用は済んだのか?」

 さすがに誰の目があるかわからない状況で、直接「ウェールズを殺したのか」とは聞かなかったが、それで意味は通じるはずであった。けれどワルドは微笑を浮かべたままでミシェルに歩み寄ると、分厚い皮手袋をはめた手を彼女の肩に置いた。

「これからすぐにレコン・キスタと合流して、クロムウェル卿にお目通りする。そしてこの大陸を征服するのに、共に力をあわせて戦うことになるだろう」

「声が大きいぞ、そんなことは当に決まりきっていただろう。何をいまさら言っている」

 肩に置かれたワルドの手を払いのけながら、ミシェルはとりとめもなくしゃべるワルドになんともいえない気味の悪さを感じながらも、それよりも目的は達したのかともう一度問いかけた。

「おっとすまない。ちょっと確認をしただけさ。いやあ、はははは……そうだね、そのために僕らはわざわざここまで来たんだからね。でも、心配はいらないさ、暗殺などよりもずっと有効ですばらしい結果を得ることができたんだ。見てくれたまえ」

 ワルドは、まるで出来の悪い生徒に教え諭す教師のように、大仰な身振り手振りで演説をぶったあとに後ろを指し示した。そしてそこにいた人物を部屋の中に招き入れたのだが、その、そこにいるはずのない人物の顔を見た瞬間にミシェルは愕然とした。

「ウェ、ウェールズ王子!?」

 そう、そこには彼らが暗殺に来た目標であるはずのウェールズ皇太子が、暗殺者本人を前にしながらにこやかな笑顔を浮かべて立っていたのだ。

「王子も、我らの思想を快く受け入れてくれてね。我らの目的に同調して、戦闘が開始されたら裏切って王党派を壊滅させてくれるそうだ」

「うむ、子爵からすべては聞いた。私も実は古臭い王政などは滅んでしまえと常々思っていたのだ。そのために役に立てるなら、こんなうれしいことはない。さあ、一刻も早くこのことをクロムウェル殿にお伝えしてくれたまえ。君たち二人が伝えれば、レコン・キスタのほかの者たちも信用するだろう」

 ミシェルは、まるで夢でも見ているような思いで、平然と王党派を裏切るというウェールズの顔を見ていた。

 ともかく、なにがどうなっているのかさっぱりわからない。自分とワルドはウェールズを暗殺しに来たはずなのに、そのウェールズは売国奴のように、平然と王党派を裏切ると言っている。ワルドもそうだ、この任務に異様なほどの執念を見せていた彼が、殺すどころかウェールズを同志だと笑っている。若き名君と、他者を省みない野心家の姿はそこにはなかった。いや、ほんの一時間ほど前にはあったのに、今ではまるで別人のように豹変してしまっている。

「さあ、行こうではないか。トリステインに名高いグリフォン隊と銃士隊の隊長と副長が寝返ったと知れば、敗北主義に侵されたレコン・キスタの将兵も士気を高めるだろう。クロムウェル殿も大変お喜びになるはずだ。急ごうではないか」

 にこやかに微笑みながらせかすワルドの顔に、これまでミシェルに見せていた猜疑心を込めた剣呑さはこれほども入ってはいなかった。

「あ、ああ……わかった」

 訳がわからないが、とにかく任務が成功だというのであれば、予定に従って帰還しなければならない。ミシェルは、ワルドに従ってゆこうとしたが、ふとワルドが大事そうに首から下げていたペンダントがないことに気づいた。

「ワルド子爵、ペンダントはどうなされた?」

「ん? そういえばいつの間にかなくなっているな。まあ、ペンダントの一つくらいどうということはない……」

 ワルドは、それより早くゆこうではないかと言おうとしたが、その言葉は発せられる前に、飛びのいたミシェルの叫びで押しとどめさせられた。

「貴様、ワルドではないな!!」

「おいおい、急に何を言い出すのだね」

 両手を振ってごまかす仕草を見せたワルドだったが、すでにミシェルは偽者だと確信していた。あの人をたらしこむ芝居が得意なワルドが、形見だといって触ることすら許さなかったペンダントを、本物がそんなふうに扱うなどありえない。そのことを強い口調で告げ、いったい貴様は何者だと、剣と杖のどちらも抜けるように身構えたミシェルに対して、ワルドは貼り付けていた笑顔をはがして、憎憎しげに苦笑した。

「ふふふ……いや、こんなすぐに見破られるとは思わなかったな。人間など、見た目で相手を判断する愚かな生き物だと思ったが。よかろう、教えてやろう」

 そう言うとワルドは、ウェールズを後ろに下がらせて、両手を彼女にかざすように向けてきた。厚い皮手袋をつけてはいるものの、何も手にしてはおらず、杖を抜こうとするようでも、袖口に杖を隠しているふうでもない。ミシェルは警戒を続けながら、ワルドから視線を外さずにいたが、ワルドはそんな彼女を見て口元をゆがめると、かざしていた手の左手を動かして、右手の手袋を掴むと、それを一気に引き抜いた!

「なっ!?」

 その瞬間、冷静な彼女の脳も一瞬停止状態に陥った。かざされたワルドの右手のひらには、不気味に輝く一つ目と、鋭い牙を生やした口がついていたのだ! その青白く輝く目に見つめられ、ミシェルが我を失ったとき、手のひらの口から真っ白なガスが噴き出して彼女を襲った!

「ぬわっ!? おのれっ」

 そのガスには、これといった毒性はなかったようだが、目をふさがれて、本能的に吸い込むまいとしたために、熟達の戦士である彼女にも隙が生じた。その半瞬ばかりの間隙をぬって銀色の一閃が彼女の左脇腹に吸い込まれていき、焼きつくような激痛と、全身を貫いた冷気が通り過ぎた後に、ミシェルは自分の脇腹に突き刺さるワルドの杖を見た。

「き、きさ、ま……」

「ほう、とっさに急所だけははずしたか」

 血に濡れた杖を引き抜いたワルドの声が彼女の耳朶を不快に揺さぶる。攻撃を受ける瞬間、ほんのわずかだが体をひねるのが遅れていたら心臓を貫かれていたかもしれない。だが、それで彼女はさらに確信を深めていた。今の一撃の速度はまさに『閃光』の二つ名を持つワルドのもの、しかしこれが魔法をまとわせたものであったら、急所を外しても内臓をズタズタにされていただろう。肉体はワルドのものだが、魔法は使えない、ということは。

「ワルドの体を、乗っ取ったのか……」

「ほう、いい洞察力だ。いかにも、なかなか使いでのよさそうな体で気に入っている。だが、それに気づいた以上、なおさら貴様はここで死んでもらうぞ」

「ぐっ……そうはいくか!」

 傷口を押さえた手のひらに伝わってくる生暖かい感触と、強烈な嘔吐感がミシェルに受けた傷の深さを教えていた。このままでは、いくら魔法が使えないとはいえワルドには太刀打ちできない。また、部屋の出口はウェールズにふさがれており、そのウェールズもまともではない以上、勝ち目はないと判断した彼女は杖を取り出して背後の壁を『錬金』して砕き、そのまま四階の高さから一気に落下して城外の堀に水しぶきをあげて着水した。

「ちっ、逃がしたか」

 外壁の穴から堀を見下ろしたワルドが吐き捨てた。堀の水面は、すでに夜の闇で真っ黒に染まり、着水の白い気泡が消えた後は何も見えない。

「浮かんでこない、ということは死んではいないな」

 人間の体は水に浮く。むろん沈みもするが、体内には大量の空気が詰まっているために死亡してもしばらくは浮き続ける。それが浮いてこないということは、まだ生きていて泳いで逃げたということだ。この城の堀は自然の川を利用したもので、城の周りを流れる川は、そのまま陣地の横を流れて郊外へと続いていく。流れに身を任せれば、あまり体力を使わないでも城から離れることはできるだろう。そのまま闇夜にまぎれて逃亡されては面倒だ。

「あの傷で、しぶといものだな。ウェールズ、始末は任せた。私はクロムウェルを手伝いに行く」

「わかりました」

 皇太子に対して、ワルドだった”もの”は自分の部下のようにぞんざいな態度で命令した。そして些事よりも新たに与えられた役目を果たすために、元の人間が持っていた身体能力、すなわち幻獣を乗りこなす能力を使ってレコン・キスタの元へゆくために、王党派のドラゴンのいる厩舎へと悠然と去っていった。

「参謀長!」

 ワルドが立ち去った後に、ウェールズは自身の参謀長を呼びつけた。彼は、ウェールズが総司令官になったときに抜擢した男で、白い口ひげを生やした老人という印象しか与えない風貌ではあるが、その智謀は確かで、これまで数々の戦場でレコン・キスタを打ち破るのに貢献してきた。ただし、素性はまったくの謎で、どこの貴族の出身なのか、そもそもどこから来たのか、そしてなぜ皇太子は彼を抜擢したのかを知る者はいない。

「お呼びですか?」

「成り行きは知っていよう。我らの計画を知った人間一匹、すぐに始末をつけよ」

「御意に」

 参謀長はうやうやしく頭を垂れると、立ち去っていくウェールズを見送った。城のホールでは、もうすぐウェールズが何も知らない貴族や将軍たちを前にして、高らかに杯を掲げながら、もうすぐやってくるであろう輝かしい未来を喜び合うのだろう。まったく、これだから人間というのは度し難いのだと、誰もいない廊下を歩きながら参謀長はほくそ笑み、やがて誰も立ち入れさせない自分の部屋に入ると、部屋の奥の大きなスーツケースの扉を開いた。

「さあ、お前の出番だぞ」

 そのスーツケースの中には、きらきら輝く等身大の女性の人形が直立した状態で納められていた。

「さあ、目を覚ませ」

 参謀長は、ニヤリと笑うと人形に手をかざして念を込めた。するとどうだ、作り物めいていた人形の肌がみずみずしい輝きを持つようになり、裁縫糸のような髪は滑らかな金髪に、瞳はガラス球から黒曜石のような輝きを放ち、まるで人間のように変化したではないか。

 だが、その容貌は確かに人間そのものであるが、顔には一切の表情を浮かべておらずに、人間らしい一切の生気というものをまとってはいなかった。

「さあ、お前に働いてもらうときだ。この城から、我らの秘密を知って逃げ出したものがいる。そいつを追って殺せ」

「はい」

 参謀長の命令に、人形だった少女は機械的にうなずき、無言のままで部屋を立ち去っていった。

 ホールの方角からは、高らかに乾杯の歓声が響いてくる。トリステインからの大使など、いてもいなくてもかまわない。ただウェールズさえいれば王党派は安泰だという、それはとても陽気で、果てしなく愚かな笑い声であった。

 

 

 その日は、月も日没にかけて湧いてきた雲で隠れ、城の窓からの明かりと、陣地に張られた松明の炎だけが、闇をわずかな範囲のみ照らしていた。当然、それらから離れたらまったくの闇夜に包み込まれて、夜目の利かない者では歩くこともできない。

 そんな闇の中に響く川の水音の中で、傷ついたミシェルはやっと川岸に這い上がってきていた。

「くっ……いったい……なにが、どうなっているんだ……」

 川辺の砂利の中に倒れこんで荒い息をつきながら、彼女はまず周りを見渡した。どうやら、必死で泳いでいるうちに、かなり城からは離れられたと見えて、城や陣地の明かりは小さく遠くに見える。また、銃士隊の夜間訓練のおかげで、目が慣れてくると、川岸のはずれには林があり、その先には郊外に続く小さな道が見える。人影は、戦場に近いためかまったく見えない。

「ワルドめ……うっ!?」

 突然襲ってきた嘔吐感のままに、ミシェルは激しく咳き込んだ。口に当てた手には、唾液以外のねっとりしたものがついており、黒く塗りつぶされた景色の中でも、自分が何を吐いたのかは容易に知ることができた。

「はぁ……はぁ……くそ、あんな奴におくれをとるとは……いや、あれはもうワルドじゃなかった。ウェールズも、何かに操られているようだった」

 砂利の上に寝転んで呼吸を整えながら、ミシェルはなんとか意識を保とうと、自分の身に起きたことを考え続けた。

「あのとき、奴と別れるまでは、奴は確かにまともだった。だとしたら、ウェールズが……? しかし、ウェールズにワルドを倒すほどの力が……いや」

 そこまで考えたとき、ミシェルはこれが王党派やレコン・キスタなどとは別の次元の存在によって糸を引かれていることに思い至った。ウェールズを洗脳し、なおかつワルドを人外の怪物に変えてしまえるような存在。

「まさか……ヤプールか!」

 彼女にとって、それは証拠はなかったが、ほぼ確証に近く、また事実に見事に合致する答えだった。このアルビオンにはヤプールが攻撃を仕掛けたことはないと聞いていたけれど、そんな人間の常識を超えたことができるのは、ほかに考えられない。

「奴め……トリステインだけでなく、このアルビオンまでも焼き尽くそうとしているのか」

 彼女の脳裏に、超獣ドラゴリーと戦ったときに、初めて見たヤプールの不気味な姿が思い起こされてきた。考えて見れば奴は、この数ヶ月の間に幾度となくトリステインに攻撃を仕掛けてきたが、そのなかでもホタルンガを使ってトリステインの貴族を多数殺害した事件のときには、あの土くれのフーケを操っていたという。しかもフーケは、当時魔法衛士隊が必死で捜索しても、影さえつかめなかった神出鬼没のメイジである。それをたやすく手駒にしてしまったヤプールが、バム星人をトリステイン王宮に忍び込ませていたようにウェールズを洗脳して、一気にこの国を滅ぼしてしまおうと企んだとしてもなんら不思議はない。と、すれば、わざわざ王党派に合わせるように勢力を縮小していったレコン・キスタにも、すでにヤプールの手が回っていると考えれば、その説明がつく。

 考えれば考えるほど、頭の中で疑問の答えがパズルのように組み合わさってできていく。このままほうっておけば、ヤプールが最終的にどんな手段をとるのかまではわからないが、すでに指揮官が操られ、他の大半の者も目の前の戦争しか頭にない今の王党派やレコン・キスタは、さながらキングのないチェスを熱心にする愚か者のようなものだ。とてもではないが、あの狡猾なヤプールの企みに気づくことができるとは思えない。最後は盤ごと両陣営仲良く血濡れの剣舞を踊りながら、滅びへの谷底へ突き進むことになるだろう。

「早く、知らせねば、大変なことになる……! 知らせる? ……誰に……」

 だが、痛む体を必死に起こして立ち上がったとき、ミシェルはこの重要な情報を、どこへ持っていけばいいのかと気づかされた。洗脳されたウェールズのいる王党派に戻るわけにはいかない。かといってレコン・キスタにもヤプールの手が伸びているのはもう確実だし、行ったところで先回りしているはずのワルドに殺される。いや、すでにワルドの姿を借りた何者かによって、レコン・キスタにはミシェルは裏切ったと報告されているに違いない。どの道、もうレコン・キスタ勢にとって自分は敵となっているだろう。

 だけれども、トリステインにももう戻れない。アルビオンに来る前に、銃士隊が準備していた内容どおりに捜査していれば、すでに自分がレコン・キスタの内通者だと気づかれているだろう。もとより、そのタイミングを見計らって出てきたのだが、そうなれば、自分は間違いなく逮捕されて……。

「はっ、はははははは……」

 もう、どこにも自分の行くべき場所はないのだと知ったとき、彼女の口から漏れてきたのは、ただ、乾いた笑いだけだった。

 自分は、国の行く末を案じて、信頼してくれた仲間を、友を、国を裏切ってきた。けれども、その結果はこれだ。苦渋の選択のつもりで裏切りを選んだら、その陣営はとっくに侵略者の手に落ちており、革命などを起こす力はもう残ってはいない。

 裏切ったつもりが、実はすでに自分は自分の理想に裏切られていたのだ。なんという喜劇だ、薄汚い背信行為の代償に、裏切り者は全てを失いましたとさ、軽歌劇なら、ここで観客の爆笑と拍手があるところだ。結局は、地面を這いずる虫けらが、大それた夢を見るなということか、まるで黄泉路へ続くような闇夜の川原に、ミシェルの壊れたような笑いが響き続けた。

 

 しかし、神という名の残酷な脚本家によって、悲劇役者を演じるように定められた人間は、その命尽きるまで血濡れの輪舞を踊り続けろと言われんばかりに、さらなる舞台へと引きずり出されていった。暗い、一切の光も許さないと主張しているような闇の中に、透き通るような、だが、台本を読むような冷たい淡々とした声が突然流れてきたのである。

「銃士隊副隊長、ミシェルさまでいらっしゃいますね?」

 その声が鼓膜を震わせたとき、彼女は溺れてなお離していなかった二つの武器、剣と杖を持って、はじかれるように振り返った。

「何者だ!?」

 それはほとんど、訓練された兵士としての彼女の無意識の行動と言ってもよかっただろう。たとえ心が虚無に支配されかけようと、体は慣らされたとおりに反応してしまう。振り返った瞬間、脇腹の傷口が開いて激痛が走ったが、彼女はとにかく目を凝らして、闇の中で自分を見ている相手の姿を捜し求めた。そしてやがて林の中の、十メイルほど離れた場所に、闇の中でも目立つ金髪の少女が立っているのを見つけた。

「銃士隊副隊長、ミシェルさまでいらっしゃいますね?」

 その少女は、もう一度同じ内容の質問を彼女にぶつけた。いや、内容だけではない、口調も、音程も最初とまったく同じ、まるで録音を聞くようなその声色に、ミシェルの全身が、こいつは危険だと警鐘を鳴らしていた。

「だとしたら……どうする?」

「そう、なのですか?」

 殺気を込めて睨みつけてやったが、少女は微動だにせずに、質問を返してくる。暗闇でこちらが見えていないのではない。この少女は確実にこちらを捉えている。だがこちらからは、見えはするのだが、まるで人形のように、少しも気配を感じなかった。

 動けない、動いたら危険だ。ミシェルは、答えずに黙って睨み付け続けたが、やがて少女はゆっくりと手を上げると、その手のひらを彼女に向けた。

「直接の確認は得られませんでしたが、該当情報によりターゲットと認識します」

 言い終わった瞬間、少女の五本の指先から、光る蛇のような光線が発射された。ミシェルは、警戒していたおかげで間一髪回避に成功して、剣を抜いて、間合いを詰めるために走り出したけれど、足と体にいつもの半分くらいしか力が入らない。

「くっ、血を流しすぎたか……」

 傷は致命傷を避けていたが、長距離を泳ぐうちに大量の血液を失っていたらしい。ましてやまだ手当てすらろくにしていない状態では、塞がっていない傷口からさらに血が流れていく。それでも彼女は、渾身の力で駆け抜けて、少女に袈裟懸けに斬りつけたが、斬撃はまるで岩を斬りつけたような鈍い反動とともに跳ね返されてしまった。

「なにっ!? 馬鹿な」

 はじかれた手の痺れに耐えながら、愛剣を見たミシェルは愕然とした。なんと、上等の鋼鉄でできた長剣が、のこぎりのようにボロボロに刃こぼれした無残な姿で、わずかな光の中で光っていた。対して、斬りつけられた少女のほうは、身に着けている銀色のワンピースこそ破れてはいるが、斬られた場所からは血が流れてはおらず、代わりに鉄の鈍い輝きが見えていた。

「ガーゴイルの類か……奴らめ、これが私への刺客ということか」

 それが別の世界では、ロボット、あるいはアンドロイドと呼ばれる存在であることを彼女が知るはずはなかったが、痛がるそぶりも見せずに、再び手のひらを向けてくる相手を見て、一つだけわかることがあった。

「要は、貴様も化け物どもの仲間だということだろう!」

 剣が通用しないのだとわかったミシェルは、すぐに武器を杖に持ち替えて、得意の系統である土魔法で川原の砂利を鉄に『錬金』して、『念力』で散弾のようにぶつけた。だが、相手はまるでびくともしない。

「頑丈な奴め……ぐっ!」

 しかしミシェルには、攻撃が効かなかった精神的ショックよりも、魔法の反動でさらに痛みを増す傷口のほうが気力を削いだ。杖を持っていない手で傷口を押さえるが、血は止まる気配を見せない。それでも、逃げるだけの体力がもうない以上、戦いをやめるわけにはいかなかった。

「『アース……ハンド!』」

 地面から突き出た土の手が、アンドロイドの足首を掴んで動きを封じる。しかし、たったこれだけのために、ミシェルはさらに呼吸を荒くして、額から浮き出る大量の汗に耐えなければならなかった。

「どうだ……動けまい」

 決まればオーク鬼でも動きを封じられるこの魔法だ。これで時間を稼いで、なんとか突破口を見つけようと彼女は考えたが、アンドロイドは軽く足を振り払うだけで、土の呪縛を解いてしまった。

「……死んで、ください」

「くそっ……化け物め」

 これは、普通のガーゴイルなどとは違うと、ミシェルも理解し始めていた。恐らくヤプールが用意したのだろうが、完全人間型の上に、防御力も攻撃力もハルケギニアのガーゴイルを上回っている。実は、地球でもこれと同型のアンドロイドが侵略に使用されたことがあり、そのときも人間以上の俊足や、鍵をかけられた扉を破壊する怪力を見せている。まともに戦えば、生身の人間の太刀打ちできる相手ではなかった。

「はぁ……ぐ……出血は、そろそろ限界か」

 ひたひたと近づいてくるアンドロイドを、後ろに下がりながら見据えて、ミシェルはもうすぐ立ってすらいられなくなることを悟っていた。すでに、脇腹から漏れる血はブーツにまで染み渡り、川原には赤いしみを無数につけていることだろう。長い間戦士として蓄積した経験から、これ以上戦えば、命に関わるということはわかっていた。

「だが、たかが使い走りの人形ごときに、やられてたまるか」

 このままでは自分は死ぬ。だが、心を持ちすらしない操り人形に始末されたとあっては、ミシェルという人間は田舎芝居のピエロ以下の末路を辿った、最低の喜劇役者ではないか。せめて、このガラクタ人形だけでも破壊して、少しでも奴らを悔しがらせねば死んでも死にきれぬと、彼女は最後の力を振り絞って、杖に込めた。

「来い! この化け物!」

 血の混じったつばを吐き散らしながらミシェルが叫んだとき、アンドロイドは川原の砂利を蹴って駆けだした。もし、無傷のときのミシェルであったならギリギリ避けられたかもしれない。けれど、致死量の血液を失いかけた彼女では到底無理なことで、半瞬後にアンドロイドの腕はミシェルの首を掴んで宙に吊り上げていた。

「死んで、ください」

 アンドロイドが無機質な声とともに力を込めると、ミシェルの首から急速に力が抜けていった。血流が妨げられて、呼吸もできなくなる。必死に耐えようとするが、それもアンドロイドのパワーには通じない。いや、アンドロイドが本気を出せば、人間の首の骨くらい簡単に折れるだろう。パワーをセーブした状態で充分だと判断されたがゆえに、かえってミシェルは地獄を味わっていた。

「イル……」

 それでも、かすかに残った意識の中で、彼女は杖を握り締めて、最後の呪文を詠唱し始めた。

「アース……」

 本来、数秒で終わってしまう魔法のスペルが、今は限りなく長く感じられた。喉が焼け付き、たった一文字を発するだけでも力がどんどん抜けていく。さらに、アンドロイドは手のひらから強烈な電流を流してきて、ミシェルは壊れた管楽器のような音程の狂った悲鳴をあげた。それでも、杖だけは放さずに、血のあぶくを吹きながら、呪文の最後を唱えあげた。

「……デ……ル!」

 その瞬間、ミシェルの最後の力が込められた魔力の光が杖からほとばしって、彼女を掴んでいたアンドロイドの右腕に押し付けられた。それは、本来ならばこの星の魔法などでは変質しないはずの宇宙金属でできたアンドロイドの腕に染み入って、宇宙金属の分子結合を分解し、元のもろく、なんの性質も持たない原石の土くれに『錬金』し返した。

「ざまあ……みろ」

 ひじからへし折れて落ちていくアンドロイドの腕とともに、ミシェルの体も落下していく。ミシェルは、理解できないというふうに膠着してしまったアンドロイドの無表情な顔を見上げながら、川原の砂利の上に叩きつけられた。

「これは……死ぬな……」

 砂利の上に全身をぶつけられて、激痛が走るかと思ったが、意外にもなんの感触もなかった。それどころか、体を起こそうと思っても全身が凍り付いてしまったように動かずに、手足の先からゆっくりと冷たさがしみよってくる。

 これまで、自分たちが斬り殺してきた相手も最後はこんな感触だったのだろうか。人生の最後には、これまで自分が歩んできた記憶を一気に思い返すとか聞いていたが、どうせ振り返ってもろくな思い出などないのだから、勘弁してほしい。いや、この数ヶ月に限るのなら見ても悪くない。

「隊長……みんな……」

 わずかな時間ではあるけれど、共に肩を並べて戦った仲間たちの顔が一人ずつ思い浮かんでくる。もう、あそこには二度と戻れないが、思えば人生で一番充実して楽しい時間だったかもしれない。それに、トリステイン王宮で共に戦った魔法学院の未熟で阿呆だが勇敢な少年少女たち。こんな自分にも変わらず接してくれたアンリエッタ王女、最後に……。

「サイ……ト……」

 破天荒で向こう見ずで、剣技もへたくそなくせに、それでいて正義感だけは人一倍ある大馬鹿者。大して長くもない人生だったが、信頼できる男はあいつくらいであっただろう。

「副長はおきれいなんですから、騎士隊の中にでも、お友達を一人くらいお作りになってはいかがですか?」

 かつて、部下の一人がさりげなくそう助言してきたとき、自分は冷笑といっしょに聞き流したが、恐らくその助言に従ったとしても、騎士隊なんぞにあいつ以上の男はいなかったであろうのは確信できる。けれども、思えばそんなに多くあいつといっしょにいたわけではないのに、なぜこんなにあいつのことばかり気になるのか……もう、二度と会うことはできない、自分からすべての信頼を裏切ってきたというのに……。

「ふん……くだらん」

 どうせ、いまさら後悔したところで何を取り戻すことができるわけでもない。所詮、ドブネズミにはこんな最後がお似合いかと、ミシェルは唯一自由に動く瞳に映った、自分の頭の上に振り下ろされてくるアンドロイドの鋼鉄の足を見上げた。もう一瞬後には、鋼鉄の足は頭蓋を砕いて、ミシェルという人間がいた証を、この世から消し去ってしまうだろう。覚悟は決めていたはずだが、このまま誰もいない冷たい世界に行くのか、それは……。

 

「帰りたい……」

 

 疲れ果てて、瞳を閉じたミシェルの顔を、一筋のきらめきが流れて落ちた。

 だが、彼女は死の世界の門が眼前で黒い突風を受けて閉じるのを見ることはできなかった。慈悲なき潰死を彼女に与えようとしていたアンドロイドは、闇の中から狼のように飛び出してきた、黒衣の乱入者の打ち込んできた飛び蹴りの一撃によって、川の中まで吹き飛ばされていたのである。

「エネルギー兵器の気配がしたから来てみれば、戦闘用アンドロイドか。また、この星のものではないようだな」

 その人影は、全身金属製のアンドロイドを蹴り飛ばしたというのに、平然とした様子で、川の中から立ち上がってくるアンドロイドを見据えていた。

 それから後のことは、ミシェルは薄れ行く意識の中で、ほんのわずかに耳に届いてきた戦いの音によって知ることができた。

 アンドロイドは、川からあがると残された左腕を振るって、新たに敵と認識した相手に向かって襲い掛かっていった。すでに損傷しているためにフルパワーを出し、ギーシュのワルキューレを凌駕するスピードと破壊力を発揮して殴りかかってくるアンドロイドに対して、その相手が迎え撃った手段は、さらにそれ以上のスピードとパワーでの逆襲であった。

 アンドロイドを構成する金属がねじれ、回線がショートする音が立て続けに鳴り響く。手のひらから発射した光線も軽くかわされ、やっと相手を掴んで流した電流攻撃も、さらに強力な電撃を返される。

 ただの一分もかからないうちにアンドロイドは機能のほとんどを破壊され、最後に相手の拳が顔面を砕いたとき、アンドロイドは最初の人形の姿に戻って、陶器が砕けるような音を響かせて、川原の上に倒れて砕け散った。

 

 黒衣の人影は、アンドロイドが完全に機能停止したのを見届けた後、倒れているミシェルに歩み寄った。腰を落としてミシェルの口元に手をかざし、呼吸があるのを確認する。

「まだ生きているか……それにしても、この星の人間の力で、このアンドロイドの構造金属を破壊するとは。人間の力というものはやはり底が知れんな」

 その言葉が発せられたとき、すでにミシェルの意識はなかったが、その後で、なにか暖かいものに包まれたような感触を、夢の中で彼女は感じていた。

 

 

 それから、いったいどれくらいの時間が過ぎたのだろうか……。

 長い、長い夢を見続けていたような気がする。もしそれが死だったら、彼女は永久に安寧の闇の中を漂っていられただろう。しかし、闇の中に次第に光が滲み出し、死者は絶対に動かすことのできないまぶたに感触が蘇ってくる。

 そうして、ゆっくりと光を瞳の中に入れて、まぶしいと思ったときに、ミシェルの耳に、もう二度と聞くことはないとあきらめていた懐かしい声が届いてきた。

 

「あっ、目を覚ましたわよ、みんな、来て!」

「気がついたのか、よかった。心配しましたよミシェルさん!」

「あの傷で、よく助かりましたわね。悪運の強い人ですね、まあ、私も人のことはいえませんが」

「しぶといわねえ、まあこの人の部下なら、それも納得か」

「ミス・ヴァリエール、我々を人間じゃあないみたいに言うな。それにしても、お前ほどの者がいったい何があったのか、教えてもらうぞ」

 わいわいがやがやと、そこには自分を見下ろしている大勢の顔があった。

「サイ、ト……たい……ちょう?」

 つぶやいた声が届いたのか、よく見知った顔がいっせいに笑みを浮かべているのが見えた。だけれども、かすむ視界の中に、いるはずのない相手の顔を見て、ミシェルは、ああ、自分はまだ夢の中にいるんだと、安心してまぶたを閉じた。

 

 

 続く


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