ウルトラ5番目の使い魔   作:エマーソン

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第79話  絶望交響詩・最終曲『ウルトラセブンの歌』

 第79話

 絶望交響詩・最終曲『ウルトラセブンの歌』

 

 ウルトラセブン

 一角超獣 バキシム 登場!

 

 

 ひとつ問おう、君は困っている人、苦しんでいる人を見たらどうするだろう?

 たとえば、道端で倒れているお年寄りを見たとして、君はその人を助けるか、それとも無視するか?

 いや、君ならきっとその人に駆け寄って、「大丈夫ですか?」と話しかけるに違いない。

 それが、人間。優しさという、かけがえのない魂を持つ存在なのだ。そしてそれは、ウルトラマンも変わりない。

 だからこそ! そんな人々の助けを求める声がある限り、光の戦士はどんな世界でも必ず応えてくれる。

 

 ヤプールの化身・超獣バキシムの卑劣な作戦によって最大の危機に陥ったウルトラマンA。

 バキシムは、エネルギー切れに陥ったエースの前で、公開処刑も同然にベアトリスたちを攻撃してきた。

 ミサイルの炎と爆風に叩かれ、打ちのめされる彼女たち。さらにバキシムは非道にも、ベアトリスを虫けらのように踏みにじろうとする。

 だが、絶望も悲劇も、もう彼女たちには必要ない。

 誇るべき弟と、その愛する人々のために、彼はついにやってきた!

 

「エースよ、弟よ。あきらめてはいけない」

 

 ウルトラマンAの耳に飛び込んできた懐かしい声。

 それはかつて誰よりも多く人類のために血と汗と涙を流し、戦い抜いた真の勇者のもの。

〔ええ、希望は決して失われることはないんですよね!〕

 忘れもしない、エースが困難な戦いの中でくじけそうになったときも、厳しくも力強い言葉で励ましを送ってくれたその人のことを。

〔北斗さん! どうしたんですか? 誰が来たっていうんです!〕

〔そうよ! もうなにがなんだかわからない! いいかげんにしてっ!〕

 才人とルイズが戸惑った声をあげる。

 しかし、エースにはわかっていた。以前、ワルドがエボリュウ細胞を撒こうとしたときに教えてくれたときから、どんな方法かはわからないが、あの人がこの世界に来ていることを。

〔心配はいらない。それよりも、才人くんを休ませてやらなくては危険だ。大丈夫、私たちの役割は果たし終えた〕

 変身を解き、ウルトラマンAは空気に溶け込むように消えていく。

 そして、突如戦場に踊りこんできた一頭の馬と、その背にまたがるテンガロンハットをかぶった男。彼はたずなをさばき、猛烈なスピードでベアトリスの元に駆けつけていく。

 

「ハイヤーっ!」

 

 走る馬は、傷ついた体で呆然と見守っているミシェルやエーコたちの目の前で、恐れる気配など微塵もなくバキシムの足元へと飛び込んでいく。すでにバキシムの足は無慈悲なプレス機となって目の前だ!

 だが、馬上で駆る男は体を乗り出すと、ベアトリスに向かって手を伸ばした。

「つかまれ!」

 次の瞬間、バキシムの足が地面を叩き、砂埃が舞い上がる。バキシムの体重は七万八千トンであり、踏まれれば人間など形も残りはしない。ミシェルたち、エーコたちは瞬きする暇すら惜しんで粉塵を凝視した。

 まさか……最悪の予感が彼女たちのあいだを駆け巡る。しかし、もうもうと立ち上る砂煙の中から飛び出してくる馬の背には、男の腕にしっかりと抱きしめられたベアトリスの姿があったのだ。

「姫さま!」

 エーコたちのもとに馬は駆け寄り、男とベアトリスはその背から降りた。すぐさまエーコたちが走りよってきて、男はベアトリスを地面に下ろすと、まだ腰が抜けた様子の彼女に優しげに言った。

「立てるかい?」

「は、はい……あ、あなたは!」

 下ろされたベアトリスは、その男の顔を見てはっとした。同時に、エーコたちやミシェルも驚きを隠せないように、男の顔を見る。

「ふ、風来坊……」

 そう、彼はこれまで何度もベアトリスの前に現れては、そのつど助けてくれたあの謎の風来坊だったのだ。

 ミシェルが選んで買い求めたテンガロンハットをかぶり、皮のジャケットに身を包んだ彼は、前と少しも変わらない温厚そうな笑みを浮かべてそこにいる。まるで、超獣がいることなど忘れてしまいそうな、その落ち着いて穏やかな空気は、真の仇にいきり立っていたセトラたち姉妹の理性をも取り戻させた。

 そうして、彼は驚いているベアトリスの頭を優しくなでると、穏やかに微笑んで言った。

「よくがんばったな。さあ、あとは私にまかせるといい」

「あ、あなたはいったい……?」

 ベアトリスは前々から気になっていたことを尋ねた。この風来坊は、どこにでもいるような風体のくせに、絶対現れるはずもないときにばかり現れてくる。その度に見せる常人離れした雰囲気と、ヤプールの手下とさえ戦える力……

 あなたはいったい何者なのだ? ベアトリスだけでなく、ミシェルやエーコたちも風来坊に視線を向けると、彼はいたずらっぽげな笑みを浮かべて、いつものように陽気な口調で答えた。

「僕はモロボシ・ダン、ご覧のとおりの……ただの風来坊さ」

「ダン……さん」

 ベアトリスはぽつりと、はじめて知った風来坊の名前をつぶやいた。

 風来坊……ダンは、うれしそうにもう一度微笑んだ。そうして、くるりと振り返るとバキシムに向かってゆっくりと歩き出した。

 危ない! なにをするんだとミシェルたちから怒声が飛んだ。けれど彼は少しも動揺することなく、事態を飲み込めずに立ち尽くしているバキシムの前まで行った。

 そして、テンガロンハットをおもむろに脱ぐと、バキシムを強い視線で見上げたのである。

「久しぶりだな、ヤプール」

「き、貴様は! なぜだ、なぜ貴様がこの世界にいるのだ!」

 風来坊の顔を見たとき、バキシムから大きな動揺の声が響いた。ヤプールは個であって群の生命体、バキシムは単一の超獣であると同時に、その意識や記憶はヤプール全体と共用されているのだ。

 だが、なぜヤプールがただひとりの男に、ここまで恐れた様子を見せるのか。呆然として見守るベアトリスたちの視線を背中に受けながら、風来坊はバキシムを睨みつけて、奴の問いかけを跳ね返した。

「そんなことはどうでもいい。しかし、貴様の悪巧みもここまでだ」

「そうか、これまで頻発した不可解な妨害の数々は、貴様がやっていたのだな!」

「それは違う。私はただ、彼女たちの心に宿る勇気を信じて、ほんの少し後押ししただけさ」

 そう言うと、ダンは振り返ってベアトリスたちを見つめた。

 バキシムの氷のような冷たさとはまったく違う、温和で穏やかなまなざしがベアトリスからミシェルやエーコ、姉妹たち全員を一人ずつ見つめては離れていく。彼は誰の顔にも、もう絶望や憎悪の影はないことを確かめると満足げにうなずき、バキシムを見上げて決然と言い放った。

「彼女たちは、貴様が与えた絶望を乗り越えた。貴様の負けだ、引くがいいヤプール。それでもなお悪あがきをするというのであれば、私が相手になろう」

「うぬぬぬ、おのれぇ……貴様さえいなければ、なにもかもうまくいったものを! 許さん、こうなれば貴様もここで始末してくれるわ!」

 ダンの忠告に逆にいきりたち、バキシムは雄たけびをあげて迫ってきた。

 やはりヤプールは話の通じる相手ではなかったか……ダンはテンガロンハットを胸元に持つと、一瞬祈るような姿勢を見せた。

 ミサイルの照準をすべてあわせるバキシム。本気の一斉射撃が当たれば人間など一瞬で蒸発してしまうに違いない。ミシェルやベアトリスたちの必死の叫びが響き渡る。

「危ない! 逃げてぇぇっ!」

 だが、風来坊は微笑を浮かべるとテンガロンハットをベアトリスに向かって、フリスビーのように放った。

「心配はいらない。君たちに呪いを与え続けた悪魔は、私が倒す」

 風に乗ってテンガロンハットがベアトリスの手の中に飛び込んで受け止められる。

 何度も見た、いつもと変わらない風来坊の優しい笑顔。だが次の瞬間、彼の顔は戦いを決意した戦士の表情に変わり、その手にはテンガロンハットに代わって、赤いゴーグル・ウルトラアイが握られていた。

 バキシムから放たれる十数発のミサイルの雨! だが、ダンはウルトラアイを眼前にかざすと、掛け声とともに着眼した!

 

「デュワッ!」

 

 その瞬間、ウルトラアイから火花のような閃光がほとばしり、ダンの姿が変わっていく。

 銀の兜のような頭部には鋭く輝くオレンジ色の眼、肉体も瞬時に太陽のように赤く染まった精悍なボディへと生まれ変わる。

 そして、ミサイルの炎などをものともせずに跳ね飛ばし、彼は一瞬のうちに身長四十メートルもの巨人へと変身を果たしたのだ!

 

「ジュワッ!」

 

 左腕を縮め、右腕を伸ばしたファイティングポーズをとり、赤い巨人はバキシムを睨みつける。

 ベアトリスやミシェルたちは、目の前で起こった信じられない奇跡に言葉もない。だが、ひとつだけわかることがあった。

「ダンさんが……ウルトラマン」

 姿形は違えども、赤い巨人はウルトラマンAと同じ澄んだ力強いオーラを感じた。彼は自分たちをかばうように背を向けて、一部の隙もなくバキシムと対峙している。その構えと闘志は、ボーグ星人と対峙したときのダンとまったく同じもの。

 ウルトラマンは人間? いや、人間がウルトラマン? 戸惑いを隠せないベアトリスたち。

 しかし、彼はその真意を言葉で与えてはくれない。

 光は闇を照らしてこそ存在を語る! 対して、闇も光を飲み込もうと牙をむいて、憎き敵の名を呼んで襲い掛かってくる!

 

「おのれぇ! とうとう現れたなウルトラセブン!」

「ゆくぞ! ヤプール」

 

 逆上するバキシム、すなわち邪悪なる闇の化身を前にウルトラセブンは勇敢に立ち向かう。

 そう、彼の名はセブン。モロボシ・ダンの名を借りて、数々の侵略者の魔手から地球を守り抜いてきた最強のヒーローだ!

 互いに引かれあうように激突するセブンとバキシム、バキシムの鋭いスパイクのついた腕の攻撃をかいくぐり、セブンのパンチが炸裂する!

「ダアァッ!」

 首元にめりこんだセブンの拳が、バキシムの芋虫だったころの面影を色濃く残す胴体に、クレーターのようなへこみを一瞬にして生み出して跳ね飛ばす。俊敏さとパワフルさを併せ持つセブンのウルトラパワーの前には、七万八千トンの重量すらものの数ではない。

「デァッ!」

 たまらず苦悶の叫びをあげて後退するバキシムに、セブンの眼が隙を見逃すことはない。

 組み付いてボディに膝蹴りを与え、後頭部に鋭い一撃を加える。

 速い! そして重い! たった数発の攻撃だというのに、バキシムは大きな悲鳴をあげてのけぞった。

「いいぞ! がんばれセブン!」

 離れたところから戦いを見守っていた才人が、握りこぶしを大きく掲げて歓声をあげた。テレパシーの使いすぎで消耗しきり、ルイズにひざまくらしてもらってやっと体を起こしているが、そんなうらやましい状況すらまったく無視して、子供に戻ったように叫びまくる。

 そうだ、ウルトラマンAの言っていた希望とはセブンのことだったのだ。もはや、恐れるものなどあるはずがない!

 鋭い切れ味のウルトラチョップがバキシムの喉元に水平に当たり、そのままボクサーのように連続パンチの応酬だ!

「デヤァッ!」

 一撃ならまだしも、数え切れないほどの攻撃を一度に叩き込まれては超獣の頑強なボディもたまったものではないはずだ。

 まさに、青い悪魔に立ち向かう正義の赤い暴風。

 が、バキシムもまだまだ負けたわけではない。緑色の眼はらんらんと輝き、反撃の機会をうかがっていた。

 なめるな! セブン!

 そう言わんばかりに金切り声にも似た咆哮をあげ、バキシムは巨大な鳥のくちばしのような口を大きく開いてセブンに食らいついてきた。

「グワァァッ!」

 バキシムの牙はセブンの左腕に食いつき、全身の力でセブンは大きく振り回された。

 そしてそのまま振り回した勢いで放り投げ、セブンは廃倉庫のひとつに背中から投げつけられて粉塵があがった。

 さすが……ヤプールの怨念を一身に背負って出てきただけのことはある。ウルトラ戦士に対する反抗心は並ではない。

 バキシムの背部の結晶状の突起物が赤く輝き、両腕の間に赤黒く輝く火炎球が形成され始めた。

「あれはっ!」

 才人は懐からGUYSメモリーディスプレイを取り出してレンズをバキシムに向けた。あれは、エースと戦った初代バキシムにはなく、メビウスと戦った二代目バキシムが備えていた新兵器。

「バキシクラッシャーだ!」

 高圧の破壊熱線が放たれ、セブンに襲い掛かる。

 危ない! セブン!

 だが、セブンはバキシクラッシャーのエネルギーチャージの一瞬の隙に体勢を立て直し、命中直前に前転で熱線を回避した。

 危機一髪……しかし熱線の威力はすさまじく、廃倉庫は大爆発を起こして吹き飛んだ。

 やはり火力はあなどれない。セブンは用心深く構えを取り、バキシムを見据えるが、バキシムは距離をとればこちらのものだと両腕のミサイル発射口から無尽蔵に放たれるバルカン連打で攻撃をかけてきた。

「ダアッ!」

 セブンはすばやく身をよじってミサイルをかわす。一発一発の威力はたいしたことなくても、動きを止めれば蜂の巣にされてしまうだろう。

 身軽なセブンを相手に、バキシムのミサイルは目標を捕らえきれず、外れたミサイルで周辺は火の海に変わっていく。ここが無人の廃棄区画でなければ大惨事になっていたことは必至だ。

 しかし、セブンを捕らえられないことに業を煮やしたバキシムは、卑怯者の常套手段とばかりに照準をベアトリスたちに向けてミサイルを放ってきた。

「ひっ!」

 先ほどまでの嬲る目的とは違い、殺す目的で放たれたミサイルは火の尾を吹いてベアトリスやエーコたちを襲った。むろん、彼女たちを狙えばセブンが助けに入るのを読んでの仕業だが、駆け込んできたセブンはさらに早くバリヤーを張り巡らせた。

『ウルトラバリヤー!』

 胸の前でクロスさせた腕を左右に開いて作り出す光のカーテン状のバリヤーは、向かってきたミサイルをすべて受け止めて跳ね返した。

 貴様のような奴の考えなど、最初からお見通しだ! 数々の凶悪宇宙人と戦ってきたセブンは、バキシムの卑怯な戦法などは想定の範囲内だったのだ。

 セブンはバリヤーを張ったまま振り返り、ベアトリスたちを見下ろした。彼女たちは、エーコたちがベアトリスをかばい、姉妹たちはセトラやエフィがキュメイラやディアンナをかばい、彼女たちはより年下の子をかばいあっている。その様子は、復讐に狂っていたころの残忍な気配はすでにない。

 獣から人間に戻った彼女たちの姿を見て、セブンは確信する。

「見たかヤプールよ。お前がどんなに絶望と憎悪を与えようとも、人間の心から光が消え去ることはないのだ!」

「ほざけセブン! まだ終ってはいないぞ。貴様さえいなくなれば、それですべて終わりだ」

「まだわかっていないようだな。人の光があり続ける限り、私は決して負けはしない!」

 バキシムの弾幕をものともせずにバリヤーで跳ね返しつつ、セブンの反撃が始まる。

「デヤッ!」

 セブンが精神を集中させて念を放つと、セブンに向かっていたミサイルが空中で静止した。

 さらに、念波はミサイルをくるりと反転させると、その方向をバキシムに向けて撃ち返した。

『ウルトラサイコキネシス!』

 押し返したミサイルの雨が放ったバキシムに次々と命中し、バキシムは自ら作り出したミサイルによって打ちのめされる。

 兄弟最強を誇るセブンのウルトラ念力。過去にも幾度となくセブンの窮地を救ってきたこの力も日々進歩しているのだ。

 ミサイルを撃つ手を止めたバキシムに、セブンはすかさず間合いを詰めて攻撃をかける。ダッシュからのキックがバキシムを吹っ飛ばした。

「ダーッ!」

 台風に負けた巨木のように地響きをあげて倒れるバキシム。セブンはボディに飛び乗って、パンチの連打、連打、連打!

 圧巻の連続攻撃がバキシムに吸い込まれ、さらにもがいて起き上がってきたバキシムに、もうミサイルを撃たせる隙は与えまいと打撃を加える。

 しかしバキシムは接近戦も決して弱くない。巨体はそれだけでも強力な武器となり、巨大な槍のような硬質の尻尾がセブンを大きく張り飛ばし、巨体そのものを武器としてのしかかり攻撃を仕掛けてきた。

「ヘアッ!」

 寸前、セブンは転がってバキシムののしかかりを回避した。もしこの直撃を受けていたとしたら、いかなセブンでも大ダメージは免れなかっただろう。

 しかし、バキシムのレーダーアイはセブンが体勢を立て直すために一瞬だけ背中を見せたタイミングを見逃さなかった。セブンの背中に向けて、バキシムの最大の武器である頭部の角ミサイルが放たれる。完全にふいを打った発射であるために、セブンはまだこれに気づいていない。

 そのときだった。

「後ろよ! 危なーい!」

 セブンの耳に響いた十数人の声が危機を知らせた。反射的に身をよじり、角ミサイルは刹那の僅差でセブンを掠めて飛び去っていき、外れて方向転換をしようとしてるところへセブンは右腕を引き、左腕を水平に胸に当てたポーズで、もっとも得意とする光線を額のビームランプから放った!

『エメリウム光線!』

 緑色の反磁力線に撃墜され、大爆発を起こす角ミサイル。ほかのミサイルと違って、このミサイルは単発で次はない。

 そしてセブンは自らの危機を救ってくれた、ベアトリスたちを見下ろしてうなずくしぐさを見せた。

「え……あ、もしかして」

 彼女たちは、言葉にこそされなかったが、セブンが自分たちに礼を言ったのだということがわかった。すると、胸のうちに不思議な自信と暖かさが生まれてくる。そうだ、自分たちはちっぽけでも、ウルトラマンの大きな助けになることもできる。そう理解したとき、彼女たちはそろって大きな声で叫んでいた。

「がんばれーっ! ウルトラセブーン!」

「負けないで、必ず勝って!」

「あたしたちがついてるぞぉ!」

「セブーン!」

 声を張り上げ、笑顔で手を振って応援する。それは地球で幾度となくウルトラ兄弟を支え続けた地球人類と同じ光景だった。

 これで負けるわけが、負けられるわけがない。

 切り札を失ったバキシムに、セブンの怒涛の攻撃が再開された。

 

 ウルトラパンチ、ウルトラチョップ、回し蹴りにウルトラスィング。レオを鍛えたセブンの宇宙格闘術がバキシムを追い詰めていく。

 

 が、卑怯なヤプールは形勢が不利で覆しがたいと見るや、空を割って亜空間ゲートを作り上げた。

「セブンめぇぇぇ! やむをえんバキシム、ここはいったん引け! 体勢を立て直して出直すのだぁ!」

 アルビオンのときと同じく、ヤプールはバキシムを逃がす気だった。亜空間ゲートに向けてバキシムは後退していく。

 けれども、今さらになって逃げ出すなどと虫のいいことを許すわけにはいかない。ここで取り逃せば、いずれ奴の手によってエーコたち同様の犠牲者が生み出されるのに違いないからだ。

 セブンは逃げようとしているバキシムに対して、左手の先から緑色の光線を放った。

『ラインビーム!』

 光線は光のロープとなってバキシムの首に巻きつき、引き戻す。以前神戸でモロボシ・ダンとして牧場を経営していたときにとった杵柄、ロープの扱いはお手の物だ。

 セブンの渾身の力でバキシムは逃げ込もうしていた亜空間ゲートから離されていく。

「放せ! おのれ放さないかぁ!」

「逃がしはしない。お前が、人々を不幸にしようと考え続ける限り、決してこの手は放さんぞ!」

 未来を守ろうというセブンの強い意志がバキシムを縛って逃さない。ウルトラパワーでなぎ倒し、倒れたバキシムの巨体をそれ以上のパワーで持ち上げて、ウルトラリフターで頭上高くへ抱えあげた。

「デュワァァァッ!」

 十万トンの腕力を誇るセブンのパワーを持ってすれば、超獣有数の大重量を持つバキシムも紙の丸太のようだ。

 圧巻の光景に、ベアトリスたちは手に汗を握って見上げている。

「す、すごい……!」

 飛行能力を持たないバキシムはセブンを見下ろしながらも何もできない。

 お前のために傷つけられた、大勢の人間の痛みを知れ! セブンは怒りを込めてバキシムを放り投げた!

『岩石落とし!』

 頭の上の高さから地面に叩きつけられ、バキシムは自らの重量が敵になって大きなダメージを受けた。

 強い、本当に強い! セブンの猛攻に、ベアトリスやエーコたち姉妹は胸のすく思いを味わっていた。自分たちの大切なものを散々もてあそんでくれたヤプールの手先が手も足も出ずに叩きのめされている。

 そう、正義は絶対に悪には負けない。なぜならば、真の正義は決して悪に屈せずに、あきらめることはない。だからこそ、不可能を可能にする道も見えるし、負けることはないのだ。そのことを学び、心に思いやりの光を取り戻した姉妹たちには、希望の輝きがまぶしいくらいに見えている。

 

 セトラが、エフィが、キュメイラとディアンナが、イーリヤが笑顔を浮かべ、ユウリとティーナもこぶしを高く掲げて叫んでいた。

 エーコ、ビーコ、シーコもベアトリスと手を取り合い、彼女たちを見守るミシェルたちも瞳に強い輝きを宿している。

 

 もはや、ヤプールの卑劣な企みは完全に破れさった。二度と彼女たちの顔が憎悪と絶望に染まることはないだろう。

 バキシムよ、ヤプールよ、人間をなめるな。

 

 よろめきながら、それでも起き上がってきたバキシムは、最後のあがきとばかりにミサイルの全発射口をセブンに向けた。

 レーダーアイを通してセブンを睨むバキシムに宿るものは、セブンとは真逆の怨念と執念。負の方向へと極めた感情の力。

 だからこそ、ウルトラ戦士は負けるわけにはいかないのだ。

 今まさにミサイルを放とうとするバキシムに対し、セブンは腰を落として奴を見据えると、頭上に持つ宇宙最強の剣を投げ放った!

 

『アイスラッガー!』

 

 兄弟の中でもセブンだけが持つ宇宙ブーメラン。数々の凶悪宇宙人たちの野望を断ち切ってきたセブン必殺の刃が、白熱化しつつバキシムへと迫る。

 受けてみろ! ウルトラセブンの正義の一刀を。

 アイスラッガーはバキシムのミサイルを正面から爆砕しつつ突進し、愕然とするバキシムの、その首を一撃の下に切り飛ばした!

「ば、馬鹿な……ちくしょぉぉ……っ!」

 胴体から欠落し、ありうべからざる光景を最期に転がり落ちていくバキシムの首。

 しかし、それは自業自得というものだ。アルビオンからここまで、貴様が撒き散らしてきた悲しみの数々はつぐなわねばならない。

 首が落ちてなお、執念深く腕を下ろさないバキシムの胴体へと、セブンは腕をL字に組んでとどめの光線を叩きつけた。

 

『ワイドショット!』

 

 白色に輝くウルトラセブン最強の光線がバキシムの胴体を木っ端微塵に打ち砕き、首も炎の中へと飲み込み去る。

 終わった……ヤプールの手先として暗躍し続け、ハルケギニアを混乱させてきた悪魔は、ついに滅び去ったのだ。

「い、やったぁーっ!!」

 大勝利に、ベアトリスと姉妹たちのうちから大きな歓声があがった。

 ベアトリスとエーコたちは輪になって抱き合い、ユウリやティーナはガッツポーズをきめ、セトラやエフィたち年長組でさえも子供のように喜んでいる。

 ようやくこれで、彼女たちにまとわりついていたヤプールの影は一掃された。もはや誰も、彼女たちをしばることはない。

 ありがとうウルトラセブン! ほんとうにありがとう。

 手を振る彼女たちの熱いまなざしに満足し、セブンは彼女たちを見下ろしてゆっくりとうなずいた。

 空は晴れ、バキシムの絶命によってヤプールも異次元に逃げ帰って、青空は冬雲をちりばめせて美しく広がっている。

 セブンは大空を見上げ、大地を蹴って飛び立った。

「デュワッ!」

 空を舞い、赤い勇姿はどんどん小さくなっていく。

 ベアトリスたちはその背へ向けて叫ぶ。

「待ってセブン! いえダンさん、わたしたちまだちゃんとお礼もしてないのに!」

 風来坊から受けた恩、それは計り知れなく、返しても返しきれる大きさではない。

 でもセブン、ダンはそんなものは求めていなかった。彼女たちに笑顔が戻れば、幸せになるべき者が幸せになれば、それ以上のものは必要ない。

 手を振る人たちに見送られ、ウルトラセブンは去っていった。

 

 

 そしてしばらく……戦い終わった瓦礫の倉庫街の一角で、才人とルイズは馬に乗った風来坊ことモロボシ・ダンと会っていた。

「ウルトラセブン、危ないところをありがとうございました」

「私はたいしたことはしていない。重要だったのは君たちのがんばりのほうさ。それと、この姿のときは私はセブンじゃない。モロボシ・ダンと呼んでくれ」

「はい! ダンさん、お、俺、ずっとあなたにあこがれてました。どうして、あなたがこの世界に来てるんですか?」

 才人は興奮に震える声で尋ねた。ともかくも、それが一番知りたい。ハルケギニアと向こうの宇宙のあいだには、容易には越える事の出来ない空間の壁が横たわっているというのに、セブンはどうやってヤプールにも気取られずに来れたのか?

 すると、ダンは当然それを尋ねられると思っていたらしく、微笑を浮かべると明朗に答えた。

「なに、種も仕掛けもない単純な話さ。私は昨日今日来たんじゃなくて、行き来できる機会があったときに普通に来ていたんだよ」

 それは、今からおよそ一ヶ月ほど前にさかのぼる。

 当時、地球ではGUYSの手によりハルケギニアへの次元通路を作ろうとしていたのを覚えているだろうか。

 その計画を察知したヤプールが送り込んできた大怪獣軍団を迎え撃った、我らのウルトラ兄弟。

 しかしそれだけの激戦にあって、ただひとりだけ姿を見せなかったのがセブンだった。それは、彼は戦いが始まる前に、ウルトラ兄弟のリーダーであるゾフィーから、ある密命を受けていたからだったのだ。

「セブン、これから我々は地球を襲う怪獣軍団と戦い、しかる後に別宇宙へと旅立つ。しかしヤプールがまだどんな隠し球を持っているかわからん以上、ゲートを開けても全員が無事に渡りきれるとは限らない。そこで、お前は我々に先立って少しでもゲートが開いたら潜り抜け、万一のことがあったら向こうの世界でエースを助けてやってくれ」

 結果として、ゾフィーの危惧は現実のものとなった。

「私はゾフィーの指示に従い、怪獣軍団との戦いには加わらずに、わずかに空いたゲートをミクロ化して潜り抜けてきた。それから先は、君たちも知ってのとおりだよ」

「じゃあなんで、おれたちに名乗り出てくれなかったんですか?」

「敵をあざむくにはまず味方からという。私がいきなり君たちと行動をともにすれば、ヤプールは警戒して隙を見せないだろう。それに、私もまずは一人の人間としてこの世界がどんなものか見てみたかった。想像していたとおり、すばらしい世界だった」

 ダンは満面の笑みを浮かべ、ルイズも「ありがとう」と笑顔に応えた。

 ハルケギニアも地球となんら変わりない。心を持った人々が泣き、笑い、憎み、愛し合いながら懸命に生きている。それらはいびつで不恰好で矛盾に満ちているかもしれないが、宇宙のどこよりも可能性にあふれた美しくてかけがえのない世界だと信じているのだ。

 この世界は、守るべき価値がある。そう語るダンに、才人とルイズはうれしそうに笑顔を返した。

「それじゃあ、これからはおれたちといっしょに戦ってもらえるんですね!」

「いや、残念だがそれはまだできない」

「えっ! ど、どうしてですか!?」

 思いもかけないダンの言葉に、才人とルイズは驚いた。セブンがともに戦ってくれるなら、これほど頼もしい味方はいないが、どうしてだというのだろうか。

「君たちも知っての通り、我々M78星雲のウルトラ戦士はこの星の太陽の放つ光線の波長には適応できない。メビウスやヒカリのような特殊なアイテムがあれば別だが、おいそれと用意できるものでもないのでな」

「そうか! エースはだからおれたちと合体したんだった」

「そのとおり、この世界でウルトラマンとして戦うには、我々はどうしてもこの世界の人間の力を借りなくてはならない。さっきは非常用に光の国から持ち込んだ予備のプラズマエネルギーを使ったのだが、それはもうなくなってしまった」

 ダンはそう言うと袖をめくり、手首にはめたブレスレットを見せた。

「それは、ウルトラブレスレット……?」

 形状は似ていた。しかし、そこにひとつはめられているひし形の宝石は黒く濁っていて、一目で使い物にならなくなっているのはわかった。

「これはウルトラコンバーターの改良品で、変身に必要なエネルギーを一度分だけ蓄えておくことができる。しかし、まだまだ開発中の未完成品でな。将来的には三回分ほどまでプラズマエネルギーを充填するのを目指しているが、用意が間に合ったのは試作品のこの一つ分だけだった」

 才人とルイズは、ダンがセブンとして活動しなかったのはそれも理由だと思い当たった。たった一度しか変身できないのでは、おおっぴらに姿を現して動けるはずもない。

「その大切な一回を、わたしたちのために……」

 変身できるかどうかの大切さを身を持って知っているルイズは、惜しげもなくその一回を使って平然と笑っているダンに大きなものを感じて胸が熱くなった。

「気にすることはない。君たちの熱い思いで生まれた奇跡の重さに比べたら、このくらい比べるにも値しないさ」

 変身できないことには慣れていると、ダンは気落ちした様子など欠片も感じさせずに笑った。そしてダンは懐から一丁の銃を取り出すと、才人に投げてよこした。

「これは君のものだろう。返しておこう」

「よっ! こ、こいつはガッツブラスターじゃないか!」

 才人は目を見張った。それは以前、地球に帰る機会があったときに持ち帰ってもらっていたエネルギー切れのガッツブラスターだった。けれど、前に使い込んで汚れていたのはピカピカになり、まるで新品のようになって才人の手の中に納まっている。

「GUYSのリュウ隊長からの預かり物だ。君専用にと、エネルギーパッケージをトライガーショットと共用できるように改造したらしいぞ」

 ダンはさらに、GUYSのマークの印刷された小箱を才人に投げ渡した。中身は予備のエネルギーパッケージと、見たことのないパーツがいくつか入っている。説明書きも同封されていて、才人はなんとなく面白そうな予感がして、それを大切にしまいこんだ。

「ありがとうございます。大切に使います!」

 プレゼントから伝わってくる無言の期待感に、才人はこころよい緊張感を覚えていた。向こうも暇ではないだろうに、わざわざ愛銃を使えるようにして送り返してくれた。このガッツブラスターを使って、守るべき人を守りぬけというリュウ隊長の叫びが聞こえてくるようだ。それに、こいつをこの世界に残していってくれたアスカ・シンにいつか会って、返すためにも絶対に無駄にすることはできない。

 才人への贈り物をすませたダンは満足そうに微笑んだ。手綱を引くと、馬の背を才人たちに向けていく。

「さて、それではそろそろ私は失礼することにするよ」

「えっ! も、もう行っちゃうんですか!?」

「ここでの私の役割はもうない。それに、私はまだメビウスのように振舞うのは気恥ずかしいのでね。彼女たちにはよろしく言っておいてくれないか?」

 見ると、遠くからミシェルたち銃士隊や、エーコたち姉妹が駆けてくるのが見えた。ベアトリスはサリュアに背負われていて、聞こえないけれどなにかを叫んでいるようだ。探しているものは、いうまでもないだろう。

「では、エースによろしく頼むよ」

「ま、待ってください。どこへ行かれるんですか!」

「さてね、俺は風来坊だ。どこに行くかは風次第……だが、恐らく遠からざる未来にまた会うことになるだろう。私が命を託すにふさわしい誰かとめぐり合えたとき、そのときこそ共に戦おう!」

「はいっ!」

 二人は力強く答えた。ダンの力を求めている人は、この世界のどこかに必ずいるだろう。その旅立ちをさまたげてはいけない。

「はっ!」

 馬の腹に蹴りを入れて、ダンは駆けて去っていく。

 あっというまに小さくなっていき、その精悍な姿に才人は心からのあこがれと尊敬を込めて手を振り続けた。

 やがてベアトリスたちが追いついてくると、才人たちの背中に焦った声が響いてきた。

「ちょ、ちょっとあなたたち! あの方は!」

「……行っちまったよ。もう追いかけても遅いぜ」

 才人は遠くを見る眼を動かさずに答えた。馬の姿はもう豆粒のように小さくなっており、すぐに見えなくなるだろう。

「なんてこと! せめて一言くらい直接お礼したかったのに! なんで止めてくれなかったのよ」

「止められねえよ。あの人には、まだまだやることがあるんだ」

「そうね、戦士の旅立ちを邪魔しちゃいけないわ……見なさいよ、あの後姿を。最高にかっこういいじゃない」

 ルイズも才人に全面的に同意してつぶやいた。悔しいが、己の仕事を成し遂げて威風堂々と去っていく、あの背中ほど大きく偉大なものをかつて自分は知らない。この遠さのように、まだ全然追いつけないけれど、大人になるからにはああいう背中のできる人間になりたいものだ。

 才人とルイズの横に足を止めて、ベアトリスたちも去り行くダンを見送った。

 さようなら風来坊、いえモロボシ・ダン、あなたのことは決して忘れない。

 いつしか、ベアトリスやエーコたち姉妹の目には涙が浮かび、千切れんばかりに手を振って叫んでいた。

「ありがとうダンさん! わたし、エーコたちと本当の友達になれたよーっ!」

「あなたから教えられたことは一生忘れない! 本当にありがとう!」

「わたし、またこんな幸せな気持ちになれるなんて……ううん!」

「わたしたち、きっともっとずーっと幸せになってみせるから、がんばるからねーっ!」

 彼女たちだけでなく、セトラからティーナまでの姉妹も泣き笑いながら手を振っている。

 ありがとう、ウルトラセブン、わたしたちにまた生きる希望を与えてくれて。

 金色の髪や水色の髪が風にゆれ、片眼鏡が陽光にきらめき、怒鳴り声やはしゃぎ声がこだまする。

 彼女たちはもう悪魔ではない。ひとりひとりが立派な人間だ。そして、その自信はあの偉大で大きな目標となる背中を覚えている限り揺らぐことはないだろう。そう、太陽がある限り地上が光を失うことはないように。

 そのとき、一陣の風が吹き、ベアトリスの持っていたテンガロンハットを吹き飛ばした。帽子は風に乗り、見る見る空のかなたへと飛んでいく。

 だけども、不思議と誰もそれを追おうとはしなかった。きっと、この風はあの人のもとへと吹いていくのだろうから。

 悪魔の奏でる交響詩をハッピーエンドに変えて、降りる幕とともに消え行く飛び入り役者を、悲劇のヒロインとなるはずだった主演俳優たちは見送る。

 その幸せそうな姿を優しい笑顔で見て、ミシェルは才人の横顔にダンと同じものを感じていた。

「サイト……あの心の中の世界で、わたしたちを導いてくれて、ずっと守っていてくれた、あの優しい気配は……いや」

 それ以上は言うまいと、ミシェルは首を振った。真実がどうあれ、それは今言うべきことではない、むしろ秘すべきことだ。

 でも、才人もいつかダンのように大きな背中を持つ男になるなら、自分もその隣に立てるような立派な人間になりたいと思うのだった。

 

 

 風だけを友に、モロボシ・ダンは去っていく。

 馬のひずめの音が高く鳴り、街はもう遠く小さい。

 そこへ、風に乗って吸い込まれるように飛んできたテンガロンハットを受け止めて、ダンは馬を止めると振り返って言った。

「行くがいい若者たちよ。まだ誰も行ったことのないはるかな地平まで、君たちならどんな困難でも乗り越えていけるだろう」

 たとえ遠く離れても、風はベアトリスたちの希望に満ちた声を届けてくれた。もう心配はいらない、悪魔がどんな魔手を伸ばしてきても、彼女たちはそれを跳ね返せるくらいに強く成長した。

 そしてダンは、地球と同じくらいにこの星の人間が好きになった自分を感じていた。

「俺が命を託すに値する人間か……フフッ、案外本当に早く君たちとは再会することになるかもしれないな」

 思わせぶりな笑みを浮かべ、ダンは風を切る。

 あとは、エースが命を託したあの少年たちにまかせよう。再び馬を駆り、モロボシ・ダンはいずこへかと続く道を走り去った。

 

 

 明日、東方号は発進する。

 

 

 続く


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