ウルトラ5番目の使い魔   作:エマーソン

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第12話  WEKC初陣!!

 第12話

 WEKC初陣!!

 

 四次元宇宙人バム星人

 四次元ロボ獣メカギラス 登場!

 

 

 

「サイト!!」

 ルイズの絶叫とともに、火薬のはじける乾いた音が王宮の廊下にこだました。

 フリントロック式の、地球ではもはや博物館かガンマニアの間でしか見れないようなハルケギニアの銃でも、人一人殺すだけの力は充分にある。才人は、死を覚悟した。

「ぐはぁっ!」

 心臓に鉛玉を撃ち込まれ、残った命をわずかに吐き出す不協和音が響き、ルイズは思わず目を覆った。

 だが、断末魔を発したのは才人ではなかった。

「が……ば、ばかなぁ」

 口から緑色の血を吐き、ギーシュ達に銃を突きつけていたバム星人達の体が床に崩れ落ちた。

 ルイズがうっすらと目を開けたとき、そこには呆けたように立ち尽くしているギーシュたちと、自分の胸を撫で回して弾が当たっていないか確認している才人、そして、彼らの前に本物の戦乙女のように凛々しくたたずむ女騎士達の姿があった。

「勝ったと思ったとき、もっとも隙ができるか。覚えておこう」

「アニエス!」

 なんとそこには、あの銃士隊隊長アニエスが数人の銃士隊員達を連れて立っていた。

 

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「な、なんであなたが?」

「そ、そうよ。姿を見かけないからてっきりあなたたちも一緒に出撃していってたと思ったのに」

 さしものルイズやキュルケも突然現れたアニエスたちに驚きを隠せない様子だった。

「ふん、我等は元々王宮警護が任務だからな。普段はお前らの目に入らないところにいるのだ。だが、あんなに派手に銃声をこだまさせていれば、我らでなくとも気づく」

 まだ煙の尾を引かせている銃をしまいながら、アニエスは平然として言った。

「それよりも、こいつらはなんだ。傭兵が多数来るとは聞いていたが、妖魔や亜人の類が混ざっているなどとは聞いていないぞ」

「あっ、そうだった! ちょうどいいや、実は……」

 才人達は、ヤプールの手下が多数城内に入り込んでいること、そいつらが特殊な道具を使って怪獣をこの城に呼び寄せようとしていることを急いで説明した。

「それで、そのバム星人という奴らが、その機械を使ってザントリーユ城を襲った怪獣をここに呼び寄せようとしている。そういうわけだな?」

「ええ、信じて、いただけるでしょうか」

 才人とルイズは、息を呑んで、厳しい目で睨んでいるアニエスの目を見つめた。

「……よかろう、信じてやる。残った誘導装置は四つなんだな?」

「! アニエスさん!」

 ぱあっと、才人たちはギーシュ達も合わせて喜色を浮かべた。

 だが、アニエスの後ろに控えていた青髪の女性騎士が納得できない様子でアニエスに抗議した。

「隊長、こんな子供の言うことを真に受けるんですか!?」

「ミシェル、この怪人どもを見るだけでも城内に敵が侵入しているのは明らかだ。それに、このふたりは終始私の目を見て話していた。心に後ろめたいものがあるやつなら、目をそらすか、笑ってごまかすかするだろう。少なくとも、彼らはうそをついてはいない」

 隊長にそうまで言われると、副長である彼女に言えることはなにもなかった。

「それで、それと同じ物を探し出せばいいわけか。だが、敵が人間と同じ姿に化けているとなると、やっかいだな」

「いえ、ミス・アニエス、どうやらその心配はなさそうですわよ」

 キュルケが言うのと同時に、廊下の角からバム星人が三人飛び出してきて、こちらに銃口を向けた。

「死……」

 しかし、星人たちが引き金を引くよりも早く、気配を察知していたキュルケとタバサの杖が閃いていた。一瞬で炎と氷が怒涛の奔流となって星人たちを飲み込み、断末魔すら残させずに消滅させた。

「そう何回も不意打ちが成功するなんて思わないことですね」

 例によって服だけ残して消えた星人達に、キュルケは杖を指揮者のタクトのようにかざしながら言った。

 だがそのとき突然、城のあちこちから女性の悲鳴や兵士の叫び声が聞こえてきた。

 それだけではない、ガラスの割れる音や重いものが床に叩きつけられる振動、さらには銃声までもがあちこちから聞こえてきて、城の中だというのにまるで戦場のような喧騒になってきた。

「これは……」

 と、そのとき通路の先からひとりの銃士隊員が駆けてきて、息せき切ってアニエスに報告した。

「隊長、城のあちこちに突然怪物が現れて、城中が大混乱に陥っています」

「なんだと!?」

 それを聞いてアニエス達だけでなく、ルイズやギーシュ達も愕然とした。

「どうやら、正体がバレて強行手段に訴えてきたようですわね」

 キュルケが言ったとおり、叫び声は城中から聞こえてくる。城内に侵入していたバム星人全員が正体を現したとしか考えられなかった。

「なんてことだ、それで、姫様は?」

「謁見の間から先は我々が死守しております。敵の武装も我々と同程度なので突破される恐れはないと思われますが、敵が城中に散らばっていまして」

 アニエスはちっと舌打ちした。このトリステイン王宮はかなり広い、そこに敵が散らばっているとなると完全に掃討するのは容易ではない。

 けれどそのとき、それまで黙って話を聞いていたギーシュが突然薔薇の杖を高々と掲げて宣言した。

「そういうことなら僕達も黙って見ているわけにはいかない。国の平和を守る貴族の端くれとして、我らも戦うぞ、諸君!!」

 びっくりしたのはルイズ達である。今の今までギーシュ達のことを忘れていたから余計に驚いた。

 だが。

「足手まといだ、引っ込んでろ」

 と、アニエスに一刀両断されてしまった。

「し、しかし」

「銃を向けられて震えているような男はいらん。星人は我々が掃討する、お前らは黙って下がっていろ」

 ギーシュの反論にもアニエスはにべも無かった。だが、そのときキュルケが出てきて諭すようにアニエスに語りかけた。

「ミス・アニエス、言いたいことはわかりますけど、今はそんなことを言っている場合じゃないのではなくて? 夕刻にはザントリーユ城を破壊した敵がここにも来るのですよ。銃士隊だけでは手に余るのではなくて」

「ぬう、だが……」

「実力を心配しておいでなら、わたしとこの子は共にトライアングルクラス、そちらのぼうや達も、さっきみたいに不意を打たれたりしなければ遅れをとったりしませんわ。ダーリンだって剣の腕はすっごく立つし、ルイズは……ともかく、ここにいる全員あなたが思っていますより頼りになりますわよ」

「ちょっとキュルケ、なんでわたしのときだけ言葉を濁したのよ」

 目尻をすわらせているルイズから目をそらして、キュルケはアニエスに判断をうながした。

 アニエスは、少し考え込むそぶりを見せたが、やがて副長と顔を見合わせた後、ギーシュの顔を見て、ものすごく妥協した力の無い声で言った。

「仕方ない。今は猫の手も借りたい状況だ」

「藁にもすがりたい気分というところですか隊長、胸中お察しします」

「ちょ、ちょっと君達、いくらなんでもそこまで言うことないんじゃないかね?」

 アニエスとミシェルのあまりにも期待していない目に、フェミニストを自称しているギーシュはかなり傷ついた様子だった。

 だが、事態はそんな感傷を許しておくほど甘くはない様子だった。敵がどこかで爆発物を使用したのか床と天井が揺れ、パラパラと埃が舞った。

「時間が無い。ミシェル、駐屯所の兵全てで城の北方の敵を掃討、同時に敵の持つ誘導装置を探し出して根こそぎ破壊しろ!」

「はっ!」

 青髪の副長は、一瞬だけ見事な敬礼をすると、マントを翻して駆けていった。

「さて、こちらも急ぐぞ。ぼやぼやするな! すぐに人数を集めろ!」

「はっ、はい!!」

 アニエスに怒鳴られてギーシュ達は大慌てで水精霊騎士隊(WEKC)の皆を呼びに走っていった。

「我々も、できる限り城内の敵を駆逐する。城内の警備兵は不意を打たれて役には立たんし、近衛兵は王族方を守るために動けん。今トリステインを救えるのは我らだけだと思え!」

「はいっ!!」

 ルイズと才人もアニエスの剣幕には逆らえずに、思わず直立不動で返礼した。

 ただ、キュルケは従いながらもわずかに微笑していて、タバサのほうは聞いてはいたようだが顔色が変わらなかったので心境は謎だった。

 

 しかし、だからといって状況に変化はない。

 城の中は、人間に襲い掛かるバム星人と、それを迎え撃つ兵士、逃げ惑う人々などで混沌と化しており、そこに銃士隊とWEKCが横合いから殴りこむ形となった。

「ファイヤー・ボール!!」

「エア・ハンマー!!」

 WEKCの少年達は城への被害を抑えるために、攻撃魔法の中でも初歩の威力の低いものを選んで使用したが、人間と身体能力がさほど変わらないバム星人にはそれで充分であった。

 傷を負い、動きが止まったところにさらなる魔法の追撃、またはアニエスや才人が斬り込んでとどめを刺した。

 もちろん、それと並行してメカギラスの誘導装置の探索も行われた。あるものは星人が隠し持っていたり、あるものは部屋の隅の花瓶の横に立てかけてあったりしたが、見つかり次第次々に破壊されていった。星人としては、どうせハルケギニアの人間にはわからないだろうと隠すこともせずに適当に置いて回ったのだろうが、それが災いして銃士隊やWEKCは苦労せずに誘導装置を発見できていた。

 

 そしておよそ三十分後、城内のバム星人達をほぼ掃討し終わった銃士隊とWEKCの少年達は、中庭に集合して戦果を報告しあっていた。

「見たかい僕の華麗な戦いぶりを、銃を向けてきた星人へ向かって三体のワルキューレで、見事な連携での同時攻撃、うーんまるで芸術だったね」

「だから、それは僕が相手の気をそらしてたからだろうが」

「まったくだ。そこいくと僕なんか、敵中に突貫してこうバッタバタと……」

 ギーシュ達は、自らが倒した星人の数を得意になって自慢しあっていた。それは、夏の森で採った虫の数を競い合う子供達にも似ていたが、星人の切り札であるメカギラスの侵攻を止めなくては勝利ではない。彼らは自分の戦果に酔うあまりそれを忘れていた。

 しかし、戦闘のプロである銃士隊は違う。

「隊長、城北方の敵は完全に駆逐しました。隊員四名が負傷して医務室に運ばれましたが死者はなし。王女殿下他王国首脳陣の方々も全員無事です」

 副長ミシェルが見事な敬礼をしてアニエスに戦果報告を行った。

「ご苦労ミシェル。こちらも敵は全員撃破した。それで、例の装置とやらは?」

「はっ、衛士隊の駐屯所で一つ、武器庫で一つ発見、それぞれ見つけ次第破壊しました」

「それらは恐らく使用人に化けたやつが仕掛けたものだな。それで二つか、おい少年、こちらで発見したものは?」

 才人はアニエスに言われると、えーとと指を折って数えた。

「えーと、こっちは食堂で見つけたやつと、最初にメイドに化けてたやつが持っていた分……計四つ、ひとつ足りない!! 星人は五つ仕掛けたと言っていたんだ」

「なに!? ちっ、しかしもう城内はくまなく探したぞ。まだどこか見落としているところがあるのか」 

 すでに城のあらゆる箇所は捜索した。また、星人の残した衣類や持ち物も残らず調べた。ほかに見落としている箇所があるのかとアニエスは必死で考えた。

(武器庫、駐屯所、重要区画はすべて調べた。奴らは最近雇われた使用人か、今日入ってきた傭兵達に化けていたから城の中枢には入れないはず。ならば……他に部外者が入れるような場所は)

 頭の中に城の見取り図を浮かべて、必死に考えたがどこも思い当たる節が無い。かといって極めて目立つ形をしている誘導装置を見落としたとも考えがたい。

 アニエスは思いつく可能性をひとつひとつつぶしていって考えていたが、考えているうちにいまだに事態の深刻さを理解せずに自慢話を続けているギーシュたちの声が耳に障り、思わず怒鳴りつけていた。

「うるさいぞ!! 静かにしろ、そんなに騒ぎたいなら牢にでも叩き込んでやろうか!!」

 とたんに、少年達は凍りついたように静かになった。

「まったく……ん、まてよ、牢……ミシェル、牢は調べたか?」

「はい、今日の混雑のなかで起きた揉め事で投獄された傭兵が数名おりましたので、念のために、しかし念入りに調べましたが、ありませんでしたが」

「いや、西の塔の牢がまだ、ある」

「西の塔ですか? しかしあそこは貴人用の特別房です。傭兵や使用人がうかうか入り込める場所ではありませんが」

「確かにそうだ。だが、もし傭兵の中にメイジが紛れていたらどうだ?」

 それを聞いてミシェルははっとした。メイジはほぼ全てが貴族だが、中には地位を失って傭兵に落ちたり、家中で立場の低い者が自ら身を落としたりすることがある。そんな者達はその反動からかプライドが高く、罪を犯しても平民と同じ獄舎につながれるのを頑なに拒む者もいる。そんなとき、看守はやむを得ず貴人用の牢を使うこともあるという。

「急げ! 西の塔だ」

「はっ!」

「あ、待って!! わたし達もいくわ!」

 アニエスとルイズ達は全速力で西の塔へと駆け出した。あっけにとられたギーシュ達は置いていかれた。

 

 すでに太陽は大きく傾き、塔は紅く染められている。

 バム星人が予告した時間は夕方、彼らは間に合ってくれと祈りながら、急な塔の階段を駆け上がり、入り口の扉を蹴破った。

「遅かったな、人間ども」

 そこには、やはりメイジの傭兵に化けていたのだろうしゃれた服を着た星人が、奴に倒されたのだろう看守達を足蹴にしながら待っていた。

「動くな、命が惜しければ、誘導装置を出せ、貴様が持っていることはわかっている」 

 アニエスとミシェルは銃を星人に向かって構えた。

「ふふ、これのことかな?」

 星人は動じるふうもなく、懐から誘導装置を取り出して右手で高くかかげた。

 すかさず、アニエスの銃が火を吹き、誘導装置を撃ち抜く。誘導装置は星人の手から取りこぼされると、床に落ちて一瞬スパークした後、煙を吹き上げた。

 しかし、星人は慌てるそぶりも見せず、むしろ笑いながら言った。

「それで勝ったつもりか」

「なに!? 貴様らの持ち込んだ誘導装置はこれですべて破壊した。貴様らの負けだ!」

「くっくっくっ、確かにもう誘導装置でメカギラスをコントロールすることはできない。本来ならばメカギラスをこの空間に呼び寄せた後、五つの誘導装置が動かすはずだったのだが、万一すべての誘導装置が事前に破壊された場合は、最後に発信があった場所の周辺を無差別に完全破壊するよう切り替わることになっている。城だけ破壊してやるつもりだったが、こうなれば街ごとすべて焼き払ってくれるわ!!」

「馬鹿な!! 貴様もいっしょに吹き飛ぶぞ」

「かまわんさ、どうせ任務にしくじった我に帰る場所はない。覚悟しろ、もう誰にもメカギラスは止められん!! ふはははは!!」

 星人は哄笑しながら、左手に着けていた腕輪の宝玉を押し込んだ。すると、腕輪からピッ、ピッとまるでカウントするような電子音が流れ、それを聞いた才人は思わず絶叫した。

「みんな下がれ!! 自爆する気だ!!」

「なに!?」

 アニエスとミシェルは、踵をひるがえととっさに階段へ転がり込み、才人もルイズを抱きかかえると階段に飛び込んだ。そしてその直後、星人の体は大爆発を起こし、牢屋ごと粉々になって消滅した。

「くぅ、皆無事か?」

「大丈夫です、隊長」

 もうもうとした煙の中からアニエスとミシェルの声が聞こえ、それを聞いた才人は暗闇に向かって返事した。

「俺達も……ん?」

「あんた、どこ触ってるのよ?」

「へ? 腹じゃない、の……か!?」

 なんと、才人の右手はルイズを抱きかかえた拍子に、その胸をしっかりと握り締めていた。

 才人の顔から血の気が引いた。

「ああああああ、あんた、つつつつ使い魔の分際で、ご主人様の胸をつかんで、しししし、しかもそれが腹ですってえ!?」

「お、落ち着けルイズ、に、人間誰にでも間違いはあるから。そ、それに今そんな場合じゃないだろ」 

「安心なさい。二秒よ」

「へ?」

「二秒で、地獄に落としてやるわあ!!」

 夕焼けの空に、二度目の大爆発とともに城中に響き渡るほどの断末魔の叫びがこだました。

 しかし、幸か不幸か才人はかろうじて死んではいなかった。

「あーあー、真っ黒こげになっちゃって。生きてる? ダーリン」

「……今回は過去最大級、記録更新間違いなし」

 遅れて駆けつけてきたキュルケとタバサが、なかば階段にめり込んでピクピクと震えている才人を引きずり出して介抱すると、やがて才人は目を覚ました。

「ここは、天国?」

「あいにくまだこの世よ。しっかしルイズ、胸を触られたくらいでそこまで怒らなくていいじゃない。減るもんじゃなし、あ、あんたの場合は減るものが最初からないか」

「ゼエ、ゼエ……お、お黙んなさいよ。これでもね、ずいぶんと手加減してあげたほうなんだから」

 ルイズは荒い息をどうにか抑えて言ったが、加減したとは信じがたい。

 すると、巻き添えで爆発に巻き込まれていたアニエスとミシェルもすすだらけの顔を拭いてようやく起き上がってきた。

「な、なんという破壊力だ。塔の先端が無くなってしまったではないか……ミシェル? おいミシェル大丈夫か?」

「はは……死んだ父さんと母さんが、お花畑の先に見えました」

「ミシェルしっかりしろ! まだそっちに行っちゃいかん!」

 アニエスは慌てて放心状態のミシェルの肩を揺さぶった。

「はっ!? ここは、天国?」

「安心しろ、まだ現世だ……それより、星人の言っていたことが本当だとすると……」

 だが、アニエスが言い終わるより早く、西の塔からさらに西方に三百メイルほど離れた空に突然歪みが生じ、そこからまるでにじみ出るように銀色の巨大な鉄の竜が姿を現した。

「あれは!?」

 全員の目がその鉄の竜に釘付けになる。竜の全長はおよそ六十メイル、直立し、尻尾を長く伸ばした姿は、それが恐竜型怪獣そのものだということを示していた。

「四次元ロボ獣メカギラス、とうとう来たか」

 才人が言うのと同時に、メカギラスは錆びた歯車のような鳴き声を上げ、ギクシャクと腕と足を動かしながら城に向かって前進を始めた。

「こっちに向かってくるわよ!」

「まずい、全員退避!」

 そのとき、メカギラスの頭部からミサイルが発射され、城壁に穴を空け、城の屋根の一部が吹き飛ばされた。城のあちこちで兵や使用人の悲鳴や怒号が上がり、砕けた煉瓦やガラスの破片が宙へと飛び散る。

 さらに、城のあちこちで火の手が上がり始めた。守る者のいない城は完全に無力でしかなかった。

 だが、このまま星人のおもわく通りにこの城を破壊されるなど許すわけにはいかない。

 ルイズは階段を駆け下りるアニエス達とは逆に、破壊された塔の先端まで駆け上がり、才人を背にメカギラスに杖を向けた。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、この国に仇なす者よ。これ以上の狼藉はこの名にかけてわたしが許しません!」

 高らかなルイズの宣戦布告。そしてそれに答えるように、ふたりのリングも光を放つ。

 次の瞬間、メカギラスの放った破壊光線が、ふたりのいる塔の先端に直撃した。

「ルイズ! ダーリン!」

 階下からふたりを追ってきたキュルケとタバサの目の前で、塔の頂上は今度こそ完全に粉砕され、ふたりの体は天空へと舞い上げられた。

「キュルケ、危ない」

「お前達、早く逃げないか!!」

 愕然とするキュルケの耳に、タバサとアニエスの声が虚しく響く、そしてメカギラスはそのミサイルの照準を今度はキュルケ達に向けて合わせた。

 

 だが、はるか上空へと飛ばされたふたりは、眼下にメカギラスと城をのぞみながら、まるで空を舞うかのように引き合い、夕日のシルエットが重なるとともに、その手をつないだ。

 

「「フライング・ターッチ!!」」

 

 夕闇照らす銀色の光、合体変身、ウルトラマンA!!

 

 

「きゃあああっ!!」

 メカギラスの放った数十発のミサイルが塔へと迫る。それが命中すればこんな塔などそれこそ跡形もなく粉々になってしまうだろう。キュルケは思わず目を覆い、タバサも無念に唇を噛み締めた。

 だが、ミサイルが着弾する寸前、塔とミサイルの間に突然巨大な影が立ちはだかった。

「シュワッ!!」

 ミサイルは、次々と巨体に命中するが、まるで山のようにそびえ立つその巨体を揺るがすことはできない。

 そして、恐る恐る目を開いたキュルケ達の目の前には、夕日を浴びてその身を金色に染めた光の戦士の姿があった。

「ウルトラマン……A!!」

「エースが、また助けてくれた……」

 キュルケとタバサにとっては四回目。

「ウルトラマンA……本当に、また来てくれたのか」

「すごい……」

 アニエスとミシェルにとってはベロクロンとの戦い以来、二回目のエースとの出会いだった。

 ウルトラマンAは、彼女達の無事を見届けると、かん高い機械音をあげて迫り来るメカギラスへ向かって構えをとった。

「デヤッ!!」

 

 

 銀色の巨人と銀色の巨竜、トリステイン王国の命運を賭けて、燃えるような夕日を背にした決戦が始まろうとしている。

 

 

 続く

 

 

 

 

 

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