ウルトラ5番目の使い魔   作:エマーソン

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第11話  危機迫る!! トリステイン王国最後の日

 第11話

 危機迫る!! トリステイン王国最後の日

 

 四次元宇宙人 バム星人 登場!

 

 

 ルイズと才人はウルトラマンAに、バム星人が誘導装置を使って、ロボット怪獣メカギラスをトリステイン城に呼び寄せようとしていることを教えられた。

 メカギラスは、かつても地球防衛チームUGMを翻弄し、ウルトラマン80を苦戦させた強力な怪獣だ。そんなものに襲われたらトリステイン城はひとたまりもなく破壊されてしまう。

(装置がこれ一個とは限らない。急いで探すんだ!)

(わ、わかった)

 エースはふたりを叱咤すると、再び心の中へと戻っていった。

 

 

「ちょっと、ルイズ、ダーリン、急に黙り込んだりして、どうしたの?」

 ふたりはキュルケの声を聞いてはっとした。エースとの会話はふたりの心の中のことなので、外から見ているキュルケたちには、ふたりがただ立ち尽くしているようにしか見えないのだった。

「はっ、あ……ごめん、ちょっとこれのこと思い出してたもんで、実は……」

 才人はエースに聞いたことをキュルケたちにもわかるように噛み砕いて説明した。

「それで、その妙な機械がザントリーユ城を襲ったやつを呼び寄せるためのものだっていうの?」

「ああ、だけどこれ自体はたいして強いやつじゃない。きっと他にも無数にこれが仕掛けられている可能性がある……と思う」

 才人はそこまで言うと発信機の横についているスイッチを切った。

「でもねえ、急にそう言われても、そんなもので怪獣を呼ぶなんて信じられないわよ。特にこれといって魔法がかけられているわけでもないようだし。ね、タバサ?」

「……」

 無理も無い、魔法が万能のこのハルケギニアでは電波の存在どころか電気のことすら解明されていない。魔法の助けを借りない道具という概念自体がそもそも無いのだ。逆に言えば、地球で「これは魔法の杖です」と言って信じてもらえるかということに等しい。

 才人とルイズはもどかしさを感じたが、エースに聞いたということを明かすわけにもいかず、かといってふたりを説得している時間も無かった。

「わかった。けど、この城の中に敵が入り込んでいることは確かだ。俺達はこいつが他に仕掛けられてないか探すから、お前らはみんなや城の人に知らせてくれ」

「えっ? ってルイズ、あなたはこんな話を信じるの!?」

「信じるも何も、ヤプール相手にこれまで常識の範疇ですませられることがあった? それに、こいつは言いつけを破ってほいほい女の子のところに行っちゃう大嘘つきだけど、少なくともヤプールに関することは嘘をついたことはないわ」

 キュルケはルイズの態度に驚いたが、これはルイズもエースの話を聞いていたからに他ならない。

「と、言う訳で、俺達は装置を探して根こそぎ破壊する。これが無くなれば敵も攻めてこれなくなるかもしれない」

 才人は、まだ困惑しているキュルケにそう言い残すと、すでに杖を取り出して待っているルイズを振り返った。

 

 だが、そのとき。

「そうはさせぬぞ」

 声がすると同時に、彼らのいる通路の両側から鎧姿の男達がぞろぞろと出てきて、四人にフリントロック式の銃を向けた。

「こいつら、わたしたちと同じく置いてけぼりを食らった傭兵部隊?」

「いや、どうせこいつらもバム星人の変身だろ。さっさと正体現せよ!」

 才人が怒鳴ると、傭兵たちのリーダーと思われる男がぶるっと首を振り、黒々とした星人の正体を現した。

「よく我らの正体に気づいたな。武器を捨てろ、この距離なら銃のほうが速いぞ。それに、この数に狙われては逃れる術もあるまい」

「ちっ! 仕方ない……」

 星人の数は片側に八人、狙っている銃口の数は二丁構えている奴も合わせて二十五門。

(ガッツブラスターでも、この数じゃ……)

 才人はガッツブラスターを見えないように懐に忍ばせたままデルフリンガーを、三人は杖をそれぞれ投げ捨てた。

「利口だな。人間にしては上出来だ」

「やっぱり、お前達の狙いはこの城か?」

「ふふふ、そのとおり。ヤプールはこの世界を侵略した暁には、この国を我らに割譲してくれることを約束してくれた。こんな城、我らがスーパーロボットを持ってすれば破壊するのはたやすいが、余計な邪魔が入ると面倒なのでな。兵士たちははるかかなたへおびきださせてもらった。この城のあちこちに仕掛けた合計五個の誘導装置がメカギラスをこの次元に呼び寄せ、無防備な城はあっという間に人間どもの見ている前で灰となる。人間どもは絶望し、我らはたやすくこの星を征服できるだろう。はははは」

 星人は武器を捨てさせたことで勝利を確信したのか、実に気分よさそうに聞いてもいないことまでぺらぺらしゃべってくれた。まるで酒場の酔っ払い親父だ。

「そうか、その誘導装置を仕掛けるために、外部の人間が大勢入り込めるこの日を選んだわけか。だが、なんでわざわざ発信機を仕掛けるような真似をした? 以前のメカギラスは自由にどこにでも出現していたはずだろう」

「ふん、あいにく我らは人手が足りなくてな。自動コントロール装置までは手が回らなかったのだ」

 星人は痛いところを突かれたのか、開き直ってふんぞり返って答えた。

 実はメカギラスはバム星人の完全な自作ではなく、かつてもさらった地球人を働かせて組み立てるという宇宙人らしからぬセコイ方法で作られていた。

 矢的隊員もこの経緯で異次元に連れさらわれたわけだが、その結果星人の基地は矢的隊員によって壊滅している。それを反省して今度は星人だけで組み立てたのだろうが、技術力はあっても、工業力がないために、せっかくの超兵器も完全なものとはいかなかったようだ。

「だが、それでもパワーは以前の物に勝るとも劣らん出来だ。夕方には、誘導装置から発せられた時空波が、この城へメカギラスを呼び寄せる。そうなったらこの国は終わりだ」

「夕方!? あと一時間もないじゃない!」

「ふん、心配には及ばんよ。どうして我々の計画に気づいたのか知らんが、貴様らを生かしておくわけにはいかん、ここで死んでもらうぞ。なに、すぐに城の人間全員あとを追わせてやるさ」

 星人たちは構えている銃の引き金に力を込めた。

(くそっ、変身さえできればこんな奴ら)

 ウルトラマンAに変身できれば、バム星人ごとき一掃できる。しかしここにはキュルケとタバサがいる。変身するところを他人に見られるわけにはいかない。

 こうなれば、一か八か彼女達をかばいながらガッツブラスターを乱射してやろうかと思ったそのときだった。

 

「ワルキューレ!!」

 

 なんと、突然星人と才人の間の床が盛り上がり、青銅製の人形となって銃口の前に立ちふさがった。驚いたのは星人達である。とっさに銃を撃つものの、前込め式の旧式銃の威力では分厚い青銅の壁を突破できず、跳ね返されて壁や天井に次々とめり込んだ。

 もちろん驚いたのは才人たちも同じであるが、彼らはそれの正体を知っていたので、すぐさま我に返ることができた。

「今だ!!」

 才人が叫ぶと同時に四人はそれぞれの武器へと飛びついた。

 星人達は慌てて銃を彼らに向けなおすが、当然単発銃から二発目の弾は出はしない。侵入するときに怪しまれないために、この世界の武器しか持ってこなかったことが完全にあだとなっていた。

「おお、ようやく出番か相棒!! もう使ってくれないものかと思ってたぜ!!」

「言ってる場合か、いくぞデルフ!!」

 才人はデルフリンガーを鞘から引き抜いて星人に袈裟懸けに斬りつける。

「ファイヤーボール!!」

「ウィンディ・アイシクル!!」

 キュルケとタバサも杖を拾うやいなや、自身のもっとも得意な呪文を星人に叩きつける。たちまち八人の星人が炎に焼かれ、氷弾に貫かれて消滅していく。

 しかし才人は三人の星人を倒したものの、銃を捨てて剣を取り出した星人五人に囲まれて苦戦していた。

 ただし、そのおかげで星人からノーマークにされていたルイズが、杖を一番後ろにいる星人に向ける。

 今だに成功せずに、普段は才人を吹き飛ばすくらいしか役に立たないルイズの魔法だが、破壊力だけは下手な攻撃魔法より強力だと自信があった。

「錬金!」

 爆発が、食らった星人だけでなく周辺にいる星人まで巻き込んで吹き飛ばす。

「相棒、今だ!!」

「おおおっ!!」

 才人の左手のガンダールヴのルーンが光る。一閃、二閃、三閃、瞬きするような刹那の間に、デルフリンガーが、上、下、斜めから次々と星人を切り裂き、五人目の星人は鎧ごと胴体を真っ二つに切り裂かれて倒された。

「ば、馬鹿な……」

 断末魔を残して、バム星人達は消滅した。

「ふぅ、助かった……しかし、今の魔法は確か」

 青銅の人形、才人にとって忘れようの無い魔法だった。

「やあ諸君、無事でなによりだったね!!」

「やっぱり」

 通路の奥から現れたのは、想像どおりのギーシュと大柄な少年と眼鏡をかけた少年だった。ふたりともついさっき創立されたばかりの水精霊騎士隊(WEKC)の隊員で、名前は才人の記憶では、大柄なほうがギムリ、眼鏡をかけてるほうがレイナールだったと記憶している。

「ギーシュ、どうしてお前が?」

「君達の帰りがあんまり遅いからちょっと様子を見にね。そうしたら君達が怪しい連中に絡まれてたから捨てておけずにね。感謝したまえよ、この距離でワルキューレを作り出すのはけっこう大変だったんだ」

「そうだったのか、ありがとよ。おかげで命拾いしたぜ」

「なんの、平民や女性を守るのが貴族の使命だ。礼には及ばないさ、はっはっはっ」

 感謝してほしいのか、礼はいらないのかどっちなんだと才人やルイズは思ったが、例によって、薔薇の花の形の杖を得意そうにかざしながら笑っているギーシュを見たら突っ込む気もうせてしまった。

 するとそれまでギーシュの右と左で呆れたように見守っていたレイナールとギムリが、本当に呆れたように彼に言った。

「なに言ってるんだ。様子を見に行こうと言い出したのは僕で、彼らを見つけたのはギムリじゃないか」

「そうだぞ。それに第一、怪人どもを見たとたんに尻込みして逃げ出しかかってたのはどこの誰だ、ワルキューレだって、俺達が花びらをうまく見つからないように飛ばしたからできたんだろうが」

「ぐ、き、君達、こういうときはそういうことは伏せておきたまえよ」

 抗議すれどもすでに遅し、さっきまで感謝の念であふれていた(ギーシュにはそう見えた)才人たちの顔は、すっかりしらけムードに陥ってしまっていた。

「ぬぬ……い、いや諸君、今はそんなことを言っている場合ではないだろう。先程の怪人達との会話は聞かせてもらった。今はトリステインの一大事じゃないのかね!」

「はっ! そ、そうだった。早く誘導装置を解除しないと大変だ!」

「そうだろうそうだろう、思い出してくれてよかった」

 お前が余計なことを言ってたせいだろうが、全員が激しく思ったが、理性を総動員して押さえ込んだ。

「それで、どうするの?」

「手分けして探そう。そんな小さなものじゃない」

 才人は窓から空を見上げた。日はだいぶん傾いてきている、もはや時間がない。

「よし、僕らも全員でその誘導装置とやらを探すぞ、WEKCの初仕事だ。この城を壊させるわけにはいかない!」

「ああ、じゃあ俺達はこっちを……ギーシュ、後ろだ!!」

「え?」

 だが、ギーシュが振り向くより早く、彼とギムリとレイナールの後頭部に冷たいなにかが押し当てられた。

「動くな、こいつらの命が惜しいなら武器を捨てろ」

 なんと、いつの間に現れたのか、再び別のバム星人達がギーシュ達の後ろから銃を突きつけていた。

 なぜ気づかなかったのかと、その場の全員が思ったが、星人たちの服装を良く見たら合点がいった。今度は使用人に化けたものだったために、先程までの傭兵に化けた星人たちの鎧姿で動く音に耳が慣れてしまっていたから、革靴の柔らかい足音に気づけなかったのだ。

「ギーシュ、くそっ! 人質をとるとは卑怯な」

「ふはは、あれで全員倒したと思ったのが運のつきだ。冥土の土産に覚えておくがいい。勝ったと思ったとき、人間はもっとも隙ができるのだ」

 才人たちは歯噛みをしたが、星人に卑怯は常套手段だ。過去には「卑怯もラッキョウもあるものか!」と豪語した星人もいたくらいだ。

「ひ、ひょくん、ぼ、僕に、かかか構わずに、こいつらをやってしまえ。き、貴族たる者、人質にとられるくらいなら、し、しし、死を選ぶ」

「ギーシュ、まったく、そういうわけにもいかねえだろう。それに、震えながら言っても説得力はねえぞ」

「サ、サイト……き、君ってやつは」

 泣いて感激しているギーシュにため息をつきながら、才人はデルフリンガーを放り出した。

「ハハハ、聞き分けのいいやつよ。なら、貴様から先に死ね!」

「なに!?」

 星人は、隠し持っていたもう一丁の銃を才人に向けた。

「サイト!!」

 ルイズの絶叫に一瞬遅れて、乾いた音が城内に響き渡った。

 

 

 続く

 


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