特に一人、なんとか絡めたいキャラクターがいるのですが、うまくできたか不安です。
あと今回、ネギファンの方にはちょっと厳しい場面もあるかもしれませんので、ご注意ください。
では、第3話をお楽しみください。
Side アリア
ネギ兄様が教室の扉を開くと同時に、黒板消しが落ちてきました。
兄様が無意識に張った障壁で一瞬止まるも、ほぼ同時に黒板消しを手に取ることに成功。
しかしその勢いで兄様を追い越してしまいます。
続いて床に張ってあるロープを足に微細な魔力を通すことで切ります。
傍目にはただ足で踏み抜いたように見えるはずです。
続いて飛来する玩具の矢を左手でまとめて掴み、水の入ったバケツは水を落とさないように右手で受け止め、床に置きます。
これでどうやら、仕掛けは終わったようです。
「・・・ふぅ」
・・・気がつけば教壇の上、生徒のみなさんが呆然と私を見つめています。
何人かは、別の感情のこもった視線を私に投げかけていますが・・・とりあえず、挨拶をしませんと。
「・・・お初にお目にかかります。本日よりこのクラスの副担任になりました、アリア・スプリングフィールドと申します。未熟者ではありますが、兄ともども、よろしくお願いいたします」
深々と、頭を下げます・・・・・・はっ、今日3回目ですか・・・。
そんな風に少し落ち込んでいると、未だに扉で呆然としている兄様が目に入りました。
「・・・兄様? 兄様も自己紹介をしてくださいな」
「あ、うん!・・・えっと、今日からこのクラスの担任になりました。ネギ・スプリングフィールドです。担当教科は英語です。よろしくお願いします」
ぺこり、と頭をさげる兄様。
クラスの方々は一瞬沈黙しましたが、次の瞬間には。
「「「「かわいい~~~~!!!!」」」」
なかなか元気なクラスのようですね。
あ、明日菜さんと木乃香さんもいますね、目礼すると、軽く手を振り返してくれました。
いい人たちです。
その後は、クラスの方々が口々に質問を口にしますが、統一性が無いせいか効率が悪いですね・・・。
「はいは~い、それじゃクラスを代表して、この朝倉和美が質問させてもらうよ! えっと、まず年齢は?」
「「数えで10歳です」」
「追記するなら、飛び級で大学は出ていますよ」
嘘ですがね。
「ファミリーネームが同じだけど、兄妹なの?」
「「はい」」
「失礼だけど、あんまり似てないね?」
「えっと、僕は父親に似ていて・・・」
「私はよく母に似ていると言われます。加えて言うなら、二卵性の双子ですから」
・・・髪の色は後天的なものですが。
「では最後に、このクラスで気になる人はいますか?」
明らかに、兄様向けの質問ですね。
兄様は困惑したように眉を寄せて、最後にはう~んと考え込んでしまいました。真面目ですね。
ちょうどその時、授業開始のチャイムが鳴りました。
「・・・時間ですので、質問はこれで終了させていただきます。兄様、授業を」
「え、あ、うん。みなさん、教科書を開いてください!」
中途半端に終わってしまったせいか、不満げな表情をしている方が何人かいます、なだめつつ授業に入ります。
兄様が教壇に立ち、私は教室の後ろに下がります。
その途中で、ある生徒の前で立ち止まります。
「絡繰さん」
「はい、なんでしょうか? アリア先生」
絡繰茶々丸さんです。緑色の髪をした、可愛らしい女性です。
そして、私の目的の人の、関係者でもあります。
「貴女の主に伝言をお願いします。明日の夜にでも時間を頂けますか? 有益な情報を提供させていただきます。と、そうお伝えください」
「・・・・・・わかりました」
おそらく、意図は伝わるはずです。
絡繰さんの様子に、私は頷くと、主のいない机に目をやった後、今度こそ教室の後ろに下がりました。
Side アスナ
英語の授業が始まって数十分、あのガキンチョの授業が続いている。何を言っているかはなんとなくわかるんだけど、黒板に書いてあることはほとんどがわからない。
英語って苦手なのよ・・・他のは・・・苦手だけど。
「えっと、つまりここは過去形ですから・・・」
ガキンチョが教室内を歩きながら、教科書の英文を流暢な英語で読みあげている。
さすが外国人だけあって、えらく堂に入っている・・・気がする。
でも子供が先生とか、やっぱりおかしいわよ!
高畑先生も担任やめちゃうし・・・。
そこで、ふと後ろの、妹の方を盗み見る。
あのガキンチョの妹とは思えないほど、大人びた女の子。
さっきだってガキンチョのことをフォローしてたし・・・というか、クラスメイトの仕掛けたいたずらを全部突破するとは思わなかった、正直言って驚いた。
思えばあれも、あのガキンチョ・・・お兄さんをかばってたみたいだし・・・。
さっきの騒動の中で、お兄さんが迷惑をかけたと、謝ってきたし・・・。
(お兄さん想いな、いい子なのね)
うんうん、と、なんとなく頷いてみる。
(担任はやめちゃったけど、高畑先生がこのクラスに残れるようにもしてくれたし・・・)
それだけでもう、私の中での妹さんの評価はうなぎ上りなのである。
それに比べて・・・と、ガキンチョの方を見ると。
「えっと、じゃあこの訳を・・・」
やば! 当てられたくないので、慌てて目をそらす。
間違っても私を当てるんじゃないわよ!
「神楽坂さん、お願いします」
ってなんで当てるのよ!?
「ちょっとなんでアタシなのよ!? 出席番号とか関係ないじゃない!」
「えっと・・・朝のお詫びを兼ねて・・・」
お詫びになってないわよ!
後ろの方で、誰かが溜息をつくのが聞こえた。
絶対妹さんだろう。
根拠はないけどそんな気がする。
「要するに、わからないんですわね。では委員長のわたくしが・・・」
横から、委員長であるあやかが口を出してきた。
馬鹿にするような口調に、思わずむっとしてしまった。
これくらい、わたしだって!
「わ、わかったわよ、訳すわよ! えっと・・・」
訳そうとしたけど、やっぱり全然わからなかった
そんな私に、ガキンチョは・・・。
「明日菜さん、英語だめなんですねぇ?」
「なっ!?」
「明日菜さんは英語だけでなく、体育以外が苦手なんですのよ」
ガキンチョとあやかの声に、クラスメイトたちが笑った。
悔しくて、拳をにぎりこんだ。でも、私が勉強が苦手なのは事実だった。
だけど・・・。
「何をやっているのでしょうか、兄様・・・?」
その時、私の横から呆れたような声が聞こえた。
Side アリア
「何をやっているのでしょうか、兄様・・・?」
読者として原作を読むのと、実際の現場で見てみると、感じる気持ちは違うものです。
私の感情が伝わったのか、先ほどまで笑っていたクラスの方々が、静まり返っています。
「え、な、何って・・・」
「兄様は今、教師としてしてはならないことをしました」
私の言葉に、困惑したような顔をするネギ兄様。
・・・本当にわからないのですね。
純粋もここまで来ると害悪でしかありませんね。
若干、苛々します。
精神年齢的に。
「・・・たしかに、明日菜さんの成績は現状、お世辞にも良いとは言えません」
横にいる明日菜さんが、身を固くする雰囲気が伝わってきた。
「でも、明日菜さんは努力ができる方です。事実、体育の成績は良いのです。一つでも得意なことがあれば、頑張ることの大切さを知っているはずなのですから。そんな方を捕まえて、だめとはなんですか」
「で、でも、委員長さんだって・・・」
「雪広さんと明日菜さんは、数年間の付き合いがあります。それはお互いのやりとりや距離感を作るのに十分な時間です。でも、私や兄様は今日会ったばかりで、そんな信頼関係はないでしょう?」
「あ・・・」
やっと伝わってきたようですね。
・・・まぁ、10歳でそこまで心の機微に敏感なわけもありませんけど。
でも兄様は今、教師ですから。
ちゃんと考えていただかないと困ります。
主に周囲の方々が。何より私が。
「兄様だって、まだ実現できていない目標があるのに、今できないからだめだと言われたら、いやでしょう?」
マギステル・マギの目標を否定されたら、怒るでしょう?
言外にそう込めて、言葉を続ける。
「ある程度の努力をしている人に、今がだめだからもうだめ、なんて言ったら、その人はもう努力しなくなります。それはもう、取り返しがつかないことなんです。兄様は今、明日菜さんに対してそれをしたんです」
「・・・うん、そうだね、明日菜さん、失礼なことを言ってすみませんでした」
「べ、別にいいわよ・・・目の前でそんなやりとりされたら、怒れないし・・・」
ぺこりと頭を下げる兄様に、明日菜さんが照れたように言いました。
本当に良い人ですね。
さらに私は雪広さんの所に行って。
「雪広さんも、あんまりからかわないであげてくださいね」
「わ、わかりましたわ」
こくりと頷いてくれる雪広さん。
この方も、良い人ですね。
良い人多いですね、このクラス。
『わ~、アリア先生ってお若いのに、すごい人なんですね~』
「いえ、大したことはしていません」
横から聞こえた声に、そう返しました。
まぁ、褒められて嫌な気分にはなりませんね。
照れます。
「・・・先生、誰と話してるの?」
朝倉さんが、そんなことを言ってきました。
誰って・・・。
「この方ですよ?」
「先生・・・誰もいないよ・・・?」
はい?
「ちゃんといるじゃないですか・・・って、半分透けてますね、具合でも悪いんですか?」
『大丈夫ですよ、幽霊ですから』
幽霊・・・ですか、なるほど言われてみれば・・・。
『複写眼(アルファ・スティグマ)』の解析能力にひっかかったんでしょうか?
『って、私が見えるんですか?』
「はい。見たところ制服が違いますけど、このクラスの方ですか?」
だとしたら、ちゃんと覚えなくては、ですね。
『そうです!わ、私のことが見えるなんて・・・60年ぶりです~~』
そう言って泣き出す幽霊さん。
これはいけません。
「はいはい、泣かない泣かない・・・」
よしよしと頭をなでてあげます。
掌に微弱な魔力を通して、幽霊さんに触れるようにします。
『ふぇ~、あ、あたたかいです~』
「ああ、泣かないで・・・」
『す、すみませっ・・・60年ぶりのぬくもりで、嬉しくて・・・』
なるほど、60年・・・想像するしかありませんが、きっと辛かったことでしょう。
・・・ふむ。
「では、今日から私たちは友達です」
『ふぇ? と、友達になってくれるんですか~?』
「はい、よろしくお願いしますね」
『は、はい! わ、私は相坂さよです!さよって呼んでください!』
「私はアリア・スプリングフィールドです。アリアとお呼びください、さよさん」
『はい! アリア先生!』
嬉しそうに笑ってくれるさよさん。
うん、よかったです。
「あ、あの先生、大丈夫・・・?」
「はい、大丈夫ですよ。ちょっと幽霊・・・さよさんとお話を」
「「「幽霊!?」」」
どよめくクラス。これはいけませんね。注意しなければ。
「みなさん、今は授業中です。静かにしてください」
「「「いや、それどころじゃないよ!?」」」
その後もなかなか静まれず、授業終了のチャイムが鳴ってから落ち着きました。
兄様はオロオロしてるばかりで、大して役に立ってくれませんでしたし・・・。
まぁ、初日、初授業ならばこんなものですか。
さよさんとお友達になれただけ、よしとしましょう。
しかしまさか幽霊に出会うとは、何が起こるかわかりませんね。シンシア姉様。
教師になった以上、幽霊とはいえ生徒の将来のため、頑張る義務があります。
アリアは、がんばっております。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
今回は思った以上に主人公とネギが比べられる状況になってしまったかもしれません。ネギファンの方、ごめんなさい。
今回は出会いませんでしたが、主人公の目的の人物とも、近く接触することになります。
まだどうなるか不透明な部分もありますが、楽しんで頂ければ、嬉しく思います。