魔法先生ネギま~とある妹の転生物語~   作:竜華零

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第25話「3日目・多忙な夜」

Side ???

 

「このホテルで間違いないか?」

「ああ」

 

 

仲間にそう答えつつ、路地裏からその建物を確認する。

東から来たガキどもがいるホテルに、間違いなかった。

今も、入口あたりで呑気に話している奴が何人かいる。

 

 

「まったく、長は甘いんだ。東の連中を受け入れるなんて・・・」

「だいたい何で木乃香様を東にやるんだ、納得できん!」

 

 

そんなことを話しながら、式神の用意をする。

俺が表からこれで注意を引いている間に、仲間は裏に回ってホテル内に入ってもらう。

 

 

「こちら側らしい人間は殺しても良いよな?」

「ああ、だが流石に一般人は怪我程度にしておけよ、後味が悪い」

「はは、お優しいこぐぇ」

 

 

今、不自然な感じに声が途切・・・。

 

 

「お、わぁ!?」

 

 

突然、体が宙に浮いた。

しかも、う、動けねぇ!?

まるで何かに縛られたみたいな・・・ふと横を見ると、さっきまで話してた仲間が同じ体勢になっていた。

ただ、ピクリとも動かない。

ま、まさか・・・。

 

 

「・・・大丈夫ですよ。私は別に、後味が悪くなったりはしないので」

「だ、誰だ!?」

 

 

反射的に前を見る、すると白い髪の女・・・の子?

彼女は片手で何かを回すような仕草をしながら、鬱陶しそうにこちらを見上げていた。

 

 

「な、なんだおま「黙りなさい」んぐむっ!?」

 

 

な、何かが顎を、頭を・・・!

 

 

「・・・考えるのも面倒ですし、選ばせてあげます。腕ですか、胸ですか? 決めなさい」

 

 

な、なんだこいつは・・・!

彼女は俺の目を見ると、口元を歪めて笑った。

嫌な笑い方だ。

 

 

「ああ・・・その反抗的な目からにしましょうか」

 

 

 

 

 

Side アリア

 

魔法具『どこでも扉』を使用し、あてがわれている部屋へ転移します。

・・・今のところ、組織だった襲撃はありません。

暴走した一部の馬鹿が来るのみです。

 

 

「あ、おかえりなさいアリア先生~」

「あはははははっ 喰らえ革命だ!」

「申し訳ありませんマスター、革命返しです」

「なにぃ!?」

「ケケケ・・・カクメイガエシガエシダ」

「!?」

「良くやったチャチャゼロ!!」

「何、人の部屋で大富豪やってるんですか・・・」

 

 

さて、仕事仕事・・・と。

 

 

「あ、アリア先生、4班戻りました~」

「ああ、おかえりなさい。USJは楽しかったですか?」

「うん、すっごく良かったよ~」

「人いっぱいだったけどね」

「ネギ君と行きたかったな~」

 

 

大河内さん達はそのままお風呂へ。

さて、これで全部の班が戻りましたね。

新田先生に報告に行くとしましょう。

 

 

そのままロビーを見渡せば、他の生徒の方も思い思いに過ごしている様子。

風香さんと史伽さんは浴衣姿で廊下を駆け回っています、後で注意しましょう。

雪広さんは4班の帰りが遅いと、カウンター近くでプリプリしていますし。

長瀬さんとクーフェイさんは休憩コーナーでお菓子を食べ、綾瀬さんはご当地限定の妙な飲料を山ほど飲んでいます。早乙女さんは何やら巫女さんの素晴らしさについて綾瀬さんに熱く語っているようですが、いまいち伝わっていないようですね。

真名さんはギターケースを肩にかけ、その様子を楽しげに観察しているようです。

 

 

他の部屋からも、楽しそうな笑い声が聞こえます。

・・・楽しんでいただけているのなら、良いことです。

ふと、窓の外を見ると、空には、綺麗な満月が浮かんでいました。

・・・ああ、良い夜です。

 

 

 

 

 

Side フェイト

 

つまらない。

大戦の英雄というからどれほどの物かと思えば、あっさりと不意打ちに成功。

石化の魔法はレジストはされたみたいだけど、時間の問題だ。

 

 

周辺の巫女も全員眠ってもらったし、英雄の息子の生徒2人にも退場してもらった。

後は近衛のお姫様を攫うだけなんだけど・・・何故か、お風呂場にいた。

なんでお風呂場・・・?

 

 

「私の後ろにいてね・・・」

「う、うん」

 

 

護衛が一人、オレンジ色の髪の女の子だ。

ただ、どうにも動きが素人。

後ろから近付いて、眠ってもらうとしよう・・・。

 

 

「・・・そこ!」

 

 

突然、ハリセンで応戦された。

すごい、まるで訓練された戦士のような反応だ。だけど。

 

 

「お姫様のナイトとしては、役者不足かな。キミも眠ってもらうよ」

「な、何よ、あんた!」

 

 

彼女の声には構わず、僕は石化の魔法を放った。

 

 

 

 

 

Side ネギ

 

僕のせいだ、僕のせいでのどかさんと朝倉さんが・・・!

トイレから部屋に戻ったら、2人が石化魔法にかかって石にされていた。

僕がもっとしっかりしていれば・・・!

 

 

「兄貴、落ちつけよ! わざわざ石にしたってことは、堅気に危害を加えるつもりはないってことだからな!」

「わ、わかってる」

 

 

そうだ、カモ君の言う通り、石化は後で長さん達が解いてくれるはず。

でも今は、その長さんも石にされてしまっている。

な、なんとかしないと。

 

 

「ネギ先生! お嬢様と明日菜さんはこの先のお風呂場にいるんですね!?」

「は、はい! 仮契約カードの念話で連絡を取って・・・」

「急ぎましょう。長が倒れた今、私達がお嬢様をお守りしなければ!」

 

 

刹那さんとはさっき合流して、今は集合場所のお風呂場に向かってるところ。

・・・着いた!

 

 

「・・・明日菜さん!?」

 

 

お風呂場に真ん中で、明日菜さんが倒れていた。

しかもなぜか、服を着ていない。

な、何されたんですか!?

 

 

「明日菜さん、大丈夫ですか!? 何が・・・」

「せ、刹那さ・・・ごめん、木乃香攫われちゃった・・・」

「そんな!?」

「き、気をつけて、あいつ、まだいるかも・・・」

 

 

あいつ? あいつって誰だろう。

それに「ネギ先生!」うわっ!?

突然、刹那さんに突き飛ばされた、と思ったら、

刹那さんが、殴り飛ばされるのが見えた。

 

 

 

 

 

Side フェイト

 

後ろから一撃を与えたけど、手応えがない。

防がれたみたいだ。

月詠さんと同程度の実力だと思ったけど、意外とやる。

 

 

「貴様・・・お嬢様をどこにやった!」

 

 

彼女・・・桜咲刹那は、僕の一撃を利用して距離をとると刀を抜いてきた。

その後ろではオレンジ色の髪の女の子を庇って、サウザンドマスターの息子が僕を睨んでいる。

 

 

「こ、木乃香さんを、どこにやったんですか・・・?」

 

 

それは今、桜咲刹那が僕に聞いたことだと思うけど。

そして僕に、それに答える義理はない。

 

 

「・・・みんなを石にして、明日菜さんにエッチなことをして「されてないわよ!」・・・先生として、友達として、僕は、許さないぞ!」

「・・・・・・それで、どうするんだい、ネギ・スプリンギフィールド。僕を倒すのかい? やめた方がいい。今のキミでは、無理だ」

 

 

構うのも面倒だ。ここで眠ってもらおう。

僕は右手を彼らに向ける。

 

 

「ヴィシュ・タルリ・シュタル・ヴァンゲイト 小さき王、八つ足の蜥蜴、邪眼の主よ・・・」

「こ、この呪文は・・・やべぇ、逃げろみんな!」

「に、逃げるって、こんな狭い場所でどうやっ・・・」

「『石化の邪眼』」

 

 

石化の魔法を、放つ。

あ、あのオレンジの子には効かないんだったね・・・。

なら、まずは剣士の子から・・・。

でもどういうわけか、僕の魔法が僕に「跳ね返ってきた」。

 

 

「なっ・・・」

「・・・斬鉄閃!」

 

 

同時に、桜咲刹那が切りかかってくる。

とりあえずは跳ね返ってきた魔法を捌いて、斬撃をかわす。

・・・何が起こった?

 

 

左手で彼女の刀を弾いて、右手で魔力を込めた一撃を放つ。

だが彼女の速度ではかわせないはずのその一撃も、紙一重でかわされてしまう。

 

 

「・・・キミ、今、僕の石化魔法をレジスト・・・いや、反射したね? しかも、速度まで上がって・・・何をしたの?」

「さぁな。貴様が自分で思っているよりも、貴様の魔法が強くないということではないか?」

 

 

・・・・・・へぇ。

 

 

 

 

 

Side 刹那

 

「自分で思っているよりも、貴様の魔法が強くないということではないか?」

 

 

そんなことを言っているが、実はそれほど余裕があるわけではない。

奴も本気を出していないはずだ。これ以上の速度にはついていけない。

本来ならさっきの攻防も、私には捌き切れないはずの速度で行われている。

魔法の反射など当然、私にはできない。

なら、何故それができるのか・・・心当たりがある。

 

 

ちらりと、左手を見る。

手首に数珠が、中指に指輪が嵌めてある。

アリア先生からもらった、魔法具だ。

その魔法具から、微弱ながらアリア先生の魔力を感じる。

これがおそらく私の速さを上げ、敵の魔法を反射しているのだろう。

 

 

(「きっと、貴女を守ってくれます」)

 

 

アリア先生の言葉が、思い出される。

アリア先生・・・。

 

 

「『魔法の射手 連弾・光の18矢』!!」

 

 

ネギ先生が、魔法の矢を放つ。

白髪の少年・・・確か、天ヶ崎千草がフェイトとか呼んでいたな。

彼はそれらの魔法の矢を目だけで見ると、湯船のお湯を巻き上げ、自らを包み込んだ。

 

 

次いで魔法の矢が着弾、湯船を破壊(申し訳ありません、長・・・)、だがフェイトの姿は見えなくなっていた。

・・・転移したか。

 

 

「や、やったの?」

「手応えがなかった・・・」

「水を媒介にした瞬間移動・・・高等魔術だぜ、兄貴」

 

 

確かに、あのフェイトとかいう少年は別格の相手だろう。

私では一人では勝てない、悔しいが断言できる。

もし、あれに対抗できる人がいるとすれば。

 

 

長・・・しかし、すでに石にされてしまっている。

エヴァンジェリンさんは・・・正直、木乃香お嬢様のために動いてくれるとは、思えない。

なら、あとは・・・。

 

 

スカートのポケットからアリア先生からもらった、もう一つの魔法具を取り出す。

青い宝石のようなそれを、じっと見つめる。

 

 

・・・できればお嬢様は、私自身の手でお救いしたいという思いがある。

けれど。

 

 

「刹那さん! 後を追いましょう! 木乃香さんを助けに!」

「え・・・あ、はい!」

 

 

・・・そうだ、何を迷う必要がある。

自分で救いたいなど、ただの我儘だ。

手に負えないと思ったら呼べというアリア先生の言葉が、思い出される。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよ兄貴! 名案を思い付いたぜ!」

「あんたの名案なんてどーせバカなことなんでしょ!? あと、待ちなさいよネギ! 着替えてから・・・」

 

 

全ては、お嬢様を取り戻すために。

命よりも大切なあの人を、救うために。私は。

 

 

 

私はその宝石を、割った。

 

 

 

 

 

Side アリア

 

ぴくっ・・・と、身体が反応しました。

 

 

今、私は自室で休憩中。

襲撃者の迎撃のために使用した体力を回復させるべく魔法具(魔法菓子?)、『奇妙な煎餅』をパリパリと食べていたところです。

このお菓子は特殊な魔法薬を調合した原料から作られた物で、少しですが体力を回復させる効果があります。

 

 

・・・どうやら、『ピンチになったら』が砕かれたようですね。

刹那さんが、私を呼んでいます。

 

 

「・・・・・・行かなくては」

「どこにだ?」

 

 

横で同じく煎餅を食べていたエヴァさんが、不思議そうに聞いてきます。

 

 

「ええ、ちょっとデートの時間なので」

「ほうほう、デートか、なるほ・・・・・・・・・なんだとぉっ!!??」

 

 

何をそんなに驚いているのでしょう。

片手で煎餅を握り潰すなんて芸当、出来そうで出来ませんよ?

 

 

「さぁて、おめかしして行きませんと」

「お、おめかしだとぉ!?」

「茶々丸さん、着替えお願いします。服はD-14で」

「了解しました」

「ちょ、ちょっと待て、どういうことだ!?」

 

 

そう言って茶々丸さんが持ってきたのは紫色の、頭ほどのある大きなカメラです。

茶々丸さんは、それに一枚の紙をセットすると、私に合わせて・・・シャッターを切りました。

すると、次の瞬間には着替えを完了しています。

あのカメラは、魔法具、『着せ替えカメラ』。

私が、茶々丸さんに譲渡した魔法具です。

効果は、まぁ、被写体を着替えさせるだけです。

 

 

・・・渡した日に100着ぐらい着せ替えられて、かなり後悔した品です。

 

 

実はエヴァさん達には、すでにいくつかの魔法具を譲渡しています。

エヴァさん達なら、悪用はしないでしょうし。問題ないでしょう。

学園側にバレたら問題ですけど。

 

 

え~と、後は・・・。

さらに魔法具、『コピーロボット』を取り出します。

鼻のボタンを押すと・・・私と瓜二つの姿になりました。

身代わりですね。わかります。

 

 

そうは言っても単調な命令しか遂行できないので、戦闘とかは無理ですけどね。

 

 

「さよさん、申し訳ないですけど私がいない間、この子の面倒をお願いします」

「あ、はい、任せてください!」

「お前もさよさんの言うことをしっかり聞いて、私の身代わりを務めるように」

 

 

がしょん、と敬礼するコピー・・・大丈夫かな。

ま、まぁ、さよさんも付いてくれますから一晩くらいなら大丈夫でしょう。

 

 

後は瀬流彦先生に連絡を入れて、結界を強めてもらいましょう。

え~、さらにトラップ式の魔法具をホテル周辺に張って、無敵要塞化しておくとしましょうか。

5分で済ませます。

 

 

「お、おいアリア、ちょ、ま・・・」

「それじゃ、いってきますね」

「はい、いってらっしゃいませ、アリア先生」

「む、無視するな、おい」

「こっちは任せてください!」

「デートってお前、どういう・・・」

「ケケケ・・・タノシンデコイヨ」

「た、楽しむって、な、何を楽しむつもりだ!?」

 

 

何かエヴァさんが騒いでいますが、時間がありません。

さて、またもやナイスタイミングで、助けに入るとしましょうか。

ヒーローの条件というものを、教えてさしあげましょう。

・・・転移。

 

 

 

「み、認めんぞぉ―――――――っ!!」

 

 

 

何を?

 

 

 

 

 

 

 

Side 明日菜

 

「オン キリ キリ ヴァジャラ ウーンハッタ!」

 

 

眼鏡の女の人が何かを唱えると、鬼がたくさん出てきた。

それも10や20じゃなくて、100体以上は確実に、いる。

 

 

「ちょっとちょっと! こんなのありなのーっ!?」

「木乃香姐さんの魔力で派手に召喚しやがったな!」

 

 

カモが何か言ってるけど、それどころじゃない。

あたしはほとんど涙目になりながら、こういうのに一番慣れてるっぽい刹那さんに声をかけた。

 

 

「せ、刹那さん。さすがにこれは、私、ちょっと・・・」

「落ち着いてください明日菜さん、大丈夫です!」

 

 

だ、大丈夫って言ったって・・・。

 

 

「あんたらにはその鬼どもと遊んでもらおか。ま、まだガキやし、殺さんようには、言っといたるわ。安心しときぃ。・・・ほな」

「待て!!」

 

 

眼鏡の女の人とお風呂場にもいた白い髪の奴が、木乃香を連れて行っちゃった・・・。

助けに行こうにも、途中には鬼が・・・。

 

 

「なんや、久々に呼ばれた思ったら・・・嬢ちゃん達が相手かいな」

「悪いな嬢ちゃん達、呼ばれたからには、手加減できんのや・・・恨まんといてな」

 

 

な、なんか鬼が人間の言葉喋るってすごくシュール・・・。

って、そうじゃなくて。ど、どうすんのよこれ!

 

 

「くっ・・・!」

 

 

刹那さんが、刀を構えた・・・って。

 

 

「た、戦うの!?」

「当然です! ここを突破しなければ、お嬢様が・・・!」

「大丈夫、僕が大きい魔法を撃ちますから、その隙に・・・」

「待った待った! まずは作戦立てんのが先だろ!?」

 

 

ね、ネギもカモも、突破する気みたいだけど・・・。

け、けど、あんなにたくさんいるのにっ・・・!

 

 

 

          ・・・魔法具、『炎雷覇』・・・

 

 

 

「・・・・・・え?」

「どうしたんですか明日菜さん?」

「い、いや、今何か聞こえた気がしたんだけど・・・」

 

 

 

          ・・・『熾焔鳥(ロイヤールハント)』!!

 

 

 

「・・・私にも、聞こえました」

「でしょ!? この声って・・・」

「これ・・・」

「・・・・・・来てくれた!」

 

 

刹那さんが、空を仰ぐ。

すると夜なのにすごく明るくなって・・・私達の目の前に、火で出来た鳥みたいなのが落ちてきた。

そして、爆発。

 

 

「おおおおおっ!?」

「せ、西洋魔法かぁぁっ!?」

「わびさびがないにも程があるやろぉ!?」

 

 

巻き上がった炎に飲まれて、20体くらいの鬼が消えてった・・・す、すごい。

でも、わびさびって・・・何?。

 

 

「・・・・・・お待たせして、申し訳ありません」

 

 

そして、しゅたっ、と、空から女の子が降ってきた。

その声はどこか冷たくて、けどやっぱり優しさも感じる、不思議な声。

白い髪のその女の子は、やっぱりアリア先生だった。

片手に赤い古そうな剣を持っていて、そこから火が出てる。

うん・・・アリア先生、なんだけど。

 

 

「・・・あ、アリア先生、可愛い・・・」

「ありがとうございます」

 

 

アリア先生は、普段は質素なスーツ姿でいることが多いんだけど・・・。

今はなんというか、すごく気合いの入った格好だった。

 

 

赤いリボンが所々にあしらわれた、黒のワンピースドレス。

胸元に大きな黒いリボンがついていて、腰の編み上げ部分から少しだけ肌が見える。

二の腕まである袖の部分には、小さな、白い翼みたいな刺繍。

スカート部分は三段フリルになっていて、裾の部分には黒いレース。

さらに赤いラインの入った黒のハイソックスに、黒のエナメルの靴。

極めつけに左手首には、赤いリボンが巻いてある。

もちろん髪にも2つ、赤いリボンがついてる。

 

 

・・・・・・可愛いんだけど・・・・・・。

明らかに、戦いに来たって感じがしなかった。

・・・え、何、デートにでも行くの・・・?

 

 

 

 

 

Side アリア

 

「さて、私が今回提示できる選択肢は2つです。兄様」

「ふ、二つ?」

 

 

目の前に居並ぶ鬼たちを尻目に、私は指を2本立てて兄様たちに示します。

 

 

「①私がここで鬼どもを蹂躙している間に、兄様たち全員で木乃香さんを救出する。②兄様たち全員がここで敵を足止めし、私が木乃香さんを救う」

 

 

番外で見捨てるというものがありますが、それはさすがに後味が悪いですからね。

 

 

「私のおすすめは①ですね。兄様たちは一対一の闘いは出来ても、一対多の戦いはできないでしょう? その点私は一対多の方が得意ですから。また、兄様たちよりも私の方が、あの鬼どもを駆逐するのが早いと思いますし」

「・・・たしかに、そうかもしれません」

 

 

さすがは刹那さん。以前私の戦い方を見ただけの事はありますね。

むしろ兄様には、私の手の内を見せたくないんですよね。

・・・もう遅いかもですけど。

 

 

「・・・あの、アリア」

「なんですか兄様? どっちにするか決まったんですか?」

「でも、アリア一人じゃ・・・」

 

 

・・・心配してくださるのは、よいのですけど。

 

 

「では、私が道を開きますので、そこから勝手に抜けてくださいね」

 

 

さぁて、鬼が120体くらいですか。

持っていた『炎雷覇』をしまい、次の魔法具を作ります。

魔力を練って作ったそれは一見すると、古ぼけたそれもボロボロの刀です。

 

 

「・・・あ、姐さん、なんというか、ボロくねぇか、それ?」

 

 

下等生物は黙っていなさい。

ぐっ・・・と、魔力を込めると、その刀は一瞬燃えて、白い、牙のような刀に変化しました。

私の身長よりも大きなこの刀の名前は、魔法具、『鉄砕牙』。

 

 

・・・・・・お、重いです。

サイズは考えてなかったです。魔法具、『力(パワー)』発動。

よし。

 

 

「さぁ、私の魔力を吸いなさい、妖刀よ」

 

 

キイィィィィィィィィィィンッ!

 

 

私の魔力を吸い上げて、『鉄砕牙』が白く輝きます。

出力間違えないようにしませんと・・・。

その輝きに兄様たちは驚き、鬼達は後ずさりました。

・・・・・・一振りで。

 

 

「一振りで、百匹の妖怪を、薙ぎ倒す!」

 

 

両手で『鉄砕牙』を横に構え・・・・・・振り抜きます!!

 

 

「・・・・・・『風の傷』!!」

 

 

白い光が全てを飲み込み、薙ぎ倒します!

正直、別に叫ぶ必要性は皆無なのですが、この武器では叫ぶのが暗黙のルールのような気がします。

 

 

悲鳴を上げて、消し飛んでいく鬼達。

100匹倒したかは、数えていないのでわかりませんが・・・。

今ので、中級以下の強さの鬼はほぼ殲滅したでしょう。

 

 

残りは少々手間ですが、地道に消していきましょうか。

正面の敵はほぼ全滅しましたし、良しとしましょう。

 

 

「今ですよ!」

 

 

何やら呆然としている兄様達に、行くように促します。

まず刹那さんが瞬動で駆け出し、それを見た兄様が慌てて杖に乗り、明日菜さんと共に空を飛んでいきます。

チラチラとこちらを見ているようですが・・・私はそれよりも刹那さんの背中を見ていたい気分でした。

 

 

大切な誰かのために、自分の全てを懸けている刹那さん。

何よりも木乃香さんを大切にするその姿は、とてもわかりやすくて好感の持てる行動でした。

 

 

・・・!

 

 

『鉄砕牙』を上に掲げ、振り下ろされてきた大きな棍棒を受け止め、る!

 

 

「嬢ちゃんの相手は、ワシらや」

 

 

鬼達の中でも、一際大きな鬼。

おそらくはボスですか『風の傷』が当たったのか、身体が3分の1ほど消えかかっています。

肩に乗っている、狐の仮面をかぶった女性型の鬼は無傷。

庇ったのでしょうか。

だとすれば、随分と人情的な性格ですね。

 

 

周りを見れば黒い翼を持つ烏族や、鎧兜を着込んだ妖怪が私を取り囲んでいます。

どれもこれも、それなりの力を持っているようですね。

残り、10体くらいですか。

 

 

「・・・私が言うのもアレですが、良いのですか? 私の仲間を先に行かせて」

「さぁな、ワシらはここで足止めせぇて命令されただけや、それに・・・」

 

 

にぃ、と顔を歪めて鬼が嗤う。

嫌な予感・・・。

 

 

「嬢ちゃんと遊んだ方が、面白そうやないか!!」

「・・・我ながら、妙なものに好かれますね・・・」

 

 

苦笑、そうとしか表現できないであろう笑みを浮かべます。

・・・まぁ、デートの時間まで、もう少しあるでしょうし。

少しだけ、付き合ってさしあげましょう。

 

 

ぎぎぃんっ!

 

 

金属音を立てて、鬼の棍棒を弾き返します。

そして『鉄砕牙』を横の地面に刺して、一旦置きます。

 

 

そして、スカートの裾を少し持ち上げ、丁寧に一礼します。

礼儀というものは、どこでも大切ですよね、シンシア姉様。

 

 

「・・・麻帆良学園女子中等部職員、3-A副担任、アリア・スプリングフィールドです。これから、貴方達を殲滅させていただきます」

「・・・・・・来いやぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

アリアの初デートまで、あと少しです。

 




アリア:
アリア・スプリングフィールドです。
盛り上がってきました。
刹那さんが木乃香さんを救うことができるよう、全力を尽くしたいところです。


アリア:
今回、みなさまから頂いたアイデアから使用した魔法具は、3つです。
「奇妙な煎餅」:霊華@アカガミ様提案です。
「炎雷覇」:元ネタは「風の聖痕」、提供はkusari様です。
「鉄砕牙」:元ネタは「犬夜叉」、提供はゾハル様です。
ありがとうございました。

なお、作中で私が使用した『熾焔鳥(ロイヤールハント)』は、元ネタが「バスタード!」という漫画。
炎の鳥を召喚する魔法なのですが、「炎雷覇」という、炎を操る剣を使いましたので、再現させていただきました。

アリア:
次話は、スクナ復活編の最重要ポイントです。
修羅場・中編と、言ったところでしょうか。
では、またお会いしましょう。

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