次回あたりから、前書きと後書きの書き方を変えてみます。
では、どうぞ。
Side アリア
修学旅行当日がやってきました。
幸いにして今日は快晴、集合場所である駅に到着いたしました。
まだ、誰も来ていません。
それはそうでしょう。
「・・・なぜ、4時間も前に集合場所にいるんでしょう」
「すみません。マスターのせいで・・・」
「いえ、茶々丸さんは悪くありませんよ・・・」
ぺこぺこと頭を下げる茶々丸さん、でも貴女は本当に悪くはないんです。
悪いのは・・・。
「ふははははははははっ、外だ! 15年ぶりの外だ――っ!!」
あそこで荷物をお立ち台にして高笑いしているエヴァさんです。
テンション、高すぎです・・・。
そして、もう一人。
「外ですっ・・・! 60年ぶりの、外です・・・っ!!」
エヴァさんの横で、感極まったようにむせび泣いているのがさよさんです。
幽霊状態の彼女の容姿をベースにした、新しい肉体。
正直旅行に間に合うかどうかは微妙なところだったのですが・・・さよさん自身の頑張りと、私と茶々丸さんのリハビリサポートによってなんとか間に合いました。
なんにしても、やたらと興奮したエヴァさんとさよさんにより私は叩き起こされたわけです。
勘弁してくださいよ、ただでさえ昨日はいろいろ準備してて疲れてるんですから・・・。
え?
何が忙しかったかって・・・?
ネギ兄様一人行くのに嫌がる組織の本拠地に、<闇の福音>を行かせるのはどうか、とか言いやがった人がいましてね。
そっちにいろいろ労力がいりまして。
まぁ、相手は主に学園長ですけど。
実際に文句を言っているのが誰か、となると微妙ですがね。
あの書類はあれかな、原作で学園長がエヴァさんを京都に行かせる際に書いたり押したりしていた書類なのでしょうか。
エヴァさんのためでなければ、無視してるところです。
本人には言えませんし・・・だって言ったら虐殺が起こりそうなんですもの。
私のために怒ってくれるのは嬉しいけれど、私のためにそんなことをしてほしくもないし・・・。
ああ、駄目ですね、眠くて頭の回転が鈍いです。
「・・・眠い・・・です」
しかしまさかここで眠るわけにはいきませんので、眠気に耐えるしかありません。
・・・眠い頭に、エヴァさんの高笑いとさよさんのすすり泣く声が響いてきます・・・。
茶々丸さんが「よしよし」してくれなければ、どうなっていたかわかりませんよ。
まったく。
「ケケケ、ネリャイイジャネーカ」
「寝ませんよ・・・というかチャチャゼロさん、皆さんの前で間違っても喋らないでくださいよ」
「ケケ、ワカッテルヨ」
エヴァさんの荷物の中から顔を覗かせるチャチャゼロさん。
まぁ、置いて行くのも可哀想と思って連れてきたのですが、どうにも不安です・・・。
数時間後、まずは先生方が来ました。
1番手は、新田先生です。
「おお、アリア先生。お早いですな」
「あ、新田先生。おはようございます。先生もお早いですね」
「おはようございます。いやぁ、年甲斐もなくはしゃいでしまいましたかな?」
「ふふ・・・新田先生でも、そういうことがあるんですね?」
生徒のみなさんからは恐れられる新田先生ですが、私は好きです。
教師としての矜持を持った、素晴らしい先生です。
私もお世話になっています。
2番目に来たのは、しずな先生です。
「おはようございます。しずな先生」
「おはようございます。今日から5日間、よろしくお願いいたしますね」
「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」
しずな先生には、指導教員時代からたいへんお世話になっています。
その他私生活の面でも、女性用品の安いお店とかを教えてもらったり、ありがたいです。
そして瀬流彦先生も来ました。
「おはようアリア君」
「おはようございます。瀬流彦先生」
「あはは・・・そんなに畏まらなくてもいいのに」
そう言うと、瀬流彦先生は困ったように頭をかきました。
瀬流彦先生は魔法先生でもあり、その中にあって良識派でもあります。
エヴァさんなどは「軟弱なだけだ」と言っていましたが、その柔和な人柄は生徒からも慕われています。
ただひとつ言いたいことがあるとすれば、魔法先生もう一人いていいんですか学園長、です。
このメンバーにネギ兄様他数名を入れて、引率する教師陣は構成されています。
数的になかなか大変ですが、がんばらなくては。
そうこうしているうちに、生徒のみなさんも集まり始めました。
さて、自分のクラスの引率に行きましょうか。
「はい、皆さん、おはようございます」
「「「「おはようございまーす!!!」」」」
テンション高いですね。
3-Aと思しき人だかりに近づいてみますと、すでに兄様も来ていました。
・・・他の先生方に挨拶もしないで何やってるんでしょう。
「あ、アリア先生やー」
「木乃香さん、おはようございます」
「ちょっと・・・あれどうにかなんないの?」
一緒にいた明日菜さんが指さしたのは、未だに高笑いするエヴァさん。
そして、むせび泣くさよさん。
・・・さよさんは水分とか大丈夫なんでしょうか?
ちなみにさよさんについては「退院に伴う復学」と説明しています。
幽霊騒ぎの件については、「生霊」ということで納得してくださいました。
長谷川さんが「ありえねー」と呟いていましたが、そこは流しました。
「まぁ・・・新幹線に乗れば落ち着くかと思いますので、それまで我慢してください」
「あんたも大変ね・・・」
そんな憐れんだ目で見ないでください、泣きたくなるじゃありませんか。
「やぁ、アリア先生」
「おはようございます」
木乃香さんたちの次に挨拶に来てくれたのは、真名さんと刹那さんです。
「おはようございます。真名さん。刹那さん」
「あの、相坂さんは先生が・・・?」
「あ、はい。私が新しい肉体を用意しました。・・・どこか違和感が?」
だとしたら早急に調整する必要があるのですが・・・。
「いや、私の魔眼から見ても完璧な人間だよ、あれは」
「はい、気の流れにも特に不自然なところはありません」
お二人の目から見てそうなら、大丈夫でしょう。
何分右目は包帯こそ取れていますが、視力はまだ回復していませんから、『複写眼(アルファ・スティグマ)』で視ることができません。
と言うか、普段の私生活における遠近感とかちょっと・・・。
「・・・あの、先生」
「何でしょう?」
刹那さんが、おずおず、といった様子で私を見てきました。
何ですか刹那さん、そんな縋るような視線で見られても成績は上げませんよ?
ポストバカレンジャー・・・教師にとって、これほどの脅威はそうはありません。
「先生は、どうして相坂さんに新しい身体を・・・?」
「生徒だからですよ?」
なんだか以前にも同じことを言ったことがありますね。
「生徒が教師である私に救いを求めるなら、全力で生徒を救うのが私の責務です」
実際初めて身体を動かした時のさよさんは、リハビリの苦痛に耐えながらもとても嬉しそうでした。
あの顔を見れば、誰でもそうするでしょう。
「でも、相坂さんは・・・」
「人間ではない。確かにそうかもしれませんが、それは別に大した問題ではありませんね」
厳密に言えば、「元」人間ですか。
幽霊って人間のカテゴリーに入るのでしょうか。
まぁ、ようは私の自己満足ですから。
「どうしてですか!」
でも、なぜか刹那さんはムキになってくってかかってきました。
な、何か地雷を踏みましたか・・・?
「どうしてそんな・・・人間かどうかは問題じゃないなんて言えるんですか!?」
「落ち着け、刹那。アリア先生が驚いてる」
「あ・・・」
真名さんに言われて、刹那さんは我に帰りました。
次の瞬間には、顔を青くして頭を下げてきました。
「す、すいません!」
「あ、いえ・・・別に気にしてませんから」
えっと・・・刹那さんがあからさまに落ち込んでますね。
これは、もしかして私のせいですか・・・?
「真名さん、私何か変なこと言いましたか・・・?」
「・・・いや、別に何も」
「・・・そうですか」
その後、なんとも言えない空気のまま、二人と別れました。
といっても、点呼の時に会いますけど。
・・・こういう時、ネギ兄様のような天真爛漫な人なら、もっと和やかにできたのでしょうか。
「ふはははははっ 修学旅行だ―――っ!!」
「修学旅行ですっ・・・!」
・・・この二人は新幹線に乗るまで、この状態だったと、追記しておきます。
まぁ、旅行というのはテンションが上がるものだと、シンシア姉様も言っておられましたし。
アリアも、楽しみではあります。
最後までお読みいただきありがとうございます。
この形での後書きは今回限りにしようと思います。
次回からは、本編の補足的なものに利用する予定。
本編内で全部説明し切れれば良いのですが、どうも力不足なようで・・・。
がんばります!